
AI推進のよくある質問30。推進担当者からの相談に答える
2026/09/17
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
AI推進の相談を受けていると、会社の規模も業種も違うのに、聞かれることが驚くほど似ています。
「ルールはどこまで作ればいいのか」「配ったのに使われない」「効果を経営にどう説明するか」。
このあたりは、ほぼ毎回出てきます。
同じ段階で、同じ壁に当たっているからだと思っています。
今回はそのよくある質問を30問並べて、ひとつずつ短く答えていきます。
掘り下げている回にはリンクを付けているので、気になったところから読んでいただければと思います。

何から手をつけるかで迷う
まずは入口の話です。
何から始めるか、どのくらいで成果が出るか、推進の体制をどう置くか。
このあたりを4問見ていきます。
この4問と同じ問いを、原因ごとの対策と進める順番から考えたものは、AI推進は何から始めるかのページにまとめています。
Q1. 何から始めるべきですか。
現場で実際に何が使われているかを掴むところからです。
ルールを先に作ってしまうと、実態に合わないものができあがって、結局は守られません。
経費精算とネットワークの記録を見れば、いまどのサービスが使われているかはだいたい分かりますし、用途まで分かれば正規の手段に置き換えられます。
全体の順序はAI推進の進め方で扱っています。
Q2. どのくらいの期間で成果が出ますか。
業務が1つ楽になるまでが1か月、組織として変わるまでが1年くらいの感覚です。
ただ、その前に「成果」を何とするかを決めておかないと、いつまでも終わりません。
利用者数は成果ではないので、削減できた時間か、これまでやれていなかったことができるようになったか、で見ます。
Q3. 推進担当は専任にすべきですか。
兼務のままだと、金額や事業インパクトまで数字を作る段階で必ず詰まります。
専任を置けないのであれば、対象を主要な3部門に絞ってしまうほうが現実的です。
網羅するより、続けて出せるほうが効きます。
AI推進担当者の情報収集と経営判断で詳しく扱っています。
Q4. 経営が乗り気でない場合、どうすればよいですか。
資料で説明しても、触ったことがない人には桁の感覚が伝わりません。
「AIは情報漏えいが怖い」という理解のまま止まっている状態に予算の話を重ねても、まず通らないです。
短い時間でいいので、実際に触ってもらう機会を作るほうが速いと思います。
ルールは「どこまで」で必ず揉める
ルールの相談は、たいてい「どこまで縛るか」で止まります。
禁止の範囲から無料版の扱い、個人情報、誤情報への備えまで、6問で見ていきます。
Q5. ルールはどこまで作るべきですか。
「使ってよい範囲」を先に書いて、そのあとに「入れてはいけない情報」を続ける順序をおすすめしています。
禁止事項の一覧から始めると、読まれないまま終わります。
詳しくは生成AIの社内ルールの作り方で書いています。
Q6. 全面禁止という選択はありますか。
あまり効かないと思っています。
禁止しても利用がなくなるわけではなく、報告が上がらなくなるだけなので、結果として事故の発覚が遅れます。
シャドーAI(野良AI)とはで扱っています。
Q7. 無料版を使わせてはいけない理由は。
入力内容の扱いが既定で有効になっているものが多く、管理者側から誰が何を入れたのかを把握できません。
退職時にアカウントを止めることもできないので、業務で使う前提に置けるのは法人版からになります。
Q8. 有料版の予算を経営に通す論点は。
払っているのは機能ではなく、「学習に使われない契約上の扱い」と「管理者が把握できる状態」です。
機能比較の話から外して、リスク管理と内部統制の話に置き換えると通りやすくなります。
そこに削減時間の試算を1つ添えます。
Q9. 個人情報を含む業務では使えませんか。
「氏名を入れない」というルールを1つ置くだけで、かなりの部分は解決します。
経歴や内容だけでも処理はできますし、それなら個人は特定できません。
詳しくは個人情報を含む文章をAIに渡す前にで書いています。
Q10. 誤情報が出ることへの対策は。
「気をつける」では防げないので、見る場所を決めてしまいます。
誤りは出典・数値・固有名詞・日付・言い回しの5か所に集まるので、そこだけを5分で見る型を配ると事故が減ります。

配ったのに使われない
いちばん相談が多いのがここです。
研修を増やしても解決しないので、どこで人が止まっているのかを5問で分解します。
Q11. 配ったのに使われません。
最初の数回でつまずいて、そのまま放置されている人がかなりの割合でいます。
原因は7つほどのパターンに分かれていて、前半の5つは手順書で自己解決できます。
残る「使い道が分からない」と「手間のほうが大きい」の2つだけは、業務との接続を設計しないと解けません。
Q12. 研修を増やせば定着しますか。
研修を増やしても、あまり変わらないと思います。
離脱の原因は入口の知識不足ではなく、最初の数回でつまずいたまま放置されることなので、そこを検知して一次対応する仕組みのほうが効きます。
Q13. 「使い道が分からない」への対処は。
同じ職種の人の使い方を3つ見せるのが、いちばん効きます。
汎用の活用事例集を配っても、そこから自分の業務に当てはめる作業が残ってしまうからです。
Q14. プロンプトが書けない人がいます。
「話せば作れます」と伝えるところから始めます。
指示文そのものをAIに書かせてもいいですし、口頭で説明して整えさせる形でも作れます。
「書けない」を能力の問題にしてしまうと、その人はもう使わなくなります。
Q15. 誰が使っているか把握できません。
アンケートでは分かりません。
使っていない人は、そもそも回答しないからです。
部門長に聞いても「たぶん使っていると思います」という答えが返ってきます。
利用の実態そのものを見る手段を用意する必要があります。

業務に寄せた途端に難しくなる
ここからは業務側の話です。
ネタ出しから棚卸し、フロー図、何で作るかの判断まで、5問あります。
Q16. AI化するネタが見つかりません。
「AI化できるものを挙げて」と聞いても出てきません。
業務名・工程・頻度・所要時間・関与人数・使っているもの・面倒だと感じる工程の7項目を書いてもらって、AI化できるかどうかの判断は推進側で引き取ります。
Q17. 業務の棚卸しが進みません。
個人に配って持ち帰ってもらうと、まず出てきません。
部門単位で30分のミーティングを取って、その場で書いてもらうほうが早いです。
複数人で話すと重複も見つかります。
Q18. 業務フロー図を書く時間がありません。
録画から起こすと、2〜3時間かかっていたものが30分になります。
話しながら操作してもらうと、判断の理由まで入るので、でき上がるものの質も変わります。
Q19. 自動化すべきかの判断基準は。
頻度が週1回以上あるか、例外が3割以下か、保守できるか。
この3つで見ています。
「自動化できるか」ではなく「自動化する価値があるか」で判断するところが分かれ目です。
Q20. 「何で作るか」の議論が毎回起きます。
判断基準を先に決めてしまうのが、この段階で最初にやることです。
人が起動するか自動か、正確な計算が必要か、条件分岐が複雑か。
この3問でだいたい決まります。

社内の情報がAIに渡っていない
ナレッジ側の話です。
読ませたのに答えない、という相談が多いところで、4問あります。
Q21. 社内資料を読ませたのに答えません。
そのPDFが画像として保存されている可能性があります。
文字を選択できるかどうかを見れば10秒で判定できますし、原本のWordやExcelを探すのがいちばん早い対処です。
Q22. 参照させる資料は多いほうがよいですか。
逆だと思っています。
古い版や下書き、個人のメモが混ざると、答えの信頼性が落ちます。
正式版と最新版だけを入れます。
Q23. 古い情報で答え続ける問題への対策は。
規程を改訂する手続きのなかに、「参照先の更新」を1項目として入れておくのが確実です。
更新のオーナーは、文書単位ではなく業務単位で決めておきます。
Q24. ドライブの整理から始めるべきですか。
「探せない」と「AIが答えられない」は、だいたい同じ原因です。
ただ、全部を整理しようとすると終わりません。
参照させたい20〜50件に絞って、まず1部門で成立させます。

出てくるものの質がそろわない
成果物まわりの相談です。
個人の能力差の話に見えて、そうではないことが多いところで、3問あります。
Q25. 成果物の質がバラバラです。
原因は個人の能力差ではなく、型が配られていないことです。
フォーマットを先に決めて、プロンプトの作法を7つ以内で配り、提出前のレビューを工程として足します。
Q26. 「AIが書いた感」を消す方法は。
具体を入れる、結論を言い切る、分量を制限する。
この3つでほとんど消えます。
一般的な記述ばかりが並ぶのは、書き手が素材を渡していないからです。
Q27. 計算を任せて大丈夫ですか。
直接計算させないのが原則です。
数式やスクリプトを作らせて、それを実行する形にすると、再現性が出ますし、条件を人が検証できて、繰り返しも使えます。
経営に数字で説明できない
最後は測り方と説明の話です。
ここで止まっている組織が、いちばん多いかもしれません。
3問あります。
Q28. 効果を数字で説明できません。
KPIを3層で持っておく必要があります。
活動量、削減時間、金額と事業インパクト。
経営に出すのは3層目だけで、活動量は出しません。
多くの組織は1層目しか持っていない状態です。

Q29. 削減時間はどう測ればよいですか。
業務ごとに原単位を一度決めて、実行回数を掛けるのが現実的です。
「議事録作成は1回40分削減」のように置いて、3割ほど保守的に見ておきます。
精度そのものよりも、一度決めた原単位を変えないほうが大事です。
Q30. 経営から「その時間で何が増えたのか」と問われます。
削減時間だけだと、帳簿の上の数字で止まってしまいます。
「浮いた時間で何が増えたか」を1つ添えます。
商談数でも、提案数でも、着手できた新しい業務でもかまいません。
1つでも具体があると、報告の説得力が変わります。
詰まる場所は、たいてい体制の設計にある
30問を並べてみると、答えの多くが体制の設計に行き着きます。
誰が担当するのか、時間をどう確保するのか、判断は誰がするのか、更新は誰が持つのか。
技術や道具の問題ではないわけです。
体制の設計は、推進担当だけでは決められません。
部門長との合意や業務分掌への追記、場合によっては評価への反映まで必要になるからです。
型を作る作業も、社内だけだと進みにくいところがあります。
同じ社内の人が聞き取ると「言わなくても分かること」が省かれてしまいますし、型化のための時間そのものが、日常業務のなかでは優先順位を上げにくいです。
私たちが提供しているAIコンサルは、外部のAI推進室としてこの間に立つ形をとっています。
業務の棚卸しから型化、体制の整備まで一緒に進めています。
どこかの質問で止まっている、という状態でしたら、進め方の参考になるかもしれません。
30問に共通しているのは、意識ではなく仕組みの話
30問を通して共通しているのは、次の3つです。
まず、「意識の問題」に見えることの多くが、実は仕組みの問題です。
使われない、記録が残らない、実行されない。
どれも仕組みの側で解けます。
次に、順序を守ると結果が変わります。
ルールより実態把握を先に置き、確認を減らす前に元に戻せる状態を作り、型化より前に何を型にするかを判断します。
もうひとつが、数字を先に決めておくことです。
何を成果とするか、どう測るか、動かなかったときにどうするか。
ここを決めていないと、出した報告が判断に使われないまま終わってしまいます。

詰まる場所は、たいてい体制の設計です。
まずは自社がいまどの段階にいるのかを、AI推進の進め方の10段階で確認してみるところからかなと思います。
すぐ使える業務アプリが300以上
開いてそのまま使えて、AIで自社用にも直せます。15の分野から、やりたい作業で探せます。業務アプリを見る
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
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