組織のAI活用をAIポータルと伴走支援で加速

AI推進のよくある質問30。推進担当者からの相談に答える

AI推進のよくある質問30。推進担当者からの相談に答える

執筆:寺田昇平

AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事

仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。

AI推進の相談を受けていると、会社の規模も業種も違うのに、聞かれることが驚くほど似ています。

「ルールはどこまで作ればいいのか」「配ったのに使われない」「効果を経営にどう説明するか」。
このあたりは、ほぼ毎回出てきます。
同じ段階で、同じ壁に当たっているからだと思っています。

今回はそのよくある質問を30問並べて、ひとつずつ短く答えていきます。
掘り下げている回にはリンクを付けているので、気になったところから読んでいただければと思います。

30問を並べてみると、詰まる場所の多くは技術や道具ではなく体制の設計にあることを示した図。誰が担当するのか、時間をどう確保するのか、判断は誰がするのか、更新は誰が持つのか。体制の設計は推進担当だけでは決められない

何から手をつけるかで迷う

まずは入口の話です。
何から始めるか、どのくらいで成果が出るか、推進の体制をどう置くか。
このあたりを4問見ていきます。

この4問と同じ問いを、原因ごとの対策と進める順番から考えたものは、AI推進は何から始めるかのページにまとめています。

Q1. 何から始めるべきですか。
現場で実際に何が使われているかを掴むところからです。
ルールを先に作ってしまうと、実態に合わないものができあがって、結局は守られません。
経費精算とネットワークの記録を見れば、いまどのサービスが使われているかはだいたい分かりますし、用途まで分かれば正規の手段に置き換えられます。

全体の順序はAI推進の進め方で扱っています。

Q2. どのくらいの期間で成果が出ますか。
業務が1つ楽になるまでが1か月、組織として変わるまでが1年くらいの感覚です。
ただ、その前に「成果」を何とするかを決めておかないと、いつまでも終わりません。
利用者数は成果ではないので、削減できた時間か、これまでやれていなかったことができるようになったか、で見ます。

Q3. 推進担当は専任にすべきですか。
兼務のままだと、金額や事業インパクトまで数字を作る段階で必ず詰まります。
専任を置けないのであれば、対象を主要な3部門に絞ってしまうほうが現実的です。
網羅するより、続けて出せるほうが効きます。

AI推進担当者の情報収集と経営判断で詳しく扱っています。

Q4. 経営が乗り気でない場合、どうすればよいですか。
資料で説明しても、触ったことがない人には桁の感覚が伝わりません。
「AIは情報漏えいが怖い」という理解のまま止まっている状態に予算の話を重ねても、まず通らないです。
短い時間でいいので、実際に触ってもらう機会を作るほうが速いと思います。

ルールは「どこまで」で必ず揉める

ルールの相談は、たいてい「どこまで縛るか」で止まります。
禁止の範囲から無料版の扱い、個人情報、誤情報への備えまで、6問で見ていきます。

Q5. ルールはどこまで作るべきですか。
「使ってよい範囲」を先に書いて、そのあとに「入れてはいけない情報」を続ける順序をおすすめしています。
禁止事項の一覧から始めると、読まれないまま終わります。

詳しくは生成AIの社内ルールの作り方で書いています。

Q6. 全面禁止という選択はありますか。
あまり効かないと思っています。
禁止しても利用がなくなるわけではなく、報告が上がらなくなるだけなので、結果として事故の発覚が遅れます。

シャドーAI(野良AI)とはで扱っています。

Q7. 無料版を使わせてはいけない理由は。
入力内容の扱いが既定で有効になっているものが多く、管理者側から誰が何を入れたのかを把握できません。
退職時にアカウントを止めることもできないので、業務で使う前提に置けるのは法人版からになります。

AIに入力した情報は学習される?

Q8. 有料版の予算を経営に通す論点は。
払っているのは機能ではなく、「学習に使われない契約上の扱い」と「管理者が把握できる状態」です。
機能比較の話から外して、リスク管理と内部統制の話に置き換えると通りやすくなります。
そこに削減時間の試算を1つ添えます。

Q9. 個人情報を含む業務では使えませんか。
「氏名を入れない」というルールを1つ置くだけで、かなりの部分は解決します。
経歴や内容だけでも処理はできますし、それなら個人は特定できません。

詳しくは個人情報を含む文章をAIに渡す前にで書いています。

Q10. 誤情報が出ることへの対策は。
「気をつける」では防げないので、見る場所を決めてしまいます。
誤りは出典・数値・固有名詞・日付・言い回しの5か所に集まるので、そこだけを5分で見る型を配ると事故が減ります。

AIの誤情報が集まる5か所、出典、数値、固有名詞、日付、言い回しを示した図。気をつけるでは防げないので、見る場所を決めて、そこだけを5分で見る型を配ると事故が減る

AIの回答をファクトチェックする5分の型

配ったのに使われない

いちばん相談が多いのがここです。
研修を増やしても解決しないので、どこで人が止まっているのかを5問で分解します。

Q11. 配ったのに使われません。
最初の数回でつまずいて、そのまま放置されている人がかなりの割合でいます。
原因は7つほどのパターンに分かれていて、前半の5つは手順書で自己解決できます。
残る「使い道が分からない」と「手間のほうが大きい」の2つだけは、業務との接続を設計しないと解けません。

「AIは使えない」と離脱する人を減らす

Q12. 研修を増やせば定着しますか。
研修を増やしても、あまり変わらないと思います。
離脱の原因は入口の知識不足ではなく、最初の数回でつまずいたまま放置されることなので、そこを検知して一次対応する仕組みのほうが効きます。

Q13. 「使い道が分からない」への対処は。
同じ職種の人の使い方を3つ見せるのが、いちばん効きます。
汎用の活用事例集を配っても、そこから自分の業務に当てはめる作業が残ってしまうからです。

職種別AI活用まとめ

Q14. プロンプトが書けない人がいます。
「話せば作れます」と伝えるところから始めます。
指示文そのものをAIに書かせてもいいですし、口頭で説明して整えさせる形でも作れます。
「書けない」を能力の問題にしてしまうと、その人はもう使わなくなります。

プロンプトを書けない人を置いていかない

Q15. 誰が使っているか把握できません。
アンケートでは分かりません。

使っていない人は、そもそも回答しないからです。

部門長に聞いても「たぶん使っていると思います」という答えが返ってきます。
利用の実態そのものを見る手段を用意する必要があります。

配ったのに使われないときの5つの悩みと対処を左右に並べた図。配ったのに使われない、研修を増やす、使い道が分からない、プロンプトが書けない、誰が使っているか分からない。研修を増やすより、つまずきの検知と職種別の事例が効く

業務に寄せた途端に難しくなる

ここからは業務側の話です。
ネタ出しから棚卸し、フロー図、何で作るかの判断まで、5問あります。

Q16. AI化するネタが見つかりません。
「AI化できるものを挙げて」と聞いても出てきません。
業務名・工程・頻度・所要時間・関与人数・使っているもの・面倒だと感じる工程の7項目を書いてもらって、AI化できるかどうかの判断は推進側で引き取ります。

AI化する業務が見つからない

Q17. 業務の棚卸しが進みません。
個人に配って持ち帰ってもらうと、まず出てきません。
部門単位で30分のミーティングを取って、その場で書いてもらうほうが早いです。
複数人で話すと重複も見つかります。

Q18. 業務フロー図を書く時間がありません。
録画から起こすと、2〜3時間かかっていたものが30分になります。
話しながら操作してもらうと、判断の理由まで入るので、でき上がるものの質も変わります。

業務フロー図が書けない問題

Q19. 自動化すべきかの判断基準は。
頻度が週1回以上あるか、例外が3割以下か、保守できるか。
この3つで見ています。

「自動化できるか」ではなく「自動化する価値があるか」で判断するところが分かれ目です。

AIによる業務自動化の全体像

Q20. 「何で作るか」の議論が毎回起きます。
判断基準を先に決めてしまうのが、この段階で最初にやることです。
人が起動するか自動か、正確な計算が必要か、条件分岐が複雑か。
この3問でだいたい決まります。

業務の自動化で判断する2つの場面を左右に並べた図。自動化する価値があるかは、頻度が週1回以上か、例外が3割以下か、保守できるかの3つで見る。何で作るかは、人が起動するか自動か、正確な計算が必要か、条件分岐が複雑かの3問で決める

業務自動化はどのツールで作る?

社内の情報がAIに渡っていない

ナレッジ側の話です。
読ませたのに答えない、という相談が多いところで、4問あります。

Q21. 社内資料を読ませたのに答えません。
そのPDFが画像として保存されている可能性があります。
文字を選択できるかどうかを見れば10秒で判定できますし、原本のWordやExcelを探すのがいちばん早い対処です。

社内PDFがAIで読めない理由

Q22. 参照させる資料は多いほうがよいですか。
逆だと思っています。
古い版や下書き、個人のメモが混ざると、答えの信頼性が落ちます。
正式版と最新版だけを入れます。

社内ナレッジをAIで活用する方法

Q23. 古い情報で答え続ける問題への対策は。
規程を改訂する手続きのなかに、「参照先の更新」を1項目として入れておくのが確実です。
更新のオーナーは、文書単位ではなく業務単位で決めておきます。

古い情報で答えるAIを作らない

Q24. ドライブの整理から始めるべきですか。
「探せない」と「AIが答えられない」は、だいたい同じ原因です。
ただ、全部を整理しようとすると終わりません。
参照させたい20〜50件に絞って、まず1部門で成立させます。

社内資料をAIに答えさせる前に確かめる4点を示した図。文字を選択できるか、古い版や下書きが混ざっていないか、規程の改訂手続きに参照先の更新が入っているか、参照させる資料を20〜50件に絞って1部門で成立させたか

ファイルサーバをAIの参照先にする

出てくるものの質がそろわない

成果物まわりの相談です。
個人の能力差の話に見えて、そうではないことが多いところで、3問あります。

Q25. 成果物の質がバラバラです。
原因は個人の能力差ではなく、型が配られていないことです。
フォーマットを先に決めて、プロンプトの作法を7つ以内で配り、提出前のレビューを工程として足します。

AIアウトプットの品質を組織でそろえる

Q26. 「AIが書いた感」を消す方法は。
具体を入れる、結論を言い切る、分量を制限する。

この3つでほとんど消えます。
一般的な記述ばかりが並ぶのは、書き手が素材を渡していないからです。

「AIが書いた感」を組織として許容しない

Q27. 計算を任せて大丈夫ですか。
直接計算させないのが原則です。
数式やスクリプトを作らせて、それを実行する形にすると、再現性が出ますし、条件を人が検証できて、繰り返しも使えます。

AIに計算させない

経営に数字で説明できない

最後は測り方と説明の話です。
ここで止まっている組織が、いちばん多いかもしれません。
3問あります。

Q28. 効果を数字で説明できません。
KPIを3層で持っておく必要があります。

活動量、削減時間、金額と事業インパクト。
経営に出すのは3層目だけで、活動量は出しません。

多くの組織は1層目しか持っていない状態です。

AI推進のKPIの3層を示した図。1層目は活動量、2層目は削減時間、3層目は金額と事業インパクト。経営に出すのは3層目だけで、活動量は出さない。多くの組織は1層目しか持っていない

AI推進担当者の情報収集と経営判断

Q29. 削減時間はどう測ればよいですか。
業務ごとに原単位を一度決めて、実行回数を掛けるのが現実的です。
「議事録作成は1回40分削減」のように置いて、3割ほど保守的に見ておきます。
精度そのものよりも、一度決めた原単位を変えないほうが大事です。

Q30. 経営から「その時間で何が増えたのか」と問われます。
削減時間だけだと、帳簿の上の数字で止まってしまいます。

「浮いた時間で何が増えたか」を1つ添えます。
商談数でも、提案数でも、着手できた新しい業務でもかまいません。
1つでも具体があると、報告の説得力が変わります。

詰まる場所は、たいてい体制の設計にある

30問を並べてみると、答えの多くが体制の設計に行き着きます。
誰が担当するのか、時間をどう確保するのか、判断は誰がするのか、更新は誰が持つのか。
技術や道具の問題ではないわけです。

体制の設計は、推進担当だけでは決められません。
部門長との合意や業務分掌への追記、場合によっては評価への反映まで必要になるからです。

型を作る作業も、社内だけだと進みにくいところがあります。
同じ社内の人が聞き取ると「言わなくても分かること」が省かれてしまいますし、型化のための時間そのものが、日常業務のなかでは優先順位を上げにくいです。

私たちが提供しているAIコンサルは、外部のAI推進室としてこの間に立つ形をとっています。
業務の棚卸しから型化、体制の整備まで一緒に進めています。
どこかの質問で止まっている、という状態でしたら、進め方の参考になるかもしれません。

30問に共通しているのは、意識ではなく仕組みの話

30問を通して共通しているのは、次の3つです。
まず、「意識の問題」に見えることの多くが、実は仕組みの問題です。
使われない、記録が残らない、実行されない。
どれも仕組みの側で解けます。

次に、順序を守ると結果が変わります。
ルールより実態把握を先に置き、確認を減らす前に元に戻せる状態を作り、型化より前に何を型にするかを判断します。

もうひとつが、数字を先に決めておくことです。
何を成果とするか、どう測るか、動かなかったときにどうするか。
ここを決めていないと、出した報告が判断に使われないまま終わってしまいます。

30問に共通する3つを示した図。意識の問題に見えることの多くは仕組みの問題であること、順序を守ると結果が変わること、何を成果とするかなど数字を先に決めておくこと

詰まる場所は、たいてい体制の設計です。
まずは自社がいまどの段階にいるのかを、AI推進の進め方の10段階で確認してみるところからかなと思います。

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執筆:寺田昇平

AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事

仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。

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