
「AIは使えない」と離脱する人を減らす。つまずき7パターンとサポート設計
2026/08/20
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
導入から3か月経ったAI活用の利用状況を見ると、どの組織もだいたい同じ形になります。
よく使う人が2割、ときどき使う人が3割、一度触ったが今は使っていない人が5割です。
この5割の中には「自分の業務には合わなかった」という人もいますが、多くは最初の数回でつまずいて、そこで止まった人です。
本人の中では、もう「生成AIは使えない」という結論になっています。
この離脱を減らすサポート設計を、ここから整理していきます。

ここで扱うのは使い始めてからの支えなので、使い始める前に配る社内ルールの組み立ては生成AIの社内ルールの作り方。ガイドラインの項目サンプルと守れる環境に譲ります。
離脱は能力差ではなく、つまずきの放置で起きる
離脱の原因を「リテラシーの差」で説明すると、対策はいつも研修になります。
ただ、研修を増やせば、この5割は本当に減るのでしょうか?
研修を増やしても離脱は減りません。
実際に起きているのは、忙しい業務の合間に試して期待したものが出てこず、誰に聞けばいいかも分からない、という単純な話です。
つまずいた時点で誰かが5分手を貸せば続いた人が放置されて離脱している、というのがこの5割の実態だと考えています。
つまり対策は教育ではなく、つまずきを検知して一次対応する仕組みになります。
現場で起きるつまずきを分類すると、原因の違う7つに収まります。
まず多いのが依頼の書き方が足りない場合で、何を出せばよいか読み取れず期待と違う答えが返るので、対処は全社共通のプロンプト作法を決める。押さえるべき7つの基本にまとめてあります。
次が断られた場合で、判断を求めた、扱えない内容だったといったケースについては、切り分けと回避策をAIが「できません」と返す時。回避策を社内ナレッジにするで扱っています。
もうひとつが応答が止まる・途中で切れる場合で、長い依頼や大きなファイルで起きやすく、一次対応はAIの応答が止まる・途中で切れる。一次対応を現場で完結させるにまとめました。
ファイルが読めない場合もあり、容量や形式、画像として保存されたPDFといった原因があります。
分量ならファイルが大きくてAIに読めない。分割の作法を社内標準にする、形式なら社内PDFがAIで読めない理由。2種類のPDFと文書資産の棚卸しが対応します。
事実と違う答えが返ることもあり、本人がそれに気づいて信用しなくなるので、検証の型はAIの回答をファクトチェックする5分の型。全社の標準動作にするにあります。
残る2つが、自分の業務での使い道が分からない場合と、使う手間のほうが大きいと感じた場合です。
操作はできるのに何に使えばいいかが思い浮かばず、職種ごとの標準セットは職種別AI活用まとめ。営業・マーケ・人事・経理・法務の使いどころで扱っています。
前の5つは技術的なつまずきなので、対応すればそのまま解決します。
問題はこの2つで、道具の使い方ではなく業務との接続が設計されていないことが原因です。
職種ごとに最初にAIを使う業務を3つに絞って配る対策は、AIが社内に浸透しない原因と対策で書いています。
パターン別の一次対応と、アンバサダー制で分散する
一次対応は、誰が引き受ければいいのでしょうか?
技術的な5つのほうは、答えさえ用意しておけば現場で完結します。
依頼の書き方が足りない場合は、4要素を書き足させます。
誰向けか、何のためか、どんな形式で、どのくらいの分量か。
この4つを聞くだけで、大半が解決します。
また、断られた場合は判断を求める形をやめて材料を求める形に変える置き換えを渡すだけです。
応答が止まる場合とファイルが読めない場合は、分割と形式変換の手順を渡します。
ここは手順書があれば自己解決できる領域です。
事実と違う答えが返った場合は、検証の5分の型を渡します。
あわせて、事実の確認は人がやる工程として残るという前提を伝えます。
ここを説明しないと、「間違えるものは使えない」で終わってしまいます。
残る「使い道が分からない」と「手間のほうが大きい」は別扱いです。
一次対応では解決しないので、その人の業務を一緒に見る必要があります。
ここは推進担当か部門の作り手が15分付き合う。
この15分が、最も効く投資だと考えています。

一次対応を推進チームが全部引き受けると、量に潰れます。
「詳しい人に聞けば解決する」状態が固定されて、組織としての解決力も育ちません。
現実的な形は、部門ごとに一次対応の担当を1人置くことです。
呼び方はアンバサダー、推進担当、世話役、何でも構いません。
置くときのコツは3つあり、まず選ぶ基準は面白がって触るかどうかです。
役職やITスキルより、勝手に試している人のほうが向いています。
次に、役割を明示して上司にも伝えます。
「業務時間の一部をこれに使ってよい」と上司が知っている状態にする。
ここを曖昧にすると、本人の善意の持ち出しになって続きません。
もうひとつが、答えられない質問は上げてよいと伝えることです。
全部を解決する責任を負わせると、引き受ける人がいなくなります。
7パターンの一次対応だけを持ってもらい、それ以外は推進チームに上げてもらいます。

2つの難しいつまずきへの対処と、離脱の把握
「使い道が分からない」は、手順書だけで解決できるでしょうか?
離脱の最大要因はここにあるため、別に手を打ちます。
効くのは、同じ職種の人の使い方を見せることです。
「営業の人はこう使っている」という具体例が3つ見えると、人は自分の業務に当てはめられます。
逆に効かないのが、汎用的な活用事例集です。
「議事録の要約に使えます」と書かれていても、自分の会議に当てはめる作業が残ります。
自社で、同じ職種の人が使った例であることが条件です。
だから推進担当がやるべきは、事例を作ることではありません。
社内で既に使われている例を集めて、職種別に並べることです。
手間のほうが大きいという判断は、正しいこともあります。
月に1回しかやらない作業に依頼文を工夫する時間をかけるのは、確かに損だからです。
否定せずに、対象業務を変える方向で対処し、頻度が高く繰り返しの多い業務のほうに当てます。
ここは業務の棚卸しの話に戻ります。
もう1つの対処が、依頼文を書く手間そのものをなくすことです。
よく使う依頼はボットや定型文として用意しておき、現場は貼るだけにします。
「毎回考える」状態を残していると、この判断は妥当なままです。
この声は、現場の問題ではなく用意する側の問題として受け取ったほうが前に進みます。

あわせて、一次対応で終わらせず答えた内容を蓄積して教材に変える循環も作っておきます。
相談と回答を1箇所に残して、月に一度、同じ質問が何件来ているかを見るだけです。
3件以上同じ質問が来ているものは、配布物が足りていません。
ここから手順書や依頼文のテンプレートを作ります。
逆に来ていない質問への対策は、優先度を下げます。
この循環があると、教材が現場のつまずきに沿って育ちます。
推進担当が想像で作った研修資料より、実際の質問から作った手順書のほうが精度が高いのは当然かと思います。

そのためには、誰が離脱しているかを先に掴む必要があります。
ここが推測だと、施策が的を外します。
見るのは3つあり、ひとつが月1回以上使っている人の割合です。
配った人数ではなく、実際に利用している人数のほうを見ます。
次が最終利用日からの経過で、30日以上使っていない人がどの部門にどれだけいるかが離脱の実数になります。
もうひとつが用途の偏りで、使われている業務の種類が数個に留まっているなら「使い道が分からない」というつまずきが広く残っています。
部門別に見ないと、全社平均でうまくいっている部門の数字に隠れてしまいます。
離脱が集中している部門があれば、そこに一次対応の担当がいないか、上司が使っていないかのどちらかです。

よくある失敗
まず挙がるのが、対策として研修を増やすことです。
つまずきの放置が原因なので、入口の教育をいくら厚くしても離脱は減りません。
次が、推進チームが全部の質問を引き受けることです。
量に潰れますし、組織の解決力も育ちません。
アンバサダーを役職で選ぶのも、よくある失敗です。
選ぶ基準は面白がって触るかどうかで、役職者はそもそも時間が取れません。
最後が、「使い道が分からない」と「手間のほうが大きい」の2つを、技術的なつまずきと同じ扱いにすることです。
ここは手順書では解決しないので、業務を一緒に見る15分が必要になります。
誰がつまずいているかを、推測ではなくデータで見る
では、誰が離脱しているかを、どう掴むのでしょうか?
ここまで書いてきた対策は、どれも離脱している人が分かっている前提のものです。
多くの組織で、ここが分かっていません。
アンケートを取っても、使っていない人は回答しません。
部門長に聞いても、「たぶん使っていると思います」という答えが返ってきます。
この状態で施策を打つと、既に使っている人に向けた研修を増やすという、的の外れた対策になってしまいます。
私たちが提供している組織のAIポータル「AI Portalize」では、部署・職種・グレードごとの利用率と前期比が集計の手間なしで出るので、止まっている部署から先に手を打てます。
誰が離脱しているかを掴むところから始めたい場合は、考え方の参考になるかもしれません。
つまずきを放置しないことが、離脱を防ぐ
「生成AIは使えない」という評価は、能力差ではなく最初の数回のつまずきが放置されたことから生まれます。
だから対策は研修ではなく、つまずきの検知と一次対応です。
つまずきは7パターンあり、前の5つは手順書で自己解決できます。
一方で「使い道が分からない」と「手間のほうが大きい」の2つは、業務との接続そのものを設計する必要があります。
一次対応は部門ごとの担当に分散し、役割は上司にも伝えて時間を確保します。
選ぶ基準は役職ではなく、面白がって触るかどうかです。
答えた内容は蓄積して、3件以上来た質問のほうから教材を作ります。
離脱の実数は部門別に見るようにします。
全社平均で見てしまうと、うまくいっている部門の数字に隠れます。
自部門で30日以上使っていない人が何人いるか、その数がそのまま次の判断材料になります。
すぐ使える業務アプリが300以上
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執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
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