
AIの応答が止まる・途中で切れる。一次対応を現場で完結させる
2026/08/03
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
推進担当のもとに来る問い合わせを分類すると、上位に必ず入るのがこれです。
「応答が止まりました」「途中で切れて続きが出ません」。
毎回、同じ確認と同じ案内を繰り返していて、この時間が推進担当の負担をいちばん削っています。
しかも内容は難しくないので、手順さえあれば現場で完結する種類の問い合わせです。
この類の問い合わせを現場で終わらせる一次対応の設計を、ここから整理していきます。
つまずき全体の分類から入りたい場合は、「AIは使えない」と離脱する人を減らす。つまずき7パターンとサポート設計のほうが先かもしれません。

同じ質問が集まり続ける構造と、原因の4分類
なぜ同じ質問が来続けるのでしょうか?
対処法が個人の経験として蓄積されるので、一度経験した人は次から自己解決しますが、その知見は共有されないため、初めて遭遇した人は毎回推進担当に聞くことになります。
組織の人数が増えるほど、この問い合わせは減りません。
もう1つの理由は、現場が原因を切り分けられない点です。
止まったのが依頼の内容か、分量か、通信かが分からないので、まず人に聞いてしまいます。
つまり必要なのは、切り分けの手順を1枚にして配ることで、原因さえ特定できれば対処はほとんど自明です。
「止まる」「切れる」の原因は、4つに収まります。
まず多いのが出力の分量が上限に達した場合で、長い回答を求めたときに起きます。
文章の途中でぷつりと終わるのが特徴で、エラーは出ません。
次が入力の分量が大きすぎる場合で、長い文書や大きなファイルを渡したときに処理が始まらない、あるいは途中で止まります。
もうひとつが処理に時間がかかっている場合で、複雑な依頼や複数の工程を含む依頼だと、止まっているように見えて実は動いています。
最後が通信または画面側の問題で、ブラウザのタブ、通信の切断、セッションの期限といったものです。
この場合は依頼を変えても再発します。
見分け方は簡単です。
文章の途中で終わっているなら出力の上限、処理が始まらないなら入力の分量、処理中の表示が出続けているなら処理に時間がかかっているだけ、エラー表示や画面が真っ白なら通信・画面側です。
原因ごとの対処と、そのまま配れる一次対応カード
原因さえ分かれば、対処はもう半分決まったといえるでしょうか?
出力の上限に当たった場合は、「続きを書いてください」と依頼すれば続きが出ます。
ただ根本的な対処は最初から分けて依頼することで、「全体を書いて」ではなく「まず構成だけ」「次に第1章だけ」と分けます。
長い成果物ほど後から直す量が増えるので、この作法を最初から使ったほうが手戻りがありません。
入力が大きい場合は渡すものを分割します。
文書なら章ごと、表なら期間ごとに分けて、分割して渡したうえで最後にまとめさせるのが基本の型で、作法はファイルが大きくてAIに読めない。分割の作法を社内標準にするにまとめてあります。
時間がかかっている場合はまず待って、次回は依頼を分けます。
複数の工程を1回で頼むと時間がかかるので、工程ごとに区切ります。
通信・画面側の場合は、画面を再読み込みする、別のタブで開き直す、時間を置く。
とはいえここは依頼の工夫では解決しないので、再現するかどうかを1回確認して、再現するなら情シスに上げます。
現場に配るのは、この形になります。
まず画面を見て、4つのどれかを判定します。
文章の途中で終わっている場合は「続きを書いてください」と送って、次回からは分けて依頼します。
処理が始まらない場合は、渡したファイルや文章を分割して渡し直します。
処理中の表示が続いている場合は2分待ち、エラー表示や真っ白な画面の場合は再読み込みするか別のタブで開き直します。
最後に1行、2回試して直らなければ連絡先に連絡すると添えて、伝えることを2つ指定します。
画面のスクリーンショットと、何を依頼したかの2点です。
A4半分に収めることが条件で、これ以上長いと読まれません。
貼る場所は業務の動線上、つまり社内のAIツールの入口ページか、よく使う共有文書の先頭です。
エスカレーション基準と、問い合わせログの棚卸し
どこで諦めて人に聞くべきか、その線引きはできているでしょうか?
一次対応カードで最も重要なのが、この線です。
ここを決めていないと自力で30分粘る人と1回で聞いてくる人に分かれてしまい、前者は時間の無駄なうえ後者だと問い合わせも減りません。
決めるのは「2回試して直らなければ連絡」という形です。
回数で決めるのがコツで、「しばらく試して」だと人によって解釈が変わってしまいます。
上げるときに伝えることも指定し、画面のスクリーンショットと何を依頼したかの2つがあれば、一次対応する側は原因を特定できます。

例えば「動きません」だけの報告が来ると、確認の往復で余分に時間がかかってしまいます。
質問の型そのものを配る話はエラーはスクショで見せる。現場が自走できる質問の型を配るで扱っています。
配っただけで終わらせず、効いているかも見ます。
見るのは同じ内容の問い合わせが減っているかで、減っていなければカードが読まれる場所に置かれていないと判断し、置き場所を変えます。
新しい種類の問い合わせが出てきていないかも見ます。
使われ方が広がると、これまでなかったつまずきが出てくるので、3件以上来たものはカードに追記します。
この更新を月1回、10分でやるだけでカードが陳腐化しません。
こうした蓄積を組織のナレッジとして扱う設計は社内ナレッジをAIで活用する方法。ツール導入・RAG・手持ちのAIの選び方で整理しています。

棚卸しの副産物として、どの部門から問い合わせが来ていないかも分かります。
来ていない部門は、うまくいっているか、そもそも使われていないかのどちらかです。
問い合わせの数から運用の状態を読む見方は社内ルールの運用でも使えるもので、生成AIの社内ルールの作り方。ガイドラインの項目サンプルと守れる環境でも、ルールが効いているかを問い合わせの面から確かめています。
予防としての「分けて依頼する」作法
事後の対処より、効くものがあるとしたら何でしょうか?
長い依頼をしない、大きいものを一度に渡さない。
これだけで、出力の上限・入力の分量・処理時間の3つはほとんど起きなくなります。
だから利用開始時の案内に、この1行を入れておきます。
「長い成果物は工程に分けて依頼してください。大きいファイルは分割して渡してください」
これは不具合対策としてだけでなく、成果物の品質にも効きます。
工程に分けて依頼すると途中で軌道修正できるので、最後まで出てから作り直すという事態が減ります。

制約への対処として教えると後ろ向きに聞こえるので、品質を上げる作法として伝えるのがおすすめです。
そしてこの施策の効果は、現場の解決速度が上がることだけではありません。
推進担当の時間が空くほうが、実は大きいのです。
同じ質問への対応に月に数時間使っている状態は推進の仕事を圧迫しますし、この時間は成果として見えないので忙しさだけが残ります。
空いた時間は、手順書では解決しないつまずきに回します。
例えばAIから「できません」と返ってきたときの回避策を考えるような領域で、このあたりはAIが「できません」と返す時。回避策を社内ナレッジにするで扱っています。
ここは推進担当しか対応できない領域です。
一次対応を現場に降ろす目的は手を抜くことではなく、担当の時間を難しい問題に集中させるためだと考えたほうが設計しやすいと思います。

よくある失敗
まず挙がるのが、カードを共有フォルダに置いてしまうケースです。
探しに行く場所に置くと読まれないので、業務の動線上に貼ります。
次が、エスカレーション基準を決めていない点です。
粘る人と即聞く人に分かれて、どちらも非効率になります。
項目を増やすことも失敗のもとです。
網羅性を求めるほど読まれなくなるので、4つの切り分けに絞ります。
最後が、問い合わせが減ったことを確認しないことです。
配って終わりにすると、効いていないカードがそのまま放置されます。
こうした問い合わせ対応の設計も、当社のAI伴走支援では、現場の担当者と一緒に手を動かしながら、社内研修や推進体制づくりの一部として進めています。
同じ問い合わせは、カードと基準と月次の棚卸しで減る
「止まる」「切れる」の問い合わせは、原因が4つに切り分けられます。
出力の上限・入力が大きい・処理に時間・通信や画面側で、見分け方は画面を見るだけで決まります。
一次対応カードはA4半分に収めて、業務の動線上に貼ります。
エスカレーションは「2回試して直らなければ」と回数で決めて、上げるときはスクリーンショットと依頼内容を添えさせます。
月1回、同じ問い合わせが減っているかと新しい種類が出ていないかを見て更新します。
予防としては「工程に分けて依頼する」を、不具合対策ではなく品質を上げる作法として最初に配ってしまうのが近道です。
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執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
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