組織のAI活用をAIポータルと伴走支援で加速

エラーはスクショで見せる。現場が自走できる質問の型を配る

エラーはスクショで見せる。現場が自走できる質問の型を配る

執筆:寺田昇平

AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事

仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。

現場がツールを自分で作れるようになると、うれしい変化のすぐ後ろに別の問題が来ます。

AIのエラーについて、相談が「動きません」の一言だけで上がってくることです。
何を作っていて、どこで何が起きたのかが書かれていないので、返信でまず状況を聞きます。
説明が足りずにもう一度聞き直すはめになり、実はこの往復にいちばん時間がかかっています。

ということで、現場が自分で解決できるようになる質問の型を整理していきます。
つまずき全体の分類は「AIは使えない」と離脱する人を減らす。つまずき7パターンとサポート設計にまとめてあります。

「動きません」だけの報告を、目的・状況・試したこと・画面の4要素で書く質問の型に変える図。4要素のうち目的が最も抜けやすく、最も効くので一番上に置く

「動きません」が来るのは、書式を渡していないだけ

その報告、画面さえ見えれば一発で分かるのに、と思ったことはないでしょうか?
現場ではよくある光景です。

報告が雑になるのは、悪意でも手抜きでもなく、単純に何を伝えれば解決するのかを知らないだけです。
技術的な作業に慣れている人は、エラーの文面とその直前の操作が手がかりになると知っています。

一方で慣れていない人には、エラーの文面が意味不明な英語に見えます。
「これは伝える価値のない情報だ」と判断して、省いてしまうわけです。
もう一つ心理的な理由もあって、長い説明を書くと相手に手間をかけて申し訳ない、という配慮が働きます。

だから結果として、短く「動きません」になります。
つまり必要なのは、伝える内容のほうを指定することで、書式さえ渡せばこの問題はほぼなくなります。
いちばん効くのは画面をそのまま見せること、つまりスクリーンショットを撮って渡すだけの話です。

理由は3つあります。
まず、文字で説明すると情報が落ちます。
エラーの文面、止まっている行、設定の値が、書き写す過程で抜けていきます。

次に、再現の手間がなくなります。
画面が見えれば、聞く側は状況を頭の中で組み立てる必要がありません。
もう一つが、AI自身にその画面を読ませられることで、これが最大の理由です。

エラーの画面をそのまま見せて「この画面から原因と対処を教えてください」と聞くと、多くの場合そのまま答えが返ってきます。
人に聞く前の一次対応が、現場だけで完結するわけです。
「スクショを撮って見せる」という習慣は、他人に聞くための作法である前に自分で解決するための作法になり、この順番で伝えると定着も早くなります。

スクリーンショットで画面をそのまま見せることが効く3つの理由。最大の理由は、AI自身にその画面を読ませて原因と対処を聞けること。ほかに、文字で説明すると情報が落ちること、聞く側が状況を組み立てる手間がなくなること

質問の4要素と、いちばん抜ける「目的」

そろえる情報のうち、目的の欄を一番上に置いているでしょうか?
置いていないなら、ここから直すのが早道です。

スクリーンショットに加えて、そろえる情報は3つあり、合わせて4要素になります。

状況、目的、試したこと、画面の4つです。
状況は、何をしていたときに起きたか、どの操作の直後かを書きます。

目的は、そもそも何をしようとしていたかで、ここが抜けると聞く側はエラーを直す方向にしか答えられません。
「やりたいこと」さえ分かれば、別の手段を提案できます。
試したことは何を試してどうなったかで、書いておけば同じ確認を繰り返さずに済みます。

画面は、そのままスクリーンショットです。
この4つを埋めてもらうだけで、解決率と速度が変わります。
AIに聞くときも人に聞くときも同じ型なので、覚えるのは1つで済みます。

4要素のなかで、実務でいちばん抜けるのは目的です。
また、いちばん効くのも目的です。

例えば「この計算式がエラーになります」という相談に、式を直す答えを返す。
ところが本当にやりたかったことを聞くと、別の方法のほうが簡単だった、というケースがよくあります。

だから型の中で、目的を書く欄をいちばん上に置きます。
「エラーの内容」から書き始める形にすると、目的が最後に回って省略されるからです。

目的は業務の言葉で書いてもらいます。
「集計したい」ではなく「毎月の部門別の売上を1枚の表にしたい」。
具体的であるほど、別の手段が見つかります。

3行の注記で、過信を防ぐ

その対処、そのまま実行して大丈夫でしょうか?

型を配るときに、必ず一緒に伝えておきたい点があります。
返ってきた対処が正しいとは限らないという点です。
特に注意が必要なのは3つです。

まず、設定を変えるように言われる場合で、権限や共有範囲を変える対処が返ってくることがあり、言われたとおりに変えると公開範囲が広がる可能性があります。
だから設定変更を伴う対処は、実行前に一声かけるルールにします。
権限そのものの設計は内製環境の権限設定をどう整えるか。安全と速度を両立させるで扱っています。

次に、動いたけれど中身が違う場合で、エラーが消えたからといって計算結果まで正しいとは限りません。
エラーの解消と結果の正しさは別の確認なので、AIの回答をファクトチェックする5分の型。全社の標準動作にするの工程を通します。

もう一つが存在しない機能や手順で、もっともらしく書かれた手順が実際には存在しないことがあります。
手順どおりに進めて途中で詰まったら、その手順自体を疑います。
断られている場合の切り分けはAIが「できません」と返す時。回避策を社内ナレッジにするで扱っています。

AIから返ってきた対処が正しいとは限らない3つの場面と、それぞれの扱い。設定を変えるよう言われたら実行前に一声かける、動いても結果の正しさは別に確認する、存在しない手順は途中で詰まったら手順自体を疑う

この3点は、型の末尾に3行で添えます。
長い注意書きは読まれなくなるので、3行に収めます。

型を作っても使われなければ意味がないので、定着させる工夫も3つ用意します。
まず、相談窓口の入口に置きます。
チャンネルの説明欄や固定メッセージに4要素を書いておくと、投稿しようとした人の目に必ず入ります。

次に、足りない報告には型を返します。
「動きません」が来たら、答える前に型を提示して埋めてもらいます。
冷たく感じるかもしれませんが、2回やれば次から埋めて来ます。
ただ、ここで毎回聞き返して埋めてあげてしまうと、型のほうは定着しません。

もう一つが、埋めた結果が自己解決につながった例を共有する工夫です。
「4要素を書いてAIに聞いたら自分で解決した」という報告が出たら、窓口で共有します。
型が自分のためのものだと分かると、使われ方が変わります。

質問の型を定着させる3つの工夫を、場面で示した図。投稿しようとするときは窓口の入口に型を置く、足りない報告が来たら答える前に型を返す、自己解決できたらその例を窓口で共有する。毎回聞き返して埋めてあげると型は定着しない

スクショの壁と、写り込みへの配慮

スクリーンショットの撮り方、社内で説明したことはあるでしょうか?
実は多くの人が知らないまま使っています。

型を配ったあとにも残る障壁があり、地味ですが実際にはかなり多いものです。
スクリーンショットの撮り方そのものが分からない、という層です。
推進担当からすると当然の操作でも、業務でほとんど使ってこなかった人には未知の操作で、「そんなことを聞くのは恥ずかしい」と感じて聞かないまま文字で説明することになります。

だから型と一緒に、撮り方を1行添えます。
使っている端末の操作方法を書いておくだけで、画面全体を撮る方法と範囲を選んで撮る方法の2つで足ります。
また、貼り方も添えます。
チャットに貼り付ける操作、共有文書に挿入する操作まで書いて、そこで初めて型が実行可能になります。

「知っている人には不要な一行」を省かないほうがいい。
この種の配布物で、毎回学ぶところです。

画面をそのまま見せる運用には、もう一つ注意点があり、画面に写ってはいけない情報が入ってしまう点です。
取引先の名称が入った一覧、個人が特定できるデータ、社内の未公表の数値。
エラーの箇所を見せたいだけなのに、周辺の情報まで一緒に写ってしまいます。
対処は2つで、必要な範囲だけを撮ることと、該当箇所を塗りつぶすことです。

画面に取引先の名称、個人が特定できるデータ、社内の未公表の数値が写り込む問題への対処は2つ。必要な範囲だけを撮ること、該当箇所を塗りつぶすこと。範囲指定で撮れば、塗りつぶしの手間も大半は不要になる

画面全体ではなく、エラーが出ている部分だけを範囲指定して撮れば、塗りつぶしの手間も大半は不要になります。
型には「画面に取引先名や個人情報が写る場合は、必要な範囲だけを撮ってください」と1行入れておきます。
相談窓口が社内の全員から見えるチャンネルなら、特にここを明示しておきます。

写り込みの扱いは社内ルールで決める範囲とも重なるので、生成AIの社内ルールの作り方。ガイドラインの項目サンプルと守れる環境と書き方をそろえておくと、窓口での説明が食い違いません。

効き始めたかどうかは、2つの指標で見ます。

一つが確認の往復回数で、相談1件あたり何回やり取りしているか。
ここが2往復以内に収まれば、型が機能しています。

もう一つが自己解決の報告件数で、「聞こうと思ったけど自分で解決した」という報告が増えているかどうかです。
増えているなら、型が本来の目的を果たしています。

相談件数そのものは、減らなくても構いません。
むしろ増えるほうが良い状態で、詰まった人が声を上げるようになったからです。
それまで放置されて離脱していた層が、動き出しているサインです。

よくある失敗

まず、エラーの内容だけを聞いてしまう失敗です。
目的が抜けていると別の手段を提案できないので、目的を型の一番上に置きます。

次に、項目を増やしすぎる失敗です。
使用環境やバージョンまで書かせると、投稿そのものがされなくなるので、4つに絞ります。
3つ目が、足りない報告を毎回聞き返して埋めてあげる失敗で、親切ではありますがそれだと型は定着しません。

最後が、注意書きを長くしてしまう失敗です。
過信を防ぐための注記は、あくまで3行に収めます。

質問の型を配る取り組みは、私たちのAI伴走支援でも扱っていて、型を配るところから定着までを現場の担当者と一緒に進めています。

書式を渡せば、「動きません」は自走に変わる

「動きません」だけの報告が来るのは、伝えるべき内容が指定されていないからです。
書式を渡せば、それだけで解決します。

そろえるのは、目的・状況・試したこと・画面の4要素です。
4要素のなかで目的がいちばん抜けて、いちばん効くので、型の一番上に置きます。
スクリーンショットを撮る習慣は、人に聞くための作法である前に、見せて自分で解決するための作法になります。
この順番で伝えると、定着が早くなります。

設定変更を伴う対処・結果の正しさ・存在しない手順の3点を、3行の注記として添えます。

撮り方と貼り方を1行ずつ添えて、写ってはいけない情報への配慮も1行入れます。
「知っている人には不要な一行」を省かないのが、この種の配布物のコツです。

まずは相談窓口の説明欄に、この4要素を書いてみるところから始めてはどうでしょうか。

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執筆:寺田昇平

AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事

仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。

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