
生成AIの導入と活用の進め方。企業が最初に決めることと、社内に広げる順番
2026/11/03
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
生成AIの導入は、使う範囲、社内ルール、担当、効果の測り方の4つを先に決め、1つの部署で試してから社内に広げる順番で進めます。
ツールの契約より先にこの4つを決めておくと、導入したあとに「何に使っていいか分からない」「何を入れていいか分からない」で止まりにくくなります。

何から決めればよいか、他社がどこまで使っているかが分からないまま、ツールの比較から始めると、この順番が逆になります。
生成AIを導入する順番
当社では、次の順番で進めることをおすすめしています。
1. 使う業務と、使うAIを決める
2. 入れてよい情報と社内ルールを決める
3. 推進の担当と相談先を決める
4. 効果の測り方を決める
5. 1つの部署で試す
6. 使われ方を見て、ほかの部署に広げる
1から4までが最初に決める4つで、5と6が社内への広げ方です。
4つは完璧にそろえなくてよく、1つの部署で試せる程度に決まっていれば始められます。
試す期間は、目安として1〜2か月あれば、使われる業務と使われない業務の差が見えてきます。
生成AIとは何か、企業で何に使われているか
総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」の本編は、生成AIを「文章、画像、プログラム等を生成できるAIモデルにもとづくAIの総称」としています。
一言でいうと、プロンプト(AIに送る指示の文)を入れると、文章や画像、表、簡単なプログラムなどを作って返してくれるAIです。
会社で使われる代表的なものには、ChatGPT、Gemini、Claude、Microsoft Copilot などがあります。
総務省の「令和7年版 情報通信白書」では、「メールや議事録、資料作成等の補助」に生成AIを業務で使っていると答えた割合が、日本で47.3%でした。
ほかにも、会社で使い始めやすいのは次のような業務です。
メールや文書の下書き
会議の議事録の要約
長い資料の要約と翻訳
企画のアイデア出し
表のデータの整理
どれも、文章が中心で、AIの答えが少し違っていても人が読んで直せる業務です。
最初はこうした業務から始め、慣れてきたら部署ごとの仕事に広げていく形が、無理なく進めやすいと考えます。
他社の生成AIの活用状況
導入を検討する会社からは、「他の会社は、どこまで生成AIを使っているのか?」という声が上がります。
情報通信白書は、日本、米国、ドイツ、中国の4か国の企業へのアンケートをもとに、企業の生成AIの活用を整理しています。
日本で「積極的に活用する方針」か「活用する領域を限定して利用する方針」を定めている企業の比率は、2024年度の調査で49.7%となり、2023年度の調査の42.7%から増えました。
一方で、調査したほかの国と比べると、日本は引き続き低い傾向にあるとしています。
また、企業規模別では、中小企業で「方針を明確に定めていない」という回答が多く、約半数を占めています。
何らかの業務で生成AIを利用していると答えた割合は、日本で55.2%でした。
生成AIの導入にあたっての懸念は、「効果的な活用方法がわからない」が最も多く、次いで「社内情報の漏えい等のセキュリティリスク」が挙がっています。
活用の効果としては、日本では「業務効率化や人員不足の解消につながる」が最も多く挙げられています。
懸念の上位2つは、使う範囲と社内ルールを先に決めておけば、どちらにも答えられるものです。
活用率の数字は調査によって聞いていることが違うので、比べるときの見方は日本企業の生成AI活用率は何%か。調査ごとの数字の違いと読み方にまとめています。

使う業務と使うAIの決め方
最初に決めるのは、どの業務で、どのAIを使うかです。
業務は、毎週くり返していて、文章を読んだり書いたりする時間が長く、間違いがあっても人が確かめて直せるものから選びます。
例えば、営業の議事録の要約や、問い合わせへの返信の下書きは、この条件に当てはまりやすい業務です。
逆に言うと、数字の誤りがそのまま社外に出る見積もりや、人の評価に直接使う業務は、最初の範囲から外しておくと安心です。

使うAIは、個人の無料アカウントではなく、会社が契約した法人向けのプランにします。
入れた内容を学習に使わない扱いや、管理者が利用者を管理できる機能は、法人向けのプランで用意されていることが多いためです。
部署の業務を一覧にして優先順位を付ける手順は、業務のAI化の進め方。棚卸しから優先順位付け・実装までの手順にまとめています。
生成AIの社内ルールと、入れてよい情報
次に、AIに入れてよい情報と、使うときの決まりを社内ルールにします。
AI事業者ガイドラインは、事業活動の中でAIを使う会社を「AI利用者」と呼び、使う側にも守ってほしい事項を挙げています。
具体的には、AIの出力の精度とリスクの程度を理解したうえで使うことや、個人情報をAIに不適切に入力しないよう注意を払うことなどです(総務省の掲載ページ)。
最初の社内ルールには、次のような項目があれば足ります。
使ってよいAI
入れてよい情報と、入れてはいけない情報
AIの答えを確かめる人
社外に出すときの確認
困ったときの相談先
項目を増やしすぎず、社員が1枚で読める長さにします。
入れてよい情報は、「そのまま入れてよい」「名前などを伏せれば入れてよい」「入れない」のように段階で分けると、現場で迷いにくくなります。
個人情報や契約に関わるところの最終的な判断は、社内の法務や情報システムの担当に確認してください。

項目の見本と作る順番は生成AIの社内ルールの作り方。ガイドラインの項目サンプルと守れる環境に、情報漏洩や誤った回答など、生成AIのリスクを種類ごとに分けた一覧は生成AIのリスクとセキュリティ対策。情報漏洩や誤った回答など、会社で起きる6つのリスクへの備えにまとめています。
推進の担当と相談先の決め方
続いて決めるのは、導入を進める担当と、社員が困ったときに聞ける相談先です。
推進の担当は、まず1人に決めます。
ただ、その人が全部を抱える形にはしません。
契約と設定は情報システムの担当、権利や個人情報に関わる相談は法務、使い方の相談は各部署の窓口の人、のように分けておきます。
窓口の人は、その部署でAIをよく使っている人に頼むと、同じ部署の人が気軽に聞けるようになります。

社員向けの研修は、ツールの操作の説明だけで終えず、自分の業務で使ってみる時間を入れるほうが、そのあとも使われやすいと考えます。
とはいえ、最初から全社員を集める必要はなく、試す部署の人だけで始めて構いません。
生成AIの活用の効果の測り方
最後に、導入の効果を何で見るかを決めておきます。
見るものは、次の3つで足ります。
使っている人の数
使われている業務
1件あたりにかかる時間の変化
使っている人の数は、部署の人数で割ると利用率になり、広がり方が分かります。
時間の変化は、試す部署で、使う前と使い始めてからを同じ方法で測ります。
例えば議事録の要約なら、会議が終わってから議事録を送るまでの時間を、使う前の2週間と使い始めてからの2週間で比べる、という測り方があります。

経営に説明するときの数字の組み立て方は、ピラーのAI推進担当者の情報収集と経営判断。リサーチとROIの設計に書いています。
今の使い方で十分かどうかが判断できないときの見方は、「今のAI活用で十分かわからない」のページにまとめています。
試した部署から次の部署への引き継ぎ
1つの部署で試すと、よく使うプロンプトや、そのために作ったGem、Canvasアプリが手元に残ります。
次の部署に広げるときは、ゼロから始めてもらうより、それを渡して自分の業務に合わせて直してもらうほうが、立ち上がりが早いと考えます。
組織のAIポータル「AI Portalize」では、Gem・Gemini Notebook・スキル・HTMLアプリ・GASアプリとナレッジ記事を登録して全社で探せるようにでき、部署ごとの利用状況も見られます。
最初の1か月は、1つの部署で4つを決めて試す
生成AIの導入で止まりやすいのは、ツールを契約したあとに、使う範囲もルールも決まっていない状態です。
使う業務とAI、入れてよい情報、担当と相談先、効果の測り方の4つが1つの部署の分だけでも決まっていれば、試しながら直していけます。
まずは、生成AIを使ってみたい業務を1つの部署で3つ挙げ、その業務で入れてよい情報を決めるところから始めてください。
参照した情報(2026年10月30日に確認)
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執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
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