
全社共通のプロンプト作法を決める。押さえるべき7つの基本
2026/09/10
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
同じAIを使っているのに、出てくる結果の質が人によって違います。
「うまく使える人」と「うまく使えない人」に分かれていき、うまく使えない側の人は、AIそのものが役に立たないと判断してしまいます。
ところが、この差は才能ではなく、あくまで作法の差であって、組織として配れるものです。
今回は、プロンプトのコツを全社共通の作法として決める話を書いていきます。
品質を組織でそろえる全体像はAIアウトプットの品質を組織でそろえる。標準化とレビュー体制にまとめてあります。

精度の差は、才能ではなく作法の差
なぜ差が出るのでしょうか?
うまく使える人は試行錯誤のなかで作法を身につけていて、しかも本人はそれを言語化していません。
「なんとなく、こう書くとうまくいく」ところで止まっていて、うまく使えない人はその作法を知らず、誰も教えていません。
「研修で『プロンプトのコツ』を聞いたところで、身につきません」。
抽象的な説明では、自分の業務にまで落ちてこないからです。
だから、7つに絞ったうえで演習込みで配るのが、この記事で書いていく対処です。
「20項目のプロンプト集は、作りません」。
そんなものを配ったところで、誰も覚えられないからです。
演習の題材を受講者自身の業務の資料にする理由は、AI研修が定着しない原因と対策でも取り上げています。
この作業に使える業務ツール「プロンプト強化」は、詳しいページでできることと使い方を紹介しています。
押さえるべき基本は7つに絞る
まず、項目はなぜ7つなのでしょうか?
これ以上増やすと、そもそも覚えられないからです。
まず役割と前提を与えることで、「あなたは〇〇の担当者です」「読み手は〇〇です」といった形で、これがないと一般論になります。
次に出力の形式を指定することで、表かリストか文章か、列名や項目数まで指定します。
さらに段階に分けて考えさせることで、複雑な業務は工程に分けて、そこに人が判断する工程を挟みます。
続いて参照してよい情報を限定することで、「この資料の範囲で答えてください」と伝え、一般論が混ざるのを防げます。
また分からないときは分からないと言わせることで、「情報がない項目は『不明』と書いてください」と添え、埋め合わせを防げます。
6つ目に複数案を出させて選ぶことで、1案だけだと比較できませんし、選ぶことで自分の判断が入ります。
最後に否定形で指示しないことで、「専門用語を使わないで」より「中学生にも分かる言葉で」と書きます。
このなかでいちばん見落とされているのが、分からないと言わせることと否定形で指示しないことの2つです。

「分からないと言わせる」がいちばん事故を防ぐ
なぜこの一言が効くのでしょうか?
指定しないままだと埋め合わせで書かれてしまい、もっともらしいので疑う手がかりがありません。
特に危険な場面は3つで、存在しない出典が挙がる調査、推計値が確定値として出てくる数値、一般的な内容が自社の内容として出てくる制度や規程の確認です。
だから指示のなかに、「情報がない項目は『不明』と書いてください。推測で埋めないでください」の一行だけ入れておきます。

「不明が多い場合は、渡した情報のほうが足りない」と分かります。
精度が低いのではなく、単に渡した材料が足りていないからです。
さらに、出典を求める指示とセットで使い、出典が示されないものは使わない運用にしておきます。
否定形はなぜ効かないのでしょうか?
「〜しないで」式の指示は、何をすべきかを伝えていないからです。
「専門用語を使わないで」と言われても、どの水準の言葉なら良いのかが分からず、解釈が分かれてしまいます。
「中学生にも分かる言葉で」であれば、水準が明確になります。
だから、望む状態のほうを書くのが原則です。
例えば「長くしないで」は「800字以内で」に、「曖昧に書かないで」は「数字と固有名詞を入れて」に、「一般論を書かないで」は「渡した素材の内容だけで書いて」に言い換えます。

この言い換えの練習が、勉強会ではいちばん効きます。
参加者に自分の指示を書いてもらい、そこにある否定形を望む状態に言い換えてもらいます。
否定形の言い換えそのものは「〜しないで」が精度を下げる。伝わる指示の書き方を教育に組み込むにまとめてあります。
配布はA4で1枚、演習込みの30分で定着させる
配布の設計は、どこまで作り込めばよいのでしょうか?
A4で1枚、7項目を各2行にまとめます。
各項目には、説明の文章ではなくそのまま使える例文を添えておきます。
さらに悪い例と良い例を並べて置いておきます。
「〜しないで」と「〜してください」を並べると、対比としていちばん分かりやすいからです。
また、あくまで自社の業務での例にします。
一般的な例を並べても、自分の業務にまでは結びつかないからです。
配る場所は業務の動線上にして、社内のAIツールの入口ページやよく使う共有文書の先頭といったところにします。
また新入社員と異動者の受け入れ資料にも入れておくと、入口に置き続けているだけで2年もすれば社内の標準になります。
配るだけでは定着しないので、演習も入れます。
時間は30分で、最初の10分が7項目の説明、各項目を1分ずつ、そこに自社の例を挙げていきます。

次の10分は、自分の指示を書いてもらう時間です。
「自分の業務でよくやる依頼を1つ書いてください」と伝え、7項目のうち何が入っているかを確認してもらいます。
次の5分は、書き直してもらう時間です。
抜けている項目を足して、否定形を言い換えます。
最後の5分は、書き直した指示で試してもらい、結果の違いを見る時間です。
結果の違いを体感してもらうのが、いちばん効きます。
説明を聞くより、自分の指示が改善して結果が変わることを実際に見るほうが定着するからです。

さらに、書いてもらった指示を共有してもらいます。
他の人の書き方が見えるようになると、それ自体が参考になります。
フォーマットの指定そのものは成果物のフォーマットを先に決める。指示のばらつきを構造でなくす、段階に分ける設計は複雑な業務をAIに任せる指示設計。段階に分けて考えさせるにまとめてあります。
定着は、指示の項目数と差し戻しの回数で測る
定着を測る指標は、3つあります。
書かれた指示の中の項目数、5項目以上入っていれば作法が身についています。
差し戻しの回数が減っていれば、結果の質が上がっています。
「AIが使えない」という声が減っていれば、作法が届いています。
項目数を測る方法は、月に数件、実際に使われている指示を見せてもらい、そこで項目数を数えます。
また、保存されている指示のほうも見ます。
ボットとして保存されている指示があるなら、そこからも確認できます。
さらに、うまくいっている人の指示を集めておき、それを社内に共有していきます。
これが、いちばん効率的な教育になると思います。
追加の作法は、必要になったら足していく方針にします。
良い例を渡すこと、「このような形にしてください」として実例を1〜2行渡すほうが、抽象的な説明より確実です。
また制約を明示すること、「使える予算は〇円」「期間は〇か月」で、制約がないと現実的でない案が出てきます。
さらに誰に向けたものかを指定すること、「役員向け」「現場担当者向け」といった読み手の想定です。
これらは7項目のほうには含めず、基本を7つに絞ったうえで応用は別に置いておきます。
さらに部門別の追加項目のほうも持っておきます。
営業なら顧客の情報の渡し方、経理なら数値の扱いのように、部門固有の作法は部門別に持ちます。
共通の前提をデフォルト化する話は毎回同じ前提を書かせない。組織の共通前提をデフォルト化する、表の出力の作法は一覧や数値の出力を信頼できる形にする。AIの表出力の作法にまとめてあります。
つまずきやすい失敗は7つあります。
20項目のプロンプト集を作る、分からないと言わせる項目を入れない、否定形で指示する、配るだけで演習をしない、一般的な例を使う、一度の研修で終わらせる、うまくいっている人の指示を集めない、の7つです。
どれも、7つに絞り、不明と書かせる一行を入れ、望む状態を書き、自分の指示を書き直して試し、自社の例にし、入口に置き続け、良い指示を集めて共有すれば避けられます。
良い指示は、共有されて初めて他の人が真似できる
ここまで書いてきたとおり、7項目の作法そのものは配れます。
ただ、作法を知っていても良い指示を書けるとは限りません。
いちばん効率的な教育は、うまくいっている人の指示をそのまま使うことだと思います。
作法の説明を聞くより、実際に動いている指示のほうがはるかに速いからです。
ところが「良い指示は、共有されていません」。
うまく使っている人の指示は、その人の手元にあるだけで誰も見ることができません。
さらに、改善されてもそれが共有されません。
使いながら精度が上がっていった指示が、その人だけのものになってしまうからです。
必要なのは、良い指示が保存されて他の人が探して使える状態になっていることで、誰の指示がどれだけ使われているかまで見えることです。
私たちが提供している組織のAIポータル「AI Portalize」では、うまく使っている人の指示をAIボットにして登録すると全社に公開され、使われた回数や使った人数がその人に返ってきます。
作法は配ったが良い指示が広がらない状態で止まっている場合は、考え方の参考になるかもしれません。
精度の差は配れる。7つに絞って、良い指示を共有する
精度の差は才能ではなく、あくまで作法の差です。
その作法は、組織として配ることができます。
項目は7つに絞ります。
役割と前提を与える、出力の形式を指定する、段階に分けて考えさせる、参照してよい情報を限定する、分からないときは分からないと言わせる、複数案を出させて選ぶ、否定形で指示しません。
このなかでいちばん事故を防ぐのが、分からないと言わせる一言です。
指定しないと埋め合わせで書かれますし、もっともらしいので疑えません。
否定形のほうは、望む状態を書くのが原則になります。
例えば「長くしないで」であれば「800字以内で」に言い換え、この練習が勉強会ではいちばん効きます。
配布はA4で1枚、7項目を各2行で、例文を添え、悪い例と良い例を並べ、自社の業務での例にします。
勉強会は30分で、自分の指示を書いて、書き直して、試します。
結果の違いを体感してもらうのが、いちばん効きます。
測るのは、書かれた指示の項目数、差し戻しの回数、「AIが使えない」という声の3つです。
項目数は、5項目以上入っていれば身についています。
そして、うまくいっている人の指示を集めて社内に共有します。
これが、いちばん効率的な教育になります。
まずは自分がよく使う指示を1つ書き出して、7項目のうち何が入っているかを確認してみてください。
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執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
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