
複雑な業務をAIに任せる指示設計。段階に分けて考えさせる
2026/09/09
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
複雑な業務をそのまま任せると、出てくるものが浅くなります。
「この課題について企画を作って」と依頼すれば、どこにでもある一般的な企画が出てきて、使えません。
そこで「AIには複雑な仕事は無理だ」という結論になりますが、原因のほうは実は依頼の仕方にあります。
今回は、プロンプトを段階的に分けて複雑な業務を任せる指示設計について書いていきます。
品質を組織でそろえる全体像はAIアウトプットの品質を組織でそろえる。標準化とレビュー体制にまとめてあります。

複雑な仕事を丸投げすると、精度が落ちる
なぜ浅くなってしまうのでしょうか?
理由は3つあります。
企画を作るには現状の分析・課題の特定・打ち手の選択・実行の設計が必要なのに、それが同時に処理されると複数の判断が同時に走り、それぞれが浅くなります。
出てきたものが違っていた場合にどの段階で外れたのかが分からず、途中で軌道修正できないまま、結局は全部作り直しになります。
依頼した人の頭の中にある前提が文字になっていないので、暗黙の前提が伝わらないことも理由のひとつです。
ただ、これは人に依頼する場合もまったく同じで、新しく入った人に「企画を作って」とだけ言って期待どおりのものが出てくることは稀で、途中で確認しながら進めるのが普通です。
対処そのものは単純で、工程に分けてそれぞれを別に依頼するだけです。
要点は「人が判断する工程を、あいだに挟むこと」で、基本の形は3段階です。
材料を出させる段階では判断はさせず、分析・抽出・整理までにとどめます。
選択肢を出させて人が選ぶ段階は、暗黙の前提を言語化する工程になっています。
そのうえで、選んだ方向で作らせます。
なかでも段階2が最も重要で、人が自分で選ぶことで成果物のほうに自分の判断が入ります。
この形だと確認が2回入り、段階1で材料の抜けが分かり、段階2で方向のずれが分かるので、最後まで作らせてから作り直すよりはるかに速くなります。
段階処理そのものはAIの精度が低いと言われる前に。段階処理を現場の標準手順にするにまとめてあります。
業務の分解と指示の分解は、同じ作業を指す
考え方の整理も、ここで書いておきます。
業務を分解する作業と、指示を分解する作業は、実は同じことを指しています。
業務の分解とは、その業務がどういう工程で成り立っているかを見ることです。
指示の分解とは、その業務をどう分けて依頼するかを決めることです。
業務の分解ができていないと指示の分解もできず、逆に指示を分解しようとすると業務の分解のほうが進みます。

どう分けるかを考える過程で業務の構造そのものが見えてくるためで、指示の設計は業務の言語化の練習になるという側面があります。
つまり、これこそが、組織にとっての価値になります。
指示を分解していった記録が、そのまま業務の手順の言語化にもなっているからです。
手順そのものを資産化する話は仕事の手順をAIに覚えさせる。社内の「型」を資産化する考え方にまとめてあります。
分解の例は、企画・分析・レビューの3つに表れる
具体的な分解の例を、3つ書いておきます。
まずは企画の立案です。
段階1では現状の材料のほうを出させ、「この課題について、いま起きている事実を整理してください。数字があるものは数字で」という形で、判断や打ち手は求めません。
段階2では打ち手の選択肢のほうを出させ、「この事実から、考えられる打ち手を5案挙げてください。各案について、必要な工数と想定される効果を添えてください」という形にしたうえで、人が選びます。
5案から2案に絞る段階で、自社の事情が入ります。
段階3では選んだ案のほうを企画書にし、この形にすると企画の中身に自分の判断が入り、質問されたときにも答えられます。
1段階で作らせた企画書は、書いた本人が説明できません。
次が分析の場合です。
段階1ではデータのほうを整理させ、「このデータについて、集計の結果と、前期との差分を整理してください」という形にし、集計そのものは数式のほうでやります。
段階2では気になる点を挙げさせ、「この結果で、注目すべき点を5つ挙げてください。理由も添えてください」という形にしたうえで、人が選びます。
5つから2つに絞ることで、ここで事業の文脈が入ります。
段階3ではその2点について深掘りさせますが、そこで返ってきた要因は確定した原因ではないので、あくまで仮説として扱います。
この形にすると分析そのものが深くなり、1段階で「分析してください」と依頼すると、表面的な指摘ばかりが並びます。
最後がレビューの場合です。
段階1では観点を出させて人が観点のほうを選び、5つから3つに絞るか、あるいは自社の観点を追加します。
段階2では観点ごとに指摘させ、「この3つの観点で、それぞれ指摘を3件挙げてください」という形にします。
段階3では、直す・直さない・保留の3つから人が対応を判断します。
段階1は1回やれば次からは省略でき、観点が固まったら保存して使い回す形が、多くの業務で使えます。

手順書は、業務ごとに1枚、3段階までに収める
配布の設計としては、汎用の手順書ではなく業務ごとに1枚の形にします。
書くのは、段階ごとの指示文と、人が判断する箇所の明示、段階の数の3つです。
段階ごとの指示文は、そのまま貼って使える形にしておきます。
人が判断する箇所は「ここで選んでください」の一言を明示しておくのが要点で、書いておかないとそのまま次の段階に進んでしまい、意味がなくなります。
段階の数は3段階が基本で、4段階以上にはしません。
5段階もある手順書はまず使われないので、細かくしたくなっても3つに収めます。
段階が4つ以上必要になる業務は、業務そのものが単純に大きすぎるので、業務のほうを分けます。
フォーマットを先に決める話は成果物のフォーマットを先に決める。指示のばらつきを構造でなくす、プロンプトの作法そのものは全社共通のプロンプト作法を決める。押さえるべき7つの基本にまとめてあります。

段階処理が効かない場面もある
この進め方の限界についても、見ておきます。
効かないのは3つの場合です。
参照させる情報がない場合は、段階1の時点でそもそも材料が出てこず、これは資料の側の問題になります。
求めているものが判断そのものである場合は、「この契約を受けてよいか」といった依頼で、判断の材料を出させるところまでが範囲になります。
もちろん、単純な業務の場合は、形式の変換や短い要約など、そもそも分ける必要がありません。
なかでも単純な業務の見極めが重要で、すべての業務を分解する必要はなく、分解という作業そのものにもコストがかかります。
判断の目安は「1回で聞いて、満足する結果が出るかどうか」で、出るなら分けず、出ないなら分けます。
分量の規格化そのものは報告書・議事録の分量を規格化する。読み手の時間を守るにまとめてあります。

段階に分ける指示の組み立て方は、私たちのAI伴走支援でも社内研修で扱い、現場の担当者と一緒に手を動かしながら身につけてもらっています。
精度は、丸投げではなく段階分けで決まる
精度は、何によって決まるのでしょうか?
丸投げではなく、段階に分けているかどうかで決まります。
複雑な業務を丸投げすると、複数の判断が同時に走り、途中で軌道修正できず、暗黙の前提も伝わらないので、出てくるものが浅くなります。
対処は3段階で、材料を出させ、選択肢を出させて人が選び、選んだ方向で作らせるという並びです。
なかでも段階2が最も重要です。
業務の分解と指示の分解は同じことなので、指示を分解しようとすると業務の分解も進み、その記録がそのまま業務の言語化になります。
分解の例は、企画・分析・レビューの3つで、いずれも途中に人が選ぶ段階を挟みます。
手順書は業務ごとに1枚にして3段階までに収め、人が判断する箇所をはっきり明示しておきます。
すべての業務を分解するわけではなく、「1回で聞いて、満足する結果が出るかどうか」で判断します。
まずは自部門でよくやる業務を1つ選んで、3段階の指示文を書いてみてください。
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執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
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