組織のAI活用をAIポータルと伴走支援で加速

ファイルサーバをAIの参照先にする。ドライブ整理はAI活用の前提工事

ファイルサーバをAIの参照先にする。ドライブ整理はAI活用の前提工事

執筆:寺田昇平

AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事

仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。

GoogleドライブのようなクラウドストレージをAI活用の参照先にできると、できる幅が一段変わります。
「先月の○○社向けの提案書はどこにあるか」「この製品の仕様が書かれた資料を出してほしい」、こうした問いに答えられるようになるからです。

ただ、実際に試すと、期待どおりの結果が返ってこない場面が出てきます。
関係のないファイルが返る、最新版ではないものが出る、そもそも見つからない。
原因はほぼひとつで、格納の状態が整っていないだけです。

この前提工事を、順番に整理していきます。
参照先そのものの設計は社内ナレッジをAIで活用する方法。ツール導入・RAG・手持ちのAIの選び方にまとめてあります。

ファイルが探せなくなる4つの原因と、人とAIそれぞれに起きることを左右に並べた図。ファイル名が内容を表していない、同じ資料が複数の場所にある、フォルダの階層が深い、最新版がどれか分からない

「探せない」と「AIが答えられない」は原因が同じです

人が探せないファイルはAIも見つけられないだけの話なのですが、ここを分けて考えている組織はかなり多いです。
では、探せないファイルはなぜ増えるのでしょうか?
理由は主に4つあります。

まず、「提案書_最新_v3_修正版.pptx」のような名前ではファイル名が内容を表しておらず、人が見ても中身が分からないので、AIにも判断できません。
次に、同じ資料が複数の場所にあると、どれが正なのか分からなくなり、人は「たしかこっち」と勘で選びますが、AIは全部を等価に扱います。

また、フォルダの階層が深いのも原因で、6階層下にあるファイルは人も探せませんし、参照範囲の設定も難しくなります。
もうひとつは最新版がどれか分からない点で、更新日で判断できないものや、似た名前のファイルが並ぶ状態がこれにあたります。

つまり、整理はAIのための特別な作業ではなく、人が探せる状態にすることが、そのまま精度になります。
この位置づけで社内に伝えると、受け取られ方が変わります。
「AIのために片付ける」ではなく「元々やるべきだった整理」として伝えると、協力が得やすくなります。

フォルダ構造を整えるなら、権限の確認も同時に動かします

整理でやる項目は4つあり、優先順位の順に見ていきます。

まず、正の場所を1つに決めるのが最優先で、同じ資料が複数の場所にある状態を解消できるため、ここがいちばん効きます。
個人のフォルダに置かれたコピーが参照されると、古い内容がそのまま返ってくるからです。
個人フォルダから共有領域へ移す話は個人フォルダの業務データを共有領域へ。AI活用の前提整備で扱っています。

次に、ファイル名に内容と日付を入れ、「20260901_A社向け提案書」のような形にして、新しく作るものから命名の規則を適用します。
過去分を全部やる必要はなく、参照頻度の高いものだけ直せば足ります。

また、階層を浅くし、3階層以内を目安にすると、参照範囲を設定するときの漏れも防げます。
もうひとつは完成版と作業中を分けることで、下書きや途中の版を混ぜないよう、作業中のものは別フォルダに入れる規則を作ります。
正の場所を1つに決めることと、完成版と作業中の分離、この2つが精度に直結し、ファイル名と階層は時間があれば手を付ける範囲です。

ドライブ整理の4項目を優先順位で示した図。最優先は正の場所を1つに決めること。次に精度に直結するのが完成版と作業中の分離で、ファイル名に内容と日付を入れることと、階層を3階層以内にすることは時間があれば手を付ける

整理と並行して、権限も確認します。
ここは順序が重要で、参照させる範囲はその人が見てよい範囲と一致していなければなりません。
全社のドライブを参照先にして誰でも使える状態にすると、権限で守られていた情報に別の経路でたどり着けます。

確認するのは3つあります。
まず、参照する人によって範囲が変わる構成になっているかどうかです。
使う人の権限に応じて見える範囲が変わる仕組みか、参照先が固定かは、使っている仕組みによって違うので確認が必要です。

次に、参照範囲に閲覧が限られるフォルダが含まれていないかどうかで、人事や経営会議の資料、未公表の計画が該当します。
もうひとつは過去に権限が広く設定されたままのフォルダがないかどうかで、一時的に共有したまま戻していないものが、たいてい見つかります。
自主監査の進め方は「リンクを知っている全員」共有を自主監査する。AI活用と情報統制にまとめてあります。
ただ、整理の作業中に権限が変わることもあり、フォルダを移動すると継承される権限が変わるので、移動の前後で確認する工程を入れておきます。

整理と並行して確認する権限の3点。参照する人によって範囲が変わる構成か、閲覧が限られるフォルダが参照範囲に含まれていないか、過去に広く設定したままのフォルダがないか。フォルダを移動すると権限が変わるので、移動の前後で確認する

現場に丸投げすると止まる。300名の企業ではこう進めました

「各部門でドライブを整理してください」という依頼を出しても、現場はまず動きません。

理由は3つあり、まず基準がないと判断できないためで、何をどう整理すればよいのか分からないからです。
次に、優先順位がなく、全部やろうとすると終わらないので着手されません。
もうひとつは効果が見えないことで、整理しても業務が楽になった実感が湧かないからです。

だから、推進側が用意するのは3つです。
まず、命名と階層の規則を1枚で配り、判断せずに従える形にします。

次に対象を絞り、「全部」ではなく「AIに参照させたい20〜50件」にするという、ナレッジ整備と同じ考え方です。
もうひとつは先に1部門でやって効果を見せることで、整理した部門で「探す時間が減った」「AIが答えるようになった」という結果が出れば、他の部門も動き出します。
部門横断の一斉整理はたいてい成功せず、1部門で成立させてそこを事例にするほうが早いです。

各部門に整理を依頼しても現場が動かない3つの理由と、推進側が用意する3つを左右に並べた図。基準がないので規則を1枚で配り、優先順位がないので対象を20〜50件に絞り、効果が見えないので先に1部門でやって効果を見せる

ある会社で、営業部門から着手したときの流れを書いておきます。
起点は、過去の提案書を再利用したいという要望でした。
営業部門の共有フォルダには5年分の提案書が入っていましたが、フォルダは担当者名で分かれ、ファイル名は「提案書_修正版」「提案書_最終」が並ぶ状態でした。
担当者本人でも、2年前のものは探せないという状況でした。

やったのは、まず正の場所を決めることでした。
担当者別のフォルダから年度と業界で分けたフォルダへ移し、対象は過去2年分に絞って、それ以前はアーカイブとして別に置きました。
ファイル名は「年月日_顧客名_提案書」に統一し、作業は営業事務の担当者が2週間かけて実施しました。

あわせて権限も確認し、過去に一時共有したまま権限が広くなっていたフォルダが3件見つかり、これを戻しています。
整理の副産物ではありますが、実質的にはこちらのほうが重要な発見でした。

結果として、過去の提案書を参照し「この業界向けの提案で使った切り口」を出せるようになりました。
また、予想外の効果として、新任の営業が過去の提案を自分で探せるようになったことのほうが評価されています。
この事例で示唆的なのは、AIのための整理として始めたものが人の業務改善として評価されたことです。
社内への伝え方としては、後者を前面に出したほうが協力を得やすいと思います。

従業員300名の会社の営業部門の事例。5年分の提案書が担当者名のフォルダに入り、名前も不ぞろいで探せない状態から、営業事務が2週間かけて正の場所を決めて整理した。権限の確認で広いままのフォルダが3件見つかり、評価されたのは新任の営業が自分で過去の提案を探せるようになったこと

整理が済むと、それまで測れなかったものも見えてきます。
まず資料の再利用率で、過去の提案書がどれだけ参照されているかを見ると、上がっていれば営業の準備時間が短縮されています。
次に探す時間で、実測は難しいのでアンケートで「資料を探すのに困ることがあるか」を聞き、整理の前後で比べます。

3つ目は古い資料の割合で、参照先に含まれる資料の最終更新日の分布を見ると、鮮度の管理に移れます。
古い情報で答えるAIを作らない。社内ナレッジの更新体制のつくり方で扱っています。
最後に権限の異常で、一時共有のまま戻っていないフォルダの数を見ると、整理の過程で棚卸しされ、以後は定期的に確認できるようになります。

整理でよくある失敗は、5つに絞れます

整理がうまく進まない組織には、共通点があるのでしょうか?
大きく5つに絞れます。

まず、AIのための整理として伝えることで、現場には負担だけが見えて協力が得られなくなります。
「探せるようにする」として伝えるほうが、現場の協力を得やすくなります。

次に、全社一斉に整理を依頼することで、基準も優先順位もない状態では動かないため、1部門で成立させます。
また、正の場所を決めないまま「とりあえず名前だけ」直しても、コピーが複数あれば精度は上がりません。

4つ目は権限の確認を後回しにすることで、フォルダの移動で権限が変わるため整理と同時に確認します。
最後に、過去分を全部整理しようとすると終わらずに途中で止まるので、参照頻度の高い2年分程度に絞ります。

整理は片付けではなく、業務そのものの設計です

ここまで書いてきたとおり、この作業の中身は「どの資料を、誰が、どの業務で参照するか」を決めることです。
フォルダの構造は、その結論が形になったものにすぎません。
だから、整理を情シスや総務の作業として切り出すとうまくいかず、業務を知らない人が構造を決めても現場の探し方と合いません。

逆に、現場に丸投げすると基準がないまま各自の好みで分かれます。
必要なのは、業務の流れを整理してから、それに沿った構造を決めることです。
誰がいつ何を参照し、どの資料が正でどこで作られ、いつ更新されるのかを詰める作業は、もはや業務設計そのものです。

私たちが提供しているAIコンサルでは、業務の棚卸しと並行して、こうした前提工事の範囲と順序を一緒に決めています。
「整理から始めるべきなのは分かっているが、手が付かない」という状態なら、進め方の参考になるかもしれません。

探せる状態を作れば、精度はついてきます

「探せない」と「AIが答えられない」は、同じ原因から起きています。
人が探せる状態にすることが、そのまま精度になります。
やることは4つで、優先順位は正の場所を1つに決める、ファイル名に内容と日付を入れる、階層を3層以内にする、完成版と作業中を分ける、の順です。
精度に直結するのは、正の場所と、完成版と作業中の分離です。

権限は整理と同時に確認し、参照範囲に閲覧が限られるフォルダが含まれていないか、一時共有のまま戻っていないものがないかを見ます。
フォルダの移動で権限が変わる点にも、注意します。
進め方は、規則を1枚で配り、対象を20〜50件に絞り、1部門で成立させて事例にすることです。

全社一斉では動きません。
自部門でよく参照する資料20件を見ると、正の置き場所が1つに絞れているかが分かります。

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執筆:寺田昇平

AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事

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