
「リンクを知っている全員」共有を自主監査する。AI活用と情報統制
2026/08/21
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
AI活用を進めていくと、Googleドライブの資料をまとめて扱う場面が増えます。
参照先に指定する、フォルダごと整理する、一覧を作る。
この過程でよく見つかるのが、共有設定が広いまま残っているファイルです。
「リンクを知っている全員が閲覧できる」設定になっているもので、過去に社外の相手と共有するために変更して、そのまま戻していないという状態だと思います。
今回は、この自主監査の進め方について整理していきます。
ドライブ側の整理そのものはファイルサーバをAIの参照先にする。ドライブ整理はAI活用の前提工事にまとめてあります。

AI活用が広がると、共有設定のリスクも表面化する
なぜAI活用の文脈でこれが問題になるのでしょうか?
理由は3つあります。
ひとつが扱うファイルの量が増える点で、参照先に指定する、一覧を作る、まとめて処理するというように、これまで個別に扱っていたものを範囲で扱うようになります。
次が、参照先に含めると範囲が意図せず広がる点で、広く共有されたファイルが参照先に入っていると、その内容が本来アクセスできない人への答えに使われる可能性があります。
もうひとつが整理の過程で権限が変わる点で、フォルダを移動すると継承される権限が変わるので、整理の作業そのものがリスクになる場面もあります。
つまりAI活用は、既にあった問題を表面化させているだけの関係で、新しくリスクを作っているわけではないので、この整理を最初に共有しておくと情シスとの話が噛み合いやすくなります。
広く共有されたファイルをAIが読んでしまう経路も含めて、AIの情報漏洩の全体はAIの情報漏洩はなぜ起きるか。事例と、禁止だけに頼らない対策にまとめています。
共有設定の点検は、社内の情報をAIの参照先として整えていく作業の一部でもあり、その全体は社内ナレッジをAIで活用する方法。ツール導入・RAG・手持ちのAIの選び方で見渡せます。
そのうえで、リンク共有の何が問題なのかを具体的に見ておきます。
ひとつがリンクが転送されると追えない点で、メールで送ったリンクが転送されてさらに転送されると、誰がアクセスできるかを把握できません。
次が、設定によっては外部から検索でたどれる状態になり得る点です。
3つ目が退職者もアクセスできる点で、アカウントを停止してもリンクを知っていればアクセスできる設定のものは残るので、ここが最も見落とされます。
最後が、アクセスの記録が残らない場合がある点で、誰が見たかを後から確認できないことがあります。

問題の多くは善意で設定されている点も押さえておきます。
社外の相手と急いで共有する必要があって、個別に権限を付けるより速いから選ばれただけなので、「悪いことをした人を探す」という進め方は違うと思います。
進め方は検出・通知・是正の3段階に分ける
最初の検出では、共有範囲が広く設定されているファイルの一覧を作ります。
対象は共有ドライブと業務で使っている個人領域で、条件は「リンクを知っている全員が閲覧または編集できる」設定になっているものです。
次が通知で、ファイルの所有者ごとに分けて一覧を配ります。
全社の一覧を情シスが持って個別に指摘する形にしないことが重要で、数が多いですし、指摘される側の受け取り方も悪くなるからです。
最後が是正で、所有者自身が判断して直します。
判断は3つで、まだ必要な「そのまま」、もう不要な「社内限定に戻す」、相手を指定して「共有し直す」のいずれかを選びます。

是正を所有者に任せるのが、この設計の要点です。
情シスが一括で変更すると業務が止まるものが出ますし、「勝手に変えられた」という反発が残って次から協力が得られません。
なかでも検出と通知は自動化できますし、自動化しないと2回目が来ません。
月1回、条件で抽出して一覧を作り、載せるのは対象のファイル名・場所・所有者・共有設定・最終更新日の5つにします。
次に所有者ごとに分けて配りますが、ここが自動化の価値になるところで、手作業で振り分けると量のほうに潰れます。
この種の定期処理を何で組むかはAIによる業務自動化の全体像。手段の選び方とコスト設計で扱っています。
判断の入力欄も付けますが、「そのまま/社内限定に戻す/指定共有に変更」を選ぶだけにして、理由の記入は求めません。
前回「そのまま」と判断されたものは、一定期間は抽出から外します。
毎月同じものが上がってくると確認されなくなるからです。
とはいえ半年ごとには再確認を入れておきます。
業務の状況のほうが変わっていることがあるためです。
強制せずに進める伝え方と、例外の扱い方
伝え方をどう設計するかが、この施策の成否をほぼ決めます。
やってはいけないのが、違反として通知することだと思います。
「不適切な共有設定が検出されました」という文面は指摘された側を防御的にしますし、次から共有設定を隠す方向に動きます。
効く伝え方は3つあります。
ひとつが目的を「棚卸し」として伝える点で、「過去に共有した設定が残っていないかの確認です」と、責任を問う話ではないことを明示します。
次が過去を咎めないと明言する点で、「経緯は問いません。いま必要かどうかだけ判断してください」という一文があるだけで実施率が変わります。
もうひとつが判断を任せると伝える点で、「業務上まだ必要なものは、そのままで構いません」と強制でないことを言うとかえって是正されます。

逆に強制すると、業務に必要なものまで戻して業務が止まり、そのあと結局元に戻されることになります。
また、推進担当自身の一覧も対象にします。
自分のファイルも同じ棚卸しにかけて、そのことを伝えると効きます。
「まだ必要」と判断されるものは必ず残るので、ここの扱いも決めておかないと監査が形だけになります。
まず必要な理由を1行だけ記録しますが、選ぶだけの形を崩さないよう任意の入力欄にします。
「取引先○○社と共有中」程度で足ります。
次に期限を入れて、「いつまで必要か」を3か月・半年・期限なしから選んでもらい、期限が来たら再度上がってくる形にします。
期限なしが多い場合は別の手段を検討します。
継続的に社外と共有する必要があるなら、リンク共有ではなく相手を指定した共有か、専用の共有の場所を用意するほうが安全で、是正ではなく代替手段の提供が必要なケースになります。

報告は定例化し、つまずきも5つ数えられる
続けるための設計もしておきたいところで、頻度は月1回の検出と四半期に一度の集計になります。
検出は自動なので負荷はありませんし、集計は推進チームが四半期にまとめます。
報告する項目は3つで、広く共有されているファイルの件数の推移・是正された件数・期限なしで継続しているものの件数です。
報告先は情シスと、経営に対する定期報告の中になります。
ここはAI活用の成果ではなく、情報管理の改善として報告したほうが通りやすいと思います。
件数の推移が減っていることが、この施策の成果です。
初回に数百件見つかっても、半年後に月数件で落ち着けば運用として定着しています。
つまずきやすいのは5つです。
違反として通知すること、情シスが一括で変更すること、全社の一覧を1人が持って個別に指摘すること、例外の扱いを決めないこと、是正だけを求めて代替手段を出さないことです。
どれも、棚卸しとして伝えて、所有者に判断させて、所有者ごとに配って、理由と期限を入れて、代替手段を用意すれば避けられます。
情シスと推進チームの協働設計が必要
ここまで書いてきたとおり、この施策は情シスだけでも推進チームだけでも回りません。
情シスが持つのは、検出の仕組みと権限の設計です。
どの範囲を対象にするか、どういう設定を検出するか、代替手段として何を用意するかは、技術と統制の領域になります。
推進チームが持つのは、伝え方と現場との合意のほうです。
目的の説明、咎めない姿勢の徹底、業務上必要なケースの吸い上げを情シスが担うと、どうしても統制の文脈になってしまいます。
内製環境側の権限設計は内製環境の権限設定をどう整えるか。安全と速度を両立させるで扱っています。
どちらが主導するかを最初に決めておく必要があります。
曖昧なままだと、検出の仕組みはできたのに通知が誰からも出ない、という状態になるからです。

私たちが提供しているガイドライン策定から支援するAIコンサルでは、こうした情報管理のルール策定と、現場への展開の設計を並行して進めています。
情シスと現場の間で話が止まっている、という状態の場合は、進め方の参考になるかもしれません。
自主監査は、棚卸しとして伝えることで回る
AI活用は、既にあった共有設定の問題を表面化させているだけで、新しくリスクを作っているわけではありません。
この整理を先に共有しておくと、情シスとの話が噛み合います。
リンク共有が問題なのは、転送を追えない・検索でたどれる可能性がある・退職者もアクセスできる・記録が残らないことがある、の4点で、退職者のアクセスが最も見落とされます。
進め方は検出・通知・是正の3段階で、検出と通知を自動化して、是正は所有者に判断させます。
情シスが一括で変更すると業務が止まり、反発だけが残ります。
伝え方は「棚卸し」として、過去を咎めないと明言して、判断を任せると伝えます。
例外は理由1行と期限を入れて管理し、期限なしが多い場合は代替手段を用意します。
まずは自部門のファイルについて、共有設定が広くなっているものが何件あるか、数えてみるところから始まります。
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執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
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