
「AIが書いた感」を組織として許容しない。対外文章の品質基準を決める
2026/09/08
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
社外に出した文章を読んで、「これはAIが書いたな」と分かってしまうことがあります。
内容に誤りはなく、文法も整っているのに、読み手にはなぜか伝わってしまいます。
伝わった時点で、「手を抜いた」と受け取られます。
内容そのものが良くても、結局はその印象のほうが最後まで残ります。
今回は、AIの文章が不自然に見えてしまう原因と、その品質基準について書いていきます。
品質を組織でそろえる全体像はAIアウトプットの品質を組織でそろえる。標準化とレビュー体制にまとめてあります。

AIらしい文章は、読み手に「手を抜いた」と伝わる
まずは、何が問題になるのかを整理しておきます。
「AIらしさ」は、何が作っているのでしょうか?
手を抜いたと受け取られるのは、「自分で書いていない」との印象が残り、個別に宛てた文書ほど問題になるからです。
内容が薄く見えるのは、一般的な記述ばかりが並ぶと、その会社に固有の中身がないと判断されるからです。
もうひとつが信頼そのものが下がることで、「この会社は文章までAIに任せている」との印象がつき、業種によっては致命的になります。
AIを使うこと自体は問題ではなく、使ったことが分かる形で外に出るほうが問題になります。
だから「AIらしさを消す」のではなく、「自社の文章の基準に合わせる」と考えておきます。
「AIらしさ」を作る要素は5つあります。
「〇〇は重要です」「〇〇が求められています」といった、どこの会社でも書ける一般的な記述ばかりが並びます。
「3つのポイントがあります」と整理しすぎて、各ポイントの分量までそろえてしまう網羅ぶりも、そのひとつです。
「重要です」「検討が必要です」で止まり、結論を言い切らないまま終わることもあります。
「〜において」「〜という点で」といった同じ接続の言い回しが、何度も繰り返されます。
抽象的な記述だけで、事例と数字が入っていないこともあります。
なかでも分かりやすいのは、一般的な記述と事例のなさで、この2つは素材が入っていないことが原因です。
AIの側で素材は作れないので、渡さなければどうしても一般論になります。

文章の基準は、具体・言い切り・分量の3項目に絞る
対処のほうを見ていきます。
基準そのものは、3項目で足ります。
具体を入れるとは、数字や固有名詞、事例を書くことで、「効率化できます」ではなく「議事録の作成が60分から15分になります」のように書きます。
結論を言い切るとは、「検討が必要です」で終わらせず、「〇〇をやるべきです」あるいは「〇〇はやらないほうがいいです」と書くことです。
もうひとつが分量を制限することで、網羅的には書かず、必要な点だけに絞ります。
この3項目を守れば「AIらしさ」はほぼ消え、さらに重要なのは、これが元々あるべき文章の基準でもある点です。

AI対策ではなく良い文章の基準だからこそ、この位置づけで伝えると受け取り方が変わります。
「AIらしさを消す」ではなく、「良い文章にする」という話になるからです。
指示の書き方も見ておきます。
効かないのは「AIっぽくない文章で」「自然な文章で」といった書き方で、抽象的すぎて解釈が分かれてしまいます。
効くのは3つで、具体を入れる指示は「数字と事例を必ず入れてください。渡した素材にないものは書かないでください」、言い切る指示は「結論を1文で言い切ってください。決まり文句は使わないでください」、分量の指定は「800字以内で。網羅的に書かず、最も重要な点3つに絞ってください」です。
「使わない表現を挙げる」のが、いちばん効きます。
「〜において」「〜という点で」「〜が求められています」といった表現を具体的に指定すると、確実に反映されます。
良い例を1つ添えておくのも有効で、過去に評価が高かった自社の文章を1〜2段落そのまま渡します。
抽象的な説明より、実例のほうがはるかに確実だからです。
プロンプトの作法そのものは全社共通のプロンプト作法を決める。押さえるべき7つの基本にまとめてあります。

基準より先に、素材が要る
ここが、この施策でいちばん重要な部分になります。
素材がなければ、指示をいくら工夫しても一般論のままです。
渡す素材は4つあり、実績や削減時間、件数といった数字、顧客の状況や解決した課題といった事例、実際に語られた課題や要望をそのままの表現で残した顧客の言葉、なぜそう考えるのかという自社の考え方です。
なかでも最も抜けるのが自社の考え方で、「なぜそう考えるのか」を渡さなければ、そこは一般的な論理で書かれてしまいます。

素材が足りない箇所は、「一般論で書かれている箇所と、具体例が必要な箇所を挙げてください」という一言をAIへの工程に加えるだけで、見えるようになります。
もちろん、素材を集めるのは人の仕事です。
ここを飛ばせば、どんな指示を書いても一般論のままだからです。
フォーマットを先に決める話は成果物のフォーマットを先に決める。指示のばらつきを構造でなくすにまとめてあります。
レビューで見るのは3点だけ。「AIらしさ」は気にしすぎない
AIらしさは、すべての文書で気にするべきでしょうか?
レビューで確認するのは、3つだけで足ります。
具体が入っているかどうかは、数字と固有名詞と事例が1段落に1つはあるかで見ます。
結論が言い切られているかどうかは、「重要です」「検討が必要です」で終わっていないかで確認します。
一般論の段落が残っていないかどうかは、削っても意味が変わらない段落がないかで判断します。
なかでも効くのは最後の問いで、「この段落を削ったら、何か失われるか」を自分に問い、失われないなら削ります。
「読み手が自社について何を知ったか」もあわせて問い、何も分からないならそこに中身がないのです。
対象にするのは対外文書だけで、社内文書まで同じ基準を課すと工程そのものが重くなります。

ただ、すべての文書で「AIらしさ」を気にする必要はありません。
気にするべきは、提案書やお礼状のように個別に宛てた文書、ブログや事例のように自社の考えを述べる文書、公開される文書の3種類です。
社内の記録や定型の連絡、はじめから構造が決まっている手順書は、気にしなくてよいものです。
議事録の文体をいくら整えても、価値は増えないからです。
判断の目安は「読み手が書き手の人格を意識するかどうか」で、提案書は意識されますが議事録は意識されません。
急ぐ連絡なら、多少不自然でも速いほうを優先します。
このあたりは、その都度の判断になります。
分量の規格化そのものは報告書・議事録の分量を規格化する。読み手の時間を守るにまとめてあります。
基準は3点だけを配り、良い例を添える
現場に渡す形も、決めておきます。
配るものは、3つに絞ります。
3項目の基準として、具体を入れる、結論を言い切る、分量を制限する、の3つです。
そのまま使える指示文として、3つの指示を1つの文章にまとめて貼るだけで使える形にしたものです。
使わない表現の一覧として、「〜において」「〜が求められています」といった表現を5〜10個ほど挙げたものです。
そこに良い例も1つ添え、過去に評価が高かった自社の文章を1〜2段落だけ載せます。
対象も明示しておき、「これは対外文書向けです。社内の記録には適用しません」と書き添えます。
基準は10項目に増やさず、3つのままにします。
増やすほど、現場では使われなくなるからです。
配る場所は業務の動線上にし、提案書のテンプレートや対外文書の様式に置きます。
探しに行く場所に置くと、使われなくなります。
資料づくりの分業設計は営業資料・ホワイトペーパーを社内で回す。品質を落とさない分業設計、表記のチェックは対外文書の表記ルールを機械的にそろえる。チェックの自動化にまとめてあります。
こうした基準づくりは、私たちのAI伴走支援でも、AIガイドラインと同じくヒアリングから一緒にドラフトを作り、話し合って仕上げ、定着のための研修までを一続きで進めています。
文章は、AIらしさではなく基準の有無で決まる
文章は、何によって決まるのでしょうか?
「AIらしさ」ではなく、基準があるかどうかで決まります。
AIらしい文章が問題になるのは、「手を抜いた」と受け取られ、内容が薄く見え、信頼が下がるからです。
使ったこと自体ではなく、使ったと分かる形で外に出ることが問題になります。
「AIらしさ」を作る要素は5つで、なかでも一般的な記述と事例のなさが、最も分かりやすい原因です。
どちらも、素材が入っていないことから来ています。
基準は、具体を入れる、結論を言い切る、分量を制限する、の3項目で足り、元々あるべき文章の基準でもあるので「良い文章にする」という位置づけで社内に伝えます。
指示は抽象的な言葉ではなく、具体的な表現で書きます。
使わない表現を挙げ、良い例を1〜2段落そのまま渡すのが確実です。
素材を渡すことが、そもそもの前提になり、数字、事例、顧客の言葉、なぜそう考えるのかという4つのうち、なかでも自社の考え方が最も抜けます。
レビューで見るのは、具体、言い切り、一般論の段落の有無の3つで、もっとも効くのは「この段落を削ったら、何か失われるか」という問いです。
ただ、すべての文書で気にする必要はなく、読み手が書き手の人格を意識するかどうかで対象を選びます。
まずは、自社の対外文書で「使わない表現」を5つ挙げるとしたら、何が入るでしょうか。
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執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
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