
対外文書の表記ルールを機械的にそろえる。チェックの自動化
2026/08/31
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
対外文書のなかで、同じものが違う表記で書かれていることがあります。
「弊社」と「当社」が混在している、「お客様」と「お客さま」が同じ文書に出てくる、製品名の表記が2種類ある、といったところです。
読む側は、たいていそうした揺れに気づいています。
指摘こそされませんが、「細かいところが甘い会社」という印象のほうは残ります。
今回は、表記ゆれのチェックをツールで機械的に回す設計について書いていきます。
内製化の全体像は社内AIツールの内製化。現場が自分で作れる組織にするまでにまとめてあります。

表記ゆれは、信頼を少しずつ削っていく
なぜ問題になるのか、理由は3つあります。
同じものが違う表記で書かれていると、読む側は「これは同じものか」をいちいち判断する必要が出てくるので、単純に読みにくくなります。
表記が揺れている文書は、内容の確認のほうも甘いのではないかと受け取られます。
社内文書の場合は、表記が揺れているとそもそも検索に引っかからなくなります。
もちろん、いちばん厄介なのは「指摘はされない」というところです。
相手は気づいていてもわざわざ言ってはくれないので、改善の機会そのものがありません。
これを人が目で確認していくのは、非効率です。
表記の揺れを探す作業は、完全に機械的な作業だからです。
対外文書で見るべき項目は、次の5つに整理できます。
文字数、文体の混在(「です・ます」と「である」の混在で、複数人で書いた文書でよく起きます)、二重敬語(「お伺いさせていただきます」など、丁寧にしようとして起きるもの)、表記の揺れ、使ってはいけない表現(誤解を招く表現、断定してはいけない言い方、他社への言及の作法)です。
なかでも表記の揺れと使ってはいけない表現が、最も重要になります。
最初の3つは読みやすさの問題ですが、この2つは信頼とリスクに関わってくるからです。

そして、この5項目はどれも機械的に検出できます。
人が判断する必要は、そもそもありません。
用語集が先に決まっていないと、表記はそろわない
表記の揺れを検出するには、その手前に1つ前提が要ります。
「正しい表記」が決まっていないと、そもそもどちらに揃えるかを判断できないからです。
つまり、この施策では用語集のほうが本体になります。
用語集に入れるのは、自社の名称(正式名称・略称・英字表記と、場面ごとの使い分け)、製品・サービスの名称(正式名と使ってよい略称)、一般的な語の統一(「お客様」と「お客さま」のように、どちらでもよいが揃える必要があるもの)、使ってはいけない表現、の4種類です。
用語集は、全体で30〜50語に絞ります。
網羅的な用語集は作るのに時間がかかりますし、作ったところで使われないからです。
作り方は、過去の対外文書を3本見て、そこで揺れている語を抜き出し、どちらが正しい表記なのかを決めていくことです。
これだけで、たいてい20〜30語は出てきます。

用語集を誰が決めるのかという論点もあります。
決めるのは広報かマーケティングで、対外的な表記の方針を持っている部門です。
ただ、決めるだけにして書く人には強制せず、チェックの工程で検出してそこで直す形にします。
強制すると、現場に抵抗が生まれるからです。
そのうえで、例外もあらかじめ認めておきます。
顧客の名称を相手の表記に合わせる、業界固有の表記を使う、といったところです。
例外を認めないと、ルールそのものが無視されます。
さらに、用語集そのものへの追加の受け口も作っておきます。
「この語の表記が揺れています」という指摘を受け付ける形にしておけば、現場が実際に困った語だけが載るので、使われる用語集になります。
品質を組織でそろえる全体像はAIアウトプットの品質を組織でそろえる。標準化とレビュー体制にまとめてあります。
チェックは、書いた直後の工程に組み込む
この工程をどこに置くかが、定着するかどうかを決めます。
置く場所の候補は、書いた本人が書き終わった直後にやる形、レビューする人がレビューの前にやる形、公開の前にまとめてやる形の3つです。
なかでも最初の形が、いちばん効率的です。
書いた直後なら文脈を覚えているので、直すのが速いからです。
だから、このチェックは書く工程のなかに組み込みます。
文書のテンプレートの末尾にチェックの項目を置くか、提出のフォームにチェック欄を置いておきます。

チェックの対象にするのは、対外文書だけにします。
社内文書にまで同じチェックを課すと、工程が重くなって飛ばされるからです。
現場にそのまま渡すチェック項目は、文字数が規定内か・「です・ます」と「である」が混在していないか・二重敬語がないか・自社名や製品名の表記が用語集に沿っているか・使ってはいけない表現が含まれていないか、の5つです。
このとき、5項目はすべて「〜か」という完了形の問いで書いておきます。
行動が終わったかどうかで判断できる形にするためです。
チェック項目には、用語集へのリンクも添えておきます。
参照する必要が出てくるので、探す手間をなくしておきます。
さらに、検出された箇所は一覧の形で出します。
「ここが揺れています」という箇所が並んでいると、文書全体を読み直さずに直せます。
公開前のチェックそのものは公開前チェックをAIに任せる。機密混入・炎上・顧客視点の事前検知で扱っています。
この作業に使える業務ツール「文字数カウンター+原稿チェック」は、詳しいページでできることと使い方を紹介しています。
機械でわかるのは表記と語数まで、文脈は人が見る
このチェック、どこまで機械に任せられるでしょうか。
確実に検出できるのは、文字数・指定した語の表記・使ってはいけない語の使用です。
どれも単純な照合だけで済みます。
検出はできても判断が必要になるのは、文体の混在(引用の中は対象外にする必要があります)と、二重敬語(正しい敬語もあるため)の2つです。
逆に検出が難しいのは、文脈上の不適切さ・事実の誤り・論理の飛びで、ここから先は人が見る領域になります。
つまり、機械的なチェックは人のレビューを置き換えるものではありません。
機械的な項目を先に潰しておいて、人のほうは内容を見る役割分担にします。

「検出されなかったから問題ない」と思わせないことも大切です。
チェックの項目に「これは表記のチェックです、内容そのものの確認は別に必要です」と書き添えておきます。
資料のトンマナをそろえる話は提案資料の質を組織でそろえる。AIスライド生成の2段階プロセスにまとめてあります。
効くかどうかは、検出件数の減り方で見る
効果を測る指標も、レビューでの表記の指摘件数・検出された箇所の件数・チェックの実施率の3つに絞ります。
指摘件数は減っていればチェックが機能している証拠で、検出箇所の件数は1文書あたり何箇所かを見て減っていれば書く段階で意識されるようになった証拠、実施率は対外文書のうちチェックを通した割合で低ければ工程の置き場所に問題があります。
検出される件数が減っているなら書く人の意識そのものが変わっているとわかるので、なかでも検出された箇所の件数が最も本質的です。
それこそが、このチェックの本来の効果になります。

追加が出てきているなら現場がその用語集を実際に使っているとわかるので、あわせて用語集そのものへの追加の件数も見ておきます。
差分での確認そのものは「どこが変わった?」を消す。修正確認を差分で回す文化、現場発のツールの作り方は「あったら便利」を1日で形にする。現場発ツールの作り方と社内配布にまとめてあります。
つまずきやすいのは、用語集を作らずに表記の揺れを検出しようとする、用語集を網羅的に作る、表記を強制する、例外を認めない、社内文書にも同じチェックを課す、チェックの項目を10個以上にする、「検出されなかったから問題ない」と思わせる、の7つです。
用語集を先に決めて30〜50語に絞り、チェックで検出する形にして例外を認め、対外文書だけを対象にして5項目に絞り、内容の確認は別に必要だと明示すれば、どれも避けられます。
用語集づくりからチェックの組み込みまでを進めるなら、当社のAI伴走支援で、現場の担当者と一緒にツールの実装まで手を動かす形で支援しています。
この作業に使える業務ツール「表記ゆれチェッカー」は、詳しいページでできることと使い方を紹介しています。
表記は人でなく、工程でそろえる
表記の揺れは、読みにくい・確認の甘さの印だと受け取られる・検索できなくなる、という損失を生みます。
指摘されないので、改善の機会そのものがありません。
チェックするのは、文字数・文体の混在・二重敬語・表記の揺れ・使ってはいけない表現の5項目で、なかでも後ろの2つが最も重要です。
その前提として、自社の用語集を先に整えます。
自社の名称・製品名・一般的な語の統一・使ってはいけない表現の4種類を、30〜50語に絞ります。
作り方は、過去の対外文書を3本見て、揺れている語を抜き出すことです。
決めるのは広報かマーケティングですが、表記は強制せず、チェックの工程で検出する形にします。
そのうえで例外も認め、追加の受け口も作っておきます。
工程は、書いた本人が書き終わった直後にやる形で置きます。
書いた直後なら文脈を覚えているので、直すのが速いからです。
対象は、対外文書だけに限ります。
チェック項目は5つにして、すべて完了形の問いで書いておきます。
検出された箇所を一覧で出せば、文書全体を読み直さずに済みます。
機械的なチェックは、人のレビューを置き換えるものではありません。
機械的な項目を先に潰しておいて、人のほうは内容を見る役割分担にします。
測るのは、レビューでの指摘件数・検出される件数(減っていれば書く人の意識が変わっています)・実施率、の3つです。
まずは過去の対外文書を3本ほど見て、そこで揺れている語を抜き出してみてください。
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執筆:寺田昇平
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