
炎上対策を公開前の確認に組み込む。広報リスクをスコアで見る仕組み
2026/09/04
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
炎上対策は、「気をつけましょう」と呼びかけるだけでは防げません。
公開する前に、文章を決まった観点で点検し、問題の度合いを段階で見ます。
リスクは高・中・低の3段階で見て、広報が確認するのは高と中だけにします。
広報のリスク管理の一部として、AIの判定は確認の補助に置き、公開してよいかどうかは、人が判断します。

公開前の炎上対策を5つの手順で行う
書いた本人には、自分の文章の問題は見えにくいので、点検の工程を公開の前に置きます。
1. 公開前の文章を用意し、社外秘や個人情報を伏せる
2. 見る観点を決めて、AIに点検を頼む
3. 指摘と、高・中・低の段階を確認する
4. 段階に応じて、書き直す・広報か法務に回す・担当者が判断する
5. 直したあとにもう一度通し、結果を残して承認に回す
1つ目の「点検する文章の用意」では、社外秘の情報や、顧客の名前などの個人情報が入っていないかを確かめてから貼ります。
個人情報を含む文章の扱いは、個人情報のマスキング方法。AIに渡す前に名前や連絡先を伏せる手順を標準の工程にするにまとめています。
2つ目の「観点を決めた依頼」では、次のような文を、点検したい文章の前に置きます。
次の文章は、当社が一般に公開するブログ記事の下書きです。
炎上につながりそうな表現を、次の5つの観点で点検してください。
属性への言及/断定と優劣の表現/根拠のない主張/時事的な話題との距離/内輪の表現
問題の度合いを高・中・低で示し、該当の文と理由を添えてください。公開してよいかの判断はせず、気になる箇所を挙げるだけにしてください。
とはいえ、一度で思いどおりの指摘が出ないこともあります。
まず試し、出てきた指摘を見て、観点を足したり表現を直したりしながら、使いやすい形に育てていきます。
プロンプトの例はプロンプトテンプレートの例文集。業務でそのまま使える10本と社内での配り方、書き方のコツは全社共通のプロンプト作法を決める。押さえるべき7つの基本にまとめています。
3つ目の「指摘の確認」では、スコアの数字だけでは直しようがないので、どの文のどこが問題なのかという指摘を、必ず一緒に出させます。
4つ目の「段階に応じた動き」では、高は公開せずに書き直し、中は広報か法務に確認し、低は担当者が判断します。
5つ目の「再点検と記録」では、直した文章をもう一度通し、「この文章はこの水準で公開した」という記録を残します。
あとから検証するときの材料になるので、承認に回す前に保存しておきます。
炎上は「気をつける」では防げない
手順を決める前に、なぜ「気をつける」だけでは足りないのかを整理しておきます。
理由は3つあります。
まず、書いた本人には、自分の文章の問題が見えません。
自分が書いた意図のほうが先に見えてしまうので、読み手の側にどう見えるかを判断できないからです。
次に、社内のレビューも、書いた本人と同じ前提を共有しています。
上司や同僚も同じ業界の同じ立場の人なので、外の読み手の視点は入りません。
さらに、何が問題になるかそのものが、時間とともに変化していきます。
数年前は問題にならなかった表現が、いまは問題になることがあり、過去の経験がそのまま当てはまりません。
逆に言うと、「炎上に気をつけましょう」という研修を行っても、具体的にどこが問題なのかまでは分からないので、ほとんど効果が出ません。
そのため、人の注意に任せずに、観点を決めた点検を工程として置きます。
点検で見る5つの観点
観点は、網羅的に見ようとすると点検そのものが重くなるので、5つに絞ります。
1つ目の「属性への言及」は、性別、年齢、出身、職業、身体的特徴といったところで、言及そのものが問題になる場合と、言及の仕方が問題になる場合があります。
2つ目の「断定と優劣の表現」は、「〜は間違っている」「〜より優れている」といったもので、特に他社や他の考え方への言及が当たります。
3つ目の「根拠のない主張」は、「業界No.1」「最も効果がある」といった、根拠が示されていない優位性の主張です。
消費者庁は、2024年9月26日に公表したNo.1表示に関する実態調査報告書の概要で、No.1表示が合理的な根拠に基づかず事実と異なる場合には、実際のものより著しく優良だと一般消費者に誤認され、不当表示として景品表示法上問題になるとしています。
炎上の面だけでなく、法律の面でも、根拠の確認が要る表現です。
4つ目の「時事的な話題との距離」は、進行中の出来事や、社会的に議論のある話題で、触れ方によってリスクが変わります。
5つ目の「内輪の表現」は、社内では通じるが、外では誤解される冗談、比喩、業界の慣習などです。
そこに「自社の業界に固有の観点」を足しておきます。
業種によって、注意すべき点が違うからです。
具体的には、さらに「過去に問題になった事例」も反映しておくと、いちばん精度が上がります。
自社、あるいは同業で実際に起きた事例のことです。

公開前チェックそのものは、公開前チェックをAIに任せる。機密混入・炎上・顧客視点の事前検知にまとめています。
3段階のスコアと、迷いやすい「中」の扱い
段階の設計は、3段階あれば足ります。
高は「公開しない」で、明確に問題がある表現のことで、書き直しが必要になります。
中は「確認が必要」で、判断が分かれる可能性があるものを指し、広報か法務の確認を通します。
低は「注意点として認識する」で、問題にはならないが、より良い表現があるものを指し、判断は担当者に任せます。
3段階のうち、いちばん重要になるのが「中」の扱いです。
ここをあいまいにしたままだと、結局は確認されないまま公開されます。
そのため、「中が出た場合の手順」まで明示しておき、誰に確認するのか、いつまでに返ってくるのかを決めます。
「高」には、例外を作りません。
「急ぐので、今回だけは公開する」という判断を一度でも認めてしまうと、基準そのものが意味を失うからです。
スコアの形にしておく利点は3つあります。
「問題あり/なし」の二択より判断が細かくなり、過去の文章と比べてその文章の位置が分かり、記録が残るのであとから検証できます。
ただ、要点は「スコアだけを見ないこと」です。
点検を回す場所と、対象にする文章
点検を回す場所は、2か所に置きます。
1か所目は、書いた直後に本人が回す形で、いちばん速く、直しやすいところです。
2か所目は、公開の承認の前に確認する人が回す形で、承認者の判断材料になります。
本人が回して直したうえで、承認の前にもう一度回します。
2回通しても、それぞれ1分で終わる形にしておきます。
対象は絞ります。
すべての発信に課すと、工程が重くなるからです。
対象の基準は、一般に公開されるもの、新しい訴求を含むもの、時事的な話題に触れるもの、といったあたりになります。
社内向けの文書は、はじめから対象外にして、工程を軽く保ちます。

表記そのもののチェックは対外文書の表記ルールを機械的にそろえる。チェックの自動化、複数視点でのレビューは公開前レビューを複数の目で行う。ペルソナ別レビューを工程に入れるにまとめています。
品質を組織でそろえる全体像はAIアウトプットの品質を組織でそろえる。標準化とレビュー体制で扱っています。
作らずにすぐ使える業務アプリ
組織のAIポータル「AI Portalize」には、すぐ使える業務アプリが300以上あり、自社の業務に合わせて手直しして使えます。
公開前の文章を点検するところには、炎上リスクチェックがあります。
詳しいページで、できることと使い方を紹介しています。
広報の負荷を増やさず、基準を育てる
組織の設計も要り、ここが飛ばされると、点検の仕組みそのものが機能しなくなります。
決めるのは次の3つです。
「中」の確認を誰がするかは、広報なのか法務なのか、両方が必要な場合の順序まで決めます。
確認の期限も要り、3営業日以内に返す形にしないと、確認せずに公開するという判断が起きます。
基準を更新するオーナーも決めておき、これは広報が持つのが自然です。
要点は、広報の負荷を増やさないことです。
すべての発信を広報が見る形にすると、そこで広報が止まってしまいます。
そのため、広報が見るのは高と中だけにして、低は担当者の判断に任せます。
この線引きだけで、広報が確認する件数が大幅に減ります。
低の指摘の傾向を広報に共有しておくと、事前の周知や研修の材料にもなります。
基準は、実際に起きた事例と指摘の実績を反映して育てます。
反映する材料は、自社で問題になりかけた事例と、同業で起きた事例です。
自社の事例は、公開前に検出されたものと、公開後に指摘されたものの両方を集めます。
なかでも、「検出されなかったが、実は問題だった」事例がいちばん重要で、そこが、そのまま基準の穴を示しています。
四半期に一度、基準そのものを見直し、追加する観点と外す観点をそこで決めます。

基準を変更したら、必ず周知します。
「この表現は新たに注意の対象になりました」という形で伝えておかないと、書く人が知らないまま、検出されてから直すことになります。
社外向けへの変換は社内情報を外に漏らさない変換。社外向け文面の自動生成ルールで扱っています。
画像と文脈全体は、人が確認する
この仕組みの限界も、先に書いておきます。
ここを誤ると、誤った安心が生まれるからです。
検出できるのは、明確に問題のある表現、根拠のない優位性の主張、属性への直接的な言及といったあたりです。
逆に検出が難しいのは、文脈全体から受ける印象、画像と文章の組み合わせ、時事的な話題との距離です。
何がいま議論されているかは、常に変わり続けます。
一言でいうと、いちばん検出しにくいのが画像で、文章そのものに問題がなくても、添えられた画像のほうが問題になることがあります。
そのため、画像は人が確認します。
「文章と画像の組み合わせ」についても、人が見ます。

さらに、「検出されなかったから問題ない」とは思わせません。
配布物に「これは表現のチェックです。文脈全体と画像は、人が確認してください」と書き添えます。
分析レポートの自動生成は分析レポートを自動生成する。数字を見る習慣を組織に埋め込むにまとめています。
表現チェックの基準を社内ルールにする
観点や確認の手順を社内ルールにするところで、止まる組織が多くあります。
現場からは「この表現は、公開して大丈夫なのか?」という声が上がっても、答える基準がないと、結局は個人の判断になります。
チェックの仕組みを現場の側で作り、使い続けられる状態にするまでの道筋は、社内AIツールの内製化。現場が自分で作れる組織にするまでで段階ごとに示しています。
当社のAI伴走支援では、表現チェックの観点や確認の手順を社内ルールにするところで、ヒアリングから一緒にドラフトを作り、話し合って仕上げる進め方をとっています。
炎上対策は、公開前の確認に組み込んで、判断は人が持つ
炎上が防げないのは、書いた本人には見えない、社内のレビューも同じ前提を共有している、何が問題になるかが変化する、の3つが原因です。
そのため、公開前に5つの観点で点検し、高・中・低の段階と指摘を一緒に出させます。
工程は、書いた直後に本人が回し、公開の承認の前にもう一度回します。
広報が見るのは高と中だけにし、確認の期限も決めておきます。
画像と文脈全体は検出しにくいので、人が確認します。
AIのスコアは確認の補助で、公開してよいかどうかを決めるのは人です。
最初は、過去に公開した文書を3本通し、どんな指摘が出てくるかを広報と一緒に見るところから始めます。
参照した情報(2026年11月2日に確認)
すぐ使える業務アプリが300以上
開いてそのまま使えて、AIで自社用にも直せます。15の分野から、やりたい作業で探せます。業務アプリを見る
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
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