
公開前レビューを複数の目で行う。ペルソナ別レビューを工程に入れる
2026/09/03
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
社外に出す文書のレビューを、社内の人だけで行っています。
まず上司が見て、そのあと同じ部門の人が見る。
全員が、同じ前提をあらかじめ共有しています。
だから、「前提の説明が足りない」「業界の用語が説明されていない」という指摘が出てきません。
社内では当たり前のことが、外の読み手にはまったく分からないからです。
今回は、AIに複数視点でレビューさせて、この穴を埋める工程について書いていきます。
品質を組織でそろえる全体像はAIアウトプットの品質を組織でそろえる。標準化とレビュー体制にまとめてあります。

身内のレビューだけでは、穴は残ったまま
なぜ穴が残るのでしょうか。
理由は3つあり、ひとつは前提を共有している点です。
社内の人はその業界と自社の状況を知っているので、説明の不足そのものに気づけません。
2つ目は立場が同じ点で、同じ部門の人は同じ観点で読んでしまい、別の立場の読み手がどう受け取るかまでは想像しません。
さらに、好意的に読んでしまう点で、同僚が書いたものはどうしても好意的に読んでしまうので、厳しい読み手の視点が入りません。
本来は「外の目を入れる」のが解決になります。
とはいえ、毎回外部の人にレビューを頼むのは現実的ではありません。
だからこそ、「複数の立場の読み手を想定してレビューする」というのが、現実的に取れる対処になります。
また、この方法なら明日からでも始められます。
立場を具体的に決めると、指摘の精度が変わる
文書については、複数の立場の読み手を想定して、それぞれの視点の指摘を出させます。
要点は「立場を具体的に設定すること」で、「一般の読者」では抽象的すぎます。
対外的な資料であれば、設定する立場の例は5つです。
検討を始めたばかりの担当者は、前提知識がないので「この用語が分からない」という指摘が出ます。
比較検討している担当者は、他社と比べているので「他社との違いが分からない」という指摘が出ます。
決裁する立場の人は、費用と効果を見るので「投資の判断材料が足りない」という指摘が出ます。
技術的に詳しい人は、仕組みを見るので「この記述は不正確」という指摘が出ます。
厳しい読み手は、疑って読むので「根拠が示されていない」という指摘が出ます。
この5つのうち、いちばん価値があるのは厳しい読み手だと思います。
好意的に読まれない前提での指摘は、社内からはまず出てこないからです。
もちろん残り4つも、それぞれ別の穴を埋めてくれます。
設定そのものは、汎用の立場ではなく自社の読み手を具体的に想定するのが要点です。
設定に入れるのは4つで、業界と役職、前提知識の水準、関心のある論点、懸念していることです。
設定は「顧客像から作ります」。
受注した顧客の特徴や、失注したときの理由から立場を組み立てていきます。

あわせて、「過去に指摘されたこと」も入れておきます。
顧客から「ここが分かりにくい」と言われた点を、そのまま懸念のところに含めます。
この設定の具体性が、そのまま指摘の精度を決めます。
汎用の「一般の読者」からは、結局のところ汎用の指摘しか出てきません。
設定する立場は、3〜5個に絞ります。
それ以上だと、指摘が多すぎて対応しきれなくなります。
顧客像の言語化そのものは顧客像の解像度を組織でそろえる。AIでペルソナを共通言語にするにまとめてあります。
指摘は全部に対応しない
指摘は、出た分だけ全部さばけるものでしょうか?
運用していくうえでの要点も、ここで書いておきます。
ここを決めておかないと、作業量が膨らみ続けます。
前提として指摘はとにかく多く出るので、5つの立場から各5件も出れば、それだけで25件になります。
全部に対応していくと、文書がどんどん長くなります。
すべての疑問に答えようとすると、かえって読みにくくなるからです。
だから、それぞれの立場から上位3件に絞らせます。
各立場につき、最も重要な指摘だけを3件出させます。
対応するかどうかは、あくまで人が判断します。
出てきた指摘を受け取ったうえで、対応の優先順位を決めていきます。
対応の判断基準は、3段階に分けておきます。
必ず対応するのは、事実の誤り、不適切な表現、根拠が示されていない主張です。
判断したうえで対応するのは、説明の不足、構成、表現です。
対応しないのは、対象読者でない立場からの指摘、文書の目的から外れる指摘です。
この3段階を明示しておくと、対応そのものが速くなります。

フェーズ1〜3で、自分から部門の工程へ育てる
導入も段階を踏んでいき、最初は個人から始め、自分が書いた文書について3つの立場でレビューさせます。
この段階では誰の承認も要らず、目的は、あくまで指摘の質を確認するところにあります。
的を射た指摘が出るのか、それとも汎用的な指摘しか出ないだけなのか?
汎用的な指摘しか出ない場合は、立場の設定が抽象的だというサインなので、設定を具体的にしていきます。
実際に直した箇所は、記録しておきます。
指摘を受けて直した箇所が3件たまれば、次のフェーズに進む材料になります。
期間の目安は2〜4週間で、手元にある文書3本で試します。
効果が確認できたら部門としての工程にしていき、やることは2つです。
ひとつは、立場の設定を部門で共有する点です。
各自が自分で設定すると精度がばらつくので、部門の標準として3〜5個決めておきます。
もうひとつは、レビューを通したかどうかを提出時の確認項目に加える点です。
個人の心がけにせず工程として定着させるためです。
工程を課す対象も絞るのは、すべての文書に課すと工程が重くなるからです。
対象の基準は、社外に出る、新規の相手向け、公開される、の3つのどれかに当たるものだけです。
個人の試行を部門の工程に広げる考え方は、社内AIツールの内製化。現場が自分で作れる組織にするまでとあわせて読むと前後がつながります。
人のレビューの前のところで通します。
機械的な指摘を先に潰してから人が内容を見る形にしておくと、レビューアの負荷が下がるからです。
表記そのもののチェックは対外文書の表記ルールを機械的にそろえる。チェックの自動化にまとめてあります。
運用しながら指摘の精度も上げていくには、顧客から指摘されたことを、立場の設定に反映していきます。
顧客から「ここが分かりにくい」「他社と何が違うのか」と言われたことを記録し、立場の懸念に追加していきます。
なかでも「指摘されたが、検出されなかったもの」を優先します。
レビューでは出なかった指摘が実際に顧客から来たなら、まさにそこが立場の設定の穴です。
「失注したときの理由」も反映していきます。
失注の理由が「説明が分かりにくかった」であれば、それを検出できる立場を設定します。
この育て方をすると、1年で精度が大きく変わり、自社固有の観点になるので他社では作れない資産になります。

事実の確認は、人にしかできない
ここでも線を引いておくのは、人のレビューを置き換えるものではないからです。
機械的なレビューが向くのは、前提の説明の不足、用語の説明の不足、根拠が示されていない主張、表記の揺れ、複数の立場からの疑問の洗い出しです。
逆に人のレビューが必要になるのは、事実の正確性、対外的に言ってよいかの判断、表現の適切さの最終判断、文書の目的に対する妥当性です。
事実そのものの確認は必ず人が行うのは、数字、固有名詞、日付は、機械的なレビューでは検出できないからです。
「対外的に言ってよいかどうか」の判断も同様です。
他社への言及、実績の記述、断定してよい範囲は、組織としての判断が要る領域だからです。
この役割分担は、配布物のなかで明示しておきます。
「機械的なレビューを通したから確認済み」という誤解を、それで防げます。
公開前チェックそのものは公開前チェックをAIに任せる。機密混入・炎上・顧客視点の事前検知、炎上リスクの見方は炎上リスクを公開前にスコアで見る。広報リスク管理の実装、FAQの作り方は規程やマニュアルからFAQを量産する。問い合わせ対応の元データ作りにまとめてあります。

避けたくなる失敗は7つあり、立場を抽象的に設定する、汎用の立場を使う、指摘を全部出させる、指摘を全部対応する、人のレビューの後に通す、すべての文書に課す、そして「機械的なレビューを通したから確認済み」と考えることです。
業界・役職・前提知識・懸念まで具体的に設定して、自社の読み手から作って、上位3件に絞らせて、3段階の基準で判断して、人のレビューの前に通して、社外に出るものだけを対象にして、事実確認は人がやると決めておけば避けられます。
レビューの指示文を一から書く前に、組織のAIポータル「AI Portalize」にある検証済みの見本500以上から探して、自社の読み手に合わせて直して使うこともできます。
複数の目を通すほど、穴は減っていく
身内のレビューで穴が残るのは、前提を共有している、立場が同じ、好意的に読んでしまう、の3つが原因です。
だからこそ、複数の立場の読み手を想定します。
立場は3〜5個にして、業界と役職、前提知識の水準、関心のある論点、懸念している点まで具体的に設定します。
自社の実際の読み手から作ることも欠かせません。
受注した顧客の特徴、失注した理由、過去に指摘されたことから組み立てます。
なかでも「厳しい読み手」の立場が、最も価値があると思います。
好意的に読まれない前提での指摘は、社内からは出てこないからです。
出てきた指摘は、各立場から上位3件に絞らせます。
対応は3段階で判断し、必ず対応するのは事実の誤り、不適切な表現、根拠のない主張です。
進め方は3フェーズで、自分で3本試して指摘の質を確認し、立場の設定を部門で共有して工程にし、顧客から指摘されたことを設定に反映していきます。
なかでも「指摘されたが、検出されなかったもの」を優先して反映します。
そこが設定の穴で、1年でその精度が大きく変わります。
事実の確認と、対外的に言ってよいかの判断は、常に人が行います。
まずは直近で作った対外文書を1本選んで、3つの立場でレビューさせてみると、抜けていた視点がそこで姿を見せます。
すぐ使える業務アプリが300以上
開いてそのまま使えて、AIで自社用にも直せます。15の分野から、やりたい作業で探せます。業務アプリを見る
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
お知らせ・組織AI推進ナレッジ一覧










