
FAQの作り方。規程やマニュアルからAIで質問と回答を量産する手順
2026/09/02
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
FAQの作り方は、規程やマニュアルの文章をAIに貼り、質問と答えと根拠をセットで作らせるのが近道です。
手順は、よく聞かれる質問を10件集める、該当する規程をAIに貼る、4項目のFAQにそろえさせる、根拠を規程で確かめる、の4つです。
読みにくさと探しにくさはFAQで受け、判断が必要なものは相談先に回します。
まずは10件だけ作ってみると、自分の組織で足りない項目が見えてきます。

作ったFAQを社内のAIに答えさせる仕組み(登録型とRAG型の違い)は、社内FAQをAIで作る方法。登録型とRAG型の違いと、質問の記録で育てる運用で扱っています。
この記事は、FAQの質問と答えをどう書き、規程からどう起こすかに絞ります。
社内ナレッジの基盤そのものは社内ナレッジをAIで活用する方法。ツール導入・RAG・手持ちのAIの選び方にまとめてあります。
AIを使ったFAQの作り方
いちばん簡単なFAQの作り方は、いま来ている問い合わせから作る方法です。
AIによるFAQの自動作成でも、元になる規程を人が確かめる工程は省けません。
次の順に進めてください。
1. 問い合わせの記録から、よく聞かれる質問を10件選ぶ
2. 記録がなければ、担当者に「よく聞かれる質問を10個挙げてください」と聞いて回る
3. その質問に関係する規程やマニュアルの文章を、会社で使ってよいAIに貼る
4. 下のプロンプトで、質問・答え・根拠・相談先の4項目にそろえて作らせる
5. 答えと根拠の条項番号を、元の規程と突き合わせて確かめる
6. 規程を所管する部門が内容を確認してから公開する
プロンプトは、次のような形でそのまま貼れます。
次の規程の文章から、社員がよく聞きそうな質問を10個作ってください。
1件ごとに、質問(社員が普段使う言葉で)、答え(結論を先に2〜3行)、根拠(規程名と条項番号)、相談先(判断が必要な場合に聞く部署)の4項目で書いてください。
規程に書かれていないことは答えにせず、「規程に記載なし」と書いてください。
規程の文章:(ここに貼る)
プロンプトの例を増やしたいときは、プロンプトテンプレートの例文集。業務でそのまま使える10本と社内での配り方が使えます。
書き方の基本は、全社共通のプロンプト作法を決める。押さえるべき7つの基本にまとめてあります。
一度で思いどおりの形にならないこともあります。
そのときは、答えが長い、根拠が抜けているなど、直したい点をそのままAIに伝えて作り直させます。
まず10件作って読み、足りない項目をプロンプトに足していくと、組織に合った形に育ちます。
手順5の確認には、入れた資料に基づいて答えるAIが向いています。
Gemini Notebookの公式のヘルプによると、アップロードしたPDFやGoogleドキュメントなどのソースに基づいて答え、引用の箇所を示します。
そのため、作ったFAQの答えが規程のどこに当たるかを、引用で確かめながら読めます。
とはいえ、AIが示した引用が正しいかを最後に判断するのは、規程を所管する人です。
資料をもとに答えさせる使い方は、Gemini Notebook(旧NotebookLM)の社内活用。部門の一次対応から全社に広げる進め方にまとめてあります。
作らずにすぐ使うなら、業務ツール「FAQ自動生成」があります。
詳しいページで、できることと使い方を紹介しています。
FAQ1件の作り方。質問・答え・根拠・相談先の4項目
AIに作らせるときも、人が書くときも、1件の形を先に決めておくと質がそろいます。
FAQの作り方で最初に決めるのは、この4項目の形です。
質問は、現場が普段使う言葉で書きます。
「経費の上限」ではなく、「タクシー代はいくらまで使えますか?」という形です。
答えは、結論を先に2〜3行で書きます。
長い答えはまず読まれませんし、詳細は根拠の条項に譲れば足ります。
根拠には、規程名と条項番号を添えます。
根拠を付ける理由は3つあります。
答えが正しいかを規程に戻って確かめられること、判断が必要なときは該当する条項だけを読めば済むこと、規程が改訂されたときに影響するFAQを条項番号から特定できることです。
いちばん効くのは最後の理由で、根拠がないFAQは、改訂のときにどれを直すべきか分からなくなります。
相談先には、判断が必要な場合に聞く窓口を書きます。
「例外的なケースは総務にご相談ください」という形にします。
この最後の1項目を入れておくのが要点で、FAQでは答えられない場合の経路を示しておかないと読んで分からなかった人がそのまま止まってしまいます。

FAQで答えるものと、人が受けるもの
「規程を読んでください」と答えても、読むのに10分かかるなら聞いたほうが速い、というのが現場の本音です。
規程があるのに同じ問い合わせが来続けるのは、理由が大きく3つあるためです。
どれをFAQで受け、どれを人が受けるかを分けておくと、社内の問い合わせの削減につながるFAQを選びやすくなります。
1つ目は、規程が条文の形式で書かれていて、知りたい記述を探すだけで時間がかかることです。
2つ目は、どこに書かれているか分からないことで、例えば経費の話が経費規程と旅費規程と精算の手順書の3か所に分かれています。
3つ目は、読んでも判断できないことで、「原則として」「特別な事情がある場合は」と書かれていると、自分のケースが当てはまるか分かりません。
前の2つはFAQで解決できますが、判断が必要な残りの1つだけは、人に聞く経路が要ります。
一言でいうと、FAQで前の2つを受け、残りは相談先に回す設計です。
逆に言うと、判断が必要な質問までFAQにしようとすると、答えが曖昧になって読まれなくなります。
FAQの作り方を広げる順番。上位20件から全規程へ
広げる順番は、いま来ている質問、主要な規程、質問して答えが返る形の3段階です。
最初から全部を作ろうとしないのが、続けるための条件になります。
ただ、順番を決めておかないと、「とりあえず全部」と言い出す人が必ず出ます。

最初の段階は、いま来ている問い合わせの上位20件について、FAQを作るところまでです。
規程から網羅的に作ると、誰にも聞かれない質問のFAQが大量にできます。
同じ質問でも言い方の違いはあわせて集め、「経費の上限」「いくらまで使える」「限度額」といった表現を1つのFAQに紐付けておきます。
期間の目安は2週間ほどで、20件なら十分に作れます。
そこで一度効果を測り、その20件についての問い合わせが減っていれば次に進む根拠になります。
次の段階は、主要な規程5〜10本について想定される質問をAIに作らせ、規程ごとに20〜30件に絞ることです。
網羅的に作ると数百件になって、今度は探せなくなります。
絞るときは、生成された質問のうち本当に聞かれそうなものを、人が選びます。
選ぶ基準は、現場が判断に迷う箇所、例外が多い箇所、金額や期限が絡む箇所です。
逆に、定義の確認と滅多に発生しないケースは選びません。
期間の目安は2〜3か月で、規程ごとに、所管する部門が質問の選定と答えの確認を受け持ちます。
最後の段階が、FAQを参照先にして、質問すると答えが返る形にすることです。
具体的には、200件のFAQが並んでいても、そこから探すのに時間がかかります。
「タクシー代はいくらまで」と聞けば答えと根拠が返る形のほうが、現場では使われます。
答えられない質問には、「個別の判断が必要なケースは、総務にご相談ください」と返す形にします。
聞かれた質問そのものも記録しておくと、FAQを追加する材料になります。
答えられなかった質問から優先して追加していくのが、いちばん効率のよい育て方だと思います。
現場の会話からFAQを作る話は、現場の会話からFAQを作る。商談ログとチャットログを資産化するで扱っています。
規程の改訂に合わせたFAQの更新
FAQは、作ったあとに更新しないと、古い内容で答え続けます。
もっともらしく古い答えは、答えないことより危険です。
受け取る側に、疑う手がかりがありません。
更新は、次の3つで回します。
規程の改訂の手続きに、FAQの更新を1項目として入れる
根拠の条項で、FAQを紐付けておく
更新のオーナーを、規程ごとに決める
改訂の手続きに入っていれば、公布と周知のあとにFAQの更新を忘れません。
条項で紐付けてあれば、改訂された条項に関係するFAQがそのまま特定できます。
オーナーは、その規程を所管する部門が持ちます。
四半期に一度、最終更新日の古いFAQを確認し、1年以上更新されていないものが並んでいるようならそこは確認が必要です。
鮮度の管理そのものは、古い情報で答えるAIを作らない。社内ナレッジの更新体制のつくり方にまとめてあります。

FAQの効果の測り方と、よくある失敗
FAQを作って終わりにしないために、見る指標は4つに絞ります。
次のような指標です。
問い合わせの件数
FAQへの質問の件数
答えられなかった質問の件数
問い合わせの内容の変化
問い合わせの件数は、全体と、FAQでカバーしている領域とで見ます。
FAQへの質問の件数は、そもそも使われているかを表します。
答えられなかった質問の件数は、カバー率の指標になります。
なかでも問い合わせの中身の変化が、いちばん大事な指標です。
単純な確認が減って、判断が必要な相談のほうが増えているかを見ます。
問い合わせの件数が減ること自体も重要ですが、担当者が判断の必要な相談に時間を使える状態こそが本来の目的だからです。

減らない場合は、原因を切り分けます。
「FAQの存在が知られていない」「答えが分かりにくい」「そもそも読まれる場所に置かれていない」の、どれかであることが多くなります。
同じ切り分けはFAQボットにも当てはまり、社内チャットボットが使われない理由は原因ごとに分けて整理しています。
失敗の型は、だいたい7つに集約されます。
「規程から網羅的に作る」「根拠を付けない」「答えを長くする」「相談先を書かない」「推進チームが全部の答えを作る」「規程の改訂の手続きにFAQの更新を入れない」「一覧を置くだけで終わる」の7つです。
どれも、いま来ている質問から作って条項で紐付け、2〜3行に収めて相談先を書き、所管部門が確認して改訂手続きに組み込み、質問して答えが返る形にすれば防げます。

PDFが読み込めないケースの扱いはPDFのOCRとテキスト抽出。Googleドライブで画像のPDFを文字にする方法と文書の棚卸し、内製化の全体像は社内AIツールの内製化。現場が自分で作れる組織にするまでにまとめてあります。
部門ごとのFAQを全社が使える場所に置く
作り方の設計そのものは、ここまでで組めます。
難しいのは、作ったFAQが使われる場所に置かれるかどうかです。
部門ごとに作ったFAQはその部門に閉じてしまい、総務が作った経費のFAQを営業の人は知りません。
「そんなFAQがあるとは知らなかった」と、別の部門の人は言います。
知らないので、結局は総務に聞くことになります。
新しく入ってきた人には、配布物として配ったFAQが届きません。
どの規程についてのFAQがあるのかの一覧もないと、FAQがあること自体に気づけません。
必要なのは、職種別・領域別に探せる状態と、更新すれば全員に反映される状態です。
部門ごとに作ったFAQのボットも、私たちが提供している組織のAIポータル「AI Portalize」に登録すると全社に公開され、ほかの部門の人も検索して使えるようになります。
作ったが使われていない、という状態で止まっている場合は、考え方の参考になるかもしれません。
根拠と相談先をそろえれば、FAQは運用しながら育つ
FAQの作り方は、規程やマニュアルをAIに貼り、質問・答え・根拠・相談先の4項目で作らせることから始まります。
規程があるのに問い合わせが減らないのは、読みにくい、どこに書かれているか分からない、読んでも判断できない、の3つが理由です。
前の2つをFAQで受け、残りを相談先に回します。
進め方は、いま来ている上位20件、規程ごとに20〜30件、質問して答えが返る形の順です。
前の2つは所管する部門が選定と確認を担い、期間はあわせて2〜3か月ほど見ておきます。
更新は、規程の改訂の手続きに入れ、条項で紐付け、規程ごとにオーナーを決めて回します。
まずは自部門でよく聞かれる質問を10個挙げて、上のプロンプトで根拠付きのFAQを作ってください。
参照した情報(2026年11月2日に確認)
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執筆:寺田昇平
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