組織のAI活用をAIポータルと伴走支援で加速

社内FAQをAIで作る方法。登録型とRAG型の違いと、質問の記録で育てる運用

社内FAQをAIで作る方法。登録型とRAG型の違いと、質問の記録で育てる運用

執筆:寺田昇平

AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事

仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。

「経費精算の締め日はいつですか」「パスワードを忘れたらどこに連絡すればいいですか」。
総務や情シスには、答えが決まっている質問が毎日のように届きます。

社内FAQをAIにすると、こうした質問にAIが先に答え、人は判断が要る相談に時間を使えるようになります。
ただ、AIの社内FAQには作り方がいくつかあり、選び方を誤ったり準備を飛ばしたりすると「資料を入れたのに答えてくれない」で止まります。

この記事では、AIの社内FAQの種類(登録型とRAG型)と選び方、作り方の手順を順に見ていきます。
あわせて、Gemini Notebook(旧NotebookLM)で無料から試す方法と、答えられなかった質問で資料を足す運用まで扱います。
社内ナレッジ全体の設計は社内ナレッジをAIで活用する方法。ツール導入・RAG・手持ちのAIの選び方にまとめています。

社員から届く質問を、答え方で3つに分けた図。締め日・連絡先・申請先のように答えが短く決まっている質問は、登録した質問と答えを返す登録型が合う。規程やマニュアルを読めば分かるが聞き方が人ごとに違う質問は、資料から答えを作るRAG型が合う。「この経費は事情を考慮して通るか」のように相手の状況で答えが変わる相談は、背景を知っている人が判断する

社内FAQのAI化は、答えが決まっている質問を人の手から外す取り組みです

最初に、社内FAQとは何か、AIにすると何が変わるのかを押さえておきます。

社内FAQは、社員から繰り返し届く質問と、その答えをまとめたものです。
申請の手順やツールの使い方、規程の確認といった「よくある質問」を集め、人に聞く前に自分で調べられるようにします。

これまでの社内FAQは、質問と答えを一覧に並べ、社員が目で探す形が中心でした。
AIにすると、社員は普段の言葉で質問し、AIが登録された答えや社内の資料から答えを返します。
「立て替えたお金はいつまでに出せばいい?」と聞いても、「経費精算の締め日」のFAQにたどり着けるのが大きな違いです。

AIにして変わるのは、主に次の4点です。

  • 社員が自分で調べられるので、答える人に同じ質問が届きにくくなる

  • 言い回しが登録した質問と違っていても、答えにたどり着ける

  • 詳しい人が休んだり異動したりしても、答えが社内に残る

  • 新しく入った人が、時間を気にせず何度でも聞ける

もちろん、何でもAIに任せられるわけではありません。
「この経費は事情を考慮して通るか」のように、相手の状況で答えが変わる相談は、背景を知っている人が判断します。
AIに任せるのは答えが決まっている質問だけ、と最初に決めておくと、現場の期待がずれません。

AIの社内FAQには登録型とRAG型があり、選ぶときは出典と権限を見ます

AIの社内FAQは、答えのもとをどこに置くかで大きく2つに分かれます。
違いを表で並べてから、選ぶときに見ておく点を挙げます。

登録型は、質問と答えの組を登録しておき、AIが質問の意図を読み取って近い答えを返す形です。
RAG型は、規程やマニュアルをそのまま読ませ、AIが関係する箇所を探して答えの文を作る形です。
RAGは「資料を探して、その中身をもとに答える」仕組みを指す言葉で、AIに社内の資料を読ませて答えさせる形はだいたいこちらに入ります。

登録型

RAG型

答えのもと

登録した質問と答え

規程・マニュアルなどの資料

向いている質問

答えが短く決まっているもの(締め日・連絡先・申請先)

資料を読めば分かるが、聞き方が人ごとに違うもの

準備の手間

質問と答えを1件ずつ書く

資料を集めて、古いものを外す

答えのぶれ

登録した文が返るので、ぶれにくい

資料の読み方で、答えの文が変わることがある

画面の形でも、検索窓に言葉を入れて候補から選ぶ検索型と、チャットで質問して答えが返ってくるチャットボット型に分かれます。
登録したFAQと資料の両方を使って、チャットで答える製品もあります。

では、どちらを選べばよいのでしょうか?
答えが短く決まっている質問が多いなら登録型、規程やマニュアルの中身を聞かれることが多いならRAG型が合います。
「社内FAQのアプリはあるのか」という問いには、FAQの登録と回答を1つにした製品がいくつも出ている、と答えられます。
一方で、Google Workspace を使っている会社なら、手持ちの Gemini Notebook でRAG型の社内FAQを作るやり方もあります。

どれを選ぶにしても、見ておく点は次の5つです。

  • 答えに出典(どの資料のどこか)が付き、社員が原本で確かめられるか

  • 見てよい人だけが見られるように、資料や回答の範囲を分けられるか

  • 答えられないときに、人の窓口へつなげられるか

  • 答えられなかった質問を、あとから集められるか

  • 資料やFAQを直したとき、どれくらいの手間で答えに反映されるか

とくに出典の表示は外せません。
RAG型のAIは資料に無いことをそれらしく補って答えることがあるので、社員が根拠をその場で確かめられる形にしておきます。

登録型・RAG型や製品を選ぶときに見ておく5つの点を並べた図。答えに出典が付き原本で確かめられるか、見てよい人だけが見られるように範囲を分けられるか、答えられないときに人の窓口へつなげられるか、答えられなかった質問をあとから集められるか、資料やFAQを直したときにどれくらいの手間で答えに反映されるか。なかでも出典の表示は外せない。RAG型のAIは資料に無いことをそれらしく補って答えることがあるため

作る前に、正本と見られる人と更新する人を資料ごとに決めておきます

社内FAQのAIが「答えない」「古い答えを返す」と言われる原因は、多くが資料の側にあります。
資料を集め始める前に決めておくことを、3つ見ておきます。

まず、どれが正本かです。
同じ規程が共有ドライブに3つの版で残っていると、AIは古い版から答えることもあります。
1つのテーマには正本を1つだけ決め、古い版はAIに読ませる範囲から外します。

次に、誰が見られる資料かです。
一部の人しか見てはいけない資料を全社向けのFAQに入れると、AIが誰にでもその中身を答えてしまいます。
全社に答えてよい資料と部署の中だけで使う資料を分け、ボットも分けて作ります。
どこで分けるかは社内AIの「単位」をどう切るか。ナレッジ分割を決める3つの軸で扱っています。

最後に、誰が更新し、どこから先は答えないかです。
更新の担当は「経費精算は経理の誰」のように業務ごとに置き、AIが答えない範囲も一緒に書いておきます。
更新の体制は古い情報で答えるAIを作らない。社内ナレッジの更新体制のつくり方で詳しく書いています。

この3つは、1枚の「資料の台帳」にまとめておくと扱いやすくなります。
列は、資料の名前・置き場所・正本かどうか・見られる人・更新の担当・最後に直した日、くらいで足ります。
FAQを書き始める前にこの台帳を作っておくと、どの資料をAIに読ませるかで迷わなくなります。

資料を整えたあとも、共有の範囲や置き場所で止まることがあり、その流れは社内チャットボットが使われない原因で扱っています。

社内FAQのAIを作る前に、資料ごとに決めておく3つのことと、決めずに入れたときに起きることを並べた図。どれが正本かを決めないと、同じ規程が3つの版で残っていて古い版から答えることがある。誰が見られる資料かを決めないと、一部の人しか見てはいけない資料の中身を誰にでも答えてしまう。誰が更新するかを決めないと、誰のものでもないFAQは数か月で古くなる。3つは資料の名前・置き場所・正本かどうか・見られる人・更新の担当・最後に直した日を並べた資料の台帳にまとめる

社内FAQのAIは、質問を集めて、資料を整えて、小さく公開する順で作ります

「社内FAQはどうやって作るのか」と聞かれたら、次の5つの手順で答えられます。
登録型でもRAG型でも、流れはほとんど変わりません。

1. 届いている質問を集めて、多い順に並べる
2. 資料の台帳を作り、読ませる資料を決める
3. よくある質問と答えを、AIで下書きして人が確かめる
4. ボットを作り、届いた質問をそのまま入れて試す
5. 一部の部署に公開し、質問が届く場所に置く

質問を集めるときは、チャットやヘルプデスクに届いたやり取りを捨てずに残していきます。
いつの質問か、誰が答えたかも残しておくと、制度が変わったときに今も使える答えを見分けられます。
「ここで聞いてください」という場所をひとつ決めておくだけでも、材料の集まり方が変わってきます。

集まったら、カテゴリごとに数えて多い順に並べると、FAQの最初の中身と資料を整える順番が見えてきます。

下書きは、AIに任せると早く進みます。
同じ内容を違う言い方で聞いている質問をまとめ、表現をそろえるところまでは、人が数百件を読んで分けるより短い時間で終わります。
ただ、やり取りの中にはその場しのぎの答えも混ざっているので、多い順に上位の数十件だけでも詳しい人に確かめてもらいます。

試すときは、整えた質問ではなく、実際に届いた質問をそのまま入れてみます。
言い回しの崩れた質問や、2つのことを一度に聞く質問への答えを見ると、足りない資料が分かります。

公開は一部の部署から始め、置く場所は質問が実際に届いている場所にします。
専用のページは見に行く人が少ないので、普段使っているチャットからリンクで開ける形にしておきます。
質問が来たら担当者が「まずこのボットに聞いてみてください」とリンクを返すと、使い方が自然に広がっていきます。

Gemini Notebook(旧NotebookLM)なら、無料から社内FAQのAIを試せます

「社内FAQのAIを、まずは無料で試したい」というときの候補が、Google の Gemini Notebook です。
入れた資料をもとに答え、答えに引用を付けるので、RAG型の社内FAQを手元で作れます。
ここからは、2026年10月時点の Google のヘルプで確かめた内容をもとに書きます。

Gemini Notebook は、2026年7月に NotebookLM から名前が変わりました。
個人の Gmail アカウントなら無料で登録でき、標準ではノートブックを100件、1つのノートブックに資料(ソース)を50件まで入れられます。
上限は変わる場合があるとヘルプに書かれているので、作る前に画面で確かめておきます。

ただ、会社の資料を入れるなら、会社の Google Workspace のアカウントで使います。
Workspace では Business Starter などのエディションにコアサービスとして含まれ、入れた資料やチャットを人が確認することも、AIの改善に使うこともないとされています。
個人のアカウントも、フィードバックを送らない限り学習には使われませんが、送るとやり取り全体を Google が確認する場合があります。
会社のアカウントで開けないときは、管理コンソールの「生成 AI」→「Gemini Notebook」でオンになっているかを管理者に確かめてもらいます。

Gemini Notebookを個人のGmailアカウントで使う場合と、会社のGoogle Workspaceのアカウントで使う場合を左右に並べた図。個人のアカウントは無料で登録でき、標準ではノートブック100件、1冊にソース50件まで入れられるが、フィードバックを送るとやり取り全体をGoogleが確認する場合があり、共有できるのは50人まででGoogleグループとも共有できない。Workspaceでは Business Starter などのエディションにコアサービスとして含まれ、入れた資料やチャットを人が確認することもAIの改善に使うこともないとされている。会社の資料を入れ、全社に配るなら会社のアカウントで作る

作り方は、次の流れです。

1. 新しいノートブックを作り、FAQの文書と規程・マニュアルをソースに追加する
2. チャットの設定で会話のスタイルを「カスタム」にし、答え方を指示する
3. 実際に届いた質問で試し、答えと引用の箇所を確かめる
4. 「共有」から社員を閲覧者として招待するか、チャットビューへのリンクを配る

ドライブから入れたソースは、元の文書を直すと数分ごとに同期されるとヘルプに書かれています。
FAQを Google ドキュメントに書いておけば、直した内容が答えのもとにも反映されるので、更新の手間が小さくなります。

答え方の指示には、「資料に書かれていないことは推測で答えず、総務の問い合わせフォームを案内してください」のような一文を必ず入れておきます。
例えば「根拠にした規程の名前と条番号を添えてください」と足しておくと、社員が原本で確かめやすくなります。

Gemini Notebookのチャットの設定で会話のスタイルを「カスタム」にし、答え方の指示を書いたときに、社員が受け取る答えがどう変わるかを示した図。「資料に書かれていないことは推測で答えず、問い合わせフォームを案内してください」「根拠にした規程の名前と条番号を添えてください」と書いておくと、資料にある質問には資料をもとに引用を付けて答え、根拠の規程の名前と条番号が添えられ、資料に無い質問には推測で答えずに問い合わせフォームを案内する

共有の権限は、FAQとして使ってもらうだけなら閲覧者で足ります。
チャットビューのリンクでも閲覧者が資料にたどり着ける場合があるとヘルプに注記があるので、見せてはいけない資料はノートブックに入れません。
個人の Gmail アカウントから共有できるのは50人までで、Google グループとも共有できないので、全社に配るなら Workspace のアカウントで作ります。
手順の細かいところはGemini Notebook(旧NotebookLM)で社内チャットボットを作る方法。規程に答えるまでにまとめています。

Gem でも社内FAQは作れます。
ただ、Gem は個人のアカウントで2026年11月、Workspace の Business・Enterprise で2027年3月に提供を終え、スキルに自動で移されると Google のヘルプで案内されています。
これから作るなら、資料をもとに答えて引用を付ける Gemini Notebook のほうが扱いやすいかと思います。

公開されている事例にも、Gemini Notebook(当時の NotebookLM)を使ったものがあります。
京都府舞鶴市のデジタル推進課は、2025年4月の記事で、公開したFAQを読ませた庁内のチャットボットを作ったと書いています。
最初に試した Gem は資料の外の情報から市の運用と違う答えを返したので NotebookLM に切り替え、答えられない質問は相談の窓口へ案内させているそうです。
問い合わせは体感で「3回から1回ほど」に減った一方、窓口の一本化と同時に進めたので、ボットだけの効果は切り分けられていないとも書かれています。

長野県佐久市では、電子決裁や勤怠管理など新しく入れたシステムの数百ページのマニュアルと、市独自のルールを読ませたと導入事例で紹介されています。
以前はベンダーに問い合わせて回答を待っていた使い方の質問に、職員が自分で聞いて答えを得られるようになったそうです。

この作業に使える業務ツール「FAQ自動生成」は、詳しいページでできることと使い方を紹介しています。

答えられなかった質問を集めると、資料とFAQが育っていきます

社内FAQのAIは、公開してからが本番です。
現場からは「この質問の答えも欲しい」「今の言い回しは古い」といった声が必ず出てくるので、そのたびに直していく流れを先に作っておきます。

公開したあと、何をきっかけに直せばよいのでしょうか?
いちばんの材料は、ボットが答えられなかった質問です。
答えられなかった質問が溜まると、FAQに足す候補だけでなく、制度や手順の説明そのものが足りない箇所も見えてきます。

Gemini Notebook で作った場合は、この記録を別に用意します。
ヘルプでは、チャットの履歴は「非公開のまま」とされ、アナリティクスで見られるのも過去7日間の1日あたりのユーザー数とクエリ数です。
どんな質問が来たかは数字からは分からないので、答えられないときに案内するフォームやチャンネルが、そのまま答えられなかった質問の記録になるようにしておきます。

更新の担当も決めておきます。
誰のものでもないFAQは、数か月で古くなってしまいます。
月に一度、記録された質問を見て資料かFAQに足す程度でも、十分に回ります。

社内FAQのAIを公開したあとに育てる流れを示した図。社員がボットに聞き、答えられない質問は案内したフォームやチャンネルに届いて、そのまま答えられなかった質問の記録になる。更新の担当が月に一度その記録を見て、資料かFAQに足すと、答えられる範囲が広がる。Gemini Notebookのアナリティクスで見られるのは過去7日間のユーザー数とクエリ数なので、質問の中身はこの記録で集める。効果は、ボットの利用回数より、詳しい人に直接届く質問の件数で見る

運用を始めるときは、完成度が低いまま出すのを恐れなくて大丈夫です。
答えられる質問が20件しかなくても、その20件が毎日聞かれているものなら十分に役に立ちます。

効果を見るなら、ボットの利用回数よりも、詳しい人に直接届く質問の件数を見るほうが分かりやすいです。
ボットがよく使われているのに人への質問が減っていなければ、答えの中身か置き場所のどちらかが合っていません。
また、ボットで解決しなかったときの二次の窓口は、AIに移したあとも残しておきます。

作った社内FAQのAIは、全社から探せる場所に置いておきます

部署ごとに社内FAQのAIを作り始めると、ほかの部署の人がその存在を知らない、という問題が出てきます。
総務と情シスのボットが別々のリンクで配られていると、新しく入った人はどこに何を聞けばよいかが分かりません。

当社の組織のAIポータル「AI Portalize」では、Gemini Notebook や Gem をAIツールとして登録すると全社から名前・説明・タグで探せるようになり、ツールごとに使われた回数と使っている人が見えます。
資料を読み込んで答えるのは Gemini Notebook などの側で、AI Portalize はそれを探せるようにして、使われ方を見えるようにする役目です。

最初の社内FAQは、先月届いた質問の上位10件から作れます

まずは直近1か月の質問をチャットやメールから拾い出し、多い順に並べてみます。
上位の10件が見えたら、答えが書かれた資料の正本と更新の担当を決め、Gemini Notebook に入れて一部の部署で試します。

答えられなかった質問を記録して資料とFAQに足していけば、使われるほど答えられる範囲が広がっていきます。

すぐ使える業務アプリが300以上

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執筆:寺田昇平

AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事

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