
自社と競合を同じ物差しで比べる。範囲を限定した調査の作法
2026/09/17
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
競合を調べても、A社は詳しく分かるのにB社は情報が少ないなど、比べられない結果しか出てこない場合があります。
そもそも同じ項目がそろっていないので、比較の表を作ろうとしても空欄ばかりが並びます。
今回は、指定サイト内でのリサーチという形に範囲を限定して、自社と競合を同じ物差しで比べる作法について書いていきます。
推進担当の情報収集と経営判断の全体像はAI推進担当者の情報収集と経営判断。リサーチとROIの設計にまとめてあります。

調査結果は、情報源と項目がそろわないまま比べられている
なぜそろわないのか、理由は3つあり、まず情報源が違うと、A社は公式サイトから、B社は第三者の記事から集めているぶん、情報の粒度そのものが変わってきます。
また、発信を多くしている会社の情報は自然と多くなるので、情報の量も違ってきます。
さらに、各社について「気になった点」を集めていると、項目を固定していないぶん、当然ながら項目はそろいません。
最も見落とされやすいのは情報源の違いで、公式サイトは自社が語っている中身、第三者の記事は外から見た評価なので、性質がまったく違います。
だから、対処の中心は情報源をそろえるところに置きます。
範囲を区切って、その中だけで調べる
自社の調査でも「どこまで調べればいいのか」を、先に決めていますか?
指定した範囲の中だけで調べるのが基本の動き方で、範囲の指定には2つの軸があります。
ひとつは情報源を限定する軸で、「各社の公式サイトの中だけで」という区切り方です。
もうひとつは項目を限定する軸で、「以下の8項目について」という区切り方です。
効くのは情報源の限定のほうで、公式サイトの中だけで調べると、各社が自社について語る中身が同じ条件でそろうからです。
第三者の情報は、別に調べて混ぜません。
「公式が語る中身」と「外から見た評価」は性質が違うので、分けて記録しておきます。
この2つのずれこそが最も価値のある情報になり、公式が語る中身と外の評価が食い違っている箇所に、その会社の実態が出てきます。
公式サイトからは8項目、第三者情報からは4項目を集める
では、公式サイトからは具体的に何を集めればいいでしょうか。
次の8項目で、サービスの一覧、価格、対象とする顧客、訴求している内容、実績の記述、直近の発表、採用の動き、会社の基本情報です。
見つからなかった項目も明示しておくと、「価格が公開されていない」という事実そのものが、比較の材料になります。
訴求している内容は、そのままの言葉で取ります。
要約すると、その会社らしさが落ちてしまうからです。
実績の記述は書き方まで見ておくと、「導入企業〇社」「業界No.1」「〇年の実績」のどれを語るかに、その会社の考え方が出ます。
あわせて、該当ページの場所も出典として記録しておきます。
競合調査の回し方そのものは競合調査を定例業務にする。URLから比較表とSWOTまでにまとめてあります。
第三者の情報からは、項目を変えて4つ集めます。
評価されている点、指摘されている点、比較されている相手、実際の利用の状況です。
いちばん価値があるのは、指摘されている点です。
公式には書かれていない弱点が、ここに出てくるからです。
比較されている相手も見ておくと、自社が競合だと思っていなかった会社が顔を出す場合があります。
第三者の情報は時期によって変わっていくので、出典と日付は必ず記録します。
「1件の指摘」を「一般的な評価」として扱わないよう、個別の意見は一般化しません。

企業そのものを調べる観点は取引先を調べる力を標準化する。営業前調査と与信の目線で扱っています。
自社も同じ方法で調べ、空欄を比較する
自社の公式サイトは、外から見て正しく評価できているでしょうか?
自社も、まったく同じ方法で調べます。
自社については内部の情報があるぶん、外から見える情報とそれが混ざってしまうからです。
だから、自社の公式サイトを外部の目で見て、そこにある中身だけで自社を評価すると、「これが書かれていない」「これが分かりにくい」という気づきが出てきます。
顧客は公式サイトの情報だけで判断していて、内部の情報のほうは相手には見えていません。
そのうえで、自社と競合を同じ表に8項目で並べ、空欄を見ます。
自社だけが空欄になっている項目が、改善の候補です。

顧客像そのものの揃え方は顧客像の解像度を組織でそろえる。AIでペルソナを共通言語にするにまとめてあります。
運用としては、比較の軸を固定するのが最も重要です。
途中で変えると、前回と比較できなくなるからです。
軸を追加する場合は、その時点を記録して、過去分は空欄のままにしておきます。
削る場合も、削った理由を記録しておきます。
頻度は四半期に一度で足ります。
また、公式サイトの内容は、それほど頻繁には変わりません。
時期がずれるとそこで比較にならなくなるので、各社は同じ時期に調べます。
そのうえで、変化を見ていきます。
前回と比べて各社の記述が変わっているか、変化があった項目に注目します。
訴求の内容が変わった、価格が変わったといった変化に、相手の動きが出ます。
もちろん、変わっていない事実も、ひとつの情報になります。
情報収集そのものを定常業務にする設計は競合・市場の情報収集を組織の定常業務にするで扱っています。
再現性を残し、範囲の外は別の経路で埋める
今回の調査は、同じ手順で別の人が再現できるでしょうか?
再現できる状態にしておくために、調べた範囲・集めた項目・使った指示文・調べた日・出典の5項目を記録します。
いちばん飛ばされやすいのは使った指示文で、これがないと同じ結果を再現できません。
だから指示文を保存しておいて次回も同じもので調べると、結果を比較できる形になります。
担当が変わっても同じ調査ができる、というのが再現性の価値です。

出典のページも保管しておきます。
公開されているページは、後から変わってしまう場合があるからです。
根拠と出典の残し方は発信に根拠を持たせる。PR・SEO・記事の裏付けデータを揃えるにまとめてあります。
範囲を限定すると、範囲の外の情報は当然入りません。
入らないのは3つです。
公開されていない情報、発信していない取り組み、内部の状況です。
だから、そこは別の経路で調べます。
商談で聞いた情報、業界の関係者からの情報、公開されている業績といったところです。
「商談で顧客から聞いた」「業界で言われている」というように出どころを添えて、別の経路の情報は確度を明示しておきます。

範囲を限定した調査の結果とは、混ぜずに記録します。
そもそもの性質が違うからです。
範囲を限定した調査は、あくまで比較のための道具であって、全体を知るための道具ではありません。
範囲をそろえて比べる調査を業務の型にするところは、当社のAI伴走支援でも、業務の洗い出しとAI化の優先順位づけを現場の担当者と一緒に進める中で扱っています。
比較は、そろえた範囲の中でしか成立しない
調査結果が比べられないのは、情報源と情報の量、項目のそろえ方がばらばらだからです。
対処は、範囲を限定して調べる、この一点に尽きます。
情報源を「公式サイトの中だけ」に絞り、項目も先に固定しておきます。
公式と第三者の情報は、分けて記録します。
この2つのずれにこそ、いちばん価値のある情報が出ます。
自社も同じ方法で、外部の目で見ます。
自社だけが空欄になっている項目が、そのまま改善の候補になります。
軸を固定したまま、同じ時期に調べ続けることで、変化が見えるようになります。
競合3社と自社について、公式サイトの中だけで8項目を集めた組織は、比較の軸が最初からぶれません。
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執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
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