
競合・市場の情報収集を組織の定常業務にする
2026/09/16
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
競合や市場の情報収集は、「詳しい人が個人的にやっている」状態になりがちです。
その人が忙しくなれば情報は止まり、判断は古い前提のまま行われます。
しかも、情報が止まっている事実には、たいてい誰も気づきません。
今回は、競合調査のやり方を個人の熱意から切り離し、組織の定常業務にする設計を書いていきます。
推進担当としての情報収集と経営判断の全体像は、AI推進担当者の情報収集と経営判断。リサーチとROIの設計にまとめてあります。

情報収集が担当者の熱意に依存している
情報収集は、なぜ特定の担当者の熱意に依存してしまうのでしょうか?
理由は3つあり、業務として位置づけられていない、誰の担当か決まっていない、集めても打ち手につながらない、が重なっています。
情報収集の時間が業務時間として認められていなければ、当然ながら後回しになります。
また、担当が決まっていなければ、「気になる人が調べる」状態のままです。
集めても打ち手につながらなければ優先順位は上がらず、実はこれが最も本質的な原因だと考えています。
打ち手につながらない情報収集は、どれだけ仕組みを作っても続かないからです。
業務として位置づけられていない点は構造の問題で、「余裕があるときに」という位置づけのままだと、忙しい時期には必ず止まります。
ただ、担当さえ決めれば、業務時間として認めてもらう根拠にもなります。

競合調査の対象は、4つの領域に分かれる
競合調査の対象は、どう区切ればいいのでしょうか?
次の4つの領域に整理でき、競合の動き(サービスの変化、価格、発信の内容、採用の動き)、市場のトレンド(業界の動向、制度の変更、技術の変化)、口コミとレビュー(自社と競合について実際に語られている内容)、「顧客の声」(商談や問い合わせで語られた内容)の4つです。
最も価値があって最も集められていないのは「顧客の声」で、しかもこの領域は社内にあります。
商談の記録や問い合わせの内容を見ればよいので、外を調べる必要すらありません。
口コミも意外に価値があり、公式の発信ではなく実際に使っている人の言葉が出てくるからです。
一方で、競合の動きと市場のトレンドは情報量が多いので、絞る設計のほうが要ります。

領域ごとに、集め方の型は変わる
領域ごとに、何をどう集めればいいのでしょうか。
競合の動きは、項目を固定したうえで定期的に見ます。
項目は8つで、サービスの一覧、価格、対象とする顧客、訴求している内容、実績の記述、直近の発表、採用の動き、発信の内容です。
なかでも意外に価値があるのは「採用の動き」で、募集している職種から、相手がいま何に投資しているかが読めます。
項目を変えないのは、変えると前回との比較ができなくなるからです。
頻度は四半期に一度にしていて、月次では変化が小さく、年次だと見逃してしまいます。
対象は3〜5社に絞り、そこに新しく出てきた社を入れます。
対象の選定は商談で名前が挙がった件数から決めるのが確実で、記録があれば集計できるからです。
競合調査そのものの回し方は競合調査を定例業務にする。URLから比較表とSWOTまでにまとめてあります。
市場のトレンドは、テーマを3〜5個に絞ります。
広すぎると量が多く、狭すぎると情報が来ないからです。
また、自社の顧客業界もテーマに入れておきます。
自分の業界の情報より、顧客の業界の情報のほうが商談で使えるからです。
例えば、顧客の業界の制度変更は、それ自体が商談のきっかけになります。
形は探しに行くのではなく届く配信にして、要約には「自社に関係する点」を入れておきます。
そうしないと、読む側に判断の作業が残ってしまうからです。
分量も1日5件・各2〜3行に収めます。
ニュース収集と配信の仕組みは業界情報のキャッチアップを仕組みにする。ニュース収集と要約配信で扱っています。
口コミとレビューは、集める場所を決めたうえで内容を分類し、数えます。
見るのは、どういう内容が多いか、肯定的か否定的かです。
そこに競合を並べると、公式の発信ではなく実際の評価のほうで比べる、最も直接的な競合分析になります。
否定的な内容は丁寧に読みます。
改善のヒントは、たいていそちら側にあるからです。
頻度は四半期に一度で、前回と比べて評価が変わっているかを見ます。
「顧客の声」は、社内の記録から集めます。
商談の記録、問い合わせの内容、「失注の理由」、既存顧客からの要望の4つのうち、最も価値があるのは「失注の理由」です。
なぜ選ばれなかったのか、何と比較されたのかが分かるからです。
集めるときは、そのままの言葉で集めます。
要約すると、その時点で情報が失われてしまうからです。
分類して集計すれば、どの課題が多いか、どの競合と比較されているかが見え、そのまま顧客像の設計の材料にもなります。

そのためには、集める仕組みが要ります。
商談の記録に項目があれば集計できるので、記録の設計のほうから入ります。
商談の記録を資産にする話は商談内容を全社の資産にする。文字起こし→要約→記録の自動化、顧客像の揃え方は顧客像の解像度を組織でそろえる。AIでペルソナを共通言語にするにまとめてあります。
この作業に使える業務ツール「レビュー解析・グラフ化」は、詳しいページでできることと使い方を紹介しています。
設計はテーマ決めから型化を経て、会議で打ち手になる
最初は設計から入り、4領域についてテーマと頻度と担当を決めます。
担当は名前で決めます。
「マーケティング部」ではなく個人名にしておかないと、結局は誰もやらないからです。
頻度は領域ごとに変えて、競合は四半期、トレンドは日次の配信、口コミは四半期、顧客の声は月次にします。
週に1〜2時間を業務時間として認めてもらい、上司と合意しておきます。
もちろん最初は1領域から始めます。
4つを同時に始めると、まず回らないからです。
始めるなら「顧客の声」が最も現実的で、社内にあるので外を調べる必要がなく、そのうえ最も価値がある領域だからです。
設計が決まったら、次は型を作ります。
領域ごとに集める項目と手順を固定するのが最も重要で、変えると比較ができなくなるからです。
集める手順も文書にして、担当が変わっても回る形にしておきます。
トレンドの配信や口コミの収集のように自動化できる部分は自動化し、顧客の声については記録の設計から入ります。
商談の記録に項目を作り、集計できる形にしておきます。
1領域なら1〜2か月で型が作れ、型ができたら記録を蓄積し始めます。
1年ぶん溜まると、そこから変化が見えるようになります。
最も重要で、最も飛ばされやすいのが次の工程です。
四半期に一度、集めた情報を「打ち手」に変える場を作ります。
時間は30分、参加者は営業・マーケティング・経営から各1人です。
議題は、前回からの変化、その変化への対応、次回の対象と項目の3つです。
「打ち手」は1〜2件に絞ります。
5件出したところで、結局どれも進まないからです。
対応しないと決めた場合も、その理由は記録しておきます。
判断できる立場の人を必ず入れないと、担当レベルだけでは打ち手が決まりません。
この場がなければ、集めても打ち手につながらないという最初に挙げた原因への対処ができないまま、情報は流れていくだけになります。

情報の鮮度は、放っておくと落ちる
集めた情報は、放っておいたらどうなるでしょうか。
古くなります。
やることは3つで、収集の日付を記録する、前回との差分を見る、一定期間で見直す、です。
効率がよいのは差分だけを見るやり方で、全部を調べ直さず変わった箇所だけを見ればよいからです。
変わっていない事実も、ひとつの情報になります。
「この社の価格は1年変わっていない」という事実にも意味があります。
古い情報は「確定情報」として扱わず、1年前の価格を現在の価格として使わないために、出典と日付は必ず残しておきます。
よくある失敗は7つあり、「部門」で担当を決める、業務時間として認めない、4領域を同時に始める、項目を変える、「顧客の声」を集めない、「打ち手」に変える場を作らない、古い情報を確定情報として扱う、です。
どれも、名前で決めて週1〜2時間を確保し、1領域から始めて項目を固定し、社内の記録から集めて四半期の30分を置き、出典と日付を残せば避けられます。

体制がなければ、情報は打ち手に変わらない
収集の設計と型化そのものは組めますが、難しいのはそれを打ち手に変える工程です。
会議体は、何があれば機能するのでしょうか。
参加者の立場と、決められる範囲で決まります。
参加者が担当レベルだけだと、予算も方針も自分では決められないので、打ち手の判断ができません。
逆に経営だけだと、今度は実務の感覚が入りません。
打ち手が決まっても着手されないという問題もあります。
通常業務の優先順位に押されて、そこで止まるからです。
競合の動きへの対応は、往々にして訴求の変更、価格の見直し、対象顧客の変更といった施策の方向転換を含み、これは推進担当だけでは決められない領域です。
情報収集を業務として認めてもらうのも体制の話で、週1〜2時間の確保を誰がどう認めるかという話だからです。
取引先そのものを調べる力の標準化は取引先を調べる力を標準化する。営業前調査と与信の目線にまとめてあります。
私たちが提供しているAI活用支援では、こうした情報を打ち手に変える体制の設計から実行までを一緒に進めています。
「情報は集まるようになったが動かない」という状態で止まっている場合は、進め方の参考になるかもしれません。
担当を名前で決めれば、情報は打ち手に変わる
情報収集が属人化するのは、業務として位置づけられていない、誰の担当か決まっていない、打ち手につながらない、の3つが原因です。
4領域のうち、競合の動きは8項目を四半期ごとに見て、採用の動きが意外に価値があります。
市場のトレンドはテーマを3〜5個にして、自社の顧客業界を入れます。
口コミとレビューは、最も直接的な競合分析になります。
「顧客の声」は最も価値があって最も集められておらず、しかも社内にあります。
「顧客の声」の中でも「失注の理由」が最も価値があり、なぜ選ばれなかったか、何と比較されたかが分かるからです。
そのままの言葉で集めるのが要点です。
進め方は3フェーズで、テーマ・頻度・担当を決め(担当は名前で、業務時間として認め、顧客の声から始めるのが最も現実的)、項目と手順を固定し(項目を変えないのが最も重要)、四半期に一度30分の場で打ち手を1〜2件決めるという並びです。
最後の工程がなければ、集めた情報は流れていくだけになります。
鮮度は、収集の日付を記録する、前回との差分を見る(全部を調べ直さない)、一定期間で見直す、の3つで、変わっていないことも、ひとつの情報になります。
商談の記録から、失注の理由を直近20件集めることが、最初の作業になります。
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執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
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