
採用市場を数字で見る。競合の採用状況・求人比較を定点観測する
2026/09/17
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
採用がうまくいかないとき、その理由を特定できないことがあります。
「応募が来ない」「来ても辞退される」「内定を出しても他社に決まる」、というケースです。
「厳しい市場だから」で話が終わってしまうと、打ち手が決まりません。
今回は、採用の競合調査を定点観測にして、採用市場を数字で見る設計について書いていきます。
推進担当の情報収集と経営判断の全体像はAI推進担当者の情報収集と経営判断。リサーチとROIの設計にまとめてあります。

採用がうまくいかない理由が特定できない
なぜ、理由を特定できないのでしょうか?
比較の対象がなく自社の応募数が多いのか少ないのか判断できない、段階ごとに数字を見ていないので応募が来ないのか選考で落ちるのか辞退されるのかが分かれていない、競合の条件を知らないので給与や勤務の形態、業務の内容について自社に競争力があるのか分からない、という3つの理由があります。
段階が違えば打つべき手も違ってくるので、段階ごとに数字を見ていないと、そもそも打ち手を選べません。
なかでも大きいのは競合の条件を知らないことで、求人の情報は公開されているぶん、調べれば分かることでもあります。
段階ごとの数字のほうも社内のデータで分かるので、人数を記録するだけで済みます。
だから、段階ごとの人数を記録して、競合の条件を調べるところから始めます。
採用の数字は6段階、競合調査は7項目で見る
社内のデータとしては、求人の閲覧数/応募数/書類の通過数/面接の実施数/内定の数/入社の数の6段階を記録します。
段階ごとの通過率を出すと、どこで落ちているのかが見えてきます。
段階ごとに、打つべき手も違ってきます。
閲覧が少ないなら求人が見られていないので、掲載の場所かタイトルの問題です。
閲覧はあるのに応募が少ないなら、条件か業務の記述といった求人の内容の問題です。
書類で落ちるなら求める経験と応募者が合っていないので、求人の記述が的を外しています。
面接で落ちるなら、求める人物像と応募者が合っていません。
内定を辞退されるなら条件か選考中の印象の問題で、そこでは他社と比較されています。
辞退の理由を聞けば、採用の中で最も価値のある情報になります。
面接そのものの評価をそろえる話は面接評価をフェアにする。AIでバイアス検知をプロセスに組み込むにまとめてあります。
外を調べるほうは、募集している職種/給与の水準(提示されているレンジ)/勤務の形態(出社の頻度、勤務の時間)/業務の記述/求める経験(必須と歓迎)/訴求している内容/募集の期間の7項目を見ます。
なかでも募集の期間は、意外に価値のある項目です。
長く掲載されている求人は、その職種の採用が難しいことを示しているからです。
給与の水準は最も直接的で、自社の水準が市場と合っているかが分かります。
もっとも見落とされるのは訴求している内容で、競合が何を魅力として語っているか、自社が語っていない魅力があるかどうかが見えるからです。

比較対象は職種・規模・地域で選び、定点観測は時期を固定する
誰と比べ、どう定点観測すればいいのでしょうか?
比べる相手は、同じ職種を募集している会社です。
業界が同じであっても、職種が違えば比較になりません。
選ぶ基準は、同じ職種を募集している/同じ規模/同じ地域の3つで、なかでも地域が重要になります。
地域によって、給与の水準そのものが違うからです。
ただ、業界を越えて比べることも必要です。
営業、経理、情報システムのように職種が汎用的な場合、候補者のほうは業界を越えて比較しているからです。
自社が競合だと思っていない会社と比較されていることも、普通に起きます。
だから、辞退の理由から対象を特定します。
「どこに決めましたか」と聞いて、その会社を対象に入れます。
対象は5〜10社で、それ以上だと調査の負荷が大きくなります。
企業そのものの調べ方は取引先を調べる力を標準化する。営業前調査と与信の目線で扱っています。

定点観測としては、項目を固定するのが最も重要で、途中で変えると比較そのものができなくなります。
頻度は四半期に一度で足り、求人の内容は頻繁に変わらないので月次までは要りません。
もちろん、毎回同じ時期に調べることも重要です。
採用には季節性があるので、時期をずらすと比較になりません。
記録の形式は、会社/職種/給与/勤務形態/業務の記述/求める経験/訴求/掲載の期間で、自社の求人も同じ形式で記録して比較の表にします。

前回と比べて競合の条件が変わっているかという変化を見て、変化があった場合は市場そのものが動いています。
情報収集を定常業務にする設計は競合・市場の情報収集を組織の定常業務にするにまとめてあります。
人事と経営は4指標を共有し、打ち手は1〜2件に絞る
人事と経営で共有するのは、段階ごとの通過率(どこで落ちているか)/自社の給与の水準の位置(市場の中で上位か下位か)/採用にかかっている期間(募集から入社まで)/辞退の理由の内訳の4つです。
なかでも自社の給与の水準の位置が、経営の判断に直結する指標です。
給与の水準を上げるかどうかは、経営が決めることだからです。
数字で示すのが要点で、「市場より低い」という感覚ではなく、「同じ職種の求人5社の中で、下から2番目」という形にします。
辞退の理由の内訳は施策の材料になり、条件なのか印象なのか業務の内容なのかが見えてきます。
段階ごとの通過率と採用にかかっている期間は人事の中で改善でき、自社の給与の水準の位置と辞退の理由の内訳は経営の判断が必要になります。
この切り分けを明示しておかないと、人事が改善できることと経営が判断することの区別がつかず、どちらも動かないまま止まってしまいます。

ただ、調べただけでは何も変わりません。
施策につなぐためにやることは、四半期に一度30分の場を人事と経営で持つこと/打ち手を1〜2件決めること(求人の記述を変える、給与の水準を見直す、選考の期間を短くする)/次回にその結果を確認することの3つです。
打ち手を1〜2件に絞るのが要点で、5件出すと結局どれも進みません。
なかでも求人の記述の変更が、最も速く効きます。
給与の見直しには時間がかかりますが、記述の変更はすぐできるからです。
応募数と通過率が変更の前後でどう変わったかを見て効果を測ります。
そのためにも、変えるのは1つずつにします。
複数を同時に変えると、何が効いたのかが分からなくなります。
人事・採用まわりの型そのものは人事・採用のAI活用を型にする。スカウトから候補者評価までにまとめてあります。
求人の記述は5つ変えられ、入社後3か月の流れが最も効く
すぐできる打ち手として、求人の記述で変えられるのは、業務内容の具体性(「〇〇の企画」ではなく「月に何件の〇〇を担当し、〇〇と連携する」)/なぜ募集しているか(増員か、補充か、新規の事業か)/必須の経験の絞り込み(必須を多く書くと応募が減るので、本当に必須のものだけ)/入社後3か月の流れ(最初に何をするか)/訴求の内容の5つです。
なかでも最も抜けやすく、そのぶん効くのが入社後3か月の流れで、候補者が入社後の自分の姿を具体的に想像できるようになるからです。
なぜ募集しているかも、候補者が知りたいところです。
訴求の内容は、入社した人に聞くのが確実です。
「何が決め手でしたか」と聞いて、選んだ理由をそのまま訴求に使います。
選んだ理由こそが、最も精度の高い訴求になります。
求人票やスカウト文そのものの標準化は採用文書の質と量を同時に上げる。求人票・スカウト文の標準化で扱っています。

現場で起きやすい失敗は、段階ごとの数字を記録しない/比較の対象を業界で選ぶ/辞退の理由を聞かない/項目を変える/調べる時期をずらす/打ち手を5件出す/複数を同時に変える、の7つです。
どれも6段階で記録して、同じ職種・規模・地域で選んで、決め手を聞いて、項目を固定して、同じ時期に調べて、1〜2件に絞って、1つずつ変えれば避けられます。
採用の業務でも、当社のAI伴走支援では、段階ごとの数字の取り方を決めるところから、AI化の優先順位づけや実装までを現場の担当者と一緒に進めています。
採用は、比較の対象と段階ごとの数字がそろって動き出す
採用の理由が特定できないのは、比較の対象がない/段階ごとに数字を見ていない/競合の条件を知らない、の3つが原因です。
段階のほうは、社内のデータだけで分かります。
6段階(閲覧/応募/書類通過/面接/内定/入社)の通過率を出して、段階ごとに違う打ち手を取ります。
競合のほうは、公開されている求人から調べられます。
項目は7つで、特に「募集の期間」(長い求人は採用が難しい職種)と「訴求している内容」(競合が語っていない魅力を探す)が効きます。
対象は、同じ職種・同じ規模・同じ地域の5〜10社です。
業界を越えて比べるのは、候補者のほうが業界を越えて比較しているためで、その対象は辞退の理由から特定します。
定点観測は、項目を固定したうえで、毎回同じ時期に、四半期に一度おこないます。
共有する指標は4つで、段階ごとの通過率/自社の給与の水準の位置(数字で示す)/採用にかかる期間/辞退の理由です。
人事が改善できることと、経営が判断することを分けておきます。
打ち手は1〜2件に絞り、求人の記述の変更が最も速く効きます。
変えられるのは5つで、「入社後3か月の流れ」が最も抜けやすく、そのぶん効きます。
訴求は入社した人に「何が決め手でしたか」と聞きます。
直近1年の採用について、段階ごとの人数を集計するところから始めてみましょう。
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執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
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