
人事・採用のAI活用を型にする。スカウトから候補者評価まで
2026/08/28
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
人事・採用の業務は、時間の勝負になる領域です。
良い候補者は複数の会社から声がかかっているので、スカウトの返信が遅れる、面接の日程調整に時間がかかる、選考の結果を出すのに1週間かかる、となると他社で決まってしまいます。
一方で個人情報と評価の公平性が絡む領域でもあるので、AI活用を他の職種と同じようには進められません。
今回は、人事・採用のAI活用の設計について整理していきます。
職種別に工程へAIを当てる全体像は職種別AI活用まとめ。営業・マーケ・人事・経理・法務の使いどころにまとめてあります。

採用業務で時間がかかっている工程
まず実態を整理しておくと、採用の業務で時間を食っているのは3つです。
ひとつがスカウト文の作成で、候補者ごとに内容を変える必要があるので1件あたり10〜20分かかり、しかも件数が多くなります。
次が面接の設計と準備で、何を聞くか、どう評価するかの判断材料が、準備が薄いまま面接に入ると揃いません。
もうひとつが選考結果のまとめで、面接の内容を記録して評価をまとめ次の選考に渡すところが遅れると、候補者を待たせてしまいます。
AIが効くのは3つともですが、扱う情報と判断の重さが違うので、設計のほうは分けておきます。
スカウト文・面接設計・選考結果のまとめの3領域
スカウト文が最も効果が出やすく、リスクが小さい領域なので、ここから始めます。
候補者の経歴と募集している職種の情報を渡して、スカウト文の下書きを作らせます。
設計のコツは3つあります。
ひとつが、候補者の経歴のどこに触れるかを指定する点で、「直近の経験と、当社の職種との接点に触れてください」と指定しないと定型文に近いものが出てきます。
次が、分量の指定です。
長いスカウト文は読まれないので、300字程度が目安になります。
最後が、自社の説明を共通前提に置く点だと思います。
毎回書かせず固定して更新される形にすると、古い説明のままスカウトを送り続ける事態を防げます。
やり方は毎回同じ前提を書かせない。組織の共通前提をデフォルト化するにまとめてあります。
効果の目安は、1件20分が5分になる点です。
ただ、送れる件数のほうも増えます。
注意したいのは、候補者の経歴を扱うので入力してよい情報の範囲を確認する点と自動送信にはしない点で、誤った内容が送られると採用のブランドに影響します。
面接の設計では、職種の要件と候補者の経歴を渡し、聞くべき質問と確認したい観点を出させます。
また、評価の観点を先に決めるのが、この領域の要点です。
面接の後に基準を考えると、その候補者に合わせた基準になってしまいます。
順序は、職種ごとに評価の観点を3〜5個決め、観点ごとに聞く質問を用意し、候補者の経歴に応じて質問を調整する形です。
この順序を守ると、面接官によって聞くことが違う状態が解消され、面接の質が揃います。
効果の目安は、準備が30分から10分になる点です。
準備をしていなかった面接に、準備が入ります。
注意点として、質問を作らせるのは構いませんが、評価そのものはさせません。
選考結果のまとめでは、面接の記録から事実として確認できた内容を整理させます。
ここが最も注意が必要な領域で、「評価」ではなく「事実の整理」に限定します。
やってよいのは、面接で語られた経験の整理・評価の観点ごとに該当する発言を並べる作業・確認できていない観点を挙げる作業の3つです。
やってはいけないのは、合否の判断・候補者の適性の評価・複数の候補者の比較と順位付けです。
このなかで「確認できていない観点を挙げる」が、実務で最も効きます。
面接が終わってから「あれを聞いていなかった」と気づく事態を防げるので、次の面接で聞けます。
効果の目安は、まとめの作成が20分から5分になる点です。
選考結果を出すまでの日数も短縮されます。

個人情報の扱いをどう設計するか
この領域の最重要事項で、技術より先に決めておきます。
確認するのは4つです。
ひとつが、候補者の情報を入力してよいかどうかです。
応募者から取得した情報の利用目的に外部サービスでの処理が含まれているかは、法務と確認が必要になります。
線引きの決め方は生成AIに入れてはいけない情報とは。社内ルールを3段階で線引きするにまとめてあります。
次が、どこまで入力するかです。
経歴と職務内容までにするのか、氏名や連絡先も含めるのか。
氏名を入力する必要はほとんどなく、経歴だけで処理できるからです。
もうひとつが、履歴が残ることを前提に扱う点です。
法人契約であれば学習には使われませんが、履歴は一定期間保存されます。
個人が特定できる情報は入れないという線を引くのが確実です。
最後が、誰が使えるかだと思います。
採用の情報は閲覧範囲が限られるので、使える人の範囲と一致させておきます。
なかでも「氏名を入れない」というルール1つが、最も効く対処だと思います。
経歴の内容だけで処理でき、個人が特定できないからです。

評価の公平性を担保する運用
もう1つの重要事項で、原則は1つです。
評価と判断は人が行う、ということです。
理由は3つあります。
ひとつが、説明できなくなる点です。
不採用の理由を問われたときに、判断の根拠を説明できる必要があります。
次が、基準がずれても気づけない点です。
評価をさせると、何を基準にしたかが分かりません。
もうひとつが、候補者に対して不誠実だという点だと思います。
人生の選択に関わる判断を、判断の主体が曖昧な形で行うべきではありません。
だから運用として明文化しておきます。
「AIの出力は、面接で確認した事実の整理です。評価と合否の判断は面接官および人事が行います」という形です。
あわせて、「AIが評価に使われているか」を候補者に問われた場合の答えも用意しておきます。
事実の整理に使っている、評価はしていない、と答えられる状態にしておくことが、採用のブランドに直結します。

面接の質を上げる別の使い方と、崩れやすい5つのポイント
補足として、評価以外の使い方も挙げておきます。
何を振り返れば、面接の質そのものが上がるのでしょうか?
ひとつが、面接官の質問の傾向を振り返る使い方です。
複数の面接の記録を並べて質問の偏りを見ると、同じ観点ばかり聞いている面接官がいると分かります。
次が、評価の観点が機能しているかを見る使い方です。
「この観点について、実際に判断材料が取れているか」を確認し、取れていない観点は質問の設計のほうが悪いことになります。
もうひとつが、入社後の活躍と選考の評価を突き合わせる使い方です。
長期の話になりますが、評価の観点の妥当性を検証できます。
この使い方は、採用の質そのものに効きます。
時間の削減より、こちらのほうが価値は大きいかもしれません。
崩れやすいのは5つです。
評価をさせること、氏名や連絡先を入力すること、法務の確認をせずに始めること、スカウトを自動送信にすること、評価の観点を面接の後に考えることです。
どれも、事実の整理に限定し、経歴だけで処理し、利用目的の範囲を確認し、下書きまでで止め、職種ごとに観点を先に決めれば避けられます。

技術とルールの設計は、同時に進める
ここまで書いてきたとおり、人事・採用の領域は効果が出やすい一方で、扱う情報と判断の重さが他の職種と違います。
難しいのは、技術の設計とルールの設計を同時に進める必要がある点だと思います。
どこまで入力してよいかが決まらないと作れませんが、何ができるかが分からないとルールのほうも決められません。
さらに、関係者が多い領域でもあります。
人事、法務、情報管理、そして経営、それぞれの立場からの懸念を調整しながら進める必要があるので、社内だけだと止まりやすいところです。
私たちが提供しているAIコンサル&伴走支援では、こうした個人情報を扱う領域について、ルールの策定と実装を並行して進めています。
「効果は分かるが個人情報の扱いで止まっている」という状態の場合は、進め方の参考になるかもしれません。
スカウト文から始めて、評価は人の手に残す
採用業務で時間がかかっているのは、スカウト文の作成・面接の設計・選考結果のまとめの3つです。
AIは3つとも効きますが、扱う情報と判断の重さが違うので設計を分けます。
スカウト文から始めるのが順序で、効果が出やすくリスクが小さいからです。
経歴のどこに触れるかを指定し、300字程度に収め、自社の説明は共通前提に置きます。
面接の設計では、評価の観点を職種ごとに先に決めます。
面接の後に基準を考えると、その候補者に合わせた基準になってしまうからです。
選考結果のまとめは「評価」ではなく「事実の整理」に限定します。
「確認できていない観点を挙げる」が最も効きます。
個人情報の扱いは技術より先に決めます。
「氏名を入れない」というルール1つが最も効く対処で、経歴だけで処理でき、個人が特定できないからです。
あわせて、評価と判断は人が行う、を明文化しておきます。
説明できること、基準のずれに気づけること、候補者に対する誠実さのためです。
スカウト文の下書きを1件試してみたとき、経歴のどこに触れさせるか、指定はもう固まっていますか。
すぐ使える業務アプリが300以上
開いてそのまま使えて、AIで自社用にも直せます。15の分野から、やりたい作業で探せます。業務アプリを見る
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
お知らせ・組織AI推進ナレッジ一覧










