
新規事業の初期検討を高速化する。海外事例・展示会・共催先を調べ切る
2026/09/17
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
新規事業の検討は、情報集めの段階で止まることが多いかと思います。
市場を調べ、事例を探しているうちに数か月が経ち、それでも「もう少し調べてから」となり、情報のほうにはそもそも終わりがありません。
今回は、新規事業のリサーチをAIで回しながら、初期の検討を期限つきで意思決定まで持っていく設計について書いていきます。
推進担当としての情報収集と経営判断の全体像は、AI推進担当者の情報収集と経営判断。リサーチとROIの設計にまとめてあります。

新規事業の検討は情報集めで止まる
新規事業の検討は、なぜ情報集めで止まってしまうのでしょうか?
理由は3つあり、情報に終わりがない、判断の基準がない、通常業務に押される、が重なっています。
情報に終わりがないのは、調べるほど調べていないことが見えてくるからです。
判断の基準がないのは、どこまで分かれば進めてよいかが決まっていないからです。
通常業務に押されるのは、緊急性がないので後回しになるからです。
最も本質的なのは、判断の基準がないことです。
基準がないから、「もう少し調べてから」が終わりません。
情報に終わりがない点は、そもそも解決できません。
例えば市場の規模ひとつ取っても、調べ方を変えれば別の数字が出てくるように、情報を集め切ること自体が不可能だからです。
だから、判断の基準を先に決めて期限を切ります。
どこまで分かれば次に進むのかを、先に決めるということです。
また、期限を切ることは通常業務に押される問題にもそのまま効きます。
期限があると、優先順位が上がるからです。

リサーチの方向は、3つに分かれる
調べる方向は、どう分ければいいのでしょうか?
次の3つに整理でき、海外の事例(同じ課題に対して海外で何が行われているか)、展示会や業界のイベント(何が出展され、どんなテーマが扱われているか)、共催や提携の候補先(一緒にやれる相手がいるか)です。
最も価値があるのは「海外の事例」で、日本で見えていない動きが海外では先に起きていることがあるからです。
展示会や業界のイベントは動向の把握に効き、展示会のテーマから業界が何に注目しているかが読めます。
最も見落とされるのは「共催や提携の候補先」です。
自社だけでやることを前提にしていると、そもそもこの方向が視野に入りません。
ところが候補が見つかると、相手のリソースを使えるので、検討の速度が変わります。
海外事例・展示会・共催先は、こう調べる
海外事例・展示会・共催先は、それぞれどうやって調べればいいのでしょうか?
海外の事例は、探すものを3つに決めておきます。
同じ課題を解決しているサービス、その課題への異なるアプローチ、その領域で起きている失敗です。
最も価値のある材料は「その領域で起きている失敗」です。
成功事例より、失敗の理由からのほうが学べるからです。
日本との違い、つまり制度や市場の構造、顧客の行動を確認して、そのまま持ち込めるかを判断します。
持ち込めない場合は、その理由まで明確にしておきます。
「日本ではこの制度があるので、この形はできない」という形です。
また、出典は必ず求めます。
海外の情報は確認が難しいので、出典が示されないものは使わないほうが確実です。
翻訳の過程で専門用語の訳がずれることにも、注意が要ります。
展示会やイベントは、出展しているカテゴリ、扱われているテーマ、登壇している企業の3つを見ます。
登壇している企業から、その業界の主要な会社と注目されている取り組みが分かるからです。
また、過去数年の変化を見ます。
3年前と今で扱われているテーマが変わっていれば、そこが業界の動向になります。
そのうえで、実際に行くかどうかを判断します。
行く場合は目的を決め、情報収集なのか相手を探すのか自社の発信なのかをはっきりさせておきます。
出展の一覧や講演の資料はオンラインで見られることも多いので、行かなくても分かる部分は先に確認しておきます。
共催や提携の候補先は、探す観点を3つ置きます。
同じ顧客層を持っている、補完する機能を持っている、同じ課題を持っている、です。
意外に有効なのは「同じ課題を持っている」観点で、同じ課題を持っている会社と一緒に解決するという形があり得るからです。
競合ではない相手、つまり同じ顧客層を持っているが提供しているものが違う相手を探すことになります。
相手の状況は法人情報・業績・リスク・従業員の推移の4観点で調べておき、相手にとっての利点も考えておきます。
自社の利点だけを並べても、話は進まないからです。
あわせて、既に接点があるか、紹介してもらえるかというアプローチの経路も探します。
取引先の調べ方そのものは取引先を調べる力を標準化する。営業前調査と与信の目線、市場側の継続的な情報収集は競合・市場の情報収集を組織の定常業務にするにまとめてあります。

12週間で、意思決定まで持っていける
初期検討の全体は、どう組み立てて12週間で意思決定まで進めればいいのでしょうか?
全体は12週間で組み、最初の2週間が市場と事例で、3方向の情報収集を2週間という期限つきでやります。
次の2週間が仮説と検証設計、その次の4週間が初期の検証、最後の4週間で意思決定という並びです。
最も重要なのは、最初の2週間に期限を切ることです。
情報収集には終わりがないので、期限がなければ確実に延びるからです。
情報が足りなくても、次に進みます。
足りない部分は「検証で確かめる」として明示しておけばよいからです。
仮説の段階では、誰の、どんな課題を、どう解決するか、という仮説を3つ立てます。
あわせて、最も不確実な部分を特定します。
「本当にその課題があるか」「その解決方法を受け入れるか」「その価格で払うか」のうち、多くの場合は最初のものが最も不確実です。
だから、そこから検証します。
ここが崩れてしまうと、他のすべてが成立しなくなるからです。
検証の方法は、顧客に聞く、小さく作って試す、既存の顧客に提案してみる、といったところです。
あわせて、判断の基準を決めておきます。
どういう結果が出れば進めるか、どういう結果なら止めるかです。
止める基準を決めておくのが要点です。
決めていないと、止められなくなるからです。
仕様を固め切らずに動かす作法は完璧な仕様を待たない。「作って動かす」を組織の作法にするにまとめてあります。
検証の4週間では、最も不確実な部分を実際に確かめます。
顧客に聞くのが最も速いので、既存の顧客か想定する顧客層の人に10人ほど聞きます。
統計的な精度までは要らず、傾向が分かる程度で足ります。
ただ、聞き方には注意が要ります。
「こういうサービスがあれば使いますか」と聞くと「使う」と答えが返ってきますが、実際には使われないからです。
だから、現状を聞きます。
「いまその課題をどう解決していますか」「それに何時間かけていますか」「お金を払っていますか」です。
最も重要なのは、お金を払っているかどうかです。
払っているなら、課題が認識されているということになるからです。
払っていない場合は課題として認識されていない可能性があり、そうなると提案そのものが難しくなります。

最後の4週間で、進める、止める、方向を変えて再検証、の3つを明示したうえで決めます。
止めることも、正当な選択にしておきます。
12週間かけて止める判断ができたこと自体が成果だからです。
止めた理由を記録しておけば、後から状況が変わったときに再検討もできます。
進める場合は、どのくらいの資源を投じるかと次の判断の時期を決めますが、全部を最初に決めず次の3か月分だけを決める段階的な進め方にします。
調べるだけで終わらせないために、期限を先に決めておく
調べただけで終わらせないためには、どんな工夫をすればいいのでしょうか?
最も多い失敗パターンは、調べただけで終わることです。
そうならないための工夫は3つあり、最初の2週間の成果物を「情報の一覧」ではなく「仮説」にする(調べた結果、何が言えるか)、検証を予定として入れる(「10人に聞く」を担当と期限つきで予定に入れる)、12週後の意思決定の場をいま予定に入れてしまう、です。
最も効くのは「12週後の意思決定の場をいま予定に入れる」ことです。
期限が決まっていると、そこまでに進むからです。
また、経営が参加する場にしておきます。
判断できる人がいない場では、結局そこで決まらないからです。
参加者には、先に伝えておきます。
「12週後に、進めるか止めるかを判断します」と伝えます。
よくある失敗は7つあり、情報収集に期限を切らない、判断の基準を決めない、止める基準を決めない、情報を集めるだけで検証しない、「こういうサービスがあれば使いますか」と聞く、共催や提携の候補を探さない、意思決定の場を先に設定しない、です。
どれも、2週間で区切り基準を先に決めて、止める条件も書いて10人に聞いて、現状を聞いて3方向で探し、12週後の会議をいま入れれば避けられます。

事業として成立するかの設計には、別の専門性が要る
事業として進めると判断した後は、何がどう変わるのでしょうか?
ここまで書いてきたのは初期の検討を12週間で回す設計ですが、進めると判断した後が本番になります。
事業として成立させる設計には、業務の改善とは別の専門性が要ります。
必要になるのは5つで、提供する形の設計、価格の設計、届ける経路、運用の体制、責任の範囲です。
最も見落とされるのは「責任の範囲」です。
社内向けなら手作業でも回せますが、外に提供すると止まったときの影響が相手の業務に及ぶからです。
社内ツールの延長のまま始めると、本業を巻き込んで止まることになります。

社外に出す場合の審査の考え方は社内AIツールを社外に公開する時の審査フローとチェックポイントにまとめてあります。
だから、事業として成立するかの見極めが先になります。
同じ課題を持つ会社が他にもあるか、提供を続けられるか、責任を負えるか、の3点です。
見極めた後は、設計を一度作り直します。
既存のものの拡張ではなく、作り直しになります。
内製と購買の判断軸は業務システムを内製するか買うか。判断基準を組織のフレームにするで扱っています。
私たちが提供しているAI新規事業支援では、事業として成立するかの見極めから、PoCやMVPとしての設計と開発までを一緒に進めています。
初期の検討で手応えがあった、という状態の場合は、進め方の参考になるかもしれません。
基準を先に決めれば、12週間で意思決定まで進める
新規事業の検討が止まるのは、情報に終わりがない、判断の基準がない、通常業務に押される、の3つが原因です。
本質は判断の基準がないことです。
基準がないから、「もう少し調べてから」が続きます。
3方向は、海外の事例(その領域で起きている失敗が最も価値がある)、展示会やイベント(過去数年のテーマの変化を見る)、共催や提携の候補先(最も見落とされて、見つかると速度が変わる)です。
12週間の設計は、最初の2週間が情報収集(期限を切るのが最も重要で、足りなくても進む)、次の2週間が仮説と検証設計(最も不確実な部分から検証して、止める基準も決める)、4週間の検証、最後の4週間で意思決定(止めることを正当な選択にする)という並びです。
検証では10人に聞き、「使いますか」ではなく現状を聞きます。
お金を払っているかが最も重要です。
調べて終わらせないために、最初の成果物を仮説にする、検証を予定に入れる、12週後の意思決定の場を先に設定する、の3つです。
最も効くのは12週後の意思決定の場を先に設定することで、その場は経営が参加する場にしておきます。
検討したいテーマについて、海外で起きている失敗を3件調べ終えた時点で、仮説はもう具体的になっています。
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執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
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