組織のAI活用をAIポータルと伴走支援で加速

日報と振り返りを経験学習の装置にする

日報と振り返りを経験学習の装置にする

執筆:寺田昇平

AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事

仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。

日報を書いている組織は多いのですが、多くの場合それは報告のための報告になっています。

「〇〇社を訪問しました」「資料を作成しました」というやったことの一覧が並ぶだけで、書く側も読む側も価値を感じていません。
書くのに10分、読むのに数分かけながら、そこから何も変わらない状態です。

今回は、日報とAIによる振り返りを経験学習の装置に変える設計を書いていきます。
社内のAIボットを共通資産にする全体像は社内AIボットを共通資産にする。作成・共有・改善のサイクルにまとめてあります。

経験学習の4つの工程。実際にやる、何が起きたかを整理する、そこから何が言えるかを考える、次の行動を決める。このうち振り返りと概念化の2つが飛ばされるので、日報をその2つの場にする

日報が報告のための報告になっている

なぜ、そうなってしまうのでしょうか?
理由は3つあります。

1つは書く項目が「やったこと」だけになっている点で、作業の記録はカレンダーにも案件の記録にも残っているため、重複した作業になっています。
2つ目は読み手が何を見るかを決めていない点で、進捗の確認なのか支援の判断なのかが決まっていないと、読んでも何も起きません。
最後は書く側に価値がない点で、自分のために書いていないので純粋な義務として残ります。
このなかで価値のなさがいちばん本質的な原因で、書く側に価値がないと書かれる内容そのものが薄くなっていくので、対処は書く側に価値がある形に作り替える一点に絞られます。

経験学習のサイクルを回す装置にする

経験から学ぶには、何が必要なのでしょうか?
4つの工程があるとされています。

実際にやる(経験する)、何が起きたかを整理する(振り返る)、そこから何が言えるかを考える(概念化する)、次の行動を決める(次に試す)という並びです。
このなかで、振り返りと概念化の2つが飛ばされます。
経験してすぐ次の行動に移ってしまうので、学びが定着しないまま流れていきます。

この2つには時間と問いの両方が必要で、1人で自分に問いを立てて振り返るのは、思っているより難しい作業です。
だから日報を、この2つの工程の場にします。
作業の記録ではなく、振り返りと概念化のための時間として位置づけ直します。

同じ10分でも、何をしたかを並べる10分と、なぜうまくいったかを言葉にする10分では、残るものが変わってきます。

振り返りの問いを固定して、日報にAIをどこまで使うか

問いは、どう固定すればいいのでしょうか?
3つに絞ります。

今日うまくいった点と、その理由は何か。
うまくいかなかった点と、次にどうするかは何か。
気づきは何か。

「なぜ」を必ず入れるのが要点で、うまくいった理由を考えれば、そのまま概念化の工程になります。
最後の項目がいちばん価値があるのは、顧客の発言、市場の変化、業務の非効率といった情報が、ここに集まってくるからです。

逆に「やったこと」は書かせません。
他の記録にあるものを書き写しても、時間が増えるだけだからです。

分量は3項目・各2〜3行で、書くのに5分です。
これを超えると続かなくなります。

これまでの日報はやったことの一覧だが、他の記録に残っているので書かせない。代わりに、うまくいった点とその理由、うまくいかなかった点と次の対応、気づきの3項目を各2〜3行、5分で書く。気づきに顧客の発言や市場の変化が集まるので最も価値がある

AIの使いどころは4つあります。
1つは口頭で話した内容を3項目に整理させれば、移動中に話すだけで済むので書く負荷が消えます。
音声を前提にした業務の組み方は入力が面倒で止まる人を減らす。音声入力を前提にした業務設計にまとめてあります。

2つ目は「なぜ」を掘る問いを返させることです。
「うまくいった」と書いたら「なぜそう思いますか」と聞き返す形にすると、1人では掘れない部分が掘れます。

また、週次でまとめさせることも効きます。
1週間分の日報から「今週繰り返し出てきたテーマ」を出します。

さらに、月次で成長の記録にすることも有効です。
1か月分から「先月と比べて変わったこと」を出します。

後半の2つがいちばん価値があります。
日次では見えない傾向が、まとめると見えてくるからです。

日報でのAIの使いどころを、毎日、週次、月次の3つの時点に分けて示した図。毎日は口頭の内容を3項目に整理し、書いたことに「なぜ」を聞き返す。週次は繰り返し出てきたテーマを出し、月次は先月と比べて変わったことを出す。週次と月次が最も価値がある

週次のまとめは、本人が自分で見るのが大切です。
上司に出すためではなく自分の振り返りに使う形にすると、書く側の価値という原因がそのまま解けます。
自分の成長サイクルにAIを置く話はAIを自分の指導役にする。個人の成長サイクルを組織が支援するで扱っています。

マネージャーの負荷を上げずに、1on1につなげる

読む側の負荷は、どう抑えればいいのでしょうか?
読む側の設計も決めておきます。
全員の日報を毎日読むのは負荷が大きく、10人いれば毎日30分かかるので続きません。

また、毎日読む必要はなく、やることは3つに絞ります。
日次は読まず本人の振り返りに任せる、週次のまとめだけ読む(10人でも15分で読めます)、特定の条件のものだけ日次で見る、の3つです。
最後の条件は、「うまくいかなかった点」に緊急性があるものを自動で抽出して通知する形にします。
顧客のクレーム、トラブル、判断が必要な相談といったところです。

日報を読む側の設計。日次は担当者本人が振り返りに使い、マネージャーは読まない。週次はAIが繰り返し出たテーマをまとめ、本人が見て、マネージャーはそのまとめだけを読む。緊急性のあるものだけ仕組みが抽出して通知し、マネージャーが日次で見る

また、日報を評価に使わない方針も決めておきます。
使うと書かれる内容が変わって、うまくいかなかった点が書かれなくなるからです。
「うまくいかなかった点が書かれている状態」こそが最も価値があるので、ここに支援の機会が集まります。

読んだあとは、週次のまとめを1on1の材料にします。
話すのは3つです。
繰り返し出てきたテーマ(そこに課題があります)、うまくいかなかった点への対応(支援が必要かどうか)、気づきとして書かれた内容です。

最後の項目が組織の資産になります。
顧客が言ったことや市場の変化が、現場から上に上がる経路になるからです。

1on1の前にまとめを読んでおくのも欠かせません。
その場で読むと時間が消えるからです。

さらに、日報の書き方を批評しないのも大切です。
「この書き方が悪い」という指摘が続くと、そもそも書かれなくなります。
商談の振り返りを個人任せにしない設計は商談の振り返りを個人任せにしない。トップセールスとの差分を可視化にまとめてあります。

成長を追える指標は3つ、機能していなければやめてもいい

成長は、どう追えばいいのでしょうか?
3つを見ます。

1つ目は「なぜ」が書かれている割合で、概念化の工程が回っているかが分かり、書かれていないなら問いの形が悪いということです。
2つ目は気づきの内容の変化で、3か月前と比べて視点が変わっているかを見ます。
3つ目は、「次はどうするか」が実行されているかです。

最後の項目がいちばん本質的です。
振り返って次を決めても実行されなければ学習にならないからです。

成長を追う3つの指標。「次はどうするか」が実行されているかがいちばん本質的で、前回書いたものを次回の日報の冒頭で確認する。ほかは「なぜ」が書かれている割合と、気づきの内容の変化

追い方は簡単です。
前回書いた「次はどうするか」を次回の日報の冒頭で確認して、実行したかどうかを書かせます。
この1行があるだけで、前回の振り返りで書いた内容が、そのまま行動に変わります。

実行できなかった場合も、忘れた、時間がなかった、状況が変わった、といった理由まで書いてもらいます。
研修の側で理解度を測る話は研修の理解度を測れる状態にする。テストとクイズを自動化するで扱っています。

逆の判断も置いておきます。
日報が機能していないなら、やめるという選択もあります。
やめてよい条件は3つで、作業の記録が他にある、読み手が何も判断していない、本人が価値を感じていない、の3つが揃っているなら、やめて構いません。
日次をやめて週次の振り返りだけにする、という中間の選択もありますし、週次だけでも経験学習は回ります。

日報をやめてよい3つの条件。作業の記録が他にある、読み手が何も判断していない、本人が価値を感じていない。3つが揃っているならやめて構わない

判断の目安は、書く側が価値を感じているかどうかの一点です。
一人で考える時間そのものの質を上げる話は一人で考える時間の質を上げる。AIを壁打ち相手にする文化にまとめてあります。

失敗の型は7つあります。
「やったこと」を書かせる、「なぜ」を入れない、項目を5つ以上にする、全員の日報を毎日読む、日報を評価に使う、日報の書き方を批評する、「次はどうするか」を追わない、の7つです。
どれも、3項目に絞って理由を書かせ、5分に収めて週次のまとめだけを読めば避けられます。
評価から切り離し、内容に口を出さず、次回に実行を確認するのも欠かせません。

日報の項目や振り返りの運用を見直したいときは、私たちのAI伴走支援でも、業務の洗い出しから社内研修までを現場の担当者と一緒に進めています。

日報は、書く側に価値がある形にすれば機能する

日報が報告のための報告になるのは、書く項目が「やったこと」だけ、読み手が何を見るか決まっていない、書く側に価値がない、の3つが原因です。
対処は、振り返りと概念化の場に変える点にあります。
経験学習の4つの工程のうち、この2つが飛ばされているからです。

問いは3つに固定します。
うまくいった点とその理由、うまくいかなかった点と次の対応、気づきです。

「なぜ」を必ず入れて、「やったこと」は書かせません。
3項目・各2〜3行・5分です。

AIは、口頭で話した内容の整理、「なぜ」を掘る問いを返させる、週次のまとめ、月次の成長の記録に使います。
後半の2つが最も価値があり、本人が自分で見る形にします。

読む側は、日次では読まず週次のまとめだけを読みます(10人で15分)。
緊急性があるものだけ日次で検出して、日報は評価に使いません。
「うまくいかなかった点が書かれる状態」に、支援の機会があるからです。

測るのは、「なぜ」が書かれている割合、気づきの内容の変化、「次はどうするか」が実行されているかの3つで、前回書いた次の一手を次回に確認します。
機能していないならやめる判断もあります。
目安は、書く側が価値を感じているかどうかです。

まずは自分の日報を3項目に変えて、1週間だけ書いてみると、残る内容の質はそれだけで変わってきます。

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執筆:寺田昇平

AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事

仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。

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