
AIを自分の指導役にする。個人の成長サイクルを組織が支援する
2026/09/14
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
AIを毎日使っているのに、成果物の質がいつまでも上がらない人がいます。
使い方を見ても1年前とほとんど変わっておらず、同じ書き方で同じ質のものを出し続けています。
原因は、自分の使い方が良いのか悪いのかを誰も教えてくれないことです。
今回は、AIを自分の指導役にしてスキルアップの学習サイクルを回すやり方を書いていきます。
品質を組織でそろえる全体像はAIアウトプットの品質を組織でそろえる。標準化とレビュー体制にまとめてあります。

使っているのに上手くならない人
使っているのに、なぜ上手くならないのでしょうか?
理由は3つあります。
まず、出てきたものを評価する基準がなく、「これで良いのか」を自分で判断できないまま、そのまま通してしまいます。
次に、改善の方向が分からず、質を上げたいと思っても何を変えればよいのかが分かりません。
最後に、フィードバックを受ける機会がなく、上司は成果物のほうは見ても使い方までは見ていません。
なかでも大きいのが、最後のフィードバックの不在です。
使い方について指摘を受ける機会は、そもそも業務のなかにありません。
自分の使い方の癖は、自分ではまず気づけないものです。
だからこそ、フィードバックの経路を作ることが、この記事で書いていく対処になります。
アウトプットのレビューをAIに任せる。プロンプト構成力を鍛える
評価する基準がないという問題には、どう対処すればよいでしょうか?
やることは、自分が作った成果物をAIにレビューさせることです。
要点は、観点を指定することにあります。
「この文書について、根拠が示されていない箇所と、説明が不足している箇所を挙げてください」という形で頼みます。
読み手も指定します。
「この文書を初めて読む人が分からない箇所を挙げてください」という形です。
上司の視点も指定します。
「この報告を受ける立場の人が疑問に思う点を挙げてください」という形です。
この3つを使い分けると、自分では気づけない指摘が出てきます。
指摘を全部直す必要はなく、判断そのものはあくまで自分がします。

ただ、指摘を読むだけでも次からは意識が変わりますし、出てきた指摘の傾向を記録しておけば、同じ指摘の繰り返しがそのまま自分の癖として見えてきます。
改善の方向が分からないという問題には、使い方そのものを改善して対処します。
やることは、自分が書いた指示について改善点を挙げさせることです。
「7項目のうち何が入っているか」も確認させます。
役割と前提、出力形式、段階、参照範囲、不明を許す、複数案、否定形を使わない、の7つです。
指示の書き方は「この指示について、より良い結果を得るための改善点を3つ挙げてください」という形になります。
改善した指示で実際に試し、結果の違いを見るところが最も効きます。
うまくいった指示は保存しておき、次回はその保存したものを使うと、改善が蓄積していきます。
保存した指示は定期的に見直します。
3か月前に作った指示より、いまのほうが良い書き方が分かるようになっているものです。
プロンプトの作法そのものは全社共通のプロンプト作法を決める。押さえるべき7つの基本にまとめてあります。
「上手くなったか」を自分で確認する
自分が上達しているかどうかは、どう確かめればよいのでしょうか?
確認するのは3つです。
出てきたものをそのまま使える割合、差し戻しの回数、保存した指示の数です。
もっとも分かりやすいのが、そのまま使える割合です。
1回で使える形が出てくるようになったなら、修正が必要になる回数が減っている証拠です。
差し戻しの回数は、レビューで戻ってくる回数のことです。
保存した指示の数は、使い回している指示が増えているかどうかで、そのまま効率化の実績になります。

3か月前の自分の指示を、見てみるのもよい方法です。
そこに改善点が見えるなら成長していますし、見えないならそこで止まっています。
この確認は月に1回のペースでやり、時間は5分もあれば足ります。
使い方の改善サイクルそのものは使い方の改善サイクルを回す。プロンプトの添削とフィードバックにまとめてあります。
1on1や評価との接続。個人の成長を組織の指標にする
フィードバックの機会がないという問題には、組織の設計が必要になります。
1on1では、成果物ではなく使い方のほうを話します。
話す内容は、今月よく使った業務、うまくいかなかった場面、保存した指示の3つです。
なかでも価値が大きいのが、うまくいかなかった場面です。
共有してもらえれば、そこで上司が助言できます。
上司のほうも、自分の使い方を話します。
一方的に聞くのではなく上司の側も共有すると、部下のほうも話しやすくなります。
これを評価には直接使いません。
使用の頻度や上達の度合いを評価の項目にしてしまうと、形式的な報告ばかりが増えてしまいます。
ただ、業務の成果としては評価されます。
削減された時間や成果物の質の向上といったところは、通常の評価のなかに含まれます。
管理職側の型は管理職のAI活用を型にする。会議設計・タスク委譲・数値把握にまとめてあります。

組織としての指標も、3つ決めておきます。
保存された指示の数、指示を共有している人の数、「使い方が変わった」という報告です。
3つのうちいちばん本質的なのは、指示を共有している人の数です。
自分の指示を他の人に渡している人が増えていれば、組織としての使い方が育っています。
上達した人の使い方を集めて社内に共有すると、最も効率的な教育になります。
上達の速い人と遅い人の差も見ておきます。
差が大きい場合は、支援が必要な人がいるということです。
上達が止まる場面は、個人の努力だけでは超えられない
ここまでの対処にも、限界があります。
個人の努力では超えられない壁が、3つあるからです。
業務そのものの設計、参照できる情報、何ができるかの認識です。
まず、使い方をいくら改善しても業務の流れが変わらなければ効果は限られます。
次に、社内の資料が整っていなければ、そもそも精度は上がりません。
最後に、「これができる」と知らなければ、試しようがありません。
なかでも大きいのが、最後の認識の壁です。
知らないことは、そもそも試しようがないからです。
この壁は個人の努力だけでは解決しにくく、情報を追う時間が必要なうえに、情報だけでは判断もできません。

だから、触る機会のほうを組織が作ります。
月に1回、新しい使い方を試す場を設けて、情報だけでなく実際に触ってもらいます。
離脱を減らす設計は「AIは使えない」と離脱する人を減らす。つまずき7パターンとサポート設計、書けない人への対処はプロンプトを書けない人を置いていかない。作成を民主化するにまとめてあります。
つまずきやすいのは6つです。
フィードバックの経路を作らない、指摘を全部直そうとする、改善した指示を保存しない、1on1で成果物だけを話す、使用の頻度や上達を評価の項目にする、「知らないことは試せない」ことを見落とす。
どれもレビューの観点を用意して、判断は自分がして、良い指示を保存して、使い方について話して、評価には直接使わず、触る機会を組織が作れば避けられます。
短期間で一気に底上げしたい層には、集中インプットが効く
ここまで書いてきたのは、日常のなかでの成長のサイクルです。
ただ、このサイクルには時間がかかります。
時間をかけられない層もあり、それが経営層と管理職です。
判断する立場にあって水準を上げる必要が大きいのに、同時に学ぶ時間が最も取れない層でもあります。
日常のサイクルでは、この層には追いつきません。
月1回の1on1と日々の試行錯誤、この積み上げには数か月から1年はかかるからです。

判断の水準を上げるには、何ができるのかの全体像が必要になります。
断片的な情報を積み上げても、そこから地図は作れません。
だからこそ、短時間の集中的なインプットが効きます。
まとまった時間を確保していまのAI活用の全体像を一度掴めば、そこから先は自分で追える状態になります。
私たちが提供している経営層向けAIトレーニングは、経営者・役員・管理職が短時間で「いまのAI活用」を掴む形にしています。
現場は育っているが判断する層のところで止まる、という状態の場合は、こちらから当たるほうが早いかもしれません。
成長のサイクルは、フィードバックの経路があるかで決まる
使っているのに上手くならないのは、評価する基準がない、改善の方向が分からない、フィードバックを受ける機会がない、この3つが原因です。
対処の中心は、AIにレビューを任せることです。
観点を指定し、読み手を指定し、上司の視点を指定する、この3つを使い分けます。
自分の指示についても改善点を挙げさせて試し、うまくいった指示は保存します。
3か月前の自分の指示を見返せば、そこに成長が見えます。
1on1では使い方のほうを話し、これを評価には直接使いません。
もちろん業務の成果としては、通常どおり評価されます。
それでも個人の努力だけでは超えられない壁があり、なかでも「何ができるかを知らない」ことがいちばん大きな壁になります。
だからこそ、触る機会は組織が用意します。
まずは自分が作った成果物を1本選んで、「初めて読む人が分からない箇所」をAIに挙げさせてみましょう。
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執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
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