組織のAI活用をAIポータルと伴走支援で加速

業務フローの可視化から始めるAI導入ステップ

業務フローの可視化から始めるAI導入ステップ

執筆:寺田昇平

AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事

仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。

業務のAI化について相談をいただくとき、最初に聞くのが今の業務の流れです。

「全体像を説明できる人がいない」。
ここでかなり詰まるのは、担当者ごとに認識が違っているからです。
この段階でツール選びに入ると、ほぼ確実に手戻りします。

導入したあとで、その工程はすでに別の部署が先にやっていたと分かることも珍しくありません。
組織的なAI推進で、最初につまずきやすい場所です。

今回は、業務フローを可視化してAI化につなげるまでの具体的なステップを書いていきます。
全社規模での洗い出しはAI化する業務が見つからない。全社一斉の業務棚卸しの設計で扱っています。

業務フローの可視化からAI化までの5つの手順。関係者で書き出す、議論ごと記録に残す、AIがフロー図に構造化する、参加者が確認して直す、AI化する工程を絞り込む。AIが動くのは3つ目の構造化だけで、前後は人が進める

関係者を集めて、その場で見える化する

最初のステップは、AIを使わずに人の手で業務を見える化することです。
関係者に集まってもらって、その場で流れを書き出していきます。
やり方は、会議室のホワイトボードでも、画面共有しながらのオンラインツールでも構いません。

例えば受注から請求までを1本の線で書いて、その上に登場人物を並べていくだけでも、十分に形になります。
この段階でツールにこだわる必要はありません。
付箋を並べていくだけでも十分に機能します。

進行のコツは、「理想の形」ではなく「今どうしているか」だけを書いてもらうことです。
「こうあるべきだ」という話が混ざると、現状と改善案が同じ図の中に並んで、どこが実態なのか分からなくなります。
改善の議論は、書き終わってからにします。

大事なのは、参加している全員の認識のずれをなくすことです。
誰が何をしているのか、どこからどこへ情報が渡っているのか。
書き出していくと、「自分の担当だ」と思っていた作業を、隣の人もやっていたと気づく場面が普通に出てきます。

集めるメンバーには、実際に手を動かしている人を必ず入れておきます。
管理側だけで書き出すと、実態とは違う理想のフローができあがるからです。
それを土台に設計を進めると、動かした瞬間に現場で回らなくなります。

ここを飛ばすと、後の設計で大きな手戻りが出ます。
時間がかかるように見えても、この場を1回持つほうが結果的に早いというのが実感です。

結論だけでなく議論の文脈を残す

次のステップは、可視化の過程と議論の内容を記録に残すことです。
ここは意外と見落とされがちな部分で、最終的な結論だけを残すと、後から見たときに文脈が抜け落ちてしまいます。
このフローになった理由、検討したけれど採用しなかった案、例外が発生する条件。
こうした背景が分からないと、AIに適切な指示を出すのが難しくなります。

具体的には、議論している会議そのものを録音や録画し、そのやり取りをテキストのデータとして保存しておきます。
この記録が、後でAIを使うときの材料になります。

録音を取ることは、「今日はログを残します」と参加者に事前に伝えておきます。
目的が評価ではなく業務の整理だと説明しておけば、まず問題にはなりません。
ただ、黙って録っていたことが後から分かると、次の会議で本音が出なくなります。

残しておきたいのは、特に例外の話です。
「このお客様のときだけ手順が違う」といった話です。
こうした情報は、まとめた資料からは真っ先に落ちます。

ただ、自動化を設計する段階になると、まさにここが問題になってきます。
記録を取るときのコツは、きれいにまとめようとしないことです。
発言をそのまま残しておくほうが、あとから使える情報が多くなります。
整理した議事録だけを残すと、整理の過程で落ちた情報は二度と戻ってきません。

業務の可視化で残しておきたい議論の文脈。このフローになった理由、検討したが採用しなかった案、例外が発生する条件のうち、とくに残したいのは例外の話で、まとめた資料から真っ先に落ちる。きれいにまとめず発言をそのまま残す

会議の記録をどう扱うかについては会議と議事録のAI化。準備から共有・タスク化までの設計に整理してあります。

記録をAIに読ませて構造化する

記録が残ったら、ここでAIの出番です。
議論のログと結論をAIに読み込ませて、業務フロー図として整理・構造化させます。
人がゼロからフロー図を描こうとすると、清書の作業だけでそれなりの時間がかかります。
しかも、話に出ていたはずの分岐が抜けたり、順序が実態とずれたりといった抜け漏れも発生しがちです。

AIに任せると、雑多な記録から論理的な形に組み立てる作業が短時間で終わります。
もちろん出てきたものが正しいとは限らないので、そのまま使わずに参加者に確認してもらう工程は必要です。
確認の場は、最初の可視化に参加した人に対してやるのが効率的です。
議論の文脈を知っている人なら、図のどこが違うかをすぐに判断できます。

まったく関わっていない人に見せると、前提の説明から始まって時間がかかります。
ここで面白いのが、間違ったフロー図を見せられると、人は「ここが違う」と的確に指摘してくれることです。
ゼロから説明してくださいと言われると出てこない情報も、「これは違います」という形なら出てきます。
たたき台を作って直してもらうほうが、正確な図に早く辿り着けます。

可視化そのものにAIを使う話は複雑な自動化の前に取り組むべき「業務の標準化」と再設計でも扱っています。

構造化の指示を出すときは、出力の形式を先に決めておくと扱いやすくなります。
工程名、担当、入力、出力、判断が入る箇所。
この並びで書き出させると、そのままAI化の検討に使える表になります。
文章として整理させると読み物になってしまい、次の工程では使いにくくなります。

議論のログと結論をAIに読ませ、工程名・担当・入力・出力・判断が入る箇所の並びで書き出させると、そのままAI化の検討に使える表になることを示した図。文章で整理させると読み物になり使いにくい

フロー図を見ながらAI化の候補を絞る

業務フローが整理されたら、最後にどこをAI化するかの検討に入ります。
作成したフロー図を見ながら、判断していきます。
この工程は、今の技術で置き換えられるか?

候補の工程を効果と難しさの2つの軸で並べるAI化する業務の優先順位の付け方も、この検討で使えます。

同時に、どのツールを使うかという議論も具体的に進められるようになります。
事前にフローが可視化されているので、候補を絞り込みやすいのが大きな違いです。

逆に、この整理がないままツール選びから入ると、何から手をつけていいか分からず止まります。
このとき、AI化しない工程を決めることも同じくらい大事です。
判断が難しい工程や、社外への影響が大きい工程は、当面は人が持つと明示しておきます。

対象外を先に外しておくと、議論が候補の比較に集中できます。
絞り込むときの観点は、発生の頻度、1回あたりの所要時間、判断が必要かどうかです。

並べて見ると決めやすくなります。
頻度が高くて単純な工程から手をつけると、効果が早く見えます。

フロー図の工程を頻度・所要時間・判断が必要かどうかで並べ、頻度が高くて単純な工程から手をつける。判断が難しい工程や社外への影響が大きい工程は、当面は人が持つと先に決める

そのあとの進め方は業務のAI化の進め方。棚卸しから優先順位付け・実装までの手順、小さく切って作る手順はワークフローのAI化を成功に導く最小単位からの構築プロセスにまとめてあります。

可視化を一度きりで終わらせない

最後に運用の話をしておきます。
作ったフロー図は、時間が経つと実態とずれていきます。
そのため、フロー図の置き場所と更新の担当を決めておくことをおすすめします。
どこかの共有フォルダに置いたまま誰も触らなくなると、半年後には使えない資料になります。

更新の負荷を下げるには、図そのものを凝りすぎないことも効きます。
見栄えのいい図ほど直すのが億劫になるので、テキストベースで管理できる形にしておくと、変更のハードルが下がります。
更新のきっかけは、業務のやり方を変えたときと、担当者が変わったときの2つを基準にすると運用しやすくなります。

定期的に見直す形にすると、変更がない期間でも作業が発生して続かなくなります。
更新が滞っているかどうかは、最終更新日を図の中に書いておくと分かります。
半年以上動いていない図を見つけたら、「これ、最近更新されてますか」と、その業務の担当に一度確認してみます。
この程度の運用でも、使えない資料になるのはかなり防げます。

フロー図を一度きりで終わらせないための4つの決めごと。置き場所と更新の担当、更新のきっかけは業務のやり方を変えたときと担当者が変わったとき、最終更新日を図に書く、図は凝りすぎずテキストで管理できる形にする

また、このフロー図は他部署にとっての参考資料にもなります。
似た業務を持つ部署が同じ整理をするとき、ゼロから始めずに済みます。

一度作った可視化を組織の資産として扱うと、次の部署の立ち上がりが速くなります。
作りながら直す進め方は完璧な仕様を待たない。「作って動かす」を組織の作法にするが参考になります。

私たちが提供しているAI伴走支援でも、業務の書き出しから始めて、AI化の優先順位づけやワークフローの実装までを現場の担当者と一緒に進めています。

現場を書き出すところから、AI化は始まる

業務のAI化でつまずく最初の場所は、現状の業務が把握できていないことです。
手順は4つです。

まず関係者を集めて、人の手で業務を見える化します。
実際に手を動かしている人を必ず入れます。

次に、結論だけでなく議論の文脈まで記録に残します。
録音でも録画でも構いません。
そのうえで、記録をAIに読ませてフロー図に構造化します。

出てきたものは参加者に確認してもらいます。
間違った図を見せるほうが、正確な指摘を引き出せます。

最後に、フロー図を見ながらAI化の候補を絞ります。
頻度が高くて単純な工程から手をつけると、効果が早く見えます。

あわせて、作った図は置き場所と更新の担当を決めて残します。
業務のやり方を変えたときと担当者が変わったときを更新のきっかけにしておくと、無駄な棚卸しをせずに実態との差を保てます。
明日からすぐにツールを探すのではなく、まずは現場の業務を書き出すところから始めてください。

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執筆:寺田昇平

AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事

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