組織のAI活用をAIポータルと伴走支援で加速

自作AIツールのカタログ化による組織浸透と運用プロセス

自作AIツールのカタログ化による組織浸透と運用プロセス

執筆:寺田昇平

AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事

仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。

社内でAIツールを自作できる環境が整ってきても、実際に作って共有するのは一部の従業員に限られます。

置き場所を用意して、投稿の方法を案内しても、投稿者の顔ぶれが半年変わらない。
これはよくある状態です。
理由は意欲の差というより、何が作れるのかイメージが湧いていないことにあります。

「作れると言われても、自分の業務のどこをどう切り出せばツールになるのか分からない」というのが実情です。
この状態では、いくら場所を整えても投稿は増えません。
今回は、完成品のパッケージを配ることで作り手を増やす進め方を書いていきます。

カタログを手本として並べ、それが二次利用の土台になり、最終的に組織の標準へ育っていくまでの運用です。
共有の器そのものの作り方は組織内における自作AIツールの共有構造と管理手法にまとめてあります。

自作AIツールのカタログ運用を、完成品を配る、コピーして書き換える、乱立したら公式版に統合する、現場の作例を手本として並べ直す、の4段階で示した図

完成品を配って成功体験を先に作る

活用度を引き上げるには、何を先に渡せばいいのでしょうか?
有効なのが推進チーム主導で即戦力の完成品を配るというアプローチです。
作り方を教える前に、完成したものを使ってもらいます。

企業のURLを入れるだけで自社との相性をまとめてくれる「リサーチボット」、あるいは成績上位の営業担当の回答をもとにした「問い合わせ下書きボット」といったものです。
どちらも、受け取った人がその日のうちに使えます。

ここで狙っているのは、便利さを自分の業務で体感してもらうことです。
研修で説明を聞くのと、自分の案件でリサーチが5分で終わるのを見るのとでは、その後の行動がまったく違ってきます。
期待値が上がると、AIに対する心理的なハードルも一緒に下がります。

配り方にも少し工夫が要ります。
一覧に置いておくだけでは気づかれないので、対象になりそうな部署の定例に出向いて、その場で実演してから渡すのが確実です。
自分の業務の画面で動くところを見せると、「これなら使ってみよう」という反応が明確に増えます。

一覧に置くだけでは気づかれない状態がなぜ起きるかは、社内のAIツールが共有されない原因と対策で掘り下げています。

選ぶ題材としては、多くの人が関わる業務から始めるのが効率的です。
特定部署の専門業務から入ると、便利だという声が社内に広がりません。
勉強会と組み合わせて配る設計は組織のAI活用度を引き上げる勉強会の設計手法が参考になります。

配ったものがカスタマイズの土台になる

配ったパッケージには、使われる以外にどんな役割があるのでしょうか?
カタログ化されたパッケージには、使ってもらうこと以上に重要な役割があります。
カスタマイズの土台になるという役割です。
ゼロからプロンプトを書くのは、慣れていない人にとってはかなり高い壁です。

一方で、動いている完成品をコピーして一部を書き換えるだけなら、難易度が一気に下がります。
公式のパッケージを親として、現場のニーズに合わせた派生版が自然に生まれていきます。
問い合わせ対応のボットを応用して社内手続きのFAQボットを作る、リサーチボットの出力形式だけを自部署の様式に変える、といった使い方です。

こうした微修正から始めた人が、半年後には自分でゼロから作るようになっている、という流れは珍しくありません。
つまりカタログは、使うだけの人を、少し直せる人に引き上げるための部品倉庫として機能します。

配った完成品をコピーして一部を書き換えることで、問い合わせ対応のボットから社内手続きのFAQボットが、リサーチボットから自部署の様式に変えた版が生まれ、微修正から始めた人が半年後にはゼロから作るようになることを示した図

この観点で言うと、配る完成品は作り込みすぎないほうがいいです。
中身が読める粒度で、どこを変えれば自分用になるかが分かる構造にしておきます。
部品として切り分ける考え方は万能AIボットを作らない。社内AIツールを部品化して組み合わせるに整理してあります。

派生版が増えてきたら、親子の関係を台帳に残しておくと後で効きます。
どの公式版から派生したものかが分かると、親のほうを直したときに影響範囲が読めます。
逆にこの情報がないと、似た名前のツールが並んでいるだけの一覧になり、統合の判断ができなくなります。

コピーを促すなら、そのための一文を添えておくのも効きます。
「このボットは自由にコピーして書き換えて構いません」と明記されているかどうかで、手を出す人の数が変わります。

コピーして書き換える元になるプロンプトの例文は、プロンプトテンプレートの例文集。業務でそのまま使える10本と社内での配り方に業務別にまとめています。

乱立してきたら統合して公式版にする

似たツールが増えてきたら、何をすればいいのでしょうか?
共有が進んで作る人が増えてくると、次の段階として似たツールが自然発生的に増えていきます。
顧客分析ボットという名前のものが社内に数十個ある状態です。
これ自体は活性化の証拠なので、止める必要はありません。

むしろ、乱立する前の段階で統制を効かせようとすると、作る人そのものが育ちません。
自由に作れる時期と、整理する時期を分けて考えるほうが、最終的に組織に残る資産は厚くなります。

ただ、この段階に来たら横串の組織が介入して、統合と再設計を行う必要が出てきます。
放っておくと、「結局どれを使えばいいか分からない」と使う側が感じるようになり、せっかくの資産が選択の負担に変わります。
やることは、乱立したボットの中から出来のいいものを見つけて、全社標準の公式版として作り直すことです。

現場が個別に積み上げた工夫を集約して、組織としてのベスト版に昇華させるプロセスになります。
統合するときのポイントは、作った人の貢献を消さないことです。
「この機能はどの部署の版から取り入れた」と明示しておくと、次のバージョンでも協力が得られます。
逆に、黙って吸い上げる形にすると、現場は作ったものを出さなくなります。

作り手が増える時期、似たツールが乱立する時期、整理する時期の3つの場面で何をするかを並べた図。乱立する前に統制すると作る人が育たず、乱立は活性化の証拠なので止めず、整理の時期には横串の組織が公式版に統合し、元の作り手の貢献を明示する

公式版ができたら、元の派生版をどう扱うかも決めておきます。
すぐに全部を止める必要はなく、公式版に移行する期限を示したうえで、台帳から順次下げていく形が現実的です。
改善を資産として回す仕組みは社内AIボットを共通資産にする。作成・共有・改善のサイクルで扱っています。

現場の作例を手本として並べ直す

題材が尽きたら、次に何を拾えばいいのでしょうか?
推進チームが用意した完成品だけでカタログを回そうとすると、どこかで題材が尽きます。

そこで効いてくるのが、現場ですでに動いているものを手本として拾い上げることです。
探し方としては、利用ログで突出している人に話を聞くか、社内チャットで自作のツールを共有している投稿を追います。
ここで見つかるものは、たいてい業務に密着していて、推進チームには思いつけない切り口を持っています。

拾い上げるときに必要なのが、手本として並べられる形に整えることです。
「これくらい分かるだろう」という作った本人の前提が、他部署の人には伝わりません。
「何の業務に使うのか」「何を入力すると何が返るのか」「どこを書き換えれば自分用になるのか」。
この3点の説明を添えるだけで、二次利用の数は明確に変わります。

作った本人の前提のままでは他部署に伝わらない現場のツールを、推進チームが何の業務に使うのか、何を入力すると何が返るのか、どこを書き換えれば自分用になるのかの3点の説明を添えて手本に整える図

整える作業は推進チーム側で引き受けるのがおすすめです。
作った本人に清書まで求めると、次から共有してもらえなくなります。
現場から上がってきたものを配布可能な形にする工程は、推進の仕事として持っておくのがいいです。

カタログを運用として回す

運用として、何を決めておけばいいのでしょうか?
カタログは、一度並べたら終わりにはなりません。
運用として決めておきたいことが、いくつかあります。

ひとつは、命名のルールです。
何をするツールなのかが名前だけで分かる形に揃えておくと、探す手間が大きく減ります。
作成者の感覚で名前を付けていくと、同じ機能に違う呼び名が並ぶことになります。

掲載の形式もそろえておくと探しやすくなります。
「名前」「使う場面」「入力するもの」「返ってくるもの」「責任者」「最終更新日」。
この並びを固定しておけば、利用者は見るべき箇所を毎回同じ位置で確認できます。

廃止の基準も決めておきます。
使われなくなったものを残しておくと、カタログ全体の信頼が落ちます。
一定期間使われていないものは一覧から下げる、という運用を先に決めておくと判断が早くなります。

更新の頻度も決めておくと運用が安定します。
月に一度、新しく上がってきたものを追加して、使われていないものを落とします。
この作業を誰の担当にするかまで決めておかないと、数ヶ月で更新が止まります。

また、掲載の入り口を開けておきます。
推進チームが作ったものだけを並べていると、カタログはすぐに増えなくなります。
現場が作ったものを載せる導線と、そのためのレビューを軽く設計しておくのが大事です。
一覧を使われる状態に保つ工夫は共有したのに使われない。社内AI資産をカタログ化する、作り手を増やす環境づくりは社内AIツールの内製化。現場が自分で作れる組織にするまでにまとめています。

カタログの運用で先に決めておく5つ。命名のルール、掲載の形式、廃止の基準、更新の頻度と担当、現場のものを載せる入り口

私たちが提供している組織のAIポータル「AI Portalize」では、現場で作ったAIボットやCanvasアプリを登録するとそのまま全社に公開され、使われた回数や使った人数が作った人に返ってきます。

先に配るのは、作り方ではなく完成品そのもの

共有の場所を作っても投稿が増えないのは、意欲の問題ではなく何が作れるか分からない問題です。
先に配るのは完成品です。
多くの人が関わる業務から題材を選んで、その日から使えるものを渡します。
使ってみて便利だと感じるところまでを、推進側が用意します。

配ったものは、そのままカスタマイズの土台になります。
コピーして書き換えるところから、作り手は育ちます。
だから完成品は、中身が読める粒度にしておきます。

作る人が増えて似たツールが乱立してきたら、横串組織が統合して公式版を作ります。
そのとき、元の作り手の貢献は明示します。
運用としては、命名ルール、廃止の基準、現場からの掲載導線の3つを決めておきます。

まずは即戦力になる完成品を2つ用意し、全社に配ってみるところから動き出してください。

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執筆:寺田昇平

AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事

仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。

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