
仕事の効率化の考え方。作業をやめる・まとめるところから始めて、AIは最後に使う
2026/11/05
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
仕事の効率化は、作業をやめる、まとめる、入れ替える、簡単にするの順で考えます。
いきなり道具やAIを入れても、やめられる作業を速くするだけで、手間は減りません。
AIが役に立つのは最後の「簡単にする」の段で、メールの要約や文章の下書きのような、読む・書く手間が大きい作業です。

仕事の効率化を考える4つの順番
仕事の効率化の考え方は、農林水産省のサイトで公開されている講座資料「現場改善を進める第一歩」で、ECRS(イー・シー・アール・エス)の原則として整理されています。
もとは工場の現場改善で使われてきた考え方ですが、事務の仕事にもそのまま当てはめられると当社では考えています。
資料は、見つけた問題や無駄を、次の順番で改善していくとしています。
1. やめられないか(省略)
2. 一緒にできないか(統合)
3. 入れ替えられないか(変更)
4. 簡単にできないか(単純化)
4番目の単純化の例として、資料は自動化を挙げていて、前の3つを検討したうえで行うものとしています。
また、省略と統合をせずにいきなり自動化やデジタル化をすると、やめられる無駄をそのまま自動化してしまい、効果的な投資にならない、とも書かれています。
一言でいうと、道具やAIを入れるのは最後です。
「AIで仕事を効率化したい」という声が上がりますが、その場合も、AIを使うのは4番目の「簡単にする」の段になります。
毎日の仕事に当てはめた例
4つの順番を事務の仕事に当てはめると、次のように考えられます。
表の中身は、説明のために当社が考えた例です。
仕事 | やめる | まとめる | 入れ替える | 簡単にする |
|---|---|---|---|---|
週次の進捗報告 | 誰も読まない項目は出さない | 定例会議の議事メモと1つにする | 報告を会議の前に出し、会議では相談だけにする | 項目を決めたひな形にして、下書きをAIに頼む |
数字の転記 | 同じ数字を2つの表に書く作業をなくす | 案件ごとの表を1枚に集める | 入力する人を、数字を持っている人に変える | 手で写さず、取り込む形にする |
問い合わせへの返信 | 返事の要らない連絡には返さない | 同じ質問を1つのFAQにまとめる | よくある質問は、先に回答例を渡す | 返信の下書きをAIに頼む |
例えば週次の進捗報告は、誰が何のために読むのかを整理すると、出さなくてよい項目が見つかることがあります。
「この項目は、前の週と同じ数字を毎回書いているだけ」と気づけば、やめるか、変わったときだけ書く形にできます。
表のどの行も、いちばん左の「やめる」から考えます。
つまり、やめられない作業だけが、次の「まとめる」に進みます。

個人の工夫で終わってしまう場面
仕事の効率化は、個人の工夫ではうまくいっても、チームの仕事の進め方が変わらないまま終わることがあります。
そうなりやすい場面は、次の3つです。
やり方が本人の頭の中にだけある
空いた時間が見えない
「やめる」を1人で決められない
やり方が本人の頭の中にだけあると、その人が異動したり休んだりしたときに、元の手間に戻ります。
手順を残して次の人が使える形にする考え方は、仕事の手順をAIに覚えさせる。社内の「型」を資産化する考え方で書いています。
空いた時間は、測っていなければ誰にも見えません。
見えないままでは効率化の成果として話せず、次の工夫につながりません。
最後の「やめる」は、報告や会議の相手がいるので、1人では決めにくいところです。
「この報告、もう要らないですよね?」と自分から言い出すのは、チームで決めた流れがないと難しいと思います。

内閣官房の業務の抜本見直し推進チームがまとめた手引き「業務見直しの進め方 Ver.1.0」(令和元年12月)も、利用頻度が少ない手続や調査は、そもそも廃止してよいのではという検討をしてよい、としています。
やめるかどうかを、担当者の判断に任せず、見直しの一部として話し合う形になっています。
チームで続けるための取り決め
個人の工夫をチームの仕事の進め方に変えるには、次の3つを先に取り決めます。
週に1つ、やめる作業を決める
変えた手順を1枚に残す
前と後の時間を測る
定例会議の最後の5分ほどで、「今週やめる作業」を1つだけ決めるやり方を、当社ではおすすめします。
ただ、5分は目安です。
1つに絞るのは、決めた作業を確かめる手間が増えすぎないようにするためです。
変えた手順は、次の人がそのまま使える1枚に残します。
やり方が1枚になっていれば、担当が変わっても、手間が元に戻りません。
前と後の時間は、分単位で1回だけ測れば足ります。
空いた時間の使い道もあわせて話しておくと、その時間が別の急ぎの仕事に埋もれません。

AIが手間を減らす場面と、人が決める場面
4つ目の「簡単にする」で、AIを使います。
Gmailのヘルプでは、Gmailの中のGeminiは、長いメールのやり取りを短い箇条書きにまとめたり、新しいメールを作ったり、下書きの口調や分かりやすさを整えたりできる、と説明されています。
利用には、対象のGoogle WorkspaceまたはGoogle AIのプランへの登録が必要です。
自社で使えるかどうかは契約しているプランで変わるので、情報システムの担当者に確かめてください。
作業効率を上げるために、当社では、AIを使う作業を次のような作業に絞ることをおすすめします。
長い文章を読んで要点を取り出す
決まった型の文章を下書きする
書いたものの言い方を整える
どれも、人が最後に読んで直せる作業です。
ただ、AIの出力をそのまま送る使い方は、おすすめしません。
Geminiの入力欄に貼るプロンプトの例は次のとおりです。
次のメールのやり取りを読んで、決まったことと、私が返事をする必要があることに分けてください。
それぞれ3行以内の箇条書きにして、数字と日付は元の文のまま残してください。
業務ごとのプロンプトの例は、プロンプトテンプレートの例文集。業務でそのまま使える10本と社内での配り方にまとめています。
AIがまとめた内容は、元のメールと見比べてから使います。
数字の計算は、AIに任せません。
数字を扱う仕事の役割分担は、AIに計算させない。数字を扱う業務での役割分担を組織ルールにするで書いています。
「この件は断る」「この条件なら受ける」といった判断と責任は、人に残ります。
作業を減らしても、決める仕事までAIに渡す形にはしません。

すぐ使えるアプリを借りて、最初の1つを試す
AIを使う最初の1つは、ゼロから作らなくても試せます。
私たちの組織のAIポータル「AI Portalize」には、文章の整形や議事録づくりなど、すぐ使える業務アプリが300以上あり、自社の仕事に合わせて手直しして使えます。
どの部署で使われているかを数字で見られるので、効率化の工夫がチームに広がっているかも確かめられます。
仕事の効率化は、やめる作業を1つ決めるところから
仕事の効率化は、新しい道具を探す前に、今週の作業の中でやめられるものを1つ選ぶところから始まります。
次に、その作業を誰が何のためにしているかをチームで確かめ、やめるか、まとめるかを決めます。
AIは、残った作業のうち、読む・書く手間が大きいものに使います。
どの業務から手を付けるかが決まらないときは、AI化する業務が決まらないのページで、決まらない理由と進め方を扱っています。
棚卸しから優先順位付け、実装までの全体の手順は、業務のAI化の進め方。棚卸しから優先順位付け・実装までの手順にまとめています。
参照した情報(2026年10月30日に確認)
すぐ使える業務アプリが300以上
開いてそのまま使えて、AIで自社用にも直せます。15の分野から、やりたい作業で探せます。業務アプリを見る
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
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