
帳票のOCRをAIで行う方法。名刺・請求書・レシートの写真を一覧表にする手順と、GeminiのCanvas機能で作る読み取りアプリ
2026/10/29
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
帳票のOCR(写真に写った文字を読み取って、文字のデータにすること)は、Geminiに写真を渡して「表にして」と頼めばできます。
名刺・請求書・レシートの様式がばらばらでも、項目と値をそろえた一覧表にして、スプレッドシートに貼れます。
読み取りはAIに任せられますが、読ませてよいかを決めて、結果を確かめるのは人の仕事として残ります。

Geminiのチャットで帳票をOCRする手順
いちばん簡単なのは、Geminiのチャットに写真を添えて頼むやり方です。
手順は次の5つです。
1. 仕事用のアカウントで gemini.google.com を開く
2. テキストボックスの下の「ファイルを追加」アイコンから、帳票の写真を添える
3. 「この写真から、日付・店名・合計金額を読み取って表にしてください」と送る
4. 出てきた表を原本と見比べ、違う所はチャットで直してもらう
5. 表をコピーして、スプレッドシートに貼る
送るプロンプトには、ほしい列の名前を書いておきます。
例えば、名刺なら「会社名・氏名・部署・役職・電話・メール」、請求書なら「発行元・請求金額・支払期限」と書きます。
読み取りに自信がない項目には印を付けるよう頼んでおくと、原本と見比べる場所の目安になります。
まずはこのやり方で数枚を試してください。
枚数が多いときや毎月くり返すときは、後の節で紹介するCanvasアプリにしておくと、毎回プロンプトを書かずに済みます。
OCRが要らない書類と、AIのOCRが向く書類
写真を読ませる前に、手元の書類がそもそもOCRの要るものかを確かめておきます。
「このPDF、AIで読み取れますか?」と聞かれたときも、最初に見るのはここです。
手元の書類がPDFなら、まず文字のデータが入っているかを見ます。
WordやExcelから保存したPDFは文字を選択できるので、読み取らなくても文字をそのまま取り出せます。
PDFのOCRが要るかどうかの見分け方は、社内PDFがAIで読めない理由。2種類のPDFと文書資産の棚卸しで書いています。
紙や写真の帳票なら、AIのOCRが向いています。
これまでのOCRソフトには、どれが金額でどれが日付かを決めるのに、帳票ごとに読み取る位置を設定しておくものがあります。
AIに写真を渡す読み取りでは、「会社名」「請求金額」のように、項目名と値の組で返してもらえます。
取引先ごとに様式が違う請求書や、店ごとに並びが違うレシートでも、読み取る位置の設定は要りません。
とはいえ、量と様式によっても、向いている方法は変わります。
同じ様式の伝票を毎日大量に読むなら、専用のOCRサービスを比べる価値があります。
一方で、月末に数十枚をまとめて読む程度で様式もばらばらなら、AIで読み取るアプリから試すのが手軽です。
この作業に使える業務ツール「名刺・帳票→CSV」は、詳しいページでできることと使い方を紹介しています。

名刺をデータ化するときの表の形
名刺は、1枚の名刺を表の1行にして、列をそろえて読ませます。
列にするのは、会社名・氏名・ふりがな・部署・役職・郵便番号・住所・電話・携帯・メール・URL・備考の12項目が目安です。
列の名前を先に決めて頼むと、何十枚読ませても同じ並びの表になりやすく、顧客の台帳に貼るときに並べ替えずに済みます。
ただ、裏面に英語の表記や別の連絡先がある名刺は、表と裏が別の行になることがあります。
裏面を読ませた行は、表の行と見比べて手で寄せます。
請求書や見積書から項目を取り出す方法
請求書・見積書・注文書のような帳票は、取引先ごとに載っている項目が違います。
そこで、まず書類の種類を判定させ、そのうえで「請求金額」「支払期限」のような項目名と値の組を取り出させます。
保存するCSV(Excelやスプレッドシートで開ける表のファイル)は、形を決めておきます。
CSVは1行に1項目を並べる縦長の形で、列は「ファイル名」「書類種別」「項目名」「値」の4つにしておくと、項目の数が違う書類も同じ表に入ります。

取引先ごとの一覧にしたいときは、この表をスプレッドシートに読み込みます。
そのうえで、ピボットテーブル(項目ごとに表を組み直す機能)で「項目名」を列に並べ替えます。
GeminiのCanvas機能でレシートの読み取りアプリを作る
Canvasは、Geminiのチャットでオンにして使う機能で、プロンプトを送るとブラウザで動くアプリを作ってくれます。
こうして作ったアプリを、ここではCanvasアプリと呼びます。
毎月レシートをまとめて読むなら、経費精算の一覧を作るCanvasアプリを1本作っておくと、毎回プロンプトを書かずに済みます。

作るのは、レシートや領収書の写真をまとめて入れると、日付・店名・金額・費目の候補が並んだ表と、合計が出てくるアプリです。
作り方は次のとおりです。
1. gemini.google.com を開き、テキストボックスの下の「ファイルを追加」アイコンから「Canvas」を選んで、Canvas機能をオンにする
2. Geminiの入力欄に、下のプロンプトの例を貼って送る
3. 右側に出たアプリのプレビューで、試し用のレシートの写真を入れて試す
4. 直したい所を、チャットで「ここをこう変えて」と頼む
Geminiに貼るプロンプトの例は次のとおりです。
レシートと領収書の写真をまとめて読み取り、経費精算の一覧にするアプリを作ってください。
列は日付・店名・税込の合計金額・消費税額・費目の候補・支払方法・インボイスの登録番号・但し書きにしてください。
費目の候補は会議費・交際費・旅費交通費・消耗品費・雑費から選び、表の上で直せるようにしてください。
自信が低い項目は黄色、同じ日付で同じ金額の行は赤で示し、合計と費目別・月別の小計を表の上に出してください。
一覧をCSVで保存するボタンを付け、読み取った画像は保存しないでください。
使うときは、黄色や赤の印が付いた行から直し、集計の数字を見てからCSVで保存します。
CSVの列の順は、取り込む先の形式に合わせて入れ替えます。
名刺や請求書も、プロンプトの列を変えれば、同じ作り方でアプリにできます。

業務でそのまま使えるプロンプトの例は、プロンプトテンプレートの例文集。業務でそのまま使える10本と社内での配り方にもまとめています。
Canvas機能の基本の使い方は、Gemini Canvasの使い方。業務アプリを作成して社内に共有するまでで詳しく書いています。
最初のアプリは、たたき台と考えておくのがおすすめです。
動かしてみて足りない機能を加え、文字の大きさや並び方などの使い勝手も一つずつ直していくと、現場で使い続けられるアプリになります。
Canvasアプリから送る画像の扱いは、確認したGoogleのページには書かれていませんでした。
本物のレシートや名刺を入れる前に、情報システムの担当者と一緒に、使ってよい範囲を確かめてください。
この作業に使える業務ツール「領収書→経費一覧」は、詳しいページでできることと使い方を紹介しています。
読み取った結果を原本と見比べる項目と人
AIの読み取りは、写真のぶれや手書きの崩し字で読み違えたり、項目が抜けたりすることがあります。
印を手がかりにしながら、どこを人が見るのかを決めておきます。
黄色の印は、AIが自信が低いと判定した項目や行です。
ただ、黄色が付いていない項目が正しいとは限りません。
金額と日付、登録番号、名刺の氏名の漢字は、印の有無にかかわらず原本と見比べます。
赤の印は、同じ日付で同じ金額の組を、二重に申請していないかを疑うための目印です。
同じ店で同じ日に同じ金額の買い物をすることもあるので、赤が付いた行は消さずに、2枚のレシートを並べて確かめます。
インボイスの登録番号は、「T」と13桁の数字です。
国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」に番号を入れると、登録されている事業者の名称などを確かめられます。
数字を1つ読み違えると別の番号になるので、公表サイトに出る名称が、レシートの店名や発行者と合っているかを見ます。
全件を誰かが見直すのか、金額の大きいものに絞るのかは、経理で使っている二重チェックの決まりに合わせます。
請求書をAIで読み取ったあとの、金額の計算と確認の分け方は、経理のAI活用を型にする。集計・照合・チェックの標準セットで扱っています。

名刺や領収書を読ませるときの入力・保存・確認の決まり
名刺には氏名や携帯番号、メールアドレスが、請求書や領収書には取引先や金額が載っています。
個人情報や取引の情報を含む帳票なので、使う人の判断に任せず、組織として決めておく必要があります。
まず、入力してよいかです。
Google Workspaceの生成AIのプライバシーハブには、対象のエディションの仕事用アカウントについて、次のように書かれています。
Geminiアプリのチャットとアップロードしたファイルは、人のレビュアーが確認することも、許可なくドメインの外でモデルのトレーニングに使われることもありません。
一方、個人のGoogleアカウント向けのGeminiアプリのプライバシーハブには、データの一部を人のレビュアーが見ることがあるので、見られたくない機密情報は入力しないよう書かれています。
そのため、当社では、名刺や領収書を読ませるのは仕事用のアカウントに限ることをおすすめします。
次に、保存したCSVの置き場です。
名刺なら顧客の台帳や管理システム、レシートなら経費精算の置き場と、保存したあとの行き先を決めます。
パソコンのダウンロードフォルダに残したままにしないことも、決まりに入れておきます。
最後に、読み取ったあとに誰が確かめるかです。
名刺なら登録する本人、請求書なら受け取った担当者、経費なら申請する本人が原本と見比べ、承認する人は印の付いた行を見る、というところまで担当を決めておきます。

レシートの原本をどう残すかも、ここで決めます。
国税庁の「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」(令和8年7月)では、スマートフォンやデジタルカメラも、入力装置にあたれば「スキャナ」に含まれるとされています。
ただし、読み取るときの解像度(画像のきめ細かさ)などの要件があり、紙を捨ててよいのも要件どおりに読み取って内容を確かめたあとです。
原本を紙で残すか写真で残すかは、経理と一緒に決めておきます。
読み取りアプリは社内の人だけに配る
決まりを作っても、アプリが一部の人の手元にあるだけだと、ほかの部署は今までどおり手で打ち込み続けます。
とはいえ、名刺や領収書を読むアプリは、配り方を間違えると、中の情報が社外の人に見られるきっかけになります。
Canvasアプリを渡す方法は「公開リンク」と「ドライブ」の2通りで、仕事用のWorkspaceでは、公開リンクでの共有は初期設定でオフ、Googleドライブを使った共有は初期設定でオンです。
公開リンクはリンクを知っている人なら誰でも開けて、Geminiアプリのヘルプでは、アプリに関するデータを見たり編集したりできると説明されているので、当社では、チャットやメールに広く流す配り方はおすすめしません。
社内に配るなら、ドライブでの共有を使って相手を社内の人やグループに絞り、直すときに頼む人を決めてから配ります。
私たちの組織のAIポータル「AI Portalize」には、こうしたすぐ使える業務アプリが300以上あり、自社の業務に合わせて手直しして使えます。
部門で作ったCanvasアプリやGemも、社内の人だけが探せる場所に登録できます。
読み取りアプリの説明に「読ませてよい帳票」「CSVの置き場」を書いておけば、使う人がその場で決まりを確かめられます。
現場の人がこうしたツールを自分で作れる組織にする進め方は、社内AIツールの内製化。現場が自分で作れる組織にするまでにまとめています。
作ったアプリがほかの部署から見つからないのは、AIツールやプロンプトが、社内で共有されないという課題の1つで、対策も合わせて書いています。
帳票のOCRは、読み取りをAIに、確認を人に
帳票のOCRは、写真をAIに読ませれば、様式がばらばらでも項目と値の一覧にできます。
ただ、読み取った数字は原本と見比べるまで確定しません。
名刺や領収書を読ませてよいか、CSVをどこに置くかは、使う人ではなく組織で決めておく話です。
手入力が続いている帳票を1種類選んで20枚の写真を読ませ、直した箇所を数えれば、どこまでAIに任せられるかの見当がつきます。
参照した情報(2026年10月29日に確認)
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執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
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