
AIエージェントに任せる業務の選び方。開始条件と完了条件を先に書く
2026/10/27
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
「PCを閉じているあいだも、AIが仕事を進めてくれる」
Gemini Sparkのような常駐型のAIエージェントの登場で、AIは「開いて使う道具」から「渡しておく道具」に変わり始めています。
そうなると、推進担当者が次に考えるのは、AIエージェントにどの業務を任せるかという選び方です。
何となく渡した業務は、期待とずれた成果物を、誰も見ていないところで積み上げていきます。
ここでは、最初に渡す業務の条件から、指示の書き方、人が確認する地点、動かしているものの共有までを、組織の手順として見ていきます。
製品の名前や提供状況は地域やプランで変わりますが、業務の渡し方は製品が替わっても同じです。

任せる単位は、作業から業務のかたまりに上がる
これまでのAI活用は、「この文章を要約して」のような作業ごとの依頼が中心でした。
常駐型に渡すなら、データの取得から整形、レポート化、保存までを、ひとつの業務のかたまりで渡すほうが価値が出ます。
これまでは金曜の朝にPCを開き、データを集めてAIに要約させ、体裁を整えていました。
AIを使っていても、動き出す起点は常に自分でした。
常駐型なら、例えば金曜の週次レポートは、朝にエージェントが動き出し、出社した時点で下書きができています。
つまり、自分の役割が「作る」から「確認して仕上げる」に移ります。
そのためには、自分の業務を「どこからどこまでが一連の流れか」で区切り直す必要があり、この整理は業務の棚卸しそのものです。
棚卸しから優先順位付けまでの進め方は、業務のAI化の進め方。棚卸しから優先順位付け・実装までの手順にまとめています。
最初に渡すのは、手順が安定していてやり直しがきく業務
では、最初の1件にはどんな業務を選べばいいのでしょうか?
目安になる条件は3つあります。
週次・月次で発生し、手順が安定している(定例レポート、会議資料の準備など)
失敗してもやり直しがきく(特定テーマの情報収集やモニタリングなど)
完了条件を「〜という状態になっていること」と一文で書ける
逆に、判断の基準が人によって揺れる業務や、一度のミスが顧客に直接届く業務を、最初から渡すのは控えます。
請求書の送付のように、間違えると取引先に届いてしまう業務は、任せ方の型ができてから検討しても遅くありません。
まずはリスクの低い定期業務で「任せ方の型」を作り、うまく回ってから範囲を広げていくのが順番として確実です。
エージェントに渡す業務に限らず、AI化を何から始めるかを効果と難しさの2つの軸で決める方法をまとめています。

制約も先に押さえておきます。
ログインが必要なサイトの操作や、PCに保存したローカルファイルの読み書きは、裏側で動くエージェントには扱えない場合があります。
開始条件と完了条件は、人に頼むときと同じ粒度で書く
業務を人に任せるときと同じで、「いつ動き出すのか」「何ができたら完了なのか」が曖昧なまま渡すと、期待とずれた動きをします。
指示のイメージは、例えば次のような形です。
「毎週金曜の朝7時に、指定のスプレッドシートから先週分の数値を取得し、週次レポートのテンプレートに反映して、下書きフォルダに保存してください。数値が取得できない場合は、作業を止めて私に報告してください」
ポイントは、正常なときの手順だけでなく、「うまくいかないときにどうするか」まで含めて渡している点です。
失敗時の動きが無いと、取れなかった数値を空欄や推測のままにして、レポートを完成させてしまうおそれがあります。

出力先も具体的に書きます。
共有ドライブへの保存のように、以前はGASを組み合わせないとできなかった流れも、一連の指示で渡せるようになってきているからです。
開始条件はスケジュールの設定、動き方のルールはスキルの設定に当たるので、製品が何であっても、開始条件・完了条件・失敗時の動きの3点を書けば足ります。
依頼の中身を構造にしてそろえる考え方は、丸投げと伝言ゲームをなくす。タスク依頼を構造化するが参考になります。
人が確認する地点を、最終出力の手前に置く
いちばん大事なのは、人が確認する地点を先に決めておくことです。
確認の地点を決めずに走らせると、間違った成果物が自動で積み上がっていきます。
自動化は、失敗も自動で繰り返します。
そのため、「エージェントの成果物は必ず下書きの状態で止める」「社外に出るものは人の承認を挟む」の2つを、導入の初期に組織のルールとして決めておきます。
確認する人は、その業務の担当者本人にしておくと、エージェントの癖にも早く気づけます。

もちろん、慣れてきたら確認を軽くしてよい業務も出てきますが、その判断も担当者任せにせず、推進担当と一緒に決めます。
定型作業をどこまでAIに任せるかの線引きは、Claudeにブラウザ操作を任せる。定型作業の自動化と線引きでも扱っています。
誰が何を常駐させているかは、エージェント台帳で共有する
個人の効率化で終わらせず組織で活かすには、「誰がどんなタスクをエージェントに常駐させているか」を見える場所に置いておきます。
台帳には、業務の名前、担当者、開始条件、完了条件、確認する人、出力先が書いてあれば足ります。
良い任せ方と指示文はそのまま横展開できる資産になり、機密情報を含む処理のような危うい任せ方にも早く気づけます。
また、異動や退職のときに「その人が動かしていたエージェント」が放置されると、誰も把握していない処理が動き続けることになります。
推進担当が台帳を定期的に眺めれば、同じ業務を別々の人が二重に動かしていないかも確かめられます。
台帳があれば、退職の手続きでは「この人のエージェントを誰に渡すか」を確かめるだけで済みます。

最初に渡す1業務を、一緒に選ぶところから
どの業務から渡すか、確認の地点をどこに置くかは、組織の業務の形によって答えが変わります。
私たちが提供しているAI活用支援では、業務の棚卸しから、AIに任せる範囲と人が確認する地点を決めるところまでを伴走しています。
エージェントを配る前に渡し方を決めておきたい場合は、進め方の参考になるかもしれません。
渡せる業務の一覧がある組織ほど、エージェントを使いこなせる
常駐型のエージェントは、「AIを使う時間を確保する」から「AIが働いているあいだに自分は何をするか」へ、仕事の考え方を変えます。
使いこなせるかどうかは製品の性能より、渡せる業務が開始条件・手順・完了条件の形で書けているかで決まります。
使えるようになってから考え始めるのと、渡せる業務の一覧を持って待つのとでは、立ち上がりの速さがまったく違います。
まずは定例業務を1つ選び、失敗したときの動きまで含めた指示文に書き出してみてください。
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執筆:寺田昇平
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