
丸投げと伝言ゲームをなくす。タスク依頼を構造化する
2026/09/17
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
「〇〇の件、やっておいて」という依頼が、そのまま流れていくことがあります。
受けた側は、何をどこまでやるかを自分で推測するしかありません。
出てきたものが、期待と違うものになりがちです。
さらに依頼が複数の人を経由すると、情報そのものが劣化します。
「部長がこう言っていた」というひと言も、3人を経由するうちに元の意図とは違うものに変わります。
今回は、タスク依頼のテンプレートを決めて、丸投げと伝言ゲームをなくす話を書いていきます。
社内のAIボットを共通資産にする全体像のほうは社内AIボットを共通資産にする。作成・共有・改善のサイクルにまとめてあります。

依頼が曖昧なまま流れていく
なぜ依頼は曖昧になるのでしょうか?
理由は3つあります。
依頼する側が忙しくて詳しく書く時間がないので短く伝える、受ける側は「あの件」で通じると思っているが実際には通じていない、依頼に様式がなく何を書けばよいかがその場の判断になる、の3つです。
いちばん多いのは、忙しさを理由にしたケースです。
「詳しく書く時間がない」という判断は、実のところ損をしています。
曖昧な依頼のほうが後の手戻りがはるかに大きく、3分を惜しんだ依頼から3時間の手戻りが出ることも珍しくありません。
だから依頼を書く時間を3分と決めて、短くても必要な情報が入る形にします。
複数人を経由する場合は、劣化がさらに大きくなります。
劣化するのは4つの要素です。
「なぜやるのか」という目的、8割の完成度で早く出すか完成度を上げるかという期待する水準、使える予算や期間といった制約、どこまで自分で判断してよいかという判断の余地です。
目的が最も早く落ち、「言われたからやる」という状態になります。
つまり、想定外の事態に対応できなくなります。
判断の余地が落ちると、確認の回数が増えます。
判断してよい範囲が分からないので、いちいち聞くことになるからです。

タスク依頼のテンプレートは、6項目に収める
様式は、どう決めればよいのでしょうか?
6項目にすると、過不足なく書けます。
「何を」(成果物と、表か文書かの形式)、「なぜ」(目的と背景)、「いつまでに」(期限と、中間の確認の時期)、「どの水準まで」(8割で早く出すか完成度を上げるか、誰に出すものか)、「判断してよい範囲」(どこまで自分で決めてよいか)、「困ったときにどうするか」(誰に、いつ相談するか)の6項目です。
「なぜ」がいちばん抜けやすく、後ろの3項目もほとんど書かれません。
6項目めを入れるのが要点です。
「2時間詰まったら相談してください」という1行があるだけで、受けた側が抱え込まなくなります。
各項目は1〜2行にして、6項目を3分で書ける分量に収めます。
管理職側の型そのものは管理職のAI活用を型にする。会議設計・タスク委譲・数値把握にまとめてあります。
AIに6項目を整理させると、伝言ゲームでも目減りしない
AIの使いどころは、どこにあるのでしょうか?
口頭で話した内容を、6項目に整理させる場面です。
「以下の依頼を、6項目(何を/なぜ/いつまでに/どの水準まで/判断してよい範囲/困ったときの相談先)に整理してください。足りない項目は指摘してください」という形で依頼します。
足りない項目を指摘させるのが要点で、書き忘れがその場で検出されます。
移動中に音声で話して依頼文に整える形にすれば、書く負荷もほぼ消えます。
また、受ける側も、同じ道具を使えます。
曖昧な依頼を受けたときに「この依頼で不明な点と、確認すべき質問を挙げてください」と聞けば、確認すべき項目が並びます。
これが、受ける側の防御になります。

依頼を取りこぼさずToDoに落とす仕組みは依頼の取りこぼしをゼロにする。ToDo化を自動で走らせるで扱っています。
伝言ゲームのほうは、依頼を文書として渡して口頭で伝えないのが基本です。
元の依頼文は、そのまま渡します。
要約すると、そこで情報が落ちるからです。
経由した人は、元の文を変えずに下へ補足を追記し、誰が追記したかを残します。
元の依頼者に直接確認できる経路も、残しておきます。
「元の依頼者は〇〇さん」と明記して、直接聞いてよいと伝えます。
経由の回数そのものも減らします。
3人を経由しているなら、元の依頼者と実行者を直接つなぎます。
経由が承認のために必要なのか、単に伝達の経路になっているだけなのかを確認し、後者なら経由をやめます。

依頼を出す前に自分の考えを整理する段階は一人で考える時間の質を上げる。AIを壁打ち相手にする文化にまとめてあります。
会議の招集と改善報告にも、同じ6項目が使える
会議の招集にも、同じ型は使えるのでしょうか?
そのまま使えます。
「何を」(議題と、そこで決めること)、「なぜ」(何のための会議か)、「いつまでに」(会議の日時と、事前の準備の期限)、「どの水準まで」(決定するのか、議論するのか、共有するのか)、「判断してよい範囲」(その場で決められることの範囲)、「困ったときにどうするか」(決まらなかった場合の扱い)です。
「決めること」を書くのが、いちばん効きます。
「〇〇について」ではなく、「〇〇を進めるかどうかを決める」と書きます。

決まらなかった場合の扱いも、先に決めておきます。
持ち帰るのか、次回に回すのか、誰かが決めるのか。
ここがないと、会議が終わらないか、結論が出ないまま終わるかのどちらかになります。
会議前の準備を制度にする話は会議前15分のAI準備を制度にする。準備の質を組織でそろえる、決まったことを実行に落とす話は決まったことが実行されない。アクションアイテムを自動でタスク化にまとめてあります。
報告や改善の依頼にも、同じ考え方が使えます。
ただ、報告の場合は項目が変わります。
必要なのは5項目です。
「何が起きたか」「原因」「対応したこと」「今後の対策」「判断してほしいこと」です。
「判断してほしいこと」が、いちばん抜けます。
報告だけして判断を求める一文がないと、読んだ側が動けません。
原因と対応は、分けて書きます。
混ざると、何が原因で何が対処なのかが読み取れません。
今後の対策には、期限と担当を入れます。
ここがないと、対策が実行されないまま流れます。
配るのは3つの道具で、対象は3つの基準に絞る
配布物は、何をそろえればよいのでしょうか?
3つです。
「6項目の様式」(そのまま埋める形)、「整理させる指示文」(口頭の内容を6項目に整理する指示を、そのまま貼れる形で)、「受ける側の確認の指示文」(曖昧な依頼から確認すべき点を挙げる指示)です。
確認の指示文を配るのが要点です。
依頼する側だけでなく、受ける側にも道具を渡すことになります。
そのため、対象は絞ります。
すべての依頼に6項目を求めると、工程が重くなって結局は誰も使わなくなります。
基準は3つです。
「期間が1週間を超える」「複数人が関わる」「成果物が社外に出る」のどれかに当たるものだけにします。

「小さい依頼は口頭で構いません」と明示しておきます。
ここを書かないと全部が重くなりますが、もちろん基準に当てはまる依頼には様式を使います。
つまずきやすいのは7つです。
「なぜ」を書かない、「どの水準まで」を書かない、「困ったときにどうするか」を書かない、要約して伝言する、経由の回数を減らさない、受ける側に道具を渡さない、すべての依頼に6項目を求める、です。
目的を書き、水準を書き、相談の目安を1行入れ、原文を渡し、直接つなぎ、確認の指示文も配り、3つの基準で絞れば、どれも避けられます。
依頼の様式と指示文を現場に配って定着させるところは、私たちのAI伴走支援でも社内研修の中で扱い、現場の担当者と一緒に進めています。
6項目を3分で書けば、伝言ゲームは起きない
一言でいうと、依頼は6項目にして3分で書けば、伝言ゲームは起きません。
依頼が曖昧になるのは、依頼する側が忙しい、受ける側が分かっていると思っている、様式がない、の3つが原因です。
「詳しく書く時間がない」という判断は損で、3分の依頼から3時間の手戻りが出ます。
伝言ゲームで劣化するのは4つです。
「目的」(最も早く落ちる)、「期待する水準」、「制約」、「判断の余地」(落ちると確認が増える)です。
様式は「何を」「なぜ」「いつまでに」「どの水準まで」「判断してよい範囲」「困ったときにどうするか」の6項目です。
「なぜ」と後ろの3つが抜けがちで、「2時間詰まったら相談」の1行があると抱え込みません。
AIには、口頭で話した内容を6項目に整理させ、足りない項目を指摘させます。
受ける側は、曖昧な依頼から確認すべき点を挙げさせます。
伝言ゲームには、元の依頼文をそのまま渡す、経由した人は追記する、元の依頼者に直接聞ける経路を残す、経由の回数を減らす、の4つで対処します。
会議の招集にも同じ6項目が使え、「決めること」を書くのがいちばん効きます。
報告は5項目で、「判断してほしいこと」が最も抜けます。
配布は、様式、整理させる指示文、受ける側の確認の指示文の3つです。
対象は3つの基準で絞り、小さい依頼は口頭で構わないと明示します。
まずは次の依頼で、6項目を3分で書いてみると、丸投げと伝言ゲームはそこで終わります。
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執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
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