組織のAI活用をAIポータルと伴走支援で加速

Claudeにブラウザ操作を任せる。定型作業の自動化と線引き

Claudeにブラウザ操作を任せる。定型作業の自動化と線引き

執筆:寺田昇平

AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事

仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。

社内には、人が画面をクリックし続けている業務がまだ多く残っています。

システムから1件ずつデータを取る、複数の画面を開いて情報を突き合わせる、同じ入力を何十回も繰り返す。
「自動化できないから人がやっている」という状態のまま、固定されている業務です。
Claudeにブラウザ操作を任せる話は、ここに効いてきます。

ここでは、どこまで任せられるかを整理していきます。
自動化の全体像はAIによる業務自動化の全体像。手段の選び方とコスト設計にまとめてあります。

Claudeのブラウザ操作で、Claudeに任せるのは画面の読み取り・決まった手順の繰り返し・書き込みや送信の準備までで、書き込みや送信の実行、金額が動く・権限を変える操作、ログインと認証情報の入力は人が持つことを示した図

画面をクリックし続ける業務ほど、任せられる条件がそろっている

この種の業務は、「画面でしか操作できない」「繰り返しが多い」「判断が入らない」の3条件で共通しています。
自動化されずに残っている理由は、たいてい「画面でしか操作できない」の1点にあります。
データを取り出す機能がないか、連携の仕組みがないかのどちらかで、古いシステムほど当てはまりやすくなります。

一方で、繰り返しが多く判断が入らない条件さえそろっていれば、任せられる可能性があります。
「1件あたり2〜3分の操作を50件やる」という、2〜3時間かかっている業務が典型です。

任せられるのは、画面を見て判断し、操作する一連の流れです。
表示されている情報を読み取る、クリックや入力や選択で操作する、決まった手順を繰り返す。
この3つが任せられる中身になります。

従来の自動化との違いは、ここではっきり出ます。
従来の自動化は画面の要素の位置を指定するので、画面が変わると動かなくなります。
一方でClaudeは表示されている内容を見て判断するので、画面が少し変わっても対応できる可能性があります。
ただし確実性のほうは、位置を指定するやり方の従来の自動化が高くなります。

任せてよいのは「読み取るだけ」、危ないのは「書き込みと送信」

任せてよい作業には、4つの条件があります。
「読み取るだけ」「失敗の影響が小さい」「結果を人が確認する」「認証情報を扱わない」、この4つです。
実際には「読み取るだけ」から始めることになります。
システムから一覧を取得する、複数の画面から情報を集める、公開されている情報を集める、といった作業です。

読み取るだけの場合でも、結果は必ず確認します。
読み取りの誤りは普通に起きるので、確認を飛ばすと気づかないまま誤ったデータが流れるからです。
あわせて、途中で止まった場合にどうなるか、手作業で回せるかも先に確認しておきます。

任せてはいけない作業は、5つに整理できます。
「書き込み」はデータの登録・更新・削除で、誤った操作は元に戻せません。
「送信」はメールの送信・申請の提出・公開で、誤った相手に送ってしまうと取り返しがつかないぶん、最も事故が起きやすい領域になります。

「金額が動く」操作、つまり支払・発注・契約も同じ扱いにします。
「権限を変える」操作、つまり設定の変更・共有の範囲の変更も同じです。
また、「認証を伴う」操作、つまりログインや認証情報の入力は最も注意を要します。

任せてはいけない5つの作業。書き込みは元に戻せず、送信は取り返しがつかず最も事故が起きやすい。金額が動く操作と権限を変える操作も同じ扱いで、認証を伴う操作は最も注意を要する

書き込み・送信・金額・権限の4つは、確認の工程を人が持つ形にします。
準備までを任せて、実行するところは人が担います。

なお書き込みには例外があって、作業用の場所への書き込みなら構いません。
本番のデータに書き込まないというところが線になります。

認証情報を渡さず、進め方は4段階で区切る

ここが最も重要な設計なので、節を分けて書きます。
原則は、認証情報を渡さないという一点です。

理由は3つあります。
入力した内容が履歴に残るかもしれないこと、そのアカウントの権限をすべて使えてしまうこと、誰の操作か分からず追跡できないことです。

対処は2つあります。
ひとつは、認証が不要な範囲だけを任せることです。
すでにログインしている状態から始めて、ログインそのものは人がやります。

もうひとつは、限定された権限のアカウントを用意することです。
読み取りだけの権限にして、そのアカウントの操作として記録される形にします。

後者のほうが確実ですが、アカウントを用意する手間がかかるので、前者のほうが現実的です。
人がログインしてから、その後を任せる形になると思います。

認証情報を渡さない理由は、履歴に残るかもしれない、権限をすべて使えてしまう、誰の操作か追跡できないの3つ。対処は、認証が不要な範囲だけを任せる形と、読み取りだけの限定された権限のアカウントを用意する形の2つ。後者のほうが確実だが、前者のほうが現実的

どちらの場合でも、操作の記録は必ず残します。
権限の設計そのものは内製環境の権限設定をどう整えるか。安全と速度を両立させるで扱っています。

進め方はどうすればいいのでしょうか。
4段階に分けて進めます。

「段階1」は、読み取るだけの作業を1つ試すことです。
結果を人が確認しながら2〜4週間かけて、精度と止まったときの挙動を確認します。

「段階2」は、手順を記録して繰り返すことです。
同じ作業を複数回やって精度を確認する段階で、画面の変化、読み取りの誤り、途中での停止といった問題が最も多く出ます。
段階2のうちに、止まったときの対処を決めておきます。

「段階3」で他の読み取りの作業にも範囲を広げ、「段階4」で書き込む操作の準備までを任せます。
実行そのものは人がやります。

進め方は、この段階4で止めます。
実行まで任せるところには進みません。

導入の4段階。段階1は読み取るだけの作業を1つ試し、段階2は手順を記録して繰り返し最も多くの問題が出る、段階3は他の読み取りの作業に広げ、段階4で書き込む操作の準備までを任せる。実行は人がやり、段階4で止める

止まる前提で設計すれば、従来の自動化との使い分けも決まる

前提として、これは必ずどこかで止まります。
画面が変わった、読み込みが遅い、想定外の表示が出た、といった理由です。

だから、止まったときのために決めておくことが4つあります。
ひとつは、止まったことを検知することです。
「完了の記録が残らない」ことで分かる形にしておかないと、必要になったときに初めて止まっていたと気づきます。

2つ目は、途中までの結果を保持することです。
ここが最も重要になります。
「50件のうち30件まで終わっていたら、残り20件だけをやる」という形にして、全部やり直しにならないようにします。

あわせて、手作業での代替手順も要ります。
止まったときに人が回す手順を用意しておき、完全には依存しない設計にします。

最後に、再開の方法として、どこから再開するかをあらかじめ決めておきます。
画面が変わると動かなくなる前提で設計しておくことも大切です。
システムの更新が入れば、そのたびに止まるからです。

止まったときのために決めておく4つ。止まったことを検知する、途中までの結果を保持する、手作業での代替手順を用意する、どこから再開するかを決める。途中までの結果の保持が最も重要

従来の自動化と、どちらを選べばいいのでしょうか。
判断の基準も決めておきます。
画面を読み取る形が向くのは、画面の構造が複雑な場合、画面が変わる可能性がある場合、作る手間を抑えたい場合です。

従来の自動化が向くのは、動作の確実性が必要な場合、繰り返しの回数が多い場合、長期的に使う場合です。
確実性が必要なら従来の自動化で、位置を指定するほうが安定します。
試すだけなら、画面を読み取る形のほうが作る手間は小さくなります。

画面を読み取る形(Claudeのブラウザ操作)と従来の自動化の比較。従来の自動化は画面の要素の位置を指定するので画面が変わると動かなくなるが確実性は高い。画面を読み取る形は表示内容を見て判断するので画面が少し変わっても対応できる可能性がある

試して効果があったら、そこから従来の自動化で作り直すという判断もあると思います。
手段の選び方は業務自動化はどのツールで作る?Gem・GAS・Canvasの判断基準で扱っています。

そもそもデータを取り出す機能があるなら、画面の操作はあくまで最後の手段なので、そちらを優先して使います。
まずデータを取り出す機能がないかを確認するのが、最初の一歩になります。
APIの理解はAPIを「窓口」として理解する。ツール連携の判断ができる組織になるにまとめてあります。

失敗の型は、確認を飛ばすところから始まる

データを取り出す機能を確認しないまま画面の操作から始めるのが、いちばん多い失敗の型です。
その機能があるなら、そちらを使ったほうが確実で速いからです。

次に多いのが、認証情報を渡すことです。
記録に残り、権限が広く、誰の操作か追跡できなくなります。
書き込む操作を任せるのも失敗で、誤った操作が元に戻せないので、準備までにとどめます。

送信する操作を任せるのも同じで、取り返しがつかないぶん最も事故が起きやすくなります。
止まったことを検知する仕組みを作らないと、必要になったときに初めて気づくことになります。
途中までの結果を保持しないと、全部やり直しになります。
手作業での代替手順を用意しないと完全に依存してしまい、止まったときに業務そのものが止まります。

段階4から先に進むなら、責任の所在まで設計し直す

進め方は、段階4で止めておくのが安全です。
ただ、実際にはその先に進みたい場面も出てきます。

準備まででは削減できる時間が限られるので、書き込みや送信まで任せたいという要望が出てくるからです。
その先に進むとなると、設計そのものが変わります。
必要になるのは、誤った操作を検知する仕組み、元に戻す手段、実行の記録と承認の経路、責任の所在の明確化の4つです。

このなかでいちばん重要なのが、責任の所在です。
「自動で実行された操作の責任は誰が負うのか」という話になります。
これは情シスと経営の判断で、推進担当だけでは決められませんし、業務によっても判断は変わります。
影響の大きさ、規制の対象かどうか、相手に影響が及ぶかどうかで、線が動くからです。

私たちが提供しているデジタル系企業向けのAI導入支援では、こうした自動化の範囲の設計と、権限や責任の整理を情シスと一緒に進めています。
段階4より先に進むかの判断で止まっている場合は、進め方の参考になるかもしれません。

任せる前に、データを取り出す機能から確認する

人が画面をクリックし続けている業務には、「画面でしか操作できない」「繰り返しが多い」「判断が入らない」という3つの条件がそろっています。
繰り返しが多く判断が入らないなら、任せられる可能性があります。
読み取って判断して操作する流れを任せられ、画面が少し変わっても対応できますが、確実性は従来の自動化のほうが高くなります。
任せてよいのは、読み取るだけ・失敗の影響が小さい・結果を人が確認する・認証情報を扱わない、の4つです。

危ないのは、書き込む・送信する・金額が動く・権限を変える・認証を伴う、の5つです。
認証情報は渡しません。
認証が不要な範囲だけを任せるか、限定された権限のアカウントを用意するか、どちらかで対処します。

進め方は4段階で、準備までを任せる段階4で止めます。
止まったときは、検知する・途中までの結果を保持する・手作業で代替する・再開の方法を決める、の4つで備えます。
自部門で人が画面をクリックし続けている業務を1つ挙げ、データを取り出す機能の有無を確認した組織から、自動化の対象は絞られていきます。

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執筆:寺田昇平

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