
時間の使い方をデータで語る。カレンダーを分析可能な形にする
2026/08/18
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
「忙しくて手が回らない」を改善しようとすると、最初に詰まるのは忙しさの中身が分からないことです。
会議が多いのか、移動が多いのか、作業に時間がかかっているのか、原因が違えば打つべき手も違います。
判断の材料は、すでに社内に揃っています。
Googleカレンダーに入っているデータがそれです。
今回は、そのカレンダーのデータを出力して、分析できる形に整えるまでの設計を書いていきます。
自動化の全体像はAIによる業務自動化の全体像。手段の選び方とコスト設計にまとめてあります。

「忙しい」の中身は、数字にしないと語れない
「忙しい」の中身は、なぜ語れないのでしょうか?
理由は2つあります。
ひとつは、集計されていないことです。
カレンダーは1日ずつ見る道具なので、月単位の合計を見る習慣がそもそもありません。
もうひとつは、感覚と実態がずれていることです。
「今週は会議ばかりだった」という実感は実際の時間とずれていることが多く、印象に残っている会議と時間を取っている会議は別のものだからです。
数字がないと、改善の議論もできません。
「会議を減らしましょう」という提案に「必要な会議もある」という反論が返って、そこで止まってしまいます。
ただ、数字が1つあるだけで議論の形は変わります。
「定例会議が会議時間の6割を占めています」という事実から始められるようになるからです。
会議そのものの見直しは会議で埋まったカレンダーを見直す。時間の使い方をAIで可視化にまとめてあります。
カレンダーのデータは、8項目で出力してから分類する
カレンダーのデータは、何から手をつければよいのでしょうか?
まず、表の形に出します。
出す項目は8つで、日付、開始時刻、終了時刻、所要時間、件名、参加者の数、参加者の一覧、場所です。
所要時間は、開始と終了から毎回計算するより、計算した列として持っておくほうが集計は楽になります。
また、参加者の数も列にしておくと、人数と時間を掛けて組織としてのコストが出せます。
対象とする期間は、直近の4週間を目安にします。
それより長く取ると、繁忙期の影響が混ざってしまうからです。
対象者も先に決めておきます。
全社で一度にやると量が多くなりすぎるので、まずは部門か職種を1つ絞るところから始めます。
表に出したデータは、次に分類します。
ここが、AIの使いどころです。
軸は2つで、会議の種類と相手です。
種類は定例、案件の打ち合わせ、社外、社内の調整、作業のブロック、その他に分け、相手は社内のみ、社外を含む、単独に分けます。
分類は件名から判定させます。
「定例」「MTG」「打ち合わせ」「1on1」といった表記の揺れも、吸収して分けてくれるからです。
分類の選択肢は、先に固定しておきます。
自由に分類させると、行ごとに違う言葉が入ってしまうからです。
もう1つ、「その他」の選択肢も必ず残しておきます。
この割合が分類の精度を測る手がかりになり、3割を超えているようなら選択肢の設計そのものが実態と合っていません。

内訳で見るのは、商談時間と社内会議と作業時間の5つの指標
継続して見る指標は、5つに絞ります。
まず会議の合計時間で、週あたりで見た数字です。
次が種類別の内訳で、なかでも定例の割合を見ます。
ここが半分を超えているなら、定例そのものの見直しが最も効く打ち手になります。
3つ目が、社外との時間の割合です。
営業職ならこの割合が成果に直結するので、社内の会議が多すぎて社外との時間が取れていない状態が見えてきます。
加えて、1時間以上の連続した空き時間が週に何回あるかも見ます。
ここが週2回を下回ると、まとまった作業ができなくなります。
最後が、参加者5人以上の会議の時間です。
人数と時間を掛けると、組織としてのコストが出ます。
もっとも見落とされやすいのは、社外との時間の割合と空き時間の回数です。
会議時間の合計が同じでも、社外との時間と作業の塊が違えば、出てくる成果は変わってきます。

部門の比較は同じ職種同士に絞り、個人の評価には使わない
部門ごとに比べた数字は、そのまま信じてよいのでしょうか?
比較には、注意が必要です。
比較して意味があるのは、同じ職種同士か同じ役職同士のあいだだけです。
管理職と単独で作業する職種とでは、会議時間の意味がそもそも違うからです。
そのうえで、「カレンダーに入れる習慣」自体が部門によって違います。
作業時間まで入れている部門もあれば、会議だけしか入れていない部門もあり、この差を無視したまま比較すると誤った結論が出ます。
だから、最初に確認するのは「カレンダーの運用」のほうです。
とはいえ、全社で全部そろえる必要はありません。
何を入れているかを部門ごとに聞いて回り、比較したい範囲だけをそろえれば足ります。
もう1つ、この施策でもっとも重要な注意点があります。
集計を個人の評価に使うと、カレンダーに正確に入れなくなり、データの質が下がって可視化そのものが機能しなくなります。
だから、使い方を先に明示しておきます。
「業務の設計を見直すために使うもので、個人の評価には使いません」と言い切ります。
個人単位の集計は出さず、部門単位や職種単位でまとめて出します。
もちろん、本人が自分のデータを見る場合は例外です。
自分の時間の使い方を知ること自体に、価値があるからです。
この線引きを最初に伝えておかないと、そもそも協力は得られません。

改善は打ち手を1つに絞り、月1回自動で出す形にする
数字を見たあとの打ち手も、先に決めておきます。
ここが決まっていないと、結局は集計しただけで終わるからです。
定例の割合が高い場合は、頻度を落とす、時間を短くする、参加者を絞る、議事録で足りるものは会議をやめる、の順で検討します。
社外との時間が少ない営業職なら、社内の会議を減らす、移動をまとめる、オンラインに切り替える、の順で検討します。
空き時間の塊が少ない場合は、作業の時間を予定として確保して、他の人から見て埋まっている状態にします。
参加者5人以上の会議が多い場合は、参加者を絞る、会議を分割する、報告だけの参加をやめる、という順で見ていきます。
大事なのは、打ち手を1つに絞ることです。
複数を同時にやると、何が効いたのかが分からなくなります。
1つだけ変えて、そのまま1か月ようすを見ます。

会議そのものの質を上げる話は議事録より前に会議の質を上げる。アジェンダ設計から振り返りまでにまとめてあります。
一度の集計で終わらせない設計も要ります。
集計を手作業でやっていると、忙しい月から順に止まっていくので、月に1回、自動で出る形にしておきます。
そのうえで、単月ではなく推移を見ます。
定例の割合が下がっているか、空き時間の塊が増えているか、という見方です。
単月の数字より、推移のほうが判断に使えます。
配る先は部門長にして、自部門の数字と全社平均を並べて出し、「打ち手を1つ選んでください」と添えます。
こうしておくと、部門のほうが自分で改善を始めます。
推進担当が上から指示して回るより、そのほうがずっと速いはずです。
集計の日常化は数字を見える状態にする。データ集計と分析をAIで日常業務化する、転記作業の自動化はメール情報を台帳化する。転記作業を組織から消すで扱っています。
削減した時間と、時間の使い方を並べて見せる
時間の使い方の話は、AI活用の効果を判断する材料にもなります。
AI活用で削減した時間を報告すると、経営から必ず問われるのが「その時間で何が増えたのか」です。
この問いに答えるには、時間の使い方のほうが見えている必要があります。
削減時間だけを出しても、帳簿上の数字にとどまってしまいます。
一方で削減時間と時間の使い方を並べて出せると、「会議の準備時間が減って、社外との時間が増えた」という形で説明できるようになります。
推進担当の側でも、部門別のAI利用率と時間の使い方を並べると打ち手が決まってきます。
会議が多い部門では議事録の自動化が効き、移動が多い部門では音声入力が効く、という具合です。
削減時間の扱いはAI推進担当者の情報収集と経営判断。リサーチとROIの設計にまとめてあります。
部門別のAI利用率なら、私たちが提供している組織のAIポータル「AI Portalize」で、部署・職種・グレードごとに前期比とあわせて集計の手間なしで出ます。
時間の使い方は見えたがAI活用の効果と結びつけられない、という段階なら、考え方の参考になるかもしれません。
数字が1つあれば、忙しさの議論は変わる
「忙しい」の中身が語れないのは、集計されていないことと、感覚と実態がずれていることの2つが原因です。
表に出す項目は8つで、所要時間と参加者の数を計算した列として持ち、期間は直近の4週間にします。
分類は会議の種類と相手という2つの軸で行い、選択肢は先に固定して、「その他」に入った割合で精度を測ります。
見る指標は5つで、なかでも社外との時間の割合と空き時間の回数がもっとも見落とされやすいところです。
部門どうしの比較は同じ職種同士のあいだにとどめ、カレンダーの運用のほうを先に確認します。
個人の評価には使わないと、先に明示しておきます。
使ってしまうと、カレンダーに正確に入れなくなるからです。
打ち手は1つだけに絞って1か月ようすを見て、月に1回自動で出る形にしたうえで、部門長には「打ち手を1つ選んでください」と添えて渡します。
まずは自部門の直近4週間のカレンダーを表に出して、定例が会議時間の何割かを見てみませんか。
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執筆:寺田昇平
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