
会議で埋まったカレンダーを見直す。時間の使い方をAIで可視化
2026/08/31
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
「忙しくてAI活用に手が回らない」という声は、推進を進めていると必ず聞きます。
言っていること自体は正しいのですが、会議が多いのか、移動が多いのか、作業そのものに時間がかかっているのか、忙しさの中身が分からないと打ち手が決まりません。
中身を知るための材料は、実はすでに社内にあります。
カレンダーのデータを分析すると業務時間の使い方がそのまま見えてくるので、今回はこの可視化のやり方を整理してみます。
会議そのものの設計については会議と議事録のAI化。準備から共有・タスク化までの設計にまとめてあります。

「忙しい」の中身は、感覚と未集計の2つで見えなくなる
なぜ中身が分からないのか、理由は2つあります。
ひとつは感覚で語られる点です。
「今週は会議ばかりだった」という実感は、かかった時間の実数とはずれています。
印象に残る会議と、時間を実際に取っている会議は別ものだからです。
もうひとつは集計されていない点で、カレンダーは1日ずつ見る道具なので、月単位の合計を見る習慣がそもそもありません。
ここを集計すると、たいてい想定と違う結果が出ます。
「会議が多い」と思っていた人が、実は移動に時間を取られていたと分かることもあります。
あるいは会議は少ないものの、細切れの予定が並んでいて作業時間がまとめて確保できていなかった場合もあります。
集計すると分かるものは、だいたい5つに整理できます。
会議の合計時間は、週あたり何時間かという数字で、役職や職種によってかなり大きく違ってきます。

会議の種類別の内訳は、定例か案件の打ち合わせか社外かで分け、このなかでも定例の割合が最も重要な数字になります。
移動時間は、訪問と訪問の間に挟まる移動を指し、カレンダーに移動そのものが入っていない場合は訪問と訪問の間隔から推計します。
単独作業の時間の塊は、予定が入っていない連続した時間を指し、1時間以上の塊が週に何回あるかが、集中して作業できるかどうかを決めます。
もうひとつが細切れの度合いで、30分の空きが並んでいる状態と2時間の空きがある状態とでは、合計の空き時間が同じでもできることがまったく違います。
単独作業の時間の塊と細切れの度合いは、「最も見落とされる指標」だと思います。
会議時間の合計が同じでも、細切れかどうかでできることが変わるからです。
集計は3つのステップ、見直しに使う指標も3つに絞る
やることは3つあり、まずカレンダーの予定を書き出すところからです。
期間を決めて、タイトル・時間・参加者・場所の一覧を取り出します。
次にそれを分類し、予定のタイトルから種類を判定させて、定例・案件・社外・社内調整・作業のブロックに分けていきます。
ここがAIの効くところで、タイトルの表記がばらばらでも分類できます。
そのうえで集計するのは種類別の合計時間、空き時間の塊の数、細切れの度合いの3つで、集計そのものは数式で行います。
対象の期間は直近の4週間で足り、それより長く取ると繁忙期の影響が混ざってしまいます。
ただ、集計しただけでは打ち手が決まらないので、見る指標を3つに絞ります。
定例会議の割合は、会議時間のうち定例が占める割合で、ここが半分を超えていたら定例の見直しが最も効く打ち手になります。
定例は惰性で続いていくものなので、必要性を問い直す機会がそもそもないからです。
1時間以上の連続した空き時間の回数は、週に何回あるかで測ります。
もちろん個人差はありますが、週2回を下回るとまとまった作業ができない状態になります。
もうひとつが参加者5人以上の会議の時間で、参加人数×時間で組織としてのコストが出ます。
5人で1時間の会議は5時間分のコストという見方になり、ここが見えてくると参加者を絞る判断ができるようになります。
この3つはいずれも「動いたら手を打てる指標」になっていて、定例を減らす・空き時間をブロックする・参加者を絞る、という打ち手にそのままつながります。
打ち手は4つ、会議の中身そのものにも踏み込める
指標を見た結果として打てる手を、順に並べておきます。
まずは定例の見直しで、頻度を落とす、時間を短くする、参加者を絞る、議事録で足りるものは会議そのものをやめる、の4つをこの順番で検討します。
次が作業時間のブロックで、予定として作業の時間を確保し、他の人から見て埋まっている状態にします。
もうひとつが会議の準備と記録をAIに寄せることで、会議自体を減らせない場合に前後の作業のほうを減らします。
具体的には資料の準備、議事録の作成、決定事項の共有あたりです。
資料づくりそのものの分解は提案・報告資料の作成時間を半分にする。スライド業務のAI標準化で扱っています。
最後が移動の削減で、訪問をまとめるかオンラインに切り替えるかになりますが、ここは営業側の判断が入るところだと思います。
「議事録で足りるものは会議をやめる」が最も効くことがあり、報告だけの会議は文書の共有でそのまま代替できる場合が多いからです。
時間の集計から一歩進めると、会議の中身そのものの分析もできます。
議事録が残っている会議は決定事項の数を数えてみると、1時間の会議で決定が0件なら、その会議は情報共有にあたるので共有だけなら文書で足ります。
同じ議題が複数回出てきている会議も探します。
3回議論しても決まっていない議題は、その場では決められないということなので、持ち帰りの構造のほうを変える必要があります。
参加者の発言の偏りも見ておくと、発言していない参加者が多い会議は、そもそも参加者を絞れる可能性が高いと分かります。
この分析は、会議の削減よりも会議の質の改善のほうに効きます。
時間を減らすだけだと、必要な議論のほうまで一緒に減ってしまうからです。

部門比較は要注意、使い方は先に明示しておく
集計が出てくると部門ごとに比べたくなりますが、ここは注意が必要です。
職種によって適正な会議時間がそもそも違い、管理職と単独で作業する職種とでは会議時間の意味そのものが違うので、単純に並べて比較はできません。
カレンダーに入れる習慣が部門で違う点も見落とせません。
ある部門は作業時間まで入れているのに、別の部門は会議しか入れていない、という差を無視して比較すると誤った結論が出ます。
個人の評価には使わないことも大切です。
「この人は会議が多い」という見方をされると分かった瞬間から、カレンダーに正確に入れてもらえなくなります。
そうなるとデータの質が下がって、可視化そのものが機能しなくなります。
だから使い方を先に明示するのが要点で、「業務の設計を見直すために使います。個人の評価には使いません」と先に伝えておく必要があります。
ここを言わないまま集計を始めると、そもそも協力が得られません。

失敗は、比較を誤ることと使い方を言わないことに集まる
失敗のパターンは5つで、どれも比較の仕方か使い方の明示に関わります。
まず、集計を個人の評価に使ってしまうことです。
カレンダーに正確に入れてもらえなくなり、結果として可視化そのものが機能しなくなります。
次に、部門を単純に比較してしまうことです。
職種の違いとカレンダー運用の違いを無視すると、誤った結論が出ます。
もうひとつが、会議時間の合計だけを見てしまうことです。
細切れの度合いを見ないと、できることが分かりません。
もう一つが、定例を一律に減らしてしまうことです。
必要な議論まで減ってしまうので、頻度・時間・参加者・そもそも必要かの4段階で検討します。
最後が、使い方を明示しないまま集計を始めてしまうことです。
これだと協力が得られません。
削減時間と使い方を並べると、AI活用の効果まで語れる
ここまでは時間の使い方の話ですが、これはAI活用の効果を判断する材料にもなります。
AI活用で削減した時間を報告するとき、経営から必ず問われるのが「その時間で何が増えたのか」です。
ここに答えるには、時間の使い方のほうが見えている必要があります。
削減時間だけを出しても、それは帳簿上の数字にとどまります。
一方で削減した時間と時間の使い方を並べて出せると、「会議の準備時間が減って、商談の時間が増えた」という形で説明できるようになります。
推進担当の側でも、部門別のAI利用率と時間の使い方を並べると打ち手が決まります。
会議が多い部門では議事録の自動化が効きますし、移動が多い部門では音声入力が効きます。
どの業務から手を付けるかの並べ方は業務のAI化の進め方。棚卸しから優先順位付け・実装までの手順にまとめてあります。
推進担当が並べる側の数字は、組織のAIポータル「AI Portalize」なら、部署・職種・グレードごとのAI利用率と前期比として集計の手間なしで出ます。
時間の使い方は見えたが、AI活用の効果と結びつけられない、という状態なら、考え方の参考になるかもしれません。
「忙しい」を数字にできれば、打ち手は自然と決まる
「忙しい」の中身は感覚で語られるばかりで、実際には集計されていません。
集計してみると、たいていの場合は想定と違う結果が出てきます。
カレンダーから見えるのは、会議の合計時間・種類別の内訳・移動時間・単独作業の時間の塊・細切れの度合いの5つで、後ろの2つが最も見落とされます。
実際に見る指標のほうは3つに絞ります。
定例会議の割合、1時間以上の連続した空き時間の回数、参加者5人以上の会議の時間です。
打ち手は、定例の見直し・作業時間のブロック・会議の前後の作業をAIに寄せること・移動の削減の4つです。
あわせて、集計は個人の評価に使わないと先に明示しておきます。
ここを言わないまま始めると、カレンダーに正確に入れてもらえなくなって、データの質そのものが落ちます。
自分のカレンダーは、いま何に埋まっているでしょうか?
直近4週間の自分のカレンダーを書き出してみたとき、定例は会議時間の何割を占めているでしょうか。
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執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
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