組織のAI活用をAIポータルと伴走支援で加速

提案・報告資料の作成時間を半分にする。スライド業務のAI標準化

提案・報告資料の作成時間を半分にする。スライド業務のAI標準化

執筆:寺田昇平

AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事

仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。

資料作成にかかっている時間を実測してみると、想像より大きい数字が出ます。

営業なら週に数時間、管理職なら月次の報告で半日。
全社で積み上げると、相当な時間になります。
厄介なのは、この時間が成果としてはまったく見えない点で、商談や判断のための準備でしかない以上、減らせるなら減らしたほうがいいはずです。

GoogleスライドとGeminiのような組み合わせを前提に、この工程をどう分解してAIに寄せるかを職種別に整理していきます。
職種ごとにどの工程へAIを当てるかの全体像は職種別AI活用まとめ。営業・マーケ・人事・経理・法務の使いどころにまとめてあります。

資料作成の5つの工程と任せ方。素材集め・本文の執筆・見た目を整えるの3つはAIに寄せ、構成は案を出させて人が選び、確認も人が担う。素材集めは最も削減効果が大きい

資料作成は5工程、AIに寄せるのは素材集め・本文・見た目

どこに時間がかかっているのか、まず工程を分けて見ていきます。

工程は5つです。
素材集め(数字、実績、参考にする過去の資料)、構成(何をどの順番で言うか)、本文の執筆(各ページの文章)、見た目を整える(レイアウト、図、色)、確認して直す(誤りの修正、上司のレビュー対応)です。
時間がかかっているのは素材集め・本文・見た目の3つで、構成は最も重要なのに時間自体はそれほどかかりません。

だからAIに寄せるのは素材集め・本文・見た目の3つで、構成は人が判断し確認も人がやる、という切り分けが基本になります。

資料作成を含めた社内の仕事の中で、どこからAIを当てるかを選ぶ手順については、業務のAI化の進め方。棚卸しから優先順位付け・実装までの手順で整理しています。

工程ごとに具体的に見ていきます。
まず素材集めは、過去の資料を参照させて使える内容を出させ、数字のほうは自動で集計する仕組みから取ります。
ここが最も削減効果が大きい工程なのに、実際には最も手を付けられていません。

本文の執筆も寄せられ、構成さえ決まっていれば各ページの文章は任せられます。
分量の目安を指定するのがコツで、例えば「1ページ120字以内」と決めておくと読める資料になります。

見た目のほうは、テンプレートとガイドラインを渡して整えさせます。
ただ、構成と同時に処理させないほうがよく、構成が確定してから当てるようにします。

一方で構成は、案を複数出させて人が選び、選ぶ作業のほうが人の仕事なので、ここを任せてしまうと資料の中身に自分の判断が入りません。
確認も人が担い、数字と固有名詞は原本と突き合わせます。
表現の粗さの指摘だけは、AIに任せられます。

営業・マーケ・人事・管理職で、任せる中身が違う

職種ごとの使いどころを、順に見ていきます。
「うちの職種だとどこが効くのか」を確かめながら読んでみてください。

営業でやるのは、商談の記録と顧客の情報を渡して提案の骨子を3案出させ、そこから選んで本文を書かせる進め方です。
これで提案書の作成が半分程度になり、特に過去の類似案件を参照させる工程が効きます。
「同じ業界の過去の提案で使った切り口」を出させると、ゼロから考える時間が消えるからです。

注意したいのは、顧客固有の事情を素材として渡さないと一般論の提案になる点です。
商談の記録が残っているのが前提になるので、記録が残っていない組織では、まず記録を残す設計から必要になります。

マーケティングでやるのは、各媒体のレポートを渡して同じ形にそろえ、数字の変化とその要因の仮説を出させる進め方です。
これで、複数媒体のデータを手で転記していた作業が消えるのは、形をそろえる工程が最も時間を食っていた部分だからです。
注意点は2つあります。
集計は数式でやってAIに計算させず、また要因の説明は仮説として扱って検証の方法を1行添えます。

調査や分析の結果を社内で読まれる形にするところまでは調査結果を読まれる形に変える。社内共有までを一連の業務にするで扱っています。

人事で渡すのは、研修の目的と対象者で、既存の研修動画や資料があればそれも素材にして、構成を出させます。
効くのは研修資料の作成と、理解度を確認する問題の作成で、後者の手間が最も減ります。
注意したいのは、制度の説明を含む資料は内容が古くなる点で、作成時点を明記して制度の変更時に見直す手続きを入れておきます。

管理職で渡すのは、部門の数字とその期間に起きた出来事で、そこから報告の骨子を出させます。
これで月次報告の作成時間が減り、様式を固定できるので前月との比較もしやすくなります。
注意点は、報告に載せる数字を自分で確認する点と、判断や見通しの部分は自分で書く点で、ここをAIに書かせると質問されたときに答えられなくなります。
管理職の資料は「自分で説明できるか」が要件なので他の職種とは切り分けが違い、骨子と体裁は任せて判断は自分で書きます。

営業・マーケ・人事・管理職の4職種について、AIに任せること、効くところ、注意することを比べた図。営業は提案の骨子、マーケはレポートの形そろえ、人事は研修資料と理解度確認の問題、管理職は報告の骨子。管理職は判断を自分で書く

配布は1職種1枚、素材集めには前提工事がいる

職種別の使い方を、そのまま配布物にしていきます。

まず1職種1枚にするのは、営業向けと管理職向けとでは切り分けそのものが違い、汎用の手順書では対応できないからです。
書く項目は4つです。
対象の資料、AIに任せる工程、人が担う工程、使う依頼文(そのまま貼れる形)です。

「人が担う工程」を明示するのが要点で、ここを書かないと全部を任せて質が落ちます。
期待できる削減時間も1行だけ書いておくと、「提案書1本あたり2時間から1時間へ」といった形が、試してみる動機になります。
ただし過大には書かず、あくまで実際に試して出た数字のほうを使います。

職種別の配布物に書く4つの項目。対象の資料、AIに任せる工程、人が担う工程、そのまま貼れる依頼文。人が担う工程を明示するのが要点

依頼文に毎回書く前提をまとめて減らす方法は毎回同じ前提を書かせない。組織の共通前提をデフォルト化するで扱っています。

工程の中で最も削減効果が大きいのが素材集めですが、これには前提があり、過去の資料が参照できる状態に置かれている必要があります。
個人のフォルダに散っていたり、ファイル名から内容が分からなかったり、画像として保存されたPDFになっていたりすると参照させられず、素材集めの工程は手作業のまま残ってしまいます。
だから資料作成の効率化を進めるなら、先に過去の資料の整理が必要です。

順序としては、正の場所を1つに決め、ファイル名に内容と日付を入れ、参照先に指定します。
整理の対象は過去2年分程度で足ります。
それ以前の資料は参照される頻度が低いので、全部を整理しようとすると終わりません。
この前提工事を飛ばすと削減効果が半分以下になるのは、本文と見た目の工程だけが速くなっても、素材集めが手作業なら全体の時間はそれほど変わらないからです。

素材集めの効果を出す前提工事の順序。過去の資料の正の場所を1つに決める、ファイル名に内容と日付を入れる、参照先に指定する。整理の対象は過去2年分程度で足りる

古い数字が紛れ込む問題と、空いた時間の使い道

参照できるようにすると今度は次の問題が出てきて、古い資料の内容がそのまま使われてしまいます。
過去の提案書に載っていた価格、実績の数字、製品の仕様が更新されているのに古い数字のほうが新しい提案書に入ってしまい、しかも見た目は自然なのでかなり気づきにくいものです。

対処は2つあります。
1つが数字と価格を参照先から除く対応で、過去の資料を参照させるときは価格表と実績の数字を別の最新版から取る形にします。
構成や切り口は過去から、数字は最新からという分け方です。
もう1つが、古い資料に【旧】を付ける対応で、参照させたくない版をファイル名で区別できるようにする棚卸しの一部としてやります。

過去の資料を参照させると、更新前の価格や実績の数字が新しい提案書に入る問題の対処。価格表と実績の数字は別の最新版から取る、古い資料に【旧】を付ける。数字と価格は原本との突き合わせを工程として残す

確認の工程では数字と価格を必ず原本と突き合わせる作業を工程として残し、資料作成が速くなってもこの確認だけは省きません。
もちろん、突き合わせには手間がかかりますが、事故を防ぐには欠かせない工程です。

最後に、この施策を進めると必ず問われる場面があり、「時間が空いて、それで何をするのか」という問いです。
ここが決まっていないと削減時間は帳簿上の数字にとどまり、経営から「本当に効果があったのか」と問われたときに答えられません。
だから職種ごとに「空いた時間で増やすもの」を1つ決めておき、営業なら商談数、マーケなら実施する施策の数、人事なら面談の回数といった具合です。

その数が増えたかも、あわせて見ます。
増えていれば削減時間が価値に転換されていますし、増えていなければ時間が空いただけです。

これは推進担当が決める話ではなく、部門長が決める話です。
ここを部門長と合意しておくと、報告の説得力が変わります。

削減時間を価値にするための3つの手順。職種ごとに空いた時間で増やすものを1つ決める、部門長と合意する、その数が増えたかを見る。増えていれば価値に転換され、増えていなければ時間が空いただけ

よくある失敗

よくある失敗は、「構成のところまで任せる」「素材集めを手作業のまま残す」「構成とデザインを同時に処理する」「汎用の手順書を配る」「削減時間の使い道を決めない」の5つです。

構成まで任せてしまうと、資料の中身に自分の判断が入らないので、質問に答えられなくなります。
案を出させて、選ぶのは人がやります。
素材集めを手作業のまま残すと、最も削減効果が大きい工程を、そのまま放置してしまいます。

構成とデザインを同時に処理させるのも避けたほうがよく、両方が浅くなってしまいます。
汎用の手順書を配るのも失敗のもとで、職種によって切り分けが違うので当てはまりません。
1職種1枚にします。

削減時間の使い道を決めないと、効果を問われたときに答えられなくなります。

職種ごとの手順書づくりと、その使い方を広げる社内研修は、当社のAI伴走支援でも現場の担当者と一緒に進めています。

AIに寄せるのは3工程、判断と確認は人が持つ

資料作成の工程は、素材集め・構成・本文・見た目・確認の5つに分かれます。
時間がかかっているのは素材集め・本文・見た目で、ここをAIのほうに寄せます。

構成は人が選び、確認は人がやります。
特に構成を任せてしまうと、資料の中身に自分の判断が入らず、質問に答えられなくなります。
職種別の使いどころは、営業が提案の骨子(過去の類似案件を参照させる工程が効く)、マーケがレポートの形そろえ、人事が研修資料と理解度確認の問題、管理職が報告の骨子(判断は自分で書く)です。

配布物は1職種1枚・4項目で、「人が担う工程」を明示するのが要点になります。
あわせて素材集めを効かせるために、過去2年分の資料を参照できる状態にしておきます。
削減した時間で何を増やすかは職種ごとに1つ決めて部門長と合意しておき、ここがないと効果を問われて答えられません。

自分がよく作る資料は、5工程のどこに時間がかかっているでしょうか?
その1種類だけでいいので、時間の内訳を書き出すところから着手してみてください。

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執筆:寺田昇平

AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事

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