組織のAI活用をAIポータルと伴走支援で加速

メール情報を台帳化する。転記作業を組織から消す

メール情報を台帳化する。転記作業を組織から消す

執筆:寺田昇平

AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事

仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。

社内の業務を洗い出すと、必ず出てくるのが転記作業です。
メールで来た情報を表に入力する、フォームの回答を別の台帳に写す、システムから出したデータを別の形式に整える。

ただ、転記という作業だけは、なぜか誰も改善しようとしません。
「そういう作業だから」と、そのまま受け入れられています。

今回は、Gmailで受け取った情報をスプレッドシートに転記する作業を、組織から消していく設計を書いていきます。
自動化の全体像はAIによる業務自動化の全体像。手段の選び方とコスト設計にまとめてあります。

メールで受けている申請や依頼について、こちらが案内できる相手にはフォームに変えて転記そのものを不要にし、相手の都合が優先される相手にはメールからの転記を自動化する図。両方が混在するのが普通で、フォームを用意しつつメールからの転記も残す

転記作業はどの部署にも眠っている

具体的に見ていくと、転記作業はどの部署にも共通してあります。

営業なら問い合わせのメールを案件の台帳に転記し、経理なら請求のメールから金額と期日を、人事なら応募のメールから候補者の情報を、総務なら備品の申請メールから内容を、情シスならアカウントの申請メールから設定の内容を、それぞれ転記しています。
共通しているのは、どれも1件あたり2〜5分で終わるので、問題として認識されない点です。
もちろん、月に100件あれば合計で3〜8時間になりますし、「2分で終わるから」という感覚のまま、時間だけが積み上がっていきます。

では、なぜこの作業は残り続けるのでしょうか?
理由は3つあり、まず1件あたりの時間が短いために、「2分で終わるから」と改善の対象にならないことです。

次に、誰も全体の量を把握していないことです。
転記している本人でさえ月に何件やっているかを知らず、本人以外はその作業の存在すら知りません。

もうひとつが、自動化できると思われていないことです。
メールの本文から情報を取り出す作業には、人間の判断が要ると思われています。
なかでも大きいのは、量が見えていないことです。
量が見えないままだと優先順位が上がらないので、最初にやるべきは量を測ることになります。

「1週間だけ、転記した件数を数えてください」と頼んでみると、たいてい想定より多い数字が出てきます。

転記作業が残り続ける3つの理由。1件あたりの時間が短い、誰も全体の量を把握していない、自動化できると思われていない。なかでも大きいのは量が見えていないことで、最初にやるべきは1週間の転記件数を数えること

項目は、使い道から逆算して絞り込む

ここから実装の話に入ります。
設計の本体は2つで、メールから何を取り出すかという項目選定と、どのメールを対象にするかというフィルター設計です。
この2つが決まれば、実装そのものは難しくありません。
逆に決めずに始めると、使えないものができあがります。

項目選定でやることは、その情報を何に使うかから逆算することです。
現在の台帳を見て埋めている列を確認し、その列が何に使われているかを確認したうえで、使われていない列を落とします。

この「使われていない列」が、意外に多く見つかります。
過去の集計のために必要だった項目がそのまま残っていて、いまは誰も見ていない、ということがよくあります。
ここを落とすだけで、転記の作業そのものが減ります。

また、「集計に使う項目」と「読むための項目」を分けておきます。
集計に使う項目、つまり日付や金額や区分は形式をそろえる必要がありますが、読むための項目、つまり要望の内容は文章のままで構いません。

そのうえで、項目は5〜7個に絞ります。
網羅的にしようとすると精度が落ちますし、使わない列が増えるだけです。

項目選定の手順。現在の台帳で埋めている列を確認し、その列の使い道を確認し、使われていない列を落とし、項目を5〜7個に絞る図。集計に使う項目は形式をそろえ、読むための項目は文章のままでよい

表そのものの設計はスプレッドシートを社内DBとして扱う。AI自動化の土台設計にまとめてあります。

フィルターは条件を広めに取り、実装前に5点を決めておく

フィルター設計でやることは、対象のメールを特定する条件を決めることです。

条件の候補は4つあり、送信元のアドレス、件名に含まれる文字、宛先、ラベルやフォルダです。
このなかで最も確実なのは、ラベルやフォルダです。
人が振り分けたラベルを条件にすると、判断が入った状態で処理できますが、その場合は人が振り分ける手間のほうが残ります。
だから、自動で振り分けられる条件があるなら、そちらを優先して使います。

「対象外のものが混ざったときはどうするか」も決めておきます。
条件には合ったが実際は対象外だったメールを、転記された後に人が削除できる形にしておきます。

フィルターは、狭くしすぎないことが要点です。
条件を狭くすると取りこぼしますが、広めに取って人が削除するほうが安全で、取りこぼしには気づけなくても余分な行は目で見えます。

設計そのもの以外に、決めておくことも5つあります。
重複の防止、元のメールへのリンク、転記の失敗をどう扱うか、誰が表を管理するか、対象を広げたときの影響です。

まず重複の防止で、同じメールを二度処理しないよう処理済みの記録を残しておかないと、同じ行が何度も繰り返し追加されます。
次に、元のメールへのリンクです。
転記された内容を確認したいときに元のメールを開けるようにしておく、ここは必須の項目です。

転記の失敗をどう扱うかも決めておき、項目が取り出せなかった場合は空欄にしておいて、後から人が埋める形が実務的です。
表の構造を変える権限を持つ人も決めておき、対象のメールが増えたときに処理が追いつくかも、あらかじめ見ておきます。

このなかで最も多い事故になるのが、重複の防止です。
処理済みの記録を残していないと、実行のたびに同じメールが処理されます。

実装前に決めておく5点。重複の防止、元のメールへのリンク、転記に失敗したときの扱い、表の管理者、対象を広げたときの影響。最も多い事故になるのは重複の防止で、処理済みの記録がないと同じ行が繰り返し追加される

項目の抽出そのものはメールに埋もれた情報を構造化する。欲しい項目を自動で抜き出すで扱っています。

横展開しやすい業務には、3つの条件がそろっている

1つ作って回り始めたら、次はどこまで広げられるでしょうか?
横展開しやすいのは、3つの条件を満たす業務です。

定型的なメールが繰り返し来て、様式が決まっているぶん項目の抽出の精度が出る業務です。
転記先の台帳がすでにあれば、新しく台帳を作る必要もありません。
転記している人が特定できれば、誰の作業が減るかも明確になります。

このなかで最も重要なのは、様式が決まっているメールという条件です。
フォームからの自動送信、システムからの通知、定型の申請、このあたりのメールははっきりと精度が出ます。

横展開しやすい業務の3つの条件。様式が決まったメールが繰り返し来ること、転記先の台帳がすでにあること、転記している人が特定できること。最も重要なのは様式が決まっているメールで、探すときは各部門に毎週来る定型的なメールを表に入力しているものがないかを聞く

逆に、人が自由に書いたメールは精度が落ちます。
ここは項目を絞って送信者と日付だけ取るか、そもそも対象から外すという判断になります。

探し方も書いておくと、各部門に「毎週来る定型的なメールで、その内容を表に入力しているものはありますか」と聞くと、部門ごとにまとまって出てきます。

問い合わせ対応そのものの自動化は問い合わせ対応を記録・判定・通知まで自動化する。一次対応の設計、ノーコードで組む場合の全体像はノーコードの自動化フローを全社の武器にする。導入の全体像にまとめてあります。

転記の自動化より先に、フォームに変えられないかを確認する

そもそも、転記そのものをなくす方法はないのでしょうか?
最後に、上流での対処を書いておきます。
社内からの申請や依頼をメールで受け取っている場合は、フォームに変えたほうが確実です。

理由は3つあり、項目が最初から構造化されていること、必須項目を指定できること、そもそも転記そのものが不要になることです。
フォームに変えられるのは、社内の申請、既存顧客からの定型的な依頼、社内からの問い合わせです。
変えられないのは、取引先が既存のメールで送ってくる場合や、相手の慣習で変えられない場合です。

とはいえ、両方が混在するのが普通の状態で、フォームを用意しつつメールからの転記も残します。
判断の目安は依頼元との関係で、こちらが案内できる相手にはフォームを、相手の都合が優先される相手にはメールからの転記を当てます。
つまり、「転記の自動化」を検討する前に、「そもそもフォームに変えられないか」を確認します。
ここが、上流での対処にあたる部分です。

フォーム経由の一次返信は一次返信の速さを組織の武器にする。フォーム対応の自動下書きで扱っています。

失敗の型は6つあり、量を測らずに着手する、現在の台帳の列をそのまま転記する、フィルターを狭くしすぎる、処理済みの記録を残さない、元のメールへのリンクを残さない、フォームに変えられる依頼まで転記で対処する、という6つです。
どれも、1週間の件数を数え、使われていない列を落とし、広めに取って人が削除する形にし、処理済みを記録し、リンクを残し、先に上流を確認すれば避けられます。

転記を自動化するかフォームに変えるかの判断から実装までは、私たちのAI伴走支援でも、現場の担当者と一緒に手を動かして進めています。

この作業に使える業務ツール「問い合わせメールの台帳化」は、詳しいページでできることと使い方を紹介しています。

転記は、量を測り、列を削り、上流を変えれば消えていく

転記作業はどの部署にもありますが、1件2〜5分と短いので問題として認識されません。
誰も全体の量を把握していないので、最初にやるべきは量を測ることです。
設計の本体は2つで、項目選定はその情報を何に使うかから逆算して使われていない列を落とし、5〜7個に絞ります。
フィルター設計は、送信元や件名や宛先やラベルで条件を作り、広めに取って人が削除するほうが安全です。

実装前に決めるのは5つで、重複の防止が最も多い事故になるので、まずここを固めます。
元のメールへのリンク、失敗したときの扱い、表の管理者、対象を広げたときの影響も決めておきます。

横展開は、様式が決まっているメールが繰り返し来る業務から始めます。
「毎週来る定型的なメールで、その内容を表に入力しているものはありますか」と聞くと、部門ごとにまとまって出てきます。
そのうえで、「転記の自動化」を検討する前に「フォームに変えられないか」を確認します。
社内の申請や定型的な依頼はフォームに変えられますし、そうすれば転記そのものが不要になります。

まずは毎週来る定型的なメールを表に入力している作業を1つ探し、1週間の件数を数えます。

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執筆:寺田昇平

AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事

仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。

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