
社内アンケートの回収率が上がらない。未回答者だけに自動で促す
2026/08/14
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
AI推進を進めていると、社内アンケートを取る機会が増えていきます。
利用状況の把握、研修の理解度、業務の棚卸しと、中身は違っても、どれも回収率のところで同じように止まります。
締切を過ぎても半分しか集まらないので催促することになり、この催促のほうに推進担当の時間が消えていきます。
しかも催促の作業は、どれだけやっても成果としては見えないので、忙しさだけが手元に残る典型的な作業です。
今回は、アンケートのリマインドを自動で回す設計を書いていきます。
会議と情報流通の全体像は会議と議事録のAI化。準備から共有・タスク化までの設計にまとめてあります。

推進担当は、リマインドの作業に一番時間を使っている
自分が何にどれだけ時間を使っているか、数えたことはあるでしょうか。
分解すると、作業は4つに分かれます。
回答者の一覧と対象者の一覧を突き合わせて、誰が回答していないかを調べる作業には、10〜20分かかります。
未回答者に個別に送るか全員宛に送るかを判断して、連絡します。
締切の前日に、もう一度突き合わせて確認します。
回答率の低い部門については、部門長に声をかけてもらうよう依頼します。
この一連の作業は1回のアンケートで1時間程度かかり、月に数回あれば、それだけの時間が積み重なっていきます。
この4つのうち、突き合わせと再確認は完全に自動化できる作業です。
また、連絡の設計を変えてしまえば、部門長への依頼そのものも不要になるので、順に見ていきます。
全員宛のリマインドは、届いた瞬間に無視される
まず、連絡の設計から見ていきます。
「全員宛」に送るのが最も手軽ですが、そこには4つの弊害があります。
回答済みの人にも同じ通知が届くので、「もう答えたのに」という反応になり、通知そのものが無視されるようになります。
誰が未回答かは伝わらないので、自分が回答したかどうかを覚えていない人には響きません。
全員宛のメッセージは自分に向けられたものだと認識されないので、効果が薄いままです。
繰り返すほど逆効果になるので、3回目の全員宛リマインドは、ほぼ誰にも読まれなくなります。
なかでも「回答済みの人にも届く」ことの損失がいちばん大きいと思います。
通知が無視される習慣がついてしまうと、他の連絡も届かなくなるからです。
だから、「未回答者だけ」に送る設計にします。
地味な変更ですが、ここがこの仕組みの核心です。

未回答者だけに送り、匿名にするかは答えにくさで決める
では、「未回答者だけ」に送るには何が要るのでしょうか。
回答の一覧と対象者の一覧を突き合わせて、未回答者だけに通知する仕組みです。
必要なのは3つで、部門やアカウントの一覧から取る「対象者の一覧」、回答にアカウントの情報をひもづける「回答者の識別」、チャットのダイレクトメッセージやメールといった「個人に届く通知の経路」です。
回答者の識別は、匿名のアンケートでは使えません。
通知の内容そのものは3行で足り、「〇〇のアンケートが未回答です、締切は〇月〇日です、回答はこちら(リンク)」という程度です。
リンクだけは必ず入れておきます。
探す手間があるだけで、回答されなくなるからです。

回答者の識別にかかわる論点なので、匿名にするかどうかも整理しておきます。
匿名にする必要があるのは、評価にかかわる内容や、上司への評価、ハラスメントにかかわる内容で、この種類の設問は匿名でないと本当のことは書かれません。
一方で、利用状況の把握、研修の理解度、業務の棚卸しは「記名」で構わない領域です。
「匿名だと回収率が上がる」というのは誤解だと思います。
匿名だと催促ができないので、むしろ回収率は下がります。
判断の目安は、答えにくい内容が含まれるかどうかです。
含まれないなら「記名」にして、「回答の内容は個人単位で共有しません」と明示しておくと、答えにくさはかなり下がります。

中間の選択もあります。
回答の内容は匿名で集計しつつ、回答したかどうかだけを記録しておく形にすれば、催促もできますし、回答の内容のほうは守られます。
離脱する人を減らす設計は「AIは使えない」と離脱する人を減らす。つまずき7パターンとサポート設計にまとめてあります。
既存機能で足りるかどうかと、回収率の目標をあわせて決める
多くのツールには、リマインドの機能がすでに備わっています。
自前で「実装する」前に、まず既存の機能で足りるかを確認します。
既存の機能で足りるのは、全員宛の定期的なリマインドと、単純な締切の通知、回答の有無に関わらず同じ内容を送る場合です。
実装が必要になるのは、未回答者だけに送る場合と、部門ごとに内容を変える場合、回答率を集計して部門長に送る場合、複数のアンケートを横断して管理する場合です。
「既存の機能で足りるものは、実装しない」と決めておきます。
自前で作った分だけ、保守の負荷が増えるからです。
判断の目安は未回答者の抽出が必要かどうかで、必要なら実装し、不要なら既存の機能で済ませます。
ただ、月に1回程度のアンケートであれば、そもそも手作業でも十分に回ります。
実装するのは、頻度が高い場合か、対象者が多い場合だと思います。
手段の選び方そのものは業務自動化はどのツールで作る?Gem・GAS・Canvasの判断基準にまとめてあります。
あわせて、そもそもどこまで集めるのかという目標も決めておきます。
ここが決まっていないと、催促にいつまでも終わりが来ません。
種類ごとの目安としては、全社の利用状況の把握が7割で、全数は不要で傾向が分かれば足ります。
研修の理解度は9割で、受講者が対象なので高い水準を求められます。
業務の棚卸しは部門ごとに10〜20件で、全員の回答は不要で部門に必要な件数が集まれば足ります。
そもそも、全数は目指さないほうがよいと思います。
最後の1割を集める時間のほうが、そこから得られる情報の価値より大きくなることがあるからです。
目標に達したら催促をやめると決めておくと、催促の作業に終わりが来ます。
棚卸しの設計はAI化する業務が見つからない。全社一斉の業務棚卸しの設計、理解度の測り方は研修の理解度を測れる状態にする。テストとクイズを自動化するで扱っています。

回収率が伸びない原因は、リマインドの外側にある
そもそも回収率が上がらない要因は、リマインド以外のところにもあります。
自社はどこまで確認できているでしょうか。
質問が多すぎると、まず回答されません。
20問もあるアンケートは敬遠されるので、設問は5問以内に収めます。
「あなたはAIを活用できていますか」のような答えにくい質問があると回答が止まるので、事実を聞く形に変えます。
回答が何に使われるかが分からないと答える動機がないので、反映される先が見えている必要があります。
前回の結果が共有されていない場合も止まります。
答えたのに何も返ってこなかった経験があると、次から答えなくなるからです。
なかでも「前回の結果を共有する」ことが対策としてはいちばん効きます。
前回のアンケートの結果と、それを受けて何をしたかを共有するだけで、次回の回収率がはっきり上がるからです。
だから、リマインドの仕組みを作る前に、この4つを確認します。
仕組みで解決するのは催促の手間だけで、回収率そのものの本質はここにあると思います。
集計と可視化の日常化は数字を見える状態にする。データ集計と分析をAIで日常業務化するにまとめてあります。

起こりやすい失敗は6つあって、全員宛にリマインドを送ること、答えにくい内容がないのに匿名にすること、既存の機能で足りるものを実装すること、回収率の目標を決めないこと、質問を20問にすること、前回の結果を共有しないことです。
どれも「未回答者だけ」に送って、「記名」にして、既存の機能を使って、種類ごとに目標を決めて、5問以内に収めて、結果を返せば起きません。
未回答者だけにリマインドを送る小さな仕組みも、当社のAI伴走支援では、業務の洗い出しから実装まで現場の担当者と一緒に作っています。
回収率は催促の自動化ではなく、前回の結果を返すと上がる
リマインドの作業は、回答者と対象者の突き合わせ、未回答者への連絡、再確認、部門長への依頼で、1回あたり1時間程度かかります。
この4つのうち、突き合わせと再確認は完全に自動化できます。
リマインドは「全員宛」には送りません。
回答した人にも届いてしまうと、通知そのものが無視される習慣がついてしまうので、「未回答者だけ」に送るのがこの設計の核心です。
必要なのは、対象者の一覧、回答者の識別、個人に届く通知の経路の3つで、通知の中身は3行にリンクを添えた形で足ります。
匿名にするのは答えにくい内容が含まれる場合だけで、含まれないなら「記名」にして、「内容は個人単位で共有しません」と明示します。
既存のリマインド機能で足りるものは実装しません。
未回答者の抽出が必要かどうかが、その判断の目安になります。
回収率の目標は種類ごとに決めておき、全数は目指さず、目標に達したら催促をやめます。
仕組みを作る前に、質問数、答えにくさ、使われ方の説明、前回の結果の共有を確認します。
なかでも前回の結果の共有がいちばん効きますし、仕組みで解決するのは催促の手間だけだからです。
まずは前回のアンケート結果と、それを受けた対応を、次の案内文に1行添えてみてください。
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執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
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