
提案が刺さらないを減らす。顧客に伝わるストーリーを組織で共有する
2026/08/04
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
同じ商品を、同じような相手に提案しているのに伝わり方が違う、これは営業の現場でよく起きることだと思います。
差の原因は、話の順序にあることが多いです。
何から入って、どう展開して、どこで自社の話をするか、ここが決まっている人とその場で組み立てている人とで結果が変わってきますが、この順序のほうは型にできます。
今回は、提案のストーリーをAIも使いながら組織で共有する話を整理していきます。
その前段のヒアリング設計は商談の質を組織で引き上げる。AIでヒアリング設計を仕組みにするにまとめてあります。

この記事は営業の提案に絞っていますが、ほかの職種での使いどころと並べて見たい場合は職種別AI活用まとめ。営業・マーケ・人事・経理・法務の使いどころに一覧があります。
同じ商品なのに伝わり方が違う
なぜ順序で結果が変わるのでしょうか?
理由は3つあり、まず相手が「自分の話だ」と認識するまでに時間がかかることです。
商品の説明から入ると、相手は「自分に関係あるか」を判断しながら聞くため、内容が入りません。
次に、課題の共有ができていないと解決策が評価できないことです。
「この機能があります」と言われても、それが自分の課題を解決するかどうかは分からないからです。
もうひとつが、順序が悪いと価格の話が先に来てしまうことで、価値が伝わる前に金額が出ると高いか安いかしか判断できません。
だから型の要点は、「相手の状況 → 課題 → 課題が続いた場合 → 解決の方向 → 自社の提案」の順序です。
つまり、自社の話は後半に置きます。
BtoBとBtoCでストーリーの型は違う
型は1つではなく、相手の性質によって変わってきます。
BtoBの型は判断が組織で行われるので、社内で説明できる形が必要です。
順序は、相手の業界と規模で起きている一般的な状況、その中でこの会社に起きていそうな課題、放置した場合のコスト、他社がどう対処しているか、自社の提案、導入の進め方と社内の説得材料、という並びです。
この最後の「社内の説得材料」が重要で、目の前の担当者が納得しても社内を通せなければ進まないため、上司に説明する材料を渡す発想が要ります。
BtoCの型は、個人が判断するので自分の状況との重なりが要点になります。
順序は、同じような状況の人の話、その人が何に困っていたか、どうなったか、なぜそうなったか、あなたの場合はどうか、という並びです。
BtoCでは「同じような人の話」から入るのが効きます。
自分と近い人の話になると、聞く姿勢のほうが変わるからです。
とはいえBtoBでも、この要素を後半に入れると効きます。
「同業のこの規模の会社では」という事例の形です。

自社の勝ちパターンを言語化して、テンプレを配る
型を作るときは、汎用の型を使わず自社の受注案件のほうから起こします。
やることは、受注できた案件5件についてどういう流れで決まったかを聞くことです。
聞くのは、最初に相手が何に困っていたか、どの説明で相手の反応が変わったか、最後に何が決め手になったか、の3点です。
3点のうち、相手の反応が変わったところが型の核心になります。
「この話をしたときに相手が前のめりになった」という箇所が、伝わる順序の手がかりになるからです。
5件やると共通点が見えます。
また、業界や規模でパターンが分かれることも見えてきます。
製造業向けと小売向けで、効く順序が違ったりします。
この段階の成果物はパターンごとのストーリーの型で、2〜3パターンに収まるのが普通です。
型ができたら配布物の形にし、1パターン1枚で順序と各段階で言うことを1〜2行で書いていきます。
「そのまま使える文言」も入れておき、抽象的な説明ではなく実際に話す文章を書きます。
現場が欲しいのは、貼れる文章だからです。
あわせて素材も渡しておきます。
事例、実績の数字、他社との違いといったもので、これがないと一般論の提案になってしまいます。
「使う判断」も書いておき、どのパターンをいつ使うかで「製造業で従業員100名以上の場合はパターンA」という形にします。
判断の基準がないと、その場で選ぶことになります。

資料そのものの型づくりは提案資料の質を組織でそろえる。AIスライド生成の2段階プロセスで扱っています。
AIは型の具体化と反論の洗い出しに使う
型を作ったうえで、AIの使いどころを整理しておきます。
まず、相手に合わせた具体化です。
型は共通ですが、相手の状況に合わせた言葉に変える必要があります。
「この会社の場合、この課題はこういう形で現れているはず」を出させる形です。
次に、想定される反論の洗い出しで、この順序で話したときにどこで反論が出そうかを挙げさせると準備ができます。
もうひとつが「社内の説得材料」の作成で、担当者が上司に説明する形の資料になり、型化しやすいうえに効果も大きいはずです。
型の言語化そのものにも使え、受注案件の聞き取り内容を渡して共通する順序を抽出させる使い方です。
「型を使わずに提案文を作らせる」ことは避けます。
型がないまま作らせると、一般論の順序になってしまうからです。
型を渡して、その中身を具体化させる使い方が正しいと思います。
準備の工程全体の標準化は提案前の準備を30分に短縮する。顧客リサーチとFAQ準備の標準化にまとめてあります。

使われているかを確認して、押し付けない形にする
配ったら、使われているかどうかを確認します。
見るのは2つで、提案書の構成が型に沿っているかどうか、そして受注率に差が出ているかどうかです。
構成の確認は、月に数件、実際の提案書を見ていく形になります。
もちろん、型と違う構成になっている場合は、型のほうが実務に合っていない可能性もあります。
受注率の差は、型を使った案件と使っていない案件とで比べます。
「型を使わなかった理由」も聞き、使わなかった営業に理由を聞くと型の問題が分かるからです。
「この相手には合わなかった」という理由が複数出れば、パターンを追加する必要があります。
責めずに聞くのが要点で、使わなかったことを問題にすると理由が出てきません。
そもそも営業のやり方は個人に委ねられている部分が大きいので、型を強制すると反発が生まれます。
成績の良い営業は自分のやり方で結果が出ているので、変える理由がありません。
だから位置づけを「迷ったときに参照するもの」にしておきます。
「必ずこの順序で話してください」ではなく、「この順序が効いた事例が多いので、迷ったら使ってください」という形です。
型を起こした元の人の名前を出しておくことも効きます。
「〇〇さんの受注案件から起こしたものです」と分かれば、試す動機のほうが生まれます。
型は書き換えてよいとも伝えておきます。
使ってみて合わない部分があれば直してよく、書き換えた内容を共有してもらうと型のほうが育っていきます。
振り返りから改善を回す設計は商談の振り返りを個人任せにしない。トップセールスとの差分を可視化で扱っています。
崩れやすいパターンは6つあります。
汎用の型を使う、自社の話を前半に置く、「社内の説得材料」を用意しない、抽象的な型を配る、型を強制する、使わなかった理由を問題にする、の6つです。
どれも、受注案件5件から起こし、自社の話は後半に置き、説得材料を添え、貼れる文章を書き、参照するものに位置づけ、責めずに聞けば防げます。

型をGemにして配る場合は、当社の組織のAIポータル「AI Portalize」に登録すると全社に公開され、「いいね」の数や使われた回数が、型を起こした人に返ってきます。
伝わる提案は、順序の型と現場の裁量がそろって生まれる
同じ商品でも伝わり方が違うのは、話の順序の問題で、その順序のほうは型にできます。
型の要点は、「相手の状況 → 課題 → 放置した場合 → 解決の方向 → 自社の提案」の順序で、自社の話のほうは後半に置きます。
BtoBは社内で説明できる形が必要で、最後に担当者が上司に説明する材料を渡します。
BtoCは同じような状況の人の話から入り、この要素はBtoBの後半にも効きます。
型は汎用のものを使わず、自社の受注案件5件から起こします。
聞くのは、最初に困っていたこと、どの説明で反応が変わったか、決め手の3点で、反応が変わった箇所が核心になります。
配布物は1パターン1枚、そのまま使える文言、素材、使う判断の基準です。
AIは、相手に合わせた具体化、反論の洗い出し、説得材料の作成、型の言語化に使います。
型を渡して、その中身を具体化させるのが正しい使い方だと思います。
型そのものは強制せず、「迷ったときに参照するもの」に位置づけ、起こした元の人の名前を出し、書き換えてよいと伝えておきます。
受注案件の説明のどこで相手の反応が変わったかを1件聞くだけで、伝わるストーリーの輪郭がつかめます。
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執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
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