
業務ヒアリングの質問項目。AI化する業務を30分で見つける4つの問い
2026/09/29
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
業務ヒアリングで「何か困っていることはありますか」と聞き、「特にないです」と返されて話が止まった経験のある推進担当者は多いと思います。
AI化の候補を探す聞き取りは、推進担当が最初に手がける実務なのに、質問項目や進め方が社内で決まっていない組織がほとんどです。
聞き方が人によって違うと、集まる情報の粒度もばらばらになり、どの業務から手を付けるかを比べられません。
今回は、30分で業務を分解する4つの問いと、聞き取りの単位、最後に改善案を返して協力者を増やす運用までを、組織の標準手順として整理します。

棚卸しから実装までの全体の流れは、業務のAI化の進め方。棚卸しから優先順位付け・実装までの手順にまとめています。
ヒアリングは、その入口を1人ずつ深く聞く形にしたものです。
「困っていることは?」から入ると、ほぼ空振りする
いきなり困りごとを聞く入り方がうまくいかないのには、はっきりした理由があります。
まず、慣れた業務は苦痛として認識されていません。
毎月3時間かけている転記作業も、10年続けていれば「そういうもの」になっています。
次に、相手はAIで何ができるかを知らないので、困りごとがあってもAIには結びつきません。
そのため、聞く中身を困りごとから事実に切り替え、答えやすい問いから順に重ねていきます。
事実を聞いたあと、工程と時間を並べてAIに任せる業務を選ぶ手順は、別のページで順に説明しています。
聞き取りは、同じチームの2人に30分ずつ行う
問いの中身に入る前に、聞き取りの単位を決めておきます。
私がよく使うのは、1人1時間ではなく、30分ずつ2人連続で聞く形です。
1時間取ると後半は雑談になりがちですが、30分なら集中して話せますし、業務の全体像を聞くには十分な長さです。
深掘りは次の機会に回せば足ります。
2人に聞くのは、同じチームでも話が食い違う箇所が見つかるからです。
片方が「毎回やっています」と言い、もう片方が「あれは月末だけです」と言うとき、その差分に標準化されていない実態が表れています。
食い違いが見つかった業務は、AIに渡す前にやり方をそろえる必要があるので、複雑な自動化の前に取り組むべき「業務の標準化」と再設計の考え方で最良のやり方を決めておきます。

問い1と問い2で、業務の流れと時間を並べる
最初の2つの問いは、考えなくても答えられる事実を並べてもらうためのものです。
問い1は「1日・1週間・1か月の流れを教えてください」で、毎日やること、毎週やること、毎月やることを時系列で挙げてもらいます。
ここで挙がった業務が、そのままAI化の候補リストになります。
特に見ておきたいのが毎月の業務で、手順が決まっていて量も多いものが多く、AI化の効果が出やすい領域です。
問い2は「それぞれ、どのくらい時間がかかりますか」です。
頻度と1回あたりの時間を掛け合わせれば、月間の総時間が出て、優先順位を数字で決められます。
本人が「大変だ」と感じている業務が月に2時間ほどで、意識していなかった作業を積み上げると月10時間を超えていた、ということもよく起きます。
体感と実測のずれが見えるだけでも、聞き取った価値があります。
問い3の「どこで手が止まりますか」に、例外ルールが埋まっている
流れと時間を聞いたら、ここからが本番です。
作業の流れを追っていくと、「ここで確認して」「ここで判断して」という箇所が必ず出てきます。
その箇所では、「そのとき何を見て判断しているんですか」「間違えるとどうなりますか」「新人だとどこで間違えますか」と重ねて聞きます。
人は自分の判断を説明するのは苦手でも、他人がどこで失敗するかは予測できるので、最後の聞き方で暗黙のルールが具体的に出てきます。
「この取引先は締め日が違う」「この項目が空欄なら前月の値を引き継ぐ」のようなルールは、誰の頭にもあるのに、どこにも書かれていません。
つまり、手作業が残っているのは技術的に難しいからではなく、ルールが言葉になっていないからです。
書き出していくと、「例外があるので自動化できない」が「例外は7パターンあって、うち5つは条件式で書ける」に変わっていきます。
条件が箇条書きになっていれば、ツールにする作業はAIに頼めます。

問い4の「なぜそうしているんですか」で、要らない工程を外す
もう1つ、必ず聞いておきたいのが工程の理由です。
業務を聞いていると、「前任者から引き継いだ」「昔そう言われた」「システムの都合だと聞いている」のように、理由を説明できない工程が出てきます。
理由がすでに消えている作業を自動化すると、意味のない処理がずっと走り続けます。
手作業のうちは誰かが「なんでこれをやっているんだろう」と気づく機会がありましたが、自動化するとその機会もなくなります。
そのため、理由の分からない工程が出てきたら、AI化の前にいったん外して、本当に必要かを確認します。
外しても誰も困らなかったというケースは珍しくないので、問い4はAI化の材料集めであると同時に、業務そのものの棚卸しにもなっています。
ヒアリングの最後に、改善案を1つ返して帰る
4つの問いを聞き終えたら、終わり方にも気を配ります。
聞かれるだけで終わると、相手は「時間を取られただけ」と感じ、次の聞き取りに協力してもらいにくくなります。
だから最後に、聞いた業務への改善案を1つ返して帰ります。
もちろん、大きな提案である必要はなく、「その転記作業、こういう形で自動化できそうです」と、その場で案を1つ返せば十分です。
できればその場で実際に動かして見せると理想的で、5分で作れる程度のものでも、実物を見た瞬間に相手の受け止め方が変わります。
自分の業務を丁寧に聞かれ、その場で改善案が返ってくる体験をした人は、そのあとの推進にも協力的になっていきます。

質問項目を1枚にすると、聞き手が替わっても同じ粒度で集まる
ここまでの流れを組織の手順にするには、聞き手によって中身が変わらないようにしておく必要があります。
30分×2人という単位、4つの問い、問い3の深掘りの聞き方、最後に1つ返す終わり方を、1枚にまとめておきます。
1枚になっていれば、推進担当が替わっても同じ粒度で情報が集まり、部署ごとの結果も並べて比べられます。
ただ、1枚を作って終わりではありません。
聞き取りは1回で終わらせず、相手を変えながら続けていくほど、組織の実態が見えて味方も増えていきます。
部門ごとにまとめて洗い出したい場合は、AI化する業務が見つからない。全社一斉の業務棚卸しの設計の全社一斉の進め方と組み合わせると、広さと深さの両方を押さえられます。
最初の聞き取りを一緒に組み立てる
誰から聞き始めるか、どの業務を深掘りするかは、組織の状況によって選び方が変わります。
私たちのAI活用支援では、推進担当の方と一緒に現場の聞き取りに入り、その場で改善案を返すところまでを型として渡しています。
ヒアリングの進め方で迷っている場合は、手順を組み立てる参考になるかもしれません。
業務ヒアリングは、聞く順番で出てくる答えが変わる
業務ヒアリングで候補が出てこないのは、相手に困りごとがないからではなく、聞く順番が合っていないからです。
流れ、時間、手が止まる所、理由の順に聞いていけば、30分でもAI化の候補と、その前に外すべき工程の両方が見えてきます。
聞き終えたら1つ返し、次の相手にも同じ問いで聞くことを続けると、聞き取りそのものが推進の仲間を増やす場になります。
まずは同じチームの2人に、30分ずつ時間をもらうところから始めてみてはどうでしょうか?
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執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
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