組織のAI活用をAIポータルと伴走支援で加速

社員がAIで作ったツールが増えすぎたときの整理法。残すものと消すものの決め方

社員がAIで作ったツールが増えすぎたときの整理法。残すものと消すものの決め方

執筆:寺田昇平

AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事

仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。

社員が自分で社内AIツールを作れるようになると、次に必ず出てくるのが、動き続けているツールの保守を「誰が見るのか」という問題です。
当社の支援先でも、「社内開発ツールの保守運用ルールとライフサイクル管理」がはっきりと議題に上がっていました。

ただ、社内にあるツールを全部きちんと保守していくのは、正直なところ無理があると思っています。
数が増えるほど、見る側の手が回らなくなるからです。

そこで今回は、どのツールを保守の対象にするか、残すものと消すものをどう分けるか、担当をいつ決めるかを順に整理します。
ツールの一覧をどう作り、どう並べるかは、共有したのに使われない。社内AI資産をカタログ化するで扱っています。

社員がAIで作ったツールを、業務のコアや複数人で使うものは担当を決めて保守し、個人の作業用は本人に任せ、使われない期間・担当不在・代わりがあるという基準に当てはまるものは非表示にしてから削除する、という3つの行き先に分けることを示した図

増えたツールは、使われなくなっても一覧に残り続けます

AI活用が進んだ組織では、社員の作ったツールがどんどん増えていきます。
これはとてもよいことで、AI活用が進んでいる証拠でもあります。

ただ、増えたものは勝手には減りません。
使われなくなったツールもそのまま残り、動いているのか止まっているのかも分からないまま、一覧に並び続けます。

半年もすると、どれが現役で、どれが止まっているのかが分からなくなります。
新しく入った人が一覧を開いても、目的のツールを見つけられません。
似た名前のツールが3つ並んでいれば、どれを使えばよいのかも分からず、結局は「詳しい人に聞く」に戻ってしまいます。

似たものが並んで選べなくなるのは、見直す担当と時期が決まっていないときで、社内AIツールの共有が続かない理由の1つです。

保守するのは、業務のコアと複数人で使うものに絞ります

全部を保守できないなら、どこから見るかを先に決めておきます。
目安にしたいのは、業務のコアになっているツールと、複数人で共通して使っているツールです。

現場の人が自分の業務のために作ったツールは、基本的にはその人の持ち物です。
壊れたら自分で直す、それで完結しているうちは、組織として何かを用意する必要はありません。
個人が自分の作業を楽にするために作ったものは、そこまで気にしなくてよいと思っています。

変わるのは、ほかの人に使われ始めたときです。
10人が使っているツールが止まったとき、作った本人が忙しければ、10人の業務が止まります。
本人にとっては「自分用に作ったもの」でも、組織にとってはすでに「業務インフラ」になっているわけです。

個人の作業用のツールは使うのが作った本人で、止まっても本人の中で完結し、直すのも本人というその人の持ち物である一方、業務のコアや複数人で使うツールは、止まると使っている人の業務も止まり、保守担当を決めておく業務インフラであることを比べた図

個人の作業用と業務で使うものの境目を、扱うデータの側から見た話は、現場が作ったツールが業務データに触り始めたら。個人利用と法人利用の境界にまとめています。

残すツールには、作成者と保守担当を記録しておきます

保守の対象を決めたら、最初に手を付けたいのは担当の所在です。
ここで「責任者」ではなく「担当」と書いているのは、壊れたときに誰のせいかを決めたいわけではないからです。
「誰の責任か」という問い方をすると、誰も手を挙げなくなります。
やりたいのは、困ったときに誰に聞けばよいかが分かる状態を作ることです。

業務のコアになっているツールについては、最低限、次の4つを残しておきます。
作成者、保守担当、置き場所(動いている環境)、用途と稼働しているかどうか、の4つです。

業務のコアになっているツールについて、作成者、保守担当(共有する時点で決める)、置き場所と動いている環境、用途といま稼働しているかどうか、の4つを記録しておくことを示した図

作った人が引き続き担当してもかまいません。
大事なのは、本人が担当だと分かっていて、周りもそれを知っている状態にしておくことです。

一覧は、スプレッドシート1枚でも十分に機能します。
求められるのは仕組みの立派さではなく、誰がどこで何を作り、いまどういう状態で動いているのかを後から追えることです。
ここが分からないまま数が増えると、あとから追いかけるのはかなり大変になります。

AIボットのように中身が指示文のツールは、版と直した理由を残す列を足しておくと引き継ぎやすくなります。列の例は、プロンプト管理の方法。社内AIボットを引き継げる管理シートの6列にまとめています。

保守担当は、共有する時点で決めます

では、担当はいつ決めればよいのでしょうか?
答えは、そのツールを社内に共有する時点です。

審査や承認の流れがあるなら、その申請の項目に保守担当を入れてしまうのがいちばん自然です。
「これを社内で共有したい」と申し出る時点で、担当者と、その人がいなくなった場合の代わりの人を書いてもらいます。
後から決めようとしても、「誰が担当する?」という問いは、誰も手を挙げないまま流れてしまいがちです。

あわせて、業務のコアになるツールや社外に出すものは、共有する前に少し詳しい人に中身を見てもらうと安心です。
処理の抜けや、想定していない入力での止まり方、うっかり残っている認証情報は、作った本人には見えにくいからです。
見る人は専任でなくてもよく、15分見てもらうだけでもかなり違います。

社外に出すときに確かめる項目は、社内AIツールを社外に公開する時の審査フローとチェックポイントで整理しています。

使われていないツールは、最終利用日か定期の確認で見つけます

消すかどうかを決める前に、まずは使われているかどうかを知る必要があります。

いちばん確実なのは利用ログで、最終利用日が取れるなら、それを見るだけで判断できます。

ログが取れない場合は、担当者に定期的に聞く方法があります。
半年に一度、一覧を送って「まだ使っていますか」と確かめ、返事がないものはいったん非表示にします。

ツールが使われているかを確かめるとき、利用ログが取れるなら最終利用日を見て判断し、ログが取れないなら半年に一度担当者に一覧を送って聞き、返事がなければいったん非表示にする、という分かれ方を示した図

支援先では、「このツールは3か月使われていません」と定期的に知らせる仕組みを作る話も出ていました。
ここまで自動にできると、棚卸しが特別な行事ではなく、日常の中で回るようになります。

消す基準は、期間・担当・代わりの3つで先に決めておきます

棚卸しでいちばん難しいのは、消す判断です。
「使っていないけど、いつか使うかもしれない」と言われると、誰も消せず、一覧は膨らみ続けます。
では、何を基準に消せばよいのでしょうか?

私たちが提案しているのは、次の3つです。

  • 一定期間使われていない(半年、1年など、期間を決めておく)

  • 保守担当がいない(担当者が退職や異動をして、後任が決まっていない)

  • 代わりがある(同じことができる別のツールがある)

もうひとつ大事なのが、いきなり削除しないことです。
基準に当てはまったら、まず一覧から非表示にします。
数か月たっても誰も困らなければ、そこで削除します。
この2段階にしておくと、消す判断のハードルが大きく下がります。

使われない期間・担当不在・代わりがあるという消す基準に当てはまったら、まず一覧から非表示にし、数か月様子を見て、困る声が出たら削除を止め、誰も困らなければ削除する、という2段階の消し方を示した図

非表示の間に「あれがないと困る」という声が出たら、そのツールはまだ使われています。
その場合は削除を止めて、声を上げた人とも相談しながら、担当を決め直すのがよいと思います。
引き継ぎに要るのは、何をするツールか、どう動いているか、どこに置いてあるか、どう直すか、の4つで、これが残っていればたいてい引き継げます。

ツールの説明を書くのは以前なら面倒な作業でしたが、いまはコードや設定をAIに渡せば、数分で形になります。
退職や異動でツールが止まらないようにする手順は、退職・異動でAI自動化が止まる。オーナー権限の引き継ぎチェックリストで詳しく書いています。

保守の仕組みは、現場が作り続けるためにあります

こうした管理の話は、推進担当にとって地味で、社内に報告しにくいテーマです。
新しいツールを作るほうが、成果として見えやすいからです。

ただ、保守の仕組みがないと、いずれ現場はツールを作れなくなると考えています。
管理されていないツールが増えると事故が起き、事故が起きると統制が強まり、統制が強まると現場が自由に作れなくなるからです。

つまり、保守は「守り」ではなく「攻め」の話で、その仕組みは現場が自由に作れる状態を保つための投資です。
きちんと管理されているから、現場に自由に作ってもらえる、という順番になっています。
この順番で説明すると、経営にも現場にも納得してもらいやすくなります。

ツールの使われ方が一か所で見えると、残すものを決めやすくなります

ここまでの整理は、スプレッドシートの一覧からでも始められます。
ただ、ツールが増えてくると、使われた回数を手で集めて一覧を最新に保つ作業が、だんだん重くなっていきます。

当社の組織のAIポータル「AI Portalize」では、社内で作ったAIツールを登録して全社に公開でき、使われた回数と使った人数が分かります。
よく使われているツールと使われていないツールの見分けがつくので、「残すもの」と「消すもの」を決めるときの材料にもなります。
一覧の手入れが追いつかなくなってきたときは、考え方の参考になるかもしれません。

保守は、コアと複数人で使うものから始めれば十分です

全部のツールをきちんと管理する必要はありません。
業務のコアになっているものと複数人で使われているものに絞り、担当は共有する時点で決め、消すときは非表示を1段はさみます。
これだけでも、増えすぎたツールに振り回される状態からは抜け出せると思います。

最初の棚卸しは、業務のコアと複数人で使われているツールに、担当の名前が付いているかを見るだけでも足ります。

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執筆:寺田昇平

AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事

仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。

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