
AI推進メンバーの選び方。手挙げではなく利用ログで中核を見つける
2026/10/09
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
各部署から推進メンバーを集め、キックオフをして研修も済ませたのに、3か月後に手を動かしているのは数人だけでした。
AI推進メンバーの選び方を考えるときは、まずこの「数人だけ」を失敗と捉えないところから始める必要があります。
推進担当者はここで、研修の設計や動機づけが足りなかったのかと自分を責めがちです。
ただ、支援の現場で何社も見てきた範囲では、この数字にはかなりの再現性があります。
30名規模で組んでも、ツールを使いこなすようになるのは2〜3名です。
今回は、この分布を前提にした人選の基準と、中核を利用ログで見つける方法、残りのメンバーの役割の分け方を整理します。
推進体制を経営判断の中でどう位置づけるかは、AI推進担当者の情報収集と経営判断。リサーチとROIの設計で全体像を扱っています。

30人集めて2〜3人になるのは、正常な分布です
最初に、なぜ少数に収束するのかを押さえておくと、人選の基準が自然に決まります。
まず、時間がありません。
推進メンバーに選ばれても既存業務は減らず、多くの場合AI推進は業務の10%程度で、残り90%はこれまでどおりです。
次に、性質の差があります。
新しいツールを触って試行錯誤するのが苦にならない人と、手順書がないと動きにくい人がいて、AI活用の初期は前者に有利です。
もうひとつが、手を挙げた理由の違いです。
本当に興味がある人もいれば、上司に言われた人、名前だけ置いておきたい人もいます。
これらが重なれば、30人が2〜3人に収束するのはむしろ自然な結果です。

「研修が悪かったのでは」「もっとフォローすべきだったのでは」と振り返る前に、この分布を前提として受け入れておくと、次の手が打ちやすくなります。
問題は分布そのものではなく、この分布を知らないまま全員を同じレベルに引き上げようと設計してしまうことにあります。
全員に合わせた研修は最も遅い人に合わせることになり、伸びる人には退屈で、ついていけない人にはやはり難しい内容になります。
中核は手挙げではなく、利用ログで見つかる
では、その2〜3人をどう見つければよいのでしょうか?
手を挙げた人の中から探すと、たいてい外れます。
意欲があることと、成果を出せることは別だからです。
支援先でも「意欲はあるが、スキルが伴っていない人選になっている」という状態が起きていました。
確実なのは、利用ログを見ることです。
誰がどれくらいAIを使っているか、どんなツールを作っているかは、多くのAIサービスの管理画面で確認できます。
利用回数の上位者を洗い出して話を聞いたところ、プロジェクトメンバーに入っていない人の中に「隠れた実力者」が何人も見つかりました。
「声が大きい人」ではなく、「黙って使い倒している人」です。
この人たちを巻き込めるかどうかで、プロジェクトの進み方がかなり変わります。
書き出した利用の記録を名簿と結びつけて部署ごとに見る手順は、AIの利用状況を見える化する方法にまとめています。

利用データの取り方と見せ方は、組織におけるAI利用データの可視化と共有手法で扱っています。
選ぶ基準は、実績と説明力と、人に手を貸せるか
ログで候補が見えたら、最後は3つの観点で絞り込みます。
まずは、これまでの利用実績です。
言葉ではなく行動を見るので、ここはログの数字をそのまま使います。
次に、自分の業務を細かく説明できるかどうかです。
AI化の第一歩は業務の言語化なので、手順を具体的に話せる人ほど早く進みます。
逆に、自分の業務の解像度が低い人は、どれだけ意欲があっても途中で止まりやすくなります。
もうひとつが、他人に手を貸せるかです。
一人で完結してしまう人より、周りに教える性質のある人のほうが、後の横展開で効いてきます。
例えば同じ営業部で候補が並んだら、利用回数が同じくらいでも、チームの誰かに使い方を教えている人を先に選びます。

見つけた数名には、業務の半分以上を推進に充てる
人を選んだあとに効くのが、その人たちの時間を確保することです。
見つかった2〜3人については、業務の50%から100%をAI推進に充てられるよう、上長と調整します。
10%のままでは何も起きませんが、50%を超えると進み方が目に見えて変わります。
大きな決断に見えても、30人が10%ずつ関わる状態と、3人が100%関わる状態は、投入している工数としてはほぼ同じです。
同じコストで結果がまったく変わる、という説明の仕方は、経営に対しても通りやすいと思います。
専任化の進め方は、組織におけるAI推進担当者の専任化と体制構築も参考になります。

残りのメンバーは、受け手と伝達役に回ってもらう
中核を絞ると、「では残りの27人はどうするのか?」という疑問が必ず出ます。
切り捨てるのではなく、役割を変えます。
「推進役」ではなく「受け手」として、中核が作ったツールやボットを使い、感想や改善点を返してもらいます。
困りごとを持ち込んでもらう役割も大切です。
現場に張り付いている人のほうが、良い困りごとを持っています。
また、彼らは成功事例の伝達役にもなります。
推進担当が10回説明するより、隣の席の人が1回使っているのを見るほうが効きます。
この役割なら、通常業務が忙しくても十分に果たせます。
本人たちにも「使って感想を返してほしい」と具体的に頼んでおくと、関わり方に迷いません。
「実際に動くのは数名」と開始時に伝えておく
人選と同じくらい大事なのが、関係者の期待値を最初にそろえておくことです。
プロジェクトの開始時点で「30人で始めますが、実際に手を動かすのは数名になる想定です」と伝えておきます。
これを言っておけば、3か月後に「思ったより広がらないね」と言われて、プロジェクトの意義を問われる事態を防げます。
すでに全員参加型で始めてしまった場合は、3か月がひとつの判断のタイミングです。
それより早いと立ち上がり期だと言われ、遅いと空気が固まって立て直しが効きません。

伝え方は「絞る」ではなく「役割を分ける」のほうが通ります。
推進する役割、使う役割、改善点を返す役割と、全員に役割があると示すのがポイントです。
もちろん、中核から外れた人に「自分は期待されていない」と受け取られないよう、役割ごとに何を頼みたいのかまで言葉にして伝えます。
中核の見極めから、一緒に進められます
誰を中核にするか、どこまで時間を割いてもらうかは、組織の規模や業務によって判断が分かれます。
私たちのAI伴走支援でも、利用状況から中核になる人を見極め、その人の業務に入り込んでツールを一緒に作るところから進めています。
推進メンバーは、集めた人数ではなく動いた人で数える
推進メンバーを多く集めること自体は悪くありませんが、成果を生むのは手を動かす数名です。
だからこそ、意欲ではなくログで探し、実績と説明力と人への手の貸し方で選びます。
選んだ人には時間を渡し、残りのメンバーには受け手と伝達役という別の役割を用意します。
全社の目標は全員で持ちつつ、進め方は絞ったほうが、結果として早く全社に届きます。
自社の利用ログを開いて上位10名を並べてみると、プロジェクトの名簿に載っていない名前が見つかることが多いと思います。
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執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
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