
ClaudeのProjectsを組織で使う。前提の共有と権限の設計
2026/09/04
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
ClaudeのProjectsは、案件ごとに前提をまとめておける機能です。
参照する資料、その案件の背景、決まっている条件を置いておけるので、毎回同じ説明をし直す必要がなくなります。
ところが実際の使い方は個人利用で終わることが多く、「便利に使っているのは自分だけ」という状態で止まっています。
今回は、この機能を組織でどう使うかを整理していきます。
そもそもAIがどこまで前のやり取りを保持するのかはAIは前の会話を覚えているのか。情報の置き場所を決める3分類にまとめてあります。

個人利用で終わるのは、何を入れるか決めていないからだ
なぜ個人で止まってしまうのでしょうか?
理由は3つに分けられます。
まず、「自分の作業のために作ったもの」なので、共有する必要をそもそも感じません。
次に、作る操作は覚えたものの、「渡す操作」のほうは試していません。
もうひとつが、「何を入れるべきか」という基準そのものが決まっていないことです。
なかでも3つ目が本質です。
入れる内容が決まっていないと、自分向けに作ったものである以上、共有しても他の人の業務には合いません。
つまり、対処の中心は「何を入れるか」を決めることになります。
入れるのは4種類に整理できます。
案件の背景では、何のための案件か、どういう経緯か、関係者までを入れます。
参照する資料では、その案件で使うものを「正式版・最新版」だけに絞って入れます。
決まっている前提では、条件・制約・判断の基準を入れます。
使う様式では、成果物の形式や文書のテンプレートを入れます。
ここが最も見落とされますが、様式を入れると出てくる成果物の形が揃うので、効き方が大きい項目です。
あわせて、作業中の下書きや個人のメモ、閲覧範囲が限られる情報、案件と関係ない資料は入れないと明示しておきます。
なかでも「閲覧範囲が限られる情報」は、共有すると範囲を越えて見られるので、最も注意を要ります。
もちろん、資料を多く入れるほど精度が落ちるので、量を絞ることも欠かせません。
何を単位に切るかという話は社内AIの「単位」をどう切るか。ナレッジ分割を決める3つの軸で扱っています。
個人から部門、全社へと3段階で広げる
「いきなり全社に配ってよいのか」という問いには、段階を踏むのが答えになります。
最初は個人からです。
自分が担当している案件について、1つ作ることから始めます。
背景・資料・前提・様式の4種類を入れて、1〜2週間使って効果を確認します。
確認するのは、毎回説明する手間が減ったかどうかと、出てくる成果物の質が上がったかどうかの2点です。
あわせて、入れた資料が使われているかを確認し、参照されていない資料は外します。
この「量を絞る」作業が最も重要で、多く入れるほど精度が落ちるからです。
この段階で「何が効くか」が分かり、それがそのまま次のフェーズの基準になります。
期間の目安は2〜4週間です。
個人で効果が出たら、今度は部門で共有します。
共有する対象は2種類あります。
ひとつは部門の共通の前提で、部門の業務の背景、使う様式、判断の基準といった、案件を越えて共通のものです。
もうひとつは複数人が関わる案件で、その案件の背景と資料になります。
なかでも前者のほうが価値があります。
部門の共通の前提が揃えば、そこから出てくる成果物の質そのものが揃うからです。
入れるのは部門の業務の説明、使う様式のテンプレート、よく参照する資料、判断の基準の4つです。
なかでも「この条件ならこうする」という判断の基準が最も価値があります。
共有するときに決めることが3つあります。
誰が使えるか、誰が更新するか、何のためのものか、この3つを1行で書いておきます。
毎回同じ前提を書かせない設計は毎回同じ前提を書かせない。組織の共通前提をデフォルト化するにまとめてあります。
部門で回るようになったら、全社に広げます。
とはいえ、全社共通のものとして入れられるものは限られます。
会社と事業の説明、社内用語、主要な製品の概要、文章のトーン、禁止事項の5項目程度に収まります。
これ以上は入れないことです。
全部の作業に効いてしまい、関係のない前提まで混ざってしまうからです。
全社共通のものと部門のものは、混ぜると量が増えて精度が落ちるので、はっきり分けて持ちます。
更新のオーナーも分けておきます。
全社共通は推進チーム、部門のものは部門の担当です。
配った後は使われているかを確認し、使われていないなら内容が実務に合っていないと判断します。

権限は範囲を一致させ、更新はオーナーを決めて回す
「誰が見られて、誰が使えるのか」がずれていないでしょうか。
この権限の設計が、全体でいちばん注意を要る部分です。
原則は、入れた資料の閲覧範囲と、使える人の範囲を一致させることです。
確認するのは、入れた資料の閲覧範囲、使える人の範囲、両者が一致しているかどうかの3つです。
ここがずれると、人事の資料を入れたものを全員が使える状態にするといった、権限管理を迂回する経路ができてしまいます。

だから必ず入れる前に確認します。
入れてしまってから範囲を絞るのは難しいからです。
確実なのは、「閲覧範囲が限られる資料は入れない」という線を引くことです。
顧客から預かった資料については、秘密保持契約の範囲を確認します。
これらを1枚にして、入れてよい資料の区分として配ります。
入れた資料はいずれ古くなるので、運用としてやっておくことが3つあります。
「更新のオーナー」を決めます。
案件の担当か、部門の担当かです。
「更新のきっかけ」を決めます。
資料が改訂されたとき、案件の状況が変わったとき、四半期の確認のときです。
案件が終わったら閉じます。
終わった案件の情報が残っていると次の案件に混ざるので、この最後の工程がいちばん飛ばされます。
あわせて、四半期に一度、使われていないものを外します。
入れた資料の最終更新日も確認し、1年以上更新されていないものは確認が必要です。

古い資料で答えている状態は、答えないことより危険です。
更新体制そのものは古い情報で答えるAIを作らない。社内ナレッジの更新体制のつくり方で扱っています。
終わった案件の情報をどう残すかは、判断が必要です。
選択肢は3つあります。
参照する必要がない場合は、閉じて削除します。
案件の経緯を別の場所に残したい場合は、閉じるが内容を記録として残します。
継続する可能性がある場合は、残しておきます。
なかでも2つ目が最も多い選択です。
案件の経緯は、後から必要になることがあるからです。
その場合は記録の場所まで決めておきます。
案件の記録は担当者ではなく共有の場所に残さないと、異動のタイミングで失われます。
3つ目を選ぶ場合は、「半年後に見直す」といった期限をセットで決めます。
決めないまま残すと、無期限に溜まり続けます。

つまずきは、入れる基準を決めないところから始まる
「何を入れるかの基準」を決めないのが、よくあるつまずきです。
各自が「自分の判断」で入れてしまうので、共有したところで他の人には使えません。
資料を多く入れるのも同じつまずきで、精度が落ちるので必要なものだけにします。
様式を入れないつまずきもあり、成果物の形が揃わないうえ、これが最も見落とされます。
閲覧範囲が限られる資料を入れると、権限管理を迂回する経路になります。
入れてから範囲を絞ろうとするのも失敗で、これは難しいので入れる前に確認します。
全社共通のものに多く入れると、関係のない前提が全部の作業に効いてしまうので、5項目程度に絞ります。
案件が終わっても閉じないと、次の案件に混ざったうえに溜まっていきます。
維持のほうが難しく、全社共通の更新がいちばん詰まる
ここまで書いてきたとおり、案件ごとの前提をまとめる仕組みは組織でも使えます。
ただ、作ることより維持するほうが難しいのが実情です。
最も難しいのが全社共通の前提の更新です。
各自が自分の環境にコピーを持っている状態だと、更新が反映されません。
半年後には新旧の前提が混在し、これは前提がない状態より読みにくくなります。
成果物のトーンが複数に分かれるうえ、更新したかどうかも確認できません。
誰が最新版を使っているかが分からず、新しく入った人にはそもそも届いていないからです。
必要なのは、前提を含んだ形で配って更新すれば全員に反映される構成で、つまり個人の環境に依存させないことになります。
前提を含めた形で配る置き場として、当社の組織のAIポータル「AI Portalize」では、社内で作ったAIツールを登録すると全社に公開され、使われた回数や使った人数が作った人に返ってきます。
「前提を配ったが更新が追えない」という状態で止まっているなら、考え方の参考になるかもしれません。
入れる基準と権限を先に決めれば、Projectsは組織で回る
Claude Projectsが個人利用で終わるのは、共有する必要を感じない、共有の操作を知らない、何を入れるべきかが決まっていない、という3つが原因です。
なかでも3つ目が本質で、決まっていないと共有しても使えません。
入れるのは案件の背景、参照する資料、決まっている前提、使う様式の4種類です。
様式は最も見落とされますが、入れると成果物の形が揃います。
入れないものも明示しておきます。
作業中の下書き、個人のメモ、閲覧範囲が限られる情報、関係ない資料の4つです。
進め方は3フェーズで、個人で1つ作って量を絞り、部門で共有し、全社共通は5項目程度に絞ります。
権限は、入れた資料の閲覧範囲と使える人の範囲を一致させたうえで、必ず入れる前に確認します。
入れてしまってから絞るのは難しいからです。
更新はオーナーを決め、きっかけを決め、案件が終わったら閉じる。
この3つで回し、最後の「閉じる」がいちばん飛ばされます。
自分が担当している案件を1つ選び、4種類を入れて2週間、まず使ってみてください。
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執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
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