組織のAI活用をAIポータルと伴走支援で加速

ClaudeのProjectsを組織で使う。前提の共有と権限の設計

ClaudeのProjectsを組織で使う。前提の共有と権限の設計

執筆:寺田昇平

AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事

仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。

ClaudeのProjectsは、案件ごとに前提をまとめておける機能です。
参照する資料、その案件の背景、決まっている条件を置いておけるので、毎回同じ説明をし直す必要がなくなります。
ところが実際の使い方は個人利用で終わることが多く、「便利に使っているのは自分だけ」という状態で止まっています。

今回は、この機能を組織でどう使うかを整理していきます。
そもそもAIがどこまで前のやり取りを保持するのかはAIは前の会話を覚えているのか。情報の置き場所を決める3分類にまとめてあります。

Projectsに入れる案件の背景・参照する資料・決まっている前提・使う様式の4種類と、入れない作業中の下書き・個人のメモ・閲覧範囲が限られる情報・案件と関係ない資料の4つを左右に並べた図。様式は最も見落とされるが、入れると成果物の形が揃う

個人利用で終わるのは、何を入れるか決めていないからだ

なぜ個人で止まってしまうのでしょうか?
理由は3つに分けられます。

まず、「自分の作業のために作ったもの」なので、共有する必要をそもそも感じません。
次に、作る操作は覚えたものの、「渡す操作」のほうは試していません。
もうひとつが、「何を入れるべきか」という基準そのものが決まっていないことです。

なかでも3つ目が本質です。
入れる内容が決まっていないと、自分向けに作ったものである以上、共有しても他の人の業務には合いません。
つまり、対処の中心は「何を入れるか」を決めることになります。

入れるのは4種類に整理できます。
案件の背景では、何のための案件か、どういう経緯か、関係者までを入れます。
参照する資料では、その案件で使うものを「正式版・最新版」だけに絞って入れます。

決まっている前提では、条件・制約・判断の基準を入れます。
使う様式では、成果物の形式や文書のテンプレートを入れます。
ここが最も見落とされますが、様式を入れると出てくる成果物の形が揃うので、効き方が大きい項目です。

あわせて、作業中の下書きや個人のメモ、閲覧範囲が限られる情報、案件と関係ない資料は入れないと明示しておきます。
なかでも「閲覧範囲が限られる情報」は、共有すると範囲を越えて見られるので、最も注意を要ります。

もちろん、資料を多く入れるほど精度が落ちるので、量を絞ることも欠かせません。
何を単位に切るかという話は社内AIの「単位」をどう切るか。ナレッジ分割を決める3つの軸で扱っています。

個人から部門、全社へと3段階で広げる

「いきなり全社に配ってよいのか」という問いには、段階を踏むのが答えになります。

最初は個人からです。
自分が担当している案件について、1つ作ることから始めます。
背景・資料・前提・様式の4種類を入れて、1〜2週間使って効果を確認します。

確認するのは、毎回説明する手間が減ったかどうかと、出てくる成果物の質が上がったかどうかの2点です。
あわせて、入れた資料が使われているかを確認し、参照されていない資料は外します。
この「量を絞る」作業が最も重要で、多く入れるほど精度が落ちるからです。

この段階で「何が効くか」が分かり、それがそのまま次のフェーズの基準になります。
期間の目安は2〜4週間です。

個人で効果が出たら、今度は部門で共有します。
共有する対象は2種類あります。
ひとつは部門の共通の前提で、部門の業務の背景、使う様式、判断の基準といった、案件を越えて共通のものです。
もうひとつは複数人が関わる案件で、その案件の背景と資料になります。

なかでも前者のほうが価値があります。
部門の共通の前提が揃えば、そこから出てくる成果物の質そのものが揃うからです。

入れるのは部門の業務の説明、使う様式のテンプレート、よく参照する資料、判断の基準の4つです。
なかでも「この条件ならこうする」という判断の基準が最も価値があります。

共有するときに決めることが3つあります。
誰が使えるか、誰が更新するか、何のためのものか、この3つを1行で書いておきます。
毎回同じ前提を書かせない設計は毎回同じ前提を書かせない。組織の共通前提をデフォルト化するにまとめてあります。

部門で回るようになったら、全社に広げます。
とはいえ、全社共通のものとして入れられるものは限られます。
会社と事業の説明、社内用語、主要な製品の概要、文章のトーン、禁止事項の5項目程度に収まります。

これ以上は入れないことです。
全部の作業に効いてしまい、関係のない前提まで混ざってしまうからです。
全社共通のものと部門のものは、混ぜると量が増えて精度が落ちるので、はっきり分けて持ちます。

更新のオーナーも分けておきます。
全社共通は推進チーム、部門のものは部門の担当です。
配った後は使われているかを確認し、使われていないなら内容が実務に合っていないと判断します。

Projectsを広げる3つのフェーズ。個人で1つ作って効果を確認し量を絞り、部門で共通の前提と複数人の案件を共有し、全社共通は5項目程度に絞る。全社共通は推進チーム、部門のものは部門の担当が更新する

権限は範囲を一致させ、更新はオーナーを決めて回す

「誰が見られて、誰が使えるのか」がずれていないでしょうか。
この権限の設計が、全体でいちばん注意を要る部分です。

原則は、入れた資料の閲覧範囲と、使える人の範囲を一致させることです。
確認するのは、入れた資料の閲覧範囲、使える人の範囲、両者が一致しているかどうかの3つです。
ここがずれると、人事の資料を入れたものを全員が使える状態にするといった、権限管理を迂回する経路ができてしまいます。

資料を入れる前に確認する3点。入れた資料の閲覧範囲、使える人の範囲、両者が一致しているか。ずれると権限管理を迂回する経路ができる。入れてしまってから範囲を絞るのは難しいので必ず入れる前に確認する

だから必ず入れる前に確認します。
入れてしまってから範囲を絞るのは難しいからです。
確実なのは、「閲覧範囲が限られる資料は入れない」という線を引くことです。

顧客から預かった資料については、秘密保持契約の範囲を確認します。
これらを1枚にして、入れてよい資料の区分として配ります。

入れた資料はいずれ古くなるので、運用としてやっておくことが3つあります。
「更新のオーナー」を決めます。
案件の担当か、部門の担当かです。

「更新のきっかけ」を決めます。
資料が改訂されたとき、案件の状況が変わったとき、四半期の確認のときです。

案件が終わったら閉じます。
終わった案件の情報が残っていると次の案件に混ざるので、この最後の工程がいちばん飛ばされます。
あわせて、四半期に一度、使われていないものを外します。
入れた資料の最終更新日も確認し、1年以上更新されていないものは確認が必要です。

入れた資料の更新を回す3つの運用。更新のオーナーを決める、更新のきっかけを決める、案件が終わったら閉じる。最後の閉じる工程がいちばん飛ばされる

古い資料で答えている状態は、答えないことより危険です。
更新体制そのものは古い情報で答えるAIを作らない。社内ナレッジの更新体制のつくり方で扱っています。

終わった案件の情報をどう残すかは、判断が必要です。
選択肢は3つあります。

参照する必要がない場合は、閉じて削除します。
案件の経緯を別の場所に残したい場合は、閉じるが内容を記録として残します。
継続する可能性がある場合は、残しておきます。

なかでも2つ目が最も多い選択です。
案件の経緯は、後から必要になることがあるからです。

その場合は記録の場所まで決めておきます。
案件の記録は担当者ではなく共有の場所に残さないと、異動のタイミングで失われます。

3つ目を選ぶ場合は、「半年後に見直す」といった期限をセットで決めます。
決めないまま残すと、無期限に溜まり続けます。

終わった案件の情報の扱いの3つの選択肢。参照する必要がなければ閉じて削除、案件の経緯を残したければ閉じるが内容は記録として残す(最も多い選択)、継続する可能性があれば残しておく。残す場合は半年後に見直すなど期限を決める

つまずきは、入れる基準を決めないところから始まる

「何を入れるかの基準」を決めないのが、よくあるつまずきです。
各自が「自分の判断」で入れてしまうので、共有したところで他の人には使えません。

資料を多く入れるのも同じつまずきで、精度が落ちるので必要なものだけにします。
様式を入れないつまずきもあり、成果物の形が揃わないうえ、これが最も見落とされます。

閲覧範囲が限られる資料を入れると、権限管理を迂回する経路になります。
入れてから範囲を絞ろうとするのも失敗で、これは難しいので入れる前に確認します。
全社共通のものに多く入れると、関係のない前提が全部の作業に効いてしまうので、5項目程度に絞ります。
案件が終わっても閉じないと、次の案件に混ざったうえに溜まっていきます。

維持のほうが難しく、全社共通の更新がいちばん詰まる

ここまで書いてきたとおり、案件ごとの前提をまとめる仕組みは組織でも使えます。
ただ、作ることより維持するほうが難しいのが実情です。

最も難しいのが全社共通の前提の更新です。
各自が自分の環境にコピーを持っている状態だと、更新が反映されません。
半年後には新旧の前提が混在し、これは前提がない状態より読みにくくなります。

成果物のトーンが複数に分かれるうえ、更新したかどうかも確認できません。
誰が最新版を使っているかが分からず、新しく入った人にはそもそも届いていないからです。
必要なのは、前提を含んだ形で配って更新すれば全員に反映される構成で、つまり個人の環境に依存させないことになります。

前提を含めた形で配る置き場として、当社の組織のAIポータル「AI Portalize」では、社内で作ったAIツールを登録すると全社に公開され、使われた回数や使った人数が作った人に返ってきます。
「前提を配ったが更新が追えない」という状態で止まっているなら、考え方の参考になるかもしれません。

入れる基準と権限を先に決めれば、Projectsは組織で回る

Claude Projectsが個人利用で終わるのは、共有する必要を感じない、共有の操作を知らない、何を入れるべきかが決まっていない、という3つが原因です。
なかでも3つ目が本質で、決まっていないと共有しても使えません。
入れるのは案件の背景、参照する資料、決まっている前提、使う様式の4種類です。
様式は最も見落とされますが、入れると成果物の形が揃います。

入れないものも明示しておきます。
作業中の下書き、個人のメモ、閲覧範囲が限られる情報、関係ない資料の4つです。
進め方は3フェーズで、個人で1つ作って量を絞り、部門で共有し、全社共通は5項目程度に絞ります。

権限は、入れた資料の閲覧範囲と使える人の範囲を一致させたうえで、必ず入れる前に確認します。
入れてしまってから絞るのは難しいからです。

更新はオーナーを決め、きっかけを決め、案件が終わったら閉じる。
この3つで回し、最後の「閉じる」がいちばん飛ばされます。
自分が担当している案件を1つ選び、4種類を入れて2週間、まず使ってみてください。

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執筆:寺田昇平

AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事

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