組織のAI活用をAIポータルと伴走支援で加速

月次業務のうっかり忘れを構造的になくす

月次業務のうっかり忘れを構造的になくす

執筆:寺田昇平

AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事

仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。

月末や月初の業務は、毎月同じことを毎月思い出している職場が多いと思います。

請求の案内を送る、月次の報告をまとめる、定例の確認を依頼する、といった業務です。
忙しい月に限って、そのうちの1つが抜けます。
抜けたことに気づくのは、たいてい相手から連絡が来たときです。
「今月の請求書がまだ届いていません」という、あの連絡です。

今回は、定型メールを自動作成しておくことで、この構造そのものを変える話を書いていきます。
自動化の全体像はAIによる業務自動化の全体像。手段の選び方とコスト設計にまとめてあります。

月次の定型メールの流れ。送る日の3営業日前に下書きを自動で作り、送る日まで下書きフォルダに溜まって通知の代わりになり、送るときは人が変わる部分を埋めて確認して送る。送信そのものは自動化しない

毎月同じ業務を、毎月思い出している

自社ではいまどうやって月次業務を管理しているでしょうか?
多くの組織では、担当者の記憶とカレンダーだけで月次業務を回しています。
「月末:請求案内」とカレンダーに入れていても、何をするかの詳細は本人の記憶の中にあります。
チェックリストがあっても、見に行く習慣がなければ機能しません。

抜ける理由は3つあると考えています。
ひとつは、通知が「やること」を伝えるだけなので、着手までのあいだに他の業務が割り込んできます。
2つ目は、文面を考え宛先を確認し数字を入れる準備の手間があるだけで、着手そのものが後回しになります。

3つ目に、月末は他の業務も集中するので、優先順位の低いものから抜けていきます。
なかでも大きいのが、着手のハードルだと思います。

月次業務が抜ける3つの理由。通知がやることを伝えるだけ、文面や宛先を準備する手間で着手が後回しになる、月末は他の業務も集中する。なかでも大きいのは着手のハードルで、だから通知ではなくやることを用意しておく形に変える

通知が来ても、すぐに手を付けられない状態だと後回しになるからです。
だから対処は「着手のハードルをなくす」に尽きます。
通知するのではなく、やることを既に用意しておく形に変えます。

下書きを先に作っておけば、思い出さなくて済む

では、具体的に何を用意しておけばよいでしょうか?
通知を出すのではなく、下書きのほうを先に作っておきます。
毎月決まった日に、その月に送る定型メールの下書きを自動で作っておきます。
下書きに入れるのは、宛先、件名、本文の定型部分、署名という、毎月変わらない部分だけです。

金額や期日、その月固有の内容といった変わる部分は、空欄のままにするか自動で埋められる分だけ埋めておきます。
この形の効果は3つあります。
下書きが増えていること自体が、やることの通知になります。

下書きを開き、変わる部分を埋めて送るだけなので、慣れれば1〜2分で終わります。
下書きが残っていれば、まだ送っていないと一目で分かります。
「やったかどうか」が状態として目に見える形になる、この最後の効果に実は最も価値があると思います。

対象業務は、聞き方を変えると出てくる

どの業務が対象になるのか、条件も決めておきましょう。
毎月や毎週といった決まったタイミングで発生し、送る相手と内容が決まっていて、抜けると相手に影響がある業務が対象です。
洗い出し方は、各担当に「毎月決まった時期に送っているメールはありますか」と聞くことです。
この聞き方だと、担当ごとにまとまって出てきます。

「毎月やっている業務は何ですか」と業務全体を聞くと、大きな単位で答えられてしまい出てきません。
過去のメールを「毎月同じ件名で送っているメール」で検索すると、本人が意識していなかったものまで見つかります。

月次業務の洗い出し方。「毎月決まった時期に送っているメールはありますか」と聞くと担当ごとにまとまって出てくる。過去のメールを毎月同じ件名で検索すると本人が意識していなかったものまで見つかる。「毎月やっている業務は何ですか」と業務全体を聞くと、大きな単位で答えられてしまい出てこない

対象になるのは、メールだけではありません。
集計データをあらかじめ集めて、下書きのレポートまで作っておくレポートの作成があります。
各部門への確認事項を、あらかじめ依頼の形にしておく確認の依頼もあります。

月次で更新する台帳に、新しい月の行を先に作っておく台帳の更新も対象です。
定例の申請を、下書きの状態で用意しておく承認の申請も同じ発想です。

共通しているのは「あらかじめ用意しておく」という考え方です。
通知して思い出させるのではなく、やることを先に形にしておきます。
この発想は、週次や四半期、年次といった繰り返し業務にも、そのまま使えます。

メール情報の台帳化はメール情報を台帳化する。転記作業を組織から消す、レポートの自動生成は週次レポートを自動生成する。マネジメントの定型業務を外すにまとめてあります。

送信までは自動化せず、人の確認を挟む

ここまで来ると、送信まで自動化したくなるかもしれません。
ただ、下書きまでで止めておく理由が3つあります。
金額や期日が入る場合、確認せずに送ると誤りがそのまま外へ出ます。
「今月は特別な対応があった」という補足を、その月だけ足したい場合もあります。

相手の状況によって、送るタイミングを選びたい場合もあります。
もうひとつ、「送ったつもり」を防ぐという理由もあります。
自動送信にすると、送られたこと自体を確認しなくなり、止まっていても気づけません。

下書きなら人が開いて送るので、止まっていればその時点で気づきます。
「毎月1日にリマインドを送る」のように、内容が完全に固定されているものは自動送信のままで構いません。

この施策のいちばん大きな価値は、実は引き継ぎにあると思います。
月次業務は、引き継ぎで最も抜けやすい領域です。
引き継ぎの時点では、その業務がまだ発生していないからです。
4月に異動した人が月末の業務を引き継いでおらず、月末になって「これは誰がやるんですか」となる場面を思い浮かべてください。

下書きが自動で作られる仕組みがあれば、ここは抜けません。
下書きが増えればやることが分かり、文面が既にあるので内容も分かるからです。

「引き継ぎ資料に月次業務の一覧を書く」必要も減ります。
仕組みのほうが、一覧の役割を果たすからです。
異動の多い組織ほど、この施策の価値は大きくなります。

担当が変わるときの月次業務を、仕組みがない場合と下書きが自動で作られる場合で比べた図。仕組みがないと、引き継ぎの時点では業務がまだ発生しておらず、月末になって誰がやるのかとなる。下書きが増えればやることが分かり、文面があるので内容も分かり、引き継ぎ資料に一覧を書く必要も減る

引き継ぎそのものの設計は担当が変わってもAI業務が止まらない。引き継ぎパッケージの設計で扱っています。

実装前に、5つを決めておく

仕組みを作る前に、何を決めておけばよいでしょうか?
設計の要点は、全部で5つあります。
実際に送る日の何日前に下書きを作るか、目安は3営業日前です。
早すぎると忘れられ、遅すぎると準備の時間が足りません。

下書きの置き場は、下書きフォルダに溜まる形が基本です。
ただ、他の下書きと混ざるので、件名に印を付けるかラベルで区別しておきます。

送ったかどうかは、下書きが残っていれば未送信、と判断できる形がいちばん簡単です。
その月は不要だったなら、下書きをそのまま削除して構いません。

定型の文面が変わったら、生成の元になる文面のほうを更新します。
この更新の担当は、あらかじめ決めておきます。

実装前に決めておく5つ。下書きを作る日(送る3営業日前が目安)、下書きの置き場、送ったかどうかの判断、その月に不要だったときの扱い、定型の文面を更新する担当

証跡そのものの保全は証跡と書類を自動で残す。監査に耐える記録の仕組み、期限の管理は期限管理を人の記憶から外す。リマインドの設計と営業日計算にまとめてあります。

通知だけを設定して、それで終わりにしてしまう失敗がよくあります。
自動送信にしてしまうのも、よくある失敗です。
「毎月やっている業務は何ですか」と聞いてしまうと、対象が出てきません。

下書きを、実際に送る日になってから作ると、準備の時間が足りなくなります。
他の下書きと区別が付かない形で置くと、探す手間が増えます。
文面の更新担当を決めないまま走り出すと、古い内容のまま放置されます。
いずれも、下書きを作って送信は人がやる、送っているメールという具体で聞く、3営業日前に作る、印かラベルで区別する、更新の担当を決めておく、で避けられます。

毎月の業務を聞き出して仕組みにするところは、当社のAI伴走支援でも、業務の洗い出しとAIワークフローの実装として、現場の担当者と一緒に進めています。

仕組みが、引き継ぎ資料の一覧を兼ねる

月次業務が抜けるのは、通知が「やること」を伝えるだけであること、着手のハードルがあること、忙しい月に業務が集中することの3つが原因です。
なかでも着手のハードルが、いちばん大きく効いています。
だから対処は、通知ではなく下書きのほうを自動で作っておくことです。
下書きが増えれば通知の代わりになり、開いて埋めて送るだけなので着手のハードルも消え、残っていれば未送信だと一目で分かります。

対象は、決まったタイミングで発生し、送る相手と内容が決まっていて、抜けると相手に影響がある業務です。
洗い出しは「毎月決まった時期に送っているメールはありますか」と聞きます。
メールに限らず、レポートや確認の依頼、台帳の更新、承認の申請にも同じ考え方を使えます。

完全な自動送信にはしません。
内容の確認が必要で、その月固有の事情があり、タイミングを選びたい場面があるからです。
「送ったつもり」を防ぐ狙いもあります。

もっとも大きな価値は、引き継ぎにあります。
下書きが自動で作られていれば、それ自体が月次業務の一覧を兼ねるので、担当が変わっても止まりません。
自部門で、毎月決まった時期に送っているメールは、いま何本あるでしょうか。

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執筆:寺田昇平

AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事

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