組織のAI活用をAIポータルと伴走支援で加速

定例リサーチを人の手から外す。調査業務を自動化フローに組み込む

定例リサーチを人の手から外す。調査業務を自動化フローに組み込む

執筆:寺田昇平

AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事

仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。

社内で毎週こなしているリサーチを数えてみると、競合の動向や業界のニュース、取引先の状況、採用市場の動きなど、思っている以上に数があります。

誰かが担当して毎週数時間かけているのに、忙しい週になると「今週はまとめて来週やります」で静かに飛びます。
定例の作業なので、AIでの自動化にいちばん向いている業務だと思います。
ただ、調査は判断を含む作業に見えるので、手が付いていないケースが多いです。

今回は、このリサーチを自動化フローに組み込むやり方を整理していきます。
自動化を組織で回す全体像はAIによる業務自動化の全体像。手段の選び方とコスト設計にまとめてあります。

毎週のリサーチの自動化を、手動で3〜4回回して質問文を固める、フローに組んで定期実行する、読み手を決める、の3段階で進めることを示した図。最後の読み手決めが最も飛ばされがち

毎週のリサーチは、3条件がそろえば自動化の対象になる

自社のリサーチがこの対象に入るかどうか、まず見分け方から確認していきます。

対象になる条件は3つで、定例で発生する点、調べる項目が決まっている点、結果を誰かに報告している点です。
この3つがそろっているものが対象になり、その都度必要になる調査は対象になりません。

そろった調査は、たいてい担当者が固定されているので、その人が休むと止まり、異動すればそのまま失われます。
「あの調査、どうやって作っていたんでしたっけ」と、引き継いだ人が困る場面もあります。

つまり自動化の効果は、時間の削減だけでは測れません。
継続性を担保できる点のほうが、実は大きな価値です。

フローに組み込むと、比較できる資産に変わる

組み込むと何が変わるのでしょうか?
従来の形と並べて見てみます。

従来の形では、人が調査ツールを開き、質問を入力し、結果を読み、報告にまとめるところまでを担っていました。
組み込んだ形では、決まった時刻に決まった質問で調査が走り、結果が決まった場所に出力されるので、人は読むところから始められます。
変わる点は3つあり、起動が人に依存しない点、質問が固定されて結果が比較できる点、出力先が決まって蓄積される点です。

リサーチを従来の手動の形と、フローに組み込んだ形で、起動・質問・出力の3点で比べた表。価値が大きいのは質問が固定されて前回と同じ物差しで比較できる点

このなかで価値が大きいのは、質問が固定される点です。
手動でやっていると毎回少し違う切り口で調べるので、前回との差分が分かりません。
質問を固定すれば、同じ物差しで比較できるようになります。

型を固めてから定期実行に進み、最後に読み手を決める

導入はここでも段階を踏みます。
手動、実行、読み手決めの順で見ていきます。

最初は手動です。
調べる項目を決めて質問文を固定し、3〜4回手動で回して結果を見ます。

この段階の目的は、質問文を確定させる点に尽きます。
いきなりフローに組むと、質問が悪かったときに気づくのが遅れるからです。
確認するのは、欲しい情報が出てくるか、出典が示されるか、余計な情報が多すぎないか、の3つです。

余計な情報の量は特に重要で、網羅的に調べさせると読むのに時間がかかります。
読む側の時間を考えて項目を絞ると、3〜5項目が目安になります。
読まれる形にするところまでは調査結果を読まれる形に変える。社内共有までを一連の業務にするで扱っています。

質問文には「分からない項目は分からないと書いてください」を必ず入れておきます。
これがないと、埋め合わせで不確かな情報が入り、定例の調査だと誤った前提のほうが蓄積してしまいます。

手動で3〜4回回す段階で質問文について確かめる3点と、必ず入れる一文。欲しい情報が出るか、出典が示されるか、余計な情報が多すぎないか。分からない項目は分からないと書いてもらう一文を必ず入れる

型が固まったら、フローに組みます。
決めるのは3つあり、ひとつが実行の頻度と時刻です。
読む人が読むタイミングの直前にするのがコツで、月曜の朝に読むなら日曜の夜に走らせます。

次が出力先で、表に1行追加する形がいちばん扱いやすいです。
日付・項目・内容・出典を並べて蓄積すれば、後から比較できます。
表の作り方そのものはスプレッドシートを社内DBとして扱う。AI自動化の土台設計にまとめてあります。

最後が失敗したときの扱いで、定例の調査が失敗した場合は通知を出しておきます。
気づかないまま数週間止まる事態を防げます。
最初は並行運用にして、自動化したものと手動でやっていたものを2〜3回並べて比べ、精度に問題がないと確かめてから手動をやめます。

そのうえで、最も飛ばされがちな工程が残っています。
調査結果は、出力されるだけでは意味を持ちません。
「読まれて初めて意味を持つ」という当たり前のところが、自動化すると案外抜け落ちます。

自動化するとかえって読まれなくなる場合があります。
手動でやっていたときは、担当者が読んでまとめる工程が必ず挟まっていたからです。

決めるのは3つです。
誰が読むかを名前で決め、いつ読むかを業務の動線に組み込み、読んだ結果を何に使うかを決めます。

「関係者」という書き方では、まず読まれません。
いつ読むかは、定例会議の前、週報を書く前というように置きます。
使い道は「月1回、集まった情報のうち自社に関係するものを3つ選んで、試すかどうかを決める」といった具体の形にします。

使い道が決まっていないと、情報が流れていくだけになります。
自動化して量が増えると、この状態が加速します。
「とりあえず共有しておきます」で終わると、結局誰にも使われません。

出力して共有するだけでは読まれないため、誰が読むかを名前で、いつ読むかを業務の動線で、読んだ結果を何に使うかを具体的な形で決めることを示した図

出力の品質は、4つの仕掛けで担保する

自動化すると人が見ていない工程が生まれますが、ここはどう担保すればよいのでしょうか?
ひとつが出典を必須にする対応で、質問文で出典を求め、出典がない情報は使わない運用にします。
次が定期的な抜き取り確認です。
月1回、出力された内容のうち数件を人が確認し、特に数字が入っているものを見ます。

もうひとつが差分の検知で、前回との差分が大きいときは情報が正しくない可能性があります。
表に蓄積していれば、前回と並べて見られます。
「あれ、先月と数字がずいぶん違う」と気づける状態にしておくと安心です。

最後が「事実」と「推測」を分けて出力させる点です。
質問文で分けるよう指定しておかないと、混ざった形で蓄積されて、後から推測を事実として扱う事故が起きます。

調査の結果には、確認できた事実とそこから推測される部分が混ざりますが、ここが分かれているだけで判断の質が変わります。

自動化で人が見ていない工程の出力の品質を担保する4つの仕掛けと、それぞれで防げることを示した図。出典を必須にする、月1回の抜き取り確認、前回との差分を見る、事実と推測を分けて出力させる

競合・市場の定点観測こそ、リサーチ自動化の本丸になる

具体的な使いどころはどこにあるのでしょうか?
最も価値が出るのは定点観測です。

対象になるのは、競合の動き、市場の動向、取引先の状況、採用市場の4つです。
競合はサービスの変化や発信の内容と採用の動き、市場は業界のニュースや制度の変更、取引先は発表や業績、採用市場は職種別の求人の傾向になります。

共通しているのは、比較できるかどうかに価値がある点です。
単発で調べても意味は薄く、継続して同じ項目を見て初めて変化が分かります。

手動でやっているかぎり、この継続は途切れがちです。
担当が忙しくなった週から飛び、飛ぶと比較の連続性が切れます。
自動化の価値は、この継続性のほうにあります。
「前回はどうだったっけ」とすぐに答えられる状態こそ、定点観測の価値です。

つまずきやすいのは6つで、いきなりフローに組む、網羅的に調べさせる、読み手と読むタイミングを決めない、読んだ結果を何に使うかを決めない、「分からないと書いてください」を入れない、手動をすぐやめる、です。
どれも、手動で3〜4回回して3〜5項目に絞り、読み手と動線と使い道を決めて質問文に一文入れ、並行運用で比べてから切り替えれば起きません。

定例業務の洗い出しから実装まで、一気に進める

ここまで書いてきたとおり、調査の自動化は工程としては単純です。
難しいのは対象を見つける作業と、質問文を固める作業のほうです。

対象を見つける作業は、業務の棚卸しの一部になります。
「毎週やっている調査」を洗い出すと、担当者本人が自動化できると思っていなかったものが出てきます。
「これは判断が必要だから」と本人が思っている作業のなかに、対象が混ざっています。
棚卸しの設計はAI化する業務が見つからない。全社一斉の業務棚卸しの設計で扱っています。

洗い出した業務に優先順位を付けて実装まで運ぶ流れは、業務のAI化の進め方。棚卸しから優先順位付け・実装までの手順でひと続きに扱っています。

質問文を固める作業には、調査の作法の知識が要ります。
項目の絞り方、出典の求め方、事実と推測の分け方は、何度か作った経験に依存します。

私たちが提供しているAI導入支援では、定例業務の洗い出しから質問文の設計、フローの実装までを一緒に進めています。
自動化したい業務が見つからない、あるいは組み方が分からない、という状態なら、進め方の参考になるかもしれません。

質問文を固める工程に、リサーチ自動化のすべてがかかっている

対象になるのは、定例で発生し、調べる項目が決まっており、結果を報告している調査です。
この3つがそろったものは担当者が固定されているケースが多いので、自動化の価値は時間の削減だけでなく継続性の担保にもあります。
組み込むと変わるのは、起動が人に依存しない点、質問が固定されて比較できる点、出力先が決まって蓄積される点の3つです。
このなかで最も価値が大きいのは、比較できるようになる点です。

進め方は3フェーズで、手動で3〜4回回して質問文を固め、フロー化して定期実行し、読み手と読むタイミングと使い道を決めるという並びです。
フロー化のあとは、並行運用で2〜3回比べてから切り替えます。
品質の担保は、出典を必須にする、月1回抜き取りで確認する、前回との差分を見られる形にする、事実と推測を分けて出力させるの4つです。

項目が決まっている調査から手動で回し始めた現場ほど、自動化への切り替えが早く進んでいます。

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執筆:寺田昇平

AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事

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