
定例リサーチを人の手から外す。調査業務を自動化フローに組み込む
2026/09/14
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
社内で毎週こなしているリサーチを数えてみると、競合の動向や業界のニュース、取引先の状況、採用市場の動きなど、思っている以上に数があります。
誰かが担当して毎週数時間かけているのに、忙しい週になると「今週はまとめて来週やります」で静かに飛びます。
定例の作業なので、AIでの自動化にいちばん向いている業務だと思います。
ただ、調査は判断を含む作業に見えるので、手が付いていないケースが多いです。
今回は、このリサーチを自動化フローに組み込むやり方を整理していきます。
自動化を組織で回す全体像はAIによる業務自動化の全体像。手段の選び方とコスト設計にまとめてあります。

毎週のリサーチは、3条件がそろえば自動化の対象になる
自社のリサーチがこの対象に入るかどうか、まず見分け方から確認していきます。
対象になる条件は3つで、定例で発生する点、調べる項目が決まっている点、結果を誰かに報告している点です。
この3つがそろっているものが対象になり、その都度必要になる調査は対象になりません。
そろった調査は、たいてい担当者が固定されているので、その人が休むと止まり、異動すればそのまま失われます。
「あの調査、どうやって作っていたんでしたっけ」と、引き継いだ人が困る場面もあります。
つまり自動化の効果は、時間の削減だけでは測れません。
継続性を担保できる点のほうが、実は大きな価値です。
フローに組み込むと、比較できる資産に変わる
組み込むと何が変わるのでしょうか?
従来の形と並べて見てみます。
従来の形では、人が調査ツールを開き、質問を入力し、結果を読み、報告にまとめるところまでを担っていました。
組み込んだ形では、決まった時刻に決まった質問で調査が走り、結果が決まった場所に出力されるので、人は読むところから始められます。
変わる点は3つあり、起動が人に依存しない点、質問が固定されて結果が比較できる点、出力先が決まって蓄積される点です。

このなかで価値が大きいのは、質問が固定される点です。
手動でやっていると毎回少し違う切り口で調べるので、前回との差分が分かりません。
質問を固定すれば、同じ物差しで比較できるようになります。
型を固めてから定期実行に進み、最後に読み手を決める
導入はここでも段階を踏みます。
手動、実行、読み手決めの順で見ていきます。
最初は手動です。
調べる項目を決めて質問文を固定し、3〜4回手動で回して結果を見ます。
この段階の目的は、質問文を確定させる点に尽きます。
いきなりフローに組むと、質問が悪かったときに気づくのが遅れるからです。
確認するのは、欲しい情報が出てくるか、出典が示されるか、余計な情報が多すぎないか、の3つです。
余計な情報の量は特に重要で、網羅的に調べさせると読むのに時間がかかります。
読む側の時間を考えて項目を絞ると、3〜5項目が目安になります。
読まれる形にするところまでは調査結果を読まれる形に変える。社内共有までを一連の業務にするで扱っています。
質問文には「分からない項目は分からないと書いてください」を必ず入れておきます。
これがないと、埋め合わせで不確かな情報が入り、定例の調査だと誤った前提のほうが蓄積してしまいます。

型が固まったら、フローに組みます。
決めるのは3つあり、ひとつが実行の頻度と時刻です。
読む人が読むタイミングの直前にするのがコツで、月曜の朝に読むなら日曜の夜に走らせます。
次が出力先で、表に1行追加する形がいちばん扱いやすいです。
日付・項目・内容・出典を並べて蓄積すれば、後から比較できます。
表の作り方そのものはスプレッドシートを社内DBとして扱う。AI自動化の土台設計にまとめてあります。
最後が失敗したときの扱いで、定例の調査が失敗した場合は通知を出しておきます。
気づかないまま数週間止まる事態を防げます。
最初は並行運用にして、自動化したものと手動でやっていたものを2〜3回並べて比べ、精度に問題がないと確かめてから手動をやめます。
そのうえで、最も飛ばされがちな工程が残っています。
調査結果は、出力されるだけでは意味を持ちません。
「読まれて初めて意味を持つ」という当たり前のところが、自動化すると案外抜け落ちます。
自動化するとかえって読まれなくなる場合があります。
手動でやっていたときは、担当者が読んでまとめる工程が必ず挟まっていたからです。
決めるのは3つです。
誰が読むかを名前で決め、いつ読むかを業務の動線に組み込み、読んだ結果を何に使うかを決めます。
「関係者」という書き方では、まず読まれません。
いつ読むかは、定例会議の前、週報を書く前というように置きます。
使い道は「月1回、集まった情報のうち自社に関係するものを3つ選んで、試すかどうかを決める」といった具体の形にします。
使い道が決まっていないと、情報が流れていくだけになります。
自動化して量が増えると、この状態が加速します。
「とりあえず共有しておきます」で終わると、結局誰にも使われません。

出力の品質は、4つの仕掛けで担保する
自動化すると人が見ていない工程が生まれますが、ここはどう担保すればよいのでしょうか?
ひとつが出典を必須にする対応で、質問文で出典を求め、出典がない情報は使わない運用にします。
次が定期的な抜き取り確認です。
月1回、出力された内容のうち数件を人が確認し、特に数字が入っているものを見ます。
もうひとつが差分の検知で、前回との差分が大きいときは情報が正しくない可能性があります。
表に蓄積していれば、前回と並べて見られます。
「あれ、先月と数字がずいぶん違う」と気づける状態にしておくと安心です。
最後が「事実」と「推測」を分けて出力させる点です。
質問文で分けるよう指定しておかないと、混ざった形で蓄積されて、後から推測を事実として扱う事故が起きます。
調査の結果には、確認できた事実とそこから推測される部分が混ざりますが、ここが分かれているだけで判断の質が変わります。

競合・市場の定点観測こそ、リサーチ自動化の本丸になる
具体的な使いどころはどこにあるのでしょうか?
最も価値が出るのは定点観測です。
対象になるのは、競合の動き、市場の動向、取引先の状況、採用市場の4つです。
競合はサービスの変化や発信の内容と採用の動き、市場は業界のニュースや制度の変更、取引先は発表や業績、採用市場は職種別の求人の傾向になります。
共通しているのは、比較できるかどうかに価値がある点です。
単発で調べても意味は薄く、継続して同じ項目を見て初めて変化が分かります。
手動でやっているかぎり、この継続は途切れがちです。
担当が忙しくなった週から飛び、飛ぶと比較の連続性が切れます。
自動化の価値は、この継続性のほうにあります。
「前回はどうだったっけ」とすぐに答えられる状態こそ、定点観測の価値です。
つまずきやすいのは6つで、いきなりフローに組む、網羅的に調べさせる、読み手と読むタイミングを決めない、読んだ結果を何に使うかを決めない、「分からないと書いてください」を入れない、手動をすぐやめる、です。
どれも、手動で3〜4回回して3〜5項目に絞り、読み手と動線と使い道を決めて質問文に一文入れ、並行運用で比べてから切り替えれば起きません。
定例業務の洗い出しから実装まで、一気に進める
ここまで書いてきたとおり、調査の自動化は工程としては単純です。
難しいのは対象を見つける作業と、質問文を固める作業のほうです。
対象を見つける作業は、業務の棚卸しの一部になります。
「毎週やっている調査」を洗い出すと、担当者本人が自動化できると思っていなかったものが出てきます。
「これは判断が必要だから」と本人が思っている作業のなかに、対象が混ざっています。
棚卸しの設計はAI化する業務が見つからない。全社一斉の業務棚卸しの設計で扱っています。
洗い出した業務に優先順位を付けて実装まで運ぶ流れは、業務のAI化の進め方。棚卸しから優先順位付け・実装までの手順でひと続きに扱っています。
質問文を固める作業には、調査の作法の知識が要ります。
項目の絞り方、出典の求め方、事実と推測の分け方は、何度か作った経験に依存します。
私たちが提供しているAI導入支援では、定例業務の洗い出しから質問文の設計、フローの実装までを一緒に進めています。
自動化したい業務が見つからない、あるいは組み方が分からない、という状態なら、進め方の参考になるかもしれません。
質問文を固める工程に、リサーチ自動化のすべてがかかっている
対象になるのは、定例で発生し、調べる項目が決まっており、結果を報告している調査です。
この3つがそろったものは担当者が固定されているケースが多いので、自動化の価値は時間の削減だけでなく継続性の担保にもあります。
組み込むと変わるのは、起動が人に依存しない点、質問が固定されて比較できる点、出力先が決まって蓄積される点の3つです。
このなかで最も価値が大きいのは、比較できるようになる点です。
進め方は3フェーズで、手動で3〜4回回して質問文を固め、フロー化して定期実行し、読み手と読むタイミングと使い道を決めるという並びです。
フロー化のあとは、並行運用で2〜3回比べてから切り替えます。
品質の担保は、出典を必須にする、月1回抜き取りで確認する、前回との差分を見られる形にする、事実と推測を分けて出力させるの4つです。
項目が決まっている調査から手動で回し始めた現場ほど、自動化への切り替えが早く進んでいます。
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執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
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