
自動化フローの設定でつまずく3項目。現場が自分で作れる状態にする
2026/09/11
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
Workspace Studioのようなノーコードの自動化フローは、設定画面から作れるので現場でも作れます。
理屈のうえでは、そうなるはずです。
実際には、作れる人が推進チームに限られている組織が多いと思います。
依頼が溜まって順番待ちになり、情シスに依頼して待つという構造を推進チームのところで再現してしまいます。
原因を追うと、詰まる箇所は決まっています。
表計算と連携するときの数項目の意味が分からないという点です。
今回は、この障壁を外す話を整理していきます。
現場が自分で作れる状態まで持っていく設計は社内AIツールの内製化。現場が自分で作れる組織にするまでにまとめてあります。

自動化フローは、なぜ推進担当の作業待ちになるのか
なぜ現場が作れないのか、理由は3つあります。
ひとつは、設定項目の言葉が業務の言葉ではない点です。
「監視する行」「トリガー値」「行の更新」が何を指すのか、業務の側から想像できません。
次は、説明が抽象的な点です。
公式の説明は正確でも、自分の業務に当てはめる作業のほうが残ります。
最後が、間違えたときに何が起きるか分からない不安です。
誤った設定で動くとデータが壊れるかもしれず、この不安が試すことを止めてしまいます。
前の2つは具体例で解決し、不安のほうは環境の設計で解決します。
もちろん練習用の表を用意しておけば、失敗しても影響はありません。
つまずく3項目は「監視する行」「トリガー値」「行の更新」
まず「監視する行」は、表のどの範囲に変化があったときに動くかを指定する項目です。
業務の言葉で言うと、「この表に新しい行が追加されたら動く」のか、「特定の列の値が変わったら動く」のか、のどちらかです。
問い合わせの記録が並ぶ表で新しい問い合わせが1行追加されたときに通知を出したい場合、監視するのは新しく追加された行です。
一方で案件の台帳では、「ステータスが完了になったら請求の処理を始める」場合、監視するのは既にある行の特定の列になります。
間違いやすいのは見出しの行を範囲に含めてしまうことで、見出しを変えたときにも動いてしまうので、データが始まる行から指定するのが基本です。
次に「トリガー値」は、どの値になったときに動くかを示す条件です。
業務の言葉で言うと「この列が『完了』になったら」「この列が空欄でなくなったら」で、案件の台帳で承認の列が「承認済」になったら次の処理を始める場合、トリガー値は「承認済」です。
ここで間違いやすい点が3つあります。
ひとつは表記が一致していないと動かないことで、「承認済」と「承認済み」は別の値になります。
だから区分の列は選択肢から選ぶ形にしておく必要があり、自由入力にすると表記のゆれで動かない行が出てきます。
表の作り方そのものはスプレッドシートを社内DBとして扱う。AI自動化の土台設計にまとめてあります。
次が空欄の扱いです。
「空欄でなくなったら」という条件では、誤って何かを入力して消した場合に、意図しない動きが起きます。
最後が、複数の条件を同時に指定できない場合がある点です。
「承認済で、かつ金額が10万円以上」のような条件はフロー側で組めない場合があり、表の側で判定の列を作るのが確実です。
「行の更新」は、処理が終わったことをどう記録するかを示す設定です。
業務の言葉で言うと「処理したら、この列に『処理済』と書き込む」で、これがないと同じ行が何度も処理されます。
毎回のチェックで条件に当てはまり続けるので通知が繰り返し飛ぶ、この事故がいちばん多いと思います。
問い合わせの記録で通知を出したら「通知済」の列にチェックを入れ、条件を「通知済が空欄の行」にしておけば、一度だけ処理されます。
間違いやすいのは更新する列を人が入力する列と同じにしてしまうことで、自動化が書き込む列は分けておきます。
混ざると、どちらが書いたのか分からなくなります。

3項目を1枚の関係図にして、練習用の環境も用意する
配布物では、3項目を別々に説明せず関係として示します。
「どの範囲を見るか」「どうなったら動くか」「動いたら何を記録するか」の順に並べると、この3つで自動化の骨格になります。
最後の項目を忘れると同じ処理が繰り返される、という因果関係まで書いておくのがコツです。

自社の業務での例も2つ添えます。
「新しい問い合わせが入ったら通知する」「案件が完了になったら請求処理を始める」というように、一般的な例より自社の表を使った例のほうが理解が速いからです。
失敗が怖いという不安のほうには、環境の側で対処します。
まず練習用の表を1つ作り、実際の業務の表と同じ形で中身はダミーにして、ここで自由に試してもらいます。
次に、練習用のフローのほうも1つ作っておきます。
完成した状態のものを見せると設定の意味が分かるので、説明を読むより動いているものを見ながら設定画面を開くほうが速いです。
「壊しても構いません」と明示しておくのも欠かせません。
ここを言わないと、練習用の環境でも慎重になってしまいます。
安全側に振りすぎない権限の設計は内製環境の権限設定をどう整えるか。安全と速度を両立させるで扱っています。
この環境を用意するのは推進チームの仕事だと思います。
ここがないと、現場は本番の表で練習することになり、事故を恐れて着手しなくなります。
現場に配るのはA4 1枚の設定手順カード
配布物の形はA4 1枚で、そこに書くのは4つです。
まず3項目の関係で、上に書いた「どの範囲を見る → どうなったら動く → 何を記録する」です。
次に自社の例を2つ載せ、自社の表を使った設定例を示します。
もうひとつがよくある事故と対策です。
同じ処理が繰り返される場合は行の更新を設定する、表記のゆれで動かない場合は区分を選択肢から選ぶ、見出しの行を含めた場合はデータが始まる行から指定する、の3つです。
最後が、練習用の環境の場所と詰まったときの連絡先です。
よくある事故を入れるのが要点です。
事故のパターンを先に知っていれば、設定するときに自分で確認できます。

フローの共有と棚卸しをセットにする
現場が作れるようになると、今度は別の問題が出てきます。
何が動いているか、分からなくなるのです。
自社では、いま何本の自動化フローが動いているか把握できているでしょうか?
だから、作る自由と把握する仕組みをセットで渡します。
登録は4項目で、何をする仕組みか・起点・保守担当・最終確認日です。
また、四半期に一度は稼働している一覧を見直し、使われていないものは止めます。
止まっていることに気づいていないものが最も危険なので、この棚卸しが安全弁になります。

ここでいう棚卸しは作ったフローの点検ですが、そもそもどの業務を自動化の対象にするかを決める手順は業務のAI化の進め方。棚卸しから優先順位付け・実装までの手順にあります。
あわせて、止まったときに気づける設計も入れておきます。
定時に走る処理なら走ったこと自体を記録に残しておけば、記録が途切れた時点で止まっていると分かるからです。
つまずきやすい失敗は5つあります。
設定項目を公式の言葉で説明すること、行の更新を設定しないこと、区分の列を自由入力にすること、練習用の環境を用意しないこと、登録の仕組みを作らずに自由にさせることです。
どれも業務の言葉に翻訳し、行の更新を必ず設定し、選択肢から選ばせ、練習用の環境を置き、登録をセットにすれば防げます。
私たちのAI伴走支援では、こうした設定でつまずく部分も、現場の担当者と一緒に手を動かしながら、AIワークフローの実装まで進めています。
つまずく3項目を業務の言葉に訳せば、現場は自分で作れる
自動化のフローが推進担当の作業待ちになるのは、設定項目の言葉が業務の言葉でない・説明が抽象的・失敗が怖い、の3つが原因です。
つまり、言葉を訳して不安を消せば、現場は自分で作れます。
つまずく3項目は、監視する行・トリガー値・行の更新になります。
データが始まる行から指定し、区分は選択肢から選ばせ、行の更新を必ず設定しておけば、事故のほとんどは防げます。
配布物では3項目を別々に説明せず、「どの範囲を見る → どうなったら動く → 何を記録する」という関係として示します。
自社の表を使った例を2つ添えるのも効きます。
失敗が怖いという障壁には、練習用の表と完成したフローを用意します。
「壊しても構いません」と明示しておくのも効果があります。
作る自由と一覧への登録をセットで渡し、四半期に一度は棚卸しをします。
止まったときに気づける設計も、あわせて入れておきます。
3項目さえ書き出せていれば、あとは現場だけで自動化フローを組み立てられる状態です。
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執筆:寺田昇平
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