組織のAI活用をAIポータルと伴走支援で加速

動画を渡すだけで業務が変わる。マニュアル化と書類デジタル化の内製

動画を渡すだけで業務が変わる。マニュアル化と書類デジタル化の内製

執筆:寺田昇平

AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事

仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。

社内に残っている「AI化できていない業務」には、共通する特徴があります。

「文字になっていない業務」だという点です。
紙の書類の処理、画面を見ながらの操作、対面のやり取り。
文字のデータがないのでAIに渡すものがなく、だから対象から外れ続けます。

ところが、画像や動画を扱えるようになると、この領域が一気に対象になります。
撮って渡すだけで処理できるので、動画からのマニュアル作成もそのまま内製できるという話です。

紙の書類の処理、画面を見ながらの操作、対面のやり取りといった文字になっていない業務を、撮って渡すと、読み取る・記述する・指摘するの3つの処理ができることを示した図。最も効くのは記述する処理

今回は、この使いどころを職種別に整理していきます。
職種ごとにどの工程へAIを当てるかの全体像は職種別AI活用まとめ。営業・マーケ・人事・経理・法務の使いどころにまとめてあります。

動画・画像を渡すと何ができるのか

動画や画像を渡すと、何ができるのでしょうか?
処理の種類は3つに分かれます。

ひとつは、「読み取る」処理です。
紙の書類を撮影してデータにする、画面に表示された数字を取り出す、手書きのメモを文字にする、といった作業です。
確実性が必要な作業なので、読み取った結果を人が確認する工程は残ります。

次は、「記述する」処理です。
操作の手順を書き出す、会話の内容を要約する、作業の工程を並べる。
ここが最も効く領域だと感じています。

最後は、「指摘する」処理です。
説明の分かりにくい箇所を挙げる、手順の無駄を指摘する、資料の見づらさを指摘する、というように人が見落とす部分を拾わせます。
このなかでは記述が業務への効果が大きく、指摘が意外に価値があるというのが実務での感覚です。
読み取りは分かりやすいのですが、確認の工程が残るので削減時間のほうはそれほど大きくなりません。

営業・人事・経理の使いどころ

営業なら、商談をオンラインで録画している組織ならすぐ始められます。

やることは、録画を渡して、相手の課題として語られたこと・こちらが約束したこと・次回までの宿題の3つを抽出させる作業です。
これで商談後の記録作成が短縮されますし、担当者によって書く内容が違うという状態も解消されます。
もうひとつの使い方として、指摘の形で「この商談で聞けていない情報は何か」を挙げさせると、次回の準備にそのまま使えます。

注意したいのは、相手の発言を含むので「録画の許諾」と保管の範囲を確認する点です。
ここは営業部門の判断ではなく、組織のルールとして決めておく必要があります。

人事なら、研修を録画している組織で効きます。

ひとつは、研修動画から手順書を作る運用です。
特に操作の説明が含まれる研修は、そのまま手順書になります。

もうひとつは、研修の内容から理解度を確認する問題を、選択式で10問ほど作る運用です。
教育担当の手間が最も減るのがここで、問題を作る作業は時間がかかりますし、しかも後回しにされがちだからです。

効果としては、研修を受けられなかった人への代替手段にもなります。
「動画を見るより、手順書を読むほうが速い」という人もいるからです。

注意したいのは、制度の説明を含む研修は内容が古くなる点です。
手順書に「作成時点」を明記して、制度が変わったら作り直します。

経理なら、紙が残っている業務で効きます。

領収書・請求書・手書きの申請書を撮影して、日付・金額・相手先・内容といった必要な項目を抽出させます。
これで転記の作業が減りますが、確認の工程は必ず残します。
数字の誤読が起きるので、抽出された金額と原本を突き合わせる工程を置きます。

進め方のコツは、全部の書類を対象にせず、枚数が多く様式が揃っているものから始める点です。
同じ様式の書類は精度が出ますし、様式がばらばらなものは後回しにします。

そして、「計算はさせない」が鉄則です。
抽出までをAIに任せて、合計は数式で出す形にしないと、数字の事故が起きます。

情シスと製造・現場の使いどころ

情シスなら、問い合わせの多い操作で効きます。

端末の設定・アカウントの申請・システムの操作を録画して手順マニュアルを作ると、同じ問い合わせへの対応が減りますし、手順が画面のスクリーンショット付きで残るので口頭の説明より正確に伝わります。
録画から手順を起こす方法そのものは業務フロー図が書けない問題。PC録画から自動で可視化するで扱っています。

もうひとつの使い方として、現場から「これができません」という問い合わせが来たときに、画面を録画して送ってもらうという手があります。
文字の説明より、原因が特定しやすいからです。

注意したいのは、操作の録画に他のシステムの画面や社内の情報が写る点です。
必要な範囲だけを録る、または写った部分を隠す運用を決めておきます。

製造や現場のように、事務職以外でも使えます。

熟練者の作業を録画して手順を書き出すやり方で、特に言葉で説明しにくい判断が含まれる作業で効きます。
効果は手順の標準化と新任者の教育で、指摘の使い方としては、複数の人の作業を録画して比べるとやり方の違いが見えてきます。

注意したいのは、撮られる側の受け取り方です。
評価のためではなく手順を残すためだと目的を先に伝え、熟練者本人にも確認してもらう工程を入れます。

営業・人事・経理・情シス・製造や現場の5つについて、動画や画像を使う工程と、注意すること。営業は録画の許諾、人事は制度の変更、経理は数字の突き合わせ、情シスは画面への写り込み、現場は撮られる側の受け取り方

運用は、4つの注意点を先に決めて乗せる

職種を越えて共通する注意点が、4つあります。

ひとつは、撮影と録画のルールを決める運用です。
何を撮ってよいか、何が写ってはいけないか、保管の期間までを決めずに広げると、後から回収できません。
入れてよい情報の線引きは生成AIに入れてはいけない情報とは。社内ルールを3段階で線引きするにまとめてあります。

次は、分割して渡す運用です。
例えば30分の録画を一度に処理すると細部が落ちるので、工程で区切って5〜10分ずつにします。

また、読み取った結果を確認する工程を残す点も欠かせません。
特に数字と固有名詞は、「AIが読み取ったので正しい」という運用にはしません。

最後は、撮る側の負担を増やさない運用です。
撮影のために特別な準備を求めると続かないので、普段の作業をそのまま録るだけの形にしておきます。

なかでも、撮影のルールがいちばん重要で、動画には他人の画面・社内の掲示・机の上の書類など、想定していないものが写り込みます。
ここのルールを先に決めておかないと、便利さが広がった後に問題のほうが発覚します。

職種を越えて共通する4つの注意点。撮影と録画のルールを決める、分割して渡す、読み取った結果を確認する工程を残す、撮る側の負担を増やさない。撮影のルールがいちばん重要

どこから始めるか。繰り返しやすい5つの失敗

着手の順序には、目安があります。

最初にやるべきは、情シスの操作マニュアルです。
理由は3つあります。
問い合わせの削減として効果が明確な点、写ってはいけないものが少ない点、作った本人が効果を実感できる点です。

次は、人事の理解度テスト作成です。
教育担当の手間が最も減りますし、しかもリスクが小さいです。

営業の商談録画と経理の書類デジタル化は、ルールを整えてからにします。
前者は相手の発言を含みますし、後者は数字の正確性が要るので、どちらも設計が必要だからです。
リスクが小さく効果が明確なものから始めるのが、この領域の進め方になります。

着手の順序を示した図。最初は情シスの操作マニュアル、次に人事の理解度テスト作成、ルールを整えてから営業の商談録画と経理の書類デジタル化に進む

動画に限らず、対象の業務を洗い出して優先順位を付ける手順そのものは、業務のAI化の進め方。棚卸しから優先順位付け・実装までの手順にまとめています。

繰り返しやすい失敗は5つあります。
撮影のルールを決めずに広げる、長い動画を一度に処理する、読み取った数字を確認せずに使う、撮る側に特別な準備を求める、録画の目的を説明せずに依頼する。
どれも、ルールを先に決めて、工程で区切って、確認の工程を残して、普段の作業をそのまま録って、目的を先に伝えれば避けられます。

作ったものを全社から探せる状態にする

ここまで書いてきたとおり、この領域は職種ごとに使いどころが分かれます。
ただ、それぞれの部門で作られたマニュアルやツールは、部門に閉じてしまいます。

情シスが作った操作マニュアルは他の部門も必要ですし、人事が作った理解度テストの仕組みは他の研修にも使えますし、経理が作った書類の読み取りは総務でも使えます。
ところが、作られた事実が他の部門に伝わりません。

結果として、同じものが別の部門で作られます。
作り手のほうも、自分の作ったものが他部門で役立つ可能性を知らないままになります。

私たちが提供している組織のAIポータル「AI Portalize」では、部門で作ったCanvasアプリやGASのWebアプリを登録すると全社に公開され、使った人数が作った人に返ってきます。

「部門ごとには進んでいるが、横に広がらない」。
そういう状態で止まっている場合は、考え方の参考になるかもしれません。

文字になっていない業務ほど、動画とAIで先に拾う

文字になっていない業務が、AI化から外れ続けています。
画像や動画を渡せるようになると、この領域が対象になるという話です。

処理は「読み取る」「記述する」「指摘する」の3種類で、効果が大きいのは「記述する」、意外に価値があるのが「指摘する」です。
職種別の使いどころは、営業が商談録画からの記録作成、人事が研修動画からの手順書と理解度テスト、経理が紙の書類のデータ化、情シスが操作マニュアルです。

着手は、リスクが小さく効果が明確なものから進めます。
情シスの操作マニュアルから人事の理解度テストへ進み、ルールを整えてから営業と経理に進むのが現実的です。

共通の注意点は、撮影のルールを先に決める・分割して渡す・読み取り結果の確認工程を残す・撮る側の負担を増やさない、の4つです。
最初のひとつが、もっとも重要です。
自部門で問い合わせが多い操作を1つ選んで10分録画すれば、そこから手順書はほぼ書き上がります。

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執筆:寺田昇平

AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事

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