組織のAI活用をAIポータルと伴走支援で加速

生成AI研修のカリキュラム設計。職種・工程・ツール・レベルの4軸

生成AI研修のカリキュラム設計。職種・工程・ツール・レベルの4軸

執筆:寺田昇平

AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事

仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。

「Geminiの使い方」「Claudeの使い方」と題した全社研修を開いたのに、翌週にはほとんど誰もAIを開いていない、という相談をよく受けます。

生成AI研修のカリキュラムをツールの機能の順に組むと、受講者が自分の業務に結びつけられないまま終わりやすくなります。
支援先で30回分のカリキュラムを設計する機会があり、その過程で、ツールではなく複数の軸で組む考え方を整理しました。
今回は、研修が成果につながらない理由を調査の数字で確かめたうえで、職種・業務工程・ツール・レベルの4軸で組む方法と、研修の測り方までを見ていきます。

研修のカリキュラムを組む4つの軸。職種・業務工程・レベルの3つを掛け合わせると30回分の中身が自然に埋まり、ツールの軸は単独では機能しないので、ほかの軸と組み合わせて補助的に使うことを示した図

全社にAIを広げる土台づくりの全体像は、生成AIの社内ルールの作り方。ガイドラインの項目サンプルと守れる環境で扱っています。

ツールの使い方研修は、業務に接続できないまま古くなる

ツール軸の研修がうまく働かない理由は、大きく2つあります。

まず、受講者が自分の業務に接続できません。
機能の説明を聞いても「で、自分の仕事のどこで使うのか」が分からないので、研修中は納得しても、自席に戻ると忘れてしまいます。

もうひとつは、内容がすぐに古くなることです。
ツールの機能は数か月単位で変わるので、作り込んだ研修資料が半年後には使えなくなります。

研修をしている側の3社に1社が、成果を感じていない

この傾向は、研修を実施している側への調査にも表れています。
イー・コミュニケーションズは2026年6月に、従業員1,000名以上の企業で生成AI研修を担当する110名に調査をしています。
期待した水準の成果を出せていないと感じている担当者は33.6%でした。
成果が出ない理由の上位は、「コンテンツが業務の実態に合っていない」と「受講者の理解度・習得度にばらつきがある」で、どちらも48.6%です。

また、研修の成果が業務に生かされない理由では、「受講率・完了率だけで評価されている」が48.8%で上位に入っています。
つまり、業務に合わないこと、レベル差を吸収できないこと、受講率で測っていることの3つが、カリキュラムの設計で手を打てる部分です。

受講率で測ることも含めた原因ごとの対策は、AI研修が定着しない5つの原因と、研修後4週間の進め方で扱っています。

従業員1,000名以上の企業で生成AI研修を担当する110名への調査で、期待した水準の成果を出せていないと感じている担当者は33.6%。成果が出ない理由の上位は、コンテンツが業務の実態に合っていないこととばらつきがあることで、どちらも48.6%。成果が業務に生かされない理由では、受講率・完了率だけで評価されていることが48.8%で上位に入ることを示した図

カリキュラムは、職種・業務工程・ツール・レベルの4軸で組む

では、どんな軸で組めばよいのでしょうか?
私が整理しているのは、次の4つです。

職種の軸では、営業、マーケティング、人事、経理、制作と、職種ごとに業務が違うので、使い方も分けて扱います。
「営業のためのAI活用」という括りは、受講者にとって自分ごとになります。

業務工程の軸では、調べる、まとめる、作る、チェックする、伝える、と職種を横断して工程で切ります。
「資料を作る工程のAI活用」のような回になります。

ツールの軸も必要です。
ただ、単独では機能しないので、ほかの軸と組み合わせて補助的に使います。
レベルの軸では、初めて触る人、日常的に使っている人、ツールを作る人と、同じテーマでも深さを変えます。

この4軸を掛け合わせると、30回分のカリキュラムでも自然に中身が埋まっていきます。

勉強会の回し方そのものは、組織のAI活用度を引き上げる勉強会の設計手法も参考になります。

初級と上級は分けて、上級は設計力に振る

4軸のうち、いちばん効くのがレベルの軸です。
推進メンバーを30人集めても、実際に手を動かすのは2〜3人になるので、同じ研修では必ずどちらかが不満を持ちます。

そのため、最低でも2つの階層に分けます。
初級は、AIを「日常的に使える」状態にする段階です。
質問する、要約させる、文章を書かせるといった内容で、難しいことより心理的なハードルを下げることを優先します。

上級は、業務に仕組みとして組み込む段階で、カスタムAIを作る、自動化を組む、出力を検証するといった内容に、手を動かす時間を長く取ります。
上級の中身を議論する中で見えてきたのが、単なる使い方ではなく、業務設計や論理構成といった「設計力」を扱う方向です。
業務を工程に分け、どこが定型でどこが判断かを見極め、指示を構造化し、出力を検証する力は、ツールが変わっても古くなりません。

初級の最後には「次はこれをやってみてください」という宿題と、上級への案内を置いておくと、上がる道筋が見えます。

初級はAIを日常的に使える状態にする段階で、質問・要約・文章作成を通じて心理的なハードルを下げる。上級は業務に仕組みとして組み込む段階で、カスタムAIや自動化、出力の検証に手を動かす時間を長く取り、設計力を扱うことを比べた図

汎用型・職種調整型・完全個別型を使い分ける

研修の中身をどこまで部署に合わせるかも、あらかじめ型を決めておくと準備が楽になります。

「汎用型」は、どの部署にも同じ内容を届ける形で、準備のコストが最も低く、全社への展開に向きます。
「職種調整型」は、骨格を共通にして、事例と演習だけを職種ごとに差し替える形です。
準備のコストと効果の釣り合いが最もよく、これを標準にするのがおすすめです。

「完全個別型」は、その部署の実際の業務を題材に一から組む形で、効果は最も高いものの、コストも最も高くなります。
もちろん、全部署を完全個別型にする必要はありません。
成果を最初に出したい部署に絞って使うと、費用に見合った効果が出やすくなります。

研修の中身を部署に合わせる3つの型を比べた図。汎用型は準備のコストが最も低く全社展開向き、職種調整型は骨格を共通にして事例と演習だけ差し替える標準向きの型、完全個別型は効果もコストも最も高く、成果を最初に出したい部署に絞って使う

演習は受講者自身の実務で、時間の半分以上を取る

構成の面では、説明を聞く時間より、その場で手を動かす時間を長く取ります。
学びの比率は、座学2割・実践8割が目安です。

演習の題材は、必ず受講者自身の実務にします。
サンプルのデータで練習すると、その場ではできても、自席に戻ると同じことを再現できません。

例えば経理の回なら、受講者が毎月作っている集計表をその場で持ち込んでもらいます。
自分の業務で手を動かせば、研修が終わった時点で成果物が1つ手元に残ります。

研修の構成は、説明を聞く時間より手を動かす時間を長く取り、座学2割・実践8割が目安。演習の題材は受講者自身の実務にする。例えば経理の回なら、毎月作っている集計表を持ち込み、研修が終わった時点で成果物が手元に残ることを示した図

研修の成否は、受講率ではなく業務の変化で測る

最後に、研修をどう評価するかも、カリキュラムと一緒に決めておきます。

受講率や完了率で測ると、施策は受講率を上げる方向に寄っていき、「数字は上がったのに業務は変わらない」状態が続きます。
目指すのは「研修を受けた」ではなく、「研修で業務が1つ改善された」という状態です。
受講後にどの業務が変わったかを聞き取り、次の回の題材に反映します。

研修を行い、業務が1つ改善された状態を目指し、受講後にどの業務が変わったかを聞き取り、次の回の題材に反映するという繰り返しを示した図

理解度の確かめ方は、研修の理解度を測れる状態にする。テストとクイズを自動化するにまとめています。

自社の業務を題材にした研修づくりを、一緒に進められます

どの軸を優先し、どの部署を個別型にするかは、組織の規模や職種の構成によって変わります。

私たちのAIコンサル&伴走支援でも、自社の実務を題材にした研修の設計から、受講後に業務が変わったかの確認までを一緒に進めています。

カリキュラムは、ツールが変わっても古くならない軸で組む

生成AI研修のカリキュラムは、ツールの機能を順に教えるほど、業務から離れて古くなっていきます。

職種・業務工程・ツール・レベルの4軸で組み、初級と上級を分け、上級は設計力に振ります。
中身は職種調整型を標準にし、演習は受講者自身の実務で時間の半分以上を取り、成否は業務の変化で測ります。

いま手元にある次の研修の案は、演習の時間が全体の半分以上を占めているでしょうか?

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執筆:寺田昇平

AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事

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