
AI生成画像の商用利用と納品。社外に出す前に決める3つのライン
2026/09/30
執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
仕組みとコンサルティング伴走支援の両面で、組織のAI活用の加速を支援。
SNS投稿用の画像をAIで作っていた現場で、納品の直前に「これ、商用利用は大丈夫なんだっけ」と作業が止まったことがありました。
続けて「納品したあと、クライアントが別の媒体で使ったらどうなるんだっけ」という声も上がり、誰もその場で答えられませんでした。
AI生成画像を社外に出す場面が増えてくると、どの組織もいずれこの問いにぶつかります。
判断を担当者に任せたままだと、慎重な人は使うのをやめ、気にしない人はそのまま納品を続けるので、推進や法務の側で先に線を引いておく必要があります。
今回は、AI生成画像の商用利用と納品について先に決めておく3つのラインと、段階の切り方、人が確認する工程の残し方を整理します。
なお、個別の法的な判断は、利用するサービスの規約や契約の内容によって変わるので、最終的には法務や専門家の確認を前提にしてください。

「使っていいか」は、規約と契約の2段階に分かれる
「このAI生成画像、使っていいのか?」という問いは、よく見ると性質の違う2つの問いが重なっています。
1段階目は、AIサービスの規約の上で商用利用が認められているかどうかで、条件はツールとプランによって違います。
無料プランでは商用利用に制限があるサービスもあり、生成物の権利の扱いも各社で異なります。
2段階目は、納品したあとにその成果物がどう使われるかで、こちらは規約ではなく契約の問題です。
クライアントが別の媒体で使う、二次加工する、他社に渡すといった使われ方まで想定して、合意できているかが問われます。
現場が止まるのは、たいてい2段階目のほうです。
1段階目は調べれば答えが出ますが、2段階目は誰かが決めない限り答えが出ません。

ライン1|社外に出すものは、使ってよいツールとプランを一覧にする
最初に決めるのは、社外に納品する成果物に使ってよいツールの範囲です。
「案件ごとに規約を確認しておいて」と担当者に任せる運用は、読んでも判断がつかないうえに規約も更新されるので、現実的ではありません。
そのため、推進や法務の側で「このツールのこのプランなら、社外納品物に使ってよい」という一覧を作り、それ以外は使わないルールにします。
一言でいうと、使ってよいものだけを並べる方式で、現場は一覧に載っているかどうかだけを見れば判断できます。
プランや規約は変わり、新しいツールも出てくるので、一覧は半年に一度ほど棚卸しする前提にしておきます。
ライン2|納品後の利用範囲と責任を、契約に書いておく
次のラインは、契約書に何を書いておくかです。
従来の制作物なら著作権の扱いや利用範囲は契約書に書かれているはずですが、多くの契約書はAI生成物を想定して作られていません。
最低限、整理しておきたいのは次の3点です。
成果物にAI生成物が含まれることを、クライアントに伝えるか。伝えるなら、どの粒度で伝えるか
納品後の利用範囲は、契約した媒体だけか、それ以外にも使えるのか
第三者から権利侵害を主張されたとき、誰がどこまで責任を負うか
実務でいちばん重いのは最後の点で、ここが曖昧なまま納品を続けていると、何か起きたときに負担がすべて制作側に降りかかります。

ライン3|AIを使っていることを、聞かれる前に伝えるかどうか決めておく
最後のラインは、クライアントにAIの利用を伝えるかどうかの方針です。
業界や相手との関係によって考え方は分かれますが、私は聞かれる前に決めておくべきだと考えています。
聞かれてから慌てて答えると歯切れの悪い説明になり、それが不信につながりやすいからです。

逆に「弊社ではこういう方針で生成AIを活用しています」と先に伝えられると、信頼が上がることのほうが多いと感じています。
伝える粒度も選べて、「制作の一部で生成AIを使っている」という方針の表明で足りる場合もあれば、どの工程で使ったかまで示す必要がある場合もあります。
相手が上場企業や公共系だと、工程まで明示するよう求められる場面が増えてきています。
社外に出す前には、人が見て判断する工程を残す
3つのラインとは別に、実務であわせて決めておきたい工程があります。
生成物をそのまま納品するのではなく、人が見て判断し、必要なら直してから出す工程を必ず残します。
この工程があれば、品質の面でも責任の面でも、どう確認したかを説明できるようになります。
「AIが作ったものをそのまま出した」のと「人が確認してから出した」のとでは、何か起きたときの説明がまったく変わります。
特に画像は、意図しない類似が生じる可能性がゼロではないので、既存の作品やロゴに似ていないか、不適切な表現が含まれていないかを人が見ます。
公開前の表現リスクを段階で見る方法は、炎上リスクを公開前にスコアで見る。広報リスク管理の実装でも扱っています。
禁止から入らず、使ってよい範囲を段階で示す
ルールを作るときに気をつけたいのは、慎重になりすぎて現場を止めてしまう展開です。
「よく分からないから、AIは使わないでおこう」となるのが、いちばんもったいない結末です。
もちろん、すべてを一度に解禁する必要はありません。
ただ、「全部禁止」から始めると、現場はどこまでなら使えるのかを自分で判断できなくなります。
例えば、社内資料は自由、社外向けの補助的な図版は許可制、メインビジュアルは当面使わない、のように段階を切り、安全な範囲を明示するところから始めます。

入力する情報の線引きは生成AIに入れてはいけない情報とは。社内ルールを3段階で線引きするで3段階に分けていますが、出力物も同じように段階で示すと現場が判断しやすくなります。
決めた線引きは明文化して共有し、判断を現場に丸投げしない形にしておくと、結果として活用が早く進みます。
ガイドラインのどこに書き足すかは、生成AIの社内ルールの作り方。ガイドラインの項目サンプルと守れる環境の項目立てを参考にしてください。
社外に出す成果物のルールを一緒に決める
使ってよいツールの一覧や段階の切り方は、業種や取引先の顔ぶれによって答えが変わります。
私たちのAIコンサル&伴走支援でも、社内ガイドラインの策定にあわせて、社外に出す成果物の扱いを明文化するところから一緒に進めています。
納品の直前に手が止まる場面が出始めていれば、線引きを考えるきっかけにしていただけると思います。
危ないのは、誰も疑問を持たないまま納品が続く状態
冒頭の現場で起きたのは事故ではなく、納品の前に気づけたという意味では、むしろ健全な状態でした。
危ないのは、誰も疑問を持たないまま、AI生成画像の納品が続いている状態のほうです。
ツールの一覧、契約上の利用範囲と責任、開示の方針の3つが決まっていれば、現場は迷わずに使えます。
とはいえ、ルールがあれば安心というわけではなく、担当者が「これ大丈夫だっけ」と口に出せる空気があるかどうかが、ルール以上に効く安全装置になります。
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執筆:寺田昇平
AI Portalize株式会社 代表取締役/AI Digital Community 代表理事
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